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2018年11月2日(金)HCUの面会時間も過ぎた。私は看護師に、今従姉夫婦がこちらに向かっていること。その際に、時間外にはなるが母と面会することはできるのかどうかを確認した。「大丈夫」とのことだった。私は廊下に出て、エレベータ前の椅子に座った。あんなにがんばっていたのに、2日前には変わらず元気だったのに、3日以内には母がこの世を去るという。医師はそのための気持ちの準備をしておくようにといった。あの暑い夏の日の朝、母が救急車で運ばれた時と同じように、沢山の荷物を抱えながらこんなに早く、その日が来るなんて。心構えなんてしたくてもすぐにはできない!できるわけがない!そう考えていた。従姉夫婦はなかなか姿を現さない。そもそもの病院の面会時間も終わってしまった。下に降り、警備員の方にHCUにいる母に会いに、従姉夫婦がやっ...お別れの時が来ました③
2018年11月2日(金)母はHCUに運ばれたが、私は外で待つことに。その間に、リハビリ病棟の看護師が母の荷物をもって私のところにやってきた。今日は洗濯したものも大量に持っている。そこに入院した時に自宅から持参していたタオルケットなども手渡された。本当に大量の手荷物だ。なかなか呼ばれる気配がない。私は従姉に電話する。そう、母が手術をしたとき13時間一緒にいてくれた従姉である。血圧が昇圧剤を入れても60台から上がってこないこと。誤嚥性肺炎を起こしてショック状態であること。たぶん、ながくても3日以内で別れの時がくるといわれたことなどを伝える。従姉は「わかった!すぐ行くから」と電話をきった。漸く呼ばれてHCUの中に入る。看護師が、「急なことで驚かれたでしょう?」と声をかけてきた。薄暗いHCUの中で、母は入り口近く、看...余命3日「お別れの時が来ました」②
2018年11月2日(金)手術を終えたのが8月2日。今日が11月2日。ちょうど3か月である。私に母の状態の説明をしたのは、この日の当直のN先生。朝、食事を吐き出したこと。その後、容態が急変したこと。母の担当医師が、誤嚥性肺炎を疑いレントゲンと血液検査などをすぐにしたこと。そのときの胸部レントゲンではまだ肺に影はないが、今撮影すれば影があるだろうこと。尿道にバルーンを入れたこと。その時に尿から膿が出ていたので、細菌による感染症があること。39度の熱が出ていること。そして何よりも、血圧が急激に低下して昇圧剤を入れても60台から上がってこないこと。などの説明があった。そしてN先生はこう続けた。「血圧が急激に下がり、ショック状態です。今晩か長くみてもこの3日間でお別れの時が来ます。」「もし今回乗り越えることができたとし...余命宣告?「お別れの時が来ました」①
2018年11月2日(金)母の病院と同じ方向に自宅があるスタッフと一緒に地下鉄に乗る。私は、洗濯をした肌着やタオルなどたくさんの荷物を抱えていた。若いスタッフと仕事のこと、そして母のリハビリの様子など笑いながら話した。彼女が途中で下車してからは、「母は金曜日はいつも疲れている。私が行っても気づかず寝ているかもしれない」そんなことを考えていた。エレベータを降りると、ナースステーションにいつもは見かけない医師が座ってパソコンをみていた。なぜか私はそのことに違和感を覚えた。母の病室に入ろうとするとカーテンがしっかり閉められていた。処置中の合図だ。でも今はご飯の時間。おむつ交換でもないだろう・・・看護師があわただしく出入りしている。そして私の顔を見るなり「今、処置中ですので廊下でお待ちください。先生からお話があります」...急変!
2018年10月28日(日)珍しい人から電話があった。急性期病院で一緒だった方。そう、NCUに居たときに妹さんにモーツアルトを聞かせていた方からだった。この女性Yさんは母と同じ年。母が倒れる前日に、妹さんが脳梗塞で同じ急性期病院に運ばれてきたのだ。急性期病院ではデイルームや廊下で顔を合わせるたびに言葉をかけあった。私が仕事をしているため、平日に顔を合わせることはほとんどなかったが休みの日にはお互いの病室を訪ねて、声をかけるようになっていた。どちらも同じ時期に入院したため、転院の話なども報告しあった。特にこのYさんからすると、私がどう動いているのかはいろいろと参考になるようだった。だが、「あなたは若いからお母さんのためにできることを全部しなさい。私はそこまで動くことはできないわ。自分の体だけでもしんどいもの。でも...患者家族の繋がり
2018年10月27日(土)何が理由なのかはよくわからないが、以前から10月27日に計画停電を行うという張り紙が貼りだされていた。エレベータの前や中にも。トイレも水を流すことはできるが、ハンドドライヤーなどは使えない。室内も薄暗い。エレベータも時間制限で一基ずつだ。病室に行くと、STさんの訓練真っ最中だった。母は私の顔を確認すると、笑った。STのHさんは、「娘さんがくると表情が一変しますね」と笑う。その後、Hさんが教えてくれた。「ボケ原さんに『お隣さん(98歳のおばあちゃん)ぐらい、大きな声を出しましょう!』といったんです」「そしたら『あんな大きな声は出せません』って言われました」「それもそうだね?って返したんです」とまた笑う。そして母に「ね?」と同意を求めた。母は顔の表情を緩ませて「うん」と頷いた。私は母が「...「あんな大きな声出せません」
2018年10月24日(水)月曜に面会に来た時に、私はどうやら自分のお弁当箱を忘れていったようだ。私は年齢を経るのと並行するように、そういうことが多くなった。「やったつもりでやっていない」とか「持ったつもりで忘れている」とか。もちろん、どこに置いたかがわからなくなるということも。ただし、お弁当箱は母のところに忘れていったことだけは明らかだったので私は「来たよ」と母に声をかけると同時にお弁当箱を探し始めた。棚のまわり、クローゼットの中(そんなところには入れていないが)、ベッドの周り。そして笑うが、掛布団の中まで(あるわけないやろ!って感じですが)どこを探しても見つからなかった。私は母の両手のミトンを外し、指を広げ、マッサージを始めた。「おかしいな、どこに置いてきたんやろ?」と考えながら。すると、お隣さんに人がやっ...母親の顔
2018年10月20日(土)いつもよりも早めに母のところに行った。午後からはPT(理学療法士)さんのリハビリが2コマ連続で入っている。最初の訓練は元気で可愛いIさんのリハビリだ。今日はエレベータに乗って、1階のリハビリ室まで行く。ここは活気がある。たくさんのスタッフと患者さんが行き来し、母にとっては情報満載、刺激いっぱいである。(集中力は途切れてしまうのだが)母に向かって「やっぱりここは刺激がいっぱいやね?」と話しかけると、母は左手で耳をかきながら、「うん」と大きく頷いた。両脚に装具を付けて、2本のバーを握って立ち上がり歩行練習をする。バーを握ってIさんの介助を受けながら立ち上がるまではできるがどうにも1歩がでない。もう一度やってみる。1歩なんとか擦るように少しだけ前に出すことはできたが、そこからは進めないIさ...歩行訓練
2018年10月17日(水)仕事を終えて母のところに行く。母のベッドは4人部屋の入り口側にある。その母の隣の窓側ベッドに新しい方が入られていた。昨日は面会に行っていないので、今日なのか昨日からなのかはわからない。ご家族の方がお家にいるときと同じように日常の出来ごとを報告されている。「こんなことがあったよ」「××がどこにいったよ」「〇〇が美味しかったよ」「今から△△がおばあちゃんのところに来るって」と。そのたびに「ほにゃほにゃむにゃら」とおばあちゃんは返答をしている。それが不思議なことに、聞いているこちらにも「そうなんかいな」「××に行ったんか?」「△△が来るんかいな」と話しているように聞こえるのだ。母と同じように経鼻栄養で、母の場合は舌が奥に入りがちであるがお隣さんは舌が左前側に力なく出ていて、そのためうまくお...お隣さんは98歳
2018年10月13日(土)今日はまず、母の肌着を買いに行く。前開けの物の方がいいとのことだったので、前開けのものを購入。介護用のシャツではなく、婦人物のシャツだけれどもボケ子さんはこの方が喜ぶだろう、と思った。ついでにハンガーも購入。今年の10月は暖かいとは言っても、車いすで玄関前に出ることもある。母のお気に入りのカーディガンも持っていこう。下着や肌着をリース契約することもできたけれど、余分な毎月の出費は抑えたかった。タオルや肌着の洗濯は私がすればいいと考えていた。どうせ、面会に行くのだし、その時に持参すればいいだけのことだから。病室にいくと、言語聴覚の訓練中だった。担当者のHさんから「今日は眠たくて・・・」と伝えられる。母は言語聴覚の訓練にはあまり積極的ではない。ゴックンをさせられる訓練だからだろうか。その...「眠たくて・・・」から、「歩けそうですね?」
2018年10月12日(金)最近のここ、リハビリ病院はいつもよりもスタッフの数が圧倒的に増えている。それも、みんながみんな若い。すぐに看護学生であるとわかる。実習に来ているのだろう。病室に入ると、母は横向きに寝ていた。壁には「仰臥位禁止」という張り紙がされている私が来ているのを見かけた看護師さんがやってきて「日中は車いすに座ってもらっていることもあるんですよ」と教えてくれた。リハビリの他にも、多分ナースステーションのところで車いすに座って過ごしているということだろう、と想像した。『そういう時間がどんどん増えていくといいな』と思う。そして、さらに「お母様の看護に、学生も入らせてもらってもいいでしょうか?学生だけということはありません。必ず、看護スタッフが一人つきますので」と申し出があった。私自身の考えとしては、学...意思の表出
2018年10月9日(火)最近の私は、賃貸物件の検索が習慣になっている。支出を減らさなければ、という思いともしもボケ子さんがお家に戻れるのならお引越しをする必要があるから。うちはエレベーターがない。階段で3階まで登る。ボケ子さんにはとうてい無理である。車椅子でも無理だ。1階の物件を中心にみているが、その話をするとボケ子さんの聞こえないふりをする。引越が嫌なのではなくて、1階が嫌なのだと思う。でもね、エレベータ完備になると家賃が上がるんだよ~~。ところで、今日は介護認定の日だった。要介護1のボケ子さんの区分分け変更のための認定調査だ。調査員の人が病室までやってきた。「リハビリの回数は週に1~2回ですかね?」と質問された。ほぼほぼ何もできない状態の母をみて、まさかリハビリ病棟にいるとは考えられなかったのだろう。そん...介護認定調査
2018年10月7日(日)日曜日に面会に行くのは、リハビリ病院に転院してからは初めてだ。母は、親切にしてくれる慣れたスタッフには笑顔を見せている。(顔の筋肉が硬くて、引きつり気味ではあるが・・・)今日も2コマのリハビリに立ち会った。言語聴覚訓練の時間は、とろみ茶を昨日と同じく飲んだ。3口ほど。3口というと多く感じるが、舐めるほどの量である。通常でいう所の飲み込むという量ではない。そういえば、昨日から作業療法士が入っていない。2コマが理学療法士で組まれている。母の場合、それも理解できる。その新しい担当さんが、「こんにちは、ボケ原さん」と入ってきたときに私は一瞬、心臓が止まりそうになった。「めっちゃ、男前さんや!」心の中で、こう叫んだ。私の姿を見て「昨日からボケ原さんの担当になりました、Sです」と優しい声でいう。「...イケメンが来た!
2018年10月6日(土)母の病室を訪れると、母の足元側のベッドのご家族がそろっていらしていた。前にも話したが、このご家族は明るくていつも話し声と笑いで満ちている。リハビリをしている時間になかなか面会に行くことができないので気づかなかったが、ご自宅に戻られるための訓練を行っているようだった。この方は、母と同じように経鼻チューブ栄養である。車いすから立ち上がる訓練を中心に行っている。時々はこの起立訓練に対して「満面の笑みで首を横に振った」と担当リハビリスタッフがご家族に報告していることもあった。それについても「お母さん、笑ってごまかしてやらへんかったんやぁ」とニコニコしている。ここに書いたタイトルの訓練というのは、家族の訓練だ。自宅に戻るために、家族もベッドから車いすへ、車いすからベッドへの移乗のための介助練習を...在宅に向けての訓練
2018年10月5日(金)母は私が行くとやはり少し安心するようだ。帰るときも、「また来るね」よりも「また明日来るから」の方が落ち着いている。口呼吸は相変わらずだ。リハビリ病棟のスタッフは忙しい。特に夜のスタッフの人数が減ってからはなおさらだ。食事の時間になると、介助などもありいくら介護士が入っているといえども忙しさはかなりものだ。そんな中で、母のようにベッドで経鼻栄養、ミトン着用でナースコールも押せないものは放置されている印象にどうしてもなってしまう。家族だから、分かってはいても、「放置しないで!」という気持ちも湧いてくるというものだ。ナースステーションに近い部屋なので、同時に複数のナースコールが入っているのも聞こえる。母にまで手が回らないのだろう、と思った。母の検査表を見た。昨日は面会に来なかったので知らなか...検査とリハビリ
2018年10月3日(水)口呼吸が激しくなっている。不安だけでなく、リハビリの疲れもあるのだと思った。言語聴覚訓練のときに顔の筋肉を柔らかくするようにしていたのを思い出して、携帯用美顔ローラー「通称コロコロ」を持参していく。私は気分転換もかねて、母に美顔ローラーを見せ「コロコロしようね、って話したのを覚えている? 持ってきたよ」と話しかける。「ねえ、覚えている?」返事がないのでしつこく「覚えているの?」と聞き返した。すると母は「覚えていません!」って、はっきりと言葉にした。母が私に言葉を発するときは否定語が多いようだ(笑)「もう今はそれどころじゃないのよ」って体全体で表現しているように感じた。そこで私は「辛い?」ときいてみた。「しんどい?」ではなく、あえて「辛い?」と。あまり弱音を吐かない母だが、すぐに大きく頷...「辛い」と言われる
2018年10月2日(火)2日間、病室にいかなかったのでとても気になっていた。母の病室の人は、面会率が高い。みな、ほぼ毎日訪れる。母の足元のベッドの人なんか、ず=っと家族がついている。お父さん(旦那さん)がついていて、夕方になると息子さんと交代する。娘さんが来られることもあれば、たぶん、息子さんのお嫁さん(?)が来られることもある。とにかく、誰かが来ている。そして、関西人らしく、おしゃべりが多い。いつも笑い声が響いている。だから、だれも知る人がいない病室で、母にとってはハードなリハビリをし、周囲には笑い声が広がっているという環境は負担が大きいのではないか、という風には考えていた。病室に行くと、母は予想していたよりもすっきりした顔をしていた。いつも笑い声が絶えない足元のベッドの方は、1リットルの酸素が入っていると...環境の変化
2018年10月1日(月)リハビリ病院に転院した時、日曜日だけはフリーの時間を持とう!私にとって、丸1日自由に使える日にしよう!と決めていた。もう、脳外科にいるのではないんだ。リハビリをしているのだから、それぐらいはありだろう!そう考えていた。そして今日、月曜日は通常なら面会に行く日なのだが、車を車検に出す約束の日だった。代車の都合で今日になってしまった。車検の予約を入れたときには母の転院先もまったく決まっていなかったし。代車に乗ってみると、この昔の持ち主はアクセルを踏み込む人だったのかアクセルに足を乗せただけで、アクセルがペタンとなった。。。思わず『ひえ~~~っ』と声が出た。運転が得意ではない私にとっては、かなりの恐怖を感じる車。それにバックモニターもついていない。車庫入れするのも、アクセルに足を乗せるのが怖...番外編
2018年9月29日(土)土曜日なので、今日はリハビリの様子を見ることができる。母の血圧は90位。そのためか、覚醒も悪い。作業療法士さんと言語聴覚士さんのリハビリに立ち会う。言語聴覚士さんのリハビリでは明らかに無呼吸になっていた。途中から、ST(言語聴覚士)さんも気が付いて、無呼吸のタイムを計っていた。母は40秒以上息を止めていた。「ボケ原さん、ちゃんと息をしてくださいね、呼吸が止まっていますよ」と母に声かけをしている。私は「飲み込むのが怖いっていうんです」と失語の母の代わりに伝えた。「訓練のときは私がついているから、今は大丈夫。しっかり飲み込む練習をしましょう!」高齢者は環境の変化が苦手だ。転院をするだけでもかなりの負担だと思う。それも急性期の病院と、リハビリ病棟では対応もペースも違う。病院の違いだけではない...リハビリ病院
2018年9月28日(金)昨日はすごくハードな一日を過ごした。私も、そして何よりも母も。母は疲労がかなり残っているのではないかと、仕事中も気になっていた。仕事を終え、バスタオルやフェイスタオルを持参で病院へと向かう。地下鉄に乗り込み、自宅とは反対方向に進む。まだこれから一仕事あるような気分になる。実際、一仕事と言えば一仕事のようなものだ。病室に入ると、母が口をあけてハアハアしているのが見えた。このハアハアは体調が悪い時のハアハアではない。不安な時のハアハアだ!私はあわてて母のベッドの横に座り、母の胸に手を置いた。「ここはしんどいね。ボケ子さんには負担が大きすぎるね、いやなら病院変わろうか?」母から、反応はない。しばらくすると、時折、母のハアハアが止まることに気づいた。様子を見ていると、息をしていない!ハアハアし...母の不安と恐怖
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