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久しぶりに風邪を引いた。以前引いたのはいつだっただろう。シムが俺の家で働くようになってからは体調を崩した覚えはないから、それより前だ。以前の俺の生活と比べたら、だいぶマシになったと思う。仕事が忙しいときは、食事を抜くことなんてざらにあった。コンビニの菓子パンやおにぎり一個で済ますことも。食の好みは勿論あるけれど、自炊はできないし、何が食べたいとかこれじゃないとダメだとか、こだわりも特にない。お腹が...
………しまった。僕は吊り革を直接触ることはできないから、いつもハンカチで掴むようにしている。電車に乗る時に手に持っておくのだ。けれど今日はチョン・ユンホが一緒だったし、やたら話しかけてくるから用意しておくのをすっかり忘れていた。鞄の中に入っているけれど、この満員電車の中で身動きを取るのは難しそう。左手に持っている鞄は、すでに人と人との間に押し潰されている。僕としたことが、かなりの失態である。せめてま...
「チャンミンは一人暮らし?」「……そうですけど」「俺もなんだよねー。チャンミンはお昼ってどうしてる?やっぱり食堂?」「………いえ」「外で食べてるの?あの辺で美味しいご飯屋さんある?」さっきからずっと、こんな調子。質問、質問、質問ばっかり。電車が発車してすぐ、僕はチョン・ユンホと一緒に帰ったことを後悔した。部署も違うし、今日さえ乗り切れば……と百歩譲った結果だったけれど、それにしたって彼はよく喋る。とにか...
最悪最悪最悪最悪さいっあく!!!僕はチョン・ユンホにキスされた唇を、水で念入りに洗っていた。スーツの袖が濡れているけれど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。動揺のあまり彼を突き飛ばして、トイレまで走って逃げてきてしまった。だから結局、案内も何もしていない。追っては来ないみたいだし、あの場に取り残された彼がその後どうしたかだなんて、もはや僕が知るところではない。社内で迷って、困ってしまえばい...
「……総務課のシム・チャンミンと申します」「チョン・ユンホです」「よろしく」と僕の目の前でニコニコと笑顔を振りまくこの男。エントランスで少しの間待っていたらやって来た彼を見て、うちの会社の人間じゃないとすぐに分かった。顔はやたら小さいし、背も高くてすらっとしている。おまけに脚も長い。非の打ち所がないようなイケメン。黒髪なのにどこかチャラチャラして見えるのが、いかにも営業部という感じだ。……いや、これは...
昨日の空港写真を見て歓喜した結果の産物です。「お前昨日の合コン、どうだったんだよ」「んーまあ顔は微妙だったんだけどさあ、スタイル良い子がいたからお持ち帰りした」「うわ、マジかよ。ほんと節操ねえな」社員食堂の隅っこで、下品な会話にゲラゲラと笑う他の部署の知らない奴ら。1つ席を空けて、その隣に座る僕。……お願いだから、こっちに唾は飛ばすなよ。そう念じながら、僕は空になったお弁当箱をハンカチできっちりと包...
僕の視線の先に、ユノさんがいる。僕と同じように真っ白のタキシードを着て。僕に向かって微笑んでいる。ここにいるのはユノさんと僕の2人だけ。まるで世界に2人きりみたい……なんて思うのは、僕がドラマの観過ぎ?「チャンミン、おいで。ここまで来てくれる?」ユノさんが僕を呼ぶ。落ち着いた、優しい声で。「ユノさん、これって……」どういうこと?聞きたいけど、頭が混乱している。さっきから心臓の音がうるさい。ユノさんは仕...
チャンミンのバースデー小説どうしようと漁ってたら去年書いたやつが出てきたのでちょこっと修正して再upします(手抜きしたわけじゃないです…笑)可愛い可愛い恋人とその愛犬の写真を前にして、俺の気持ちは複雑だった。今日は2月18日、つまりは恋人の誕生日。日付が変わったと同時に、普段大事なところで甘えてこない恋人に愛を伝えて目一杯甘やかす予定だったのに。その前日になって実家に帰るから夜しか会えない、なんて言われ...
会話文のみ小ネタ◎Happy Birthday「シム、これ」「なんですか、その箱」「さて何でしょう」「…?え、ケーキ?」「あたり〜」「なんで……」「何でって、誕生日だからだろ」「知ってたんですか」「そりゃあ可愛い後輩の誕生日だもん」「………あの、チョンさん」「ん、なに?」「大変申し上げにくいのですが、僕の誕生日は明日です」「え?」「明日です」「まじか」「まじです」「…あっ、じゃあこれからシムの家行っていい?」「はっ?」...
こんにちは、管理人のニカです(⌒▽⌒)明後日にチャンミンの誕生日を控え、お話をどうしようかな〜と悩んでいるところなのですが…。それとともに、当ブログは大変ありがたいことにもうすぐ5万拍手を迎えようというところでして……。2万拍手の時にもやりましたが、またリクエストを受け付けようかな、と思っております。大まかでもいいですし、細かい設定があってもいいですし、このお話の続きが読みたい、でも何でも大丈夫です〜!お名...
以前、いつか連載したいと思って書いたmore moreの続きです。設定が少し特殊?です。楽しんでいただければ幸いです…。「パネル展、行ってきました……っと」カメラロールから写真を選んで、コメントを打ち込む。タグも付けて確認をしてから、投稿ボタンを押した。その一連の動作は、もう手馴れたもの。この間、僕の大好きなアーティスト、ユノユノのアルバムが発売された。雑誌や音楽番組への出演情報も続々と流れてきたところに、さ...
「チョンさん、行ってらっしゃい」「……ああ、行ってくる」お弁当を渡して、チョンさんを見送る。いつも通りの光景……だけど、今日はちょっと違うんだ。なんて言ったって、今日はバレンタインデーだから。昨日のお昼。チョンさんが仕事に行っている間に準備をした。直接渡すのも恥ずかしいから、お昼の休憩中にでも食べてもらおうと思って。何日も前から考えて、ブラウニーを作ることに決めた。あのチョンさんのことだ。今までに色ん...
「チャンミンさん肌すべすべ!」「睫毛長い~!」あっという間に土曜日になって、あれよあれよとユノさんに式場に連れられ、メイクルームだと案内された部屋。ユノさんは一緒に入らずどこかへ行ってしまって、代わりに僕を待ち受けていたのは、ユノさんのお店のスタッフだという女性2人。僕の顔を見るなり何やらきゃっきゃとはしゃぎ始めたから、僕は緊張する暇さえなくなってしまった。頰にファンデーションを塗りたくられ、それ...
前髪を、ヒチョルとか言うあのコスプレ喫茶の店長に切ってもらったらしいチャンミン。いつも隠れていた大きな瞳は、もう遮るものがなくなってはっきりと見える。………俺だけのものだったのに。チャンミンが前髪を伸ばしていた原因は俺にある。俺が小さい頃に女の子だと勘違いしていたせいで、チャンミンは自分の顔があまり好きではないのだと言う。それについての誤解も解いたし、気持ちが通じ合ってからはあまり気にしなくなったよ...
花笑みのふたりです。ユノさんは忙しい。ここ数ヶ月の間、ずっと。今まで働いていた美容室を辞めて、独立するための準備をしているから。物件を探すところから始めて、内装の打ち合わせをしたり器材を揃えたり、集客のための広告をどうするか考えたり。さらにはユノさんの代わりに新しく店長になる人への引き継ぎ業務もやらなければならないと言うのだから、ユノさんの最近の忙しさは僕には到底計り知れないものだった。だから帰り...
前編、中編表記から数字表記に変えました。(また失敗した…)「ヒチョルさん、僕の前髪を切ってください」裏口からお店に入り事務所にいたヒチョルさんにそう声を掛ければ、彼は「待ってました」と言わんばかりにニヤリと笑った。ホールで働く子たちが、コスプレ衣装に着替える時に使っているロッカールーム。そこに大きな鏡がある。ヒチョルさんが事務所にあった椅子を持って来て、下に新聞紙を敷いてから、その鏡の前に僕を座ら...
あの日から、ユノとは何だか気まずい。あの日、というのは、つまりユノと僕が初めて……そういう、恋人同士の行為をしようとした日のことだ。相変わらず、学校の帰りにはどちらかの家に寄る。テレビを観たりゲームをしたり、お菓子を食べながら雑談をしたり。いつもと変わらない。けれど、あの日以降ユノは、僕に気を遣っているというか。どう接していいのか躊躇っているというか。そんな雰囲気が伝わってくるのだ。毎日していたキス...
研修の帰りはちょうど帰宅ラッシュの時間にはまってしまって、俺は心身ともに疲れ切っていた。修了式での俺の挨拶は大成功に終わった、と思う。チャンミンに会いたい気持ちを必死に堪えて作った、無駄な表現を一切省いた原稿。それを人が聞き取れる程度に早口で読み上げた結果、予定より5分早く式が終わった。たかが5分、されど5分。チャンミンと過ごせる時間が300秒も延びたんだ。よく頑張った、俺。しかも電車の乗り換えも...
Bitter Chocolate Cakeの2人です。どこにでもあるような、安っぽいビジネスホテルの一室。申し訳程度に隅っこに置いてある机の上に、俺は乱雑に書類を広げていた。「あー会いたい。まじで無理。耐えらんない」机に頭がぶつかりそうなほどの勢いで項垂れれば、そのうちの何枚かがひらひらと床に落ちる。「え、何事?」俺の様子に、テレビを観ていた同僚がぎょっと目を見開く。「彼女?」「うん、そう。恋人」「ユノがそんなにハマ...
「ちょっとユノ、あんなこと言ったらシウォニヒョンに怪しまれるでしょ…!」「わざとだよ」「何でっ」「いいだろ別に。実際、付き合ってるんだし」「そうだけど……!」屋上へと続く階段を上りながら、ぺしぺしと俺の腕を叩くチャンミン。振り返れば、恨めしそうに俺を睨む大きな瞳と目が合った。最近、ようやく俺と話すのに緊張しなくなってきたらしい。……チャンミンいわく「緊張して素っ気ない態度になってしまった」らしい、あの...
Blissful morningの続編です。普段あまり来ることのない場所だから落ち着かないのか、営業部の入り口の周りを行ったり来たり、そわそわしている俺の恋人。昼食を一緒に食べるために屋上で待ち合わせようと言ったはずなのに、こうしてわざわざ迎えに来てくれたのであろう彼に、つい口元が緩んでしまう。きょろきょろとを辺りを見渡しながら俺を待っている姿が可愛いからもう少し見ていたくて、わざとすぐには席を立たずにその様子を...
勝手に部屋に入るのは躊躇われたから、とりあえずチョンさんを僕の部屋に連れて行く。本当なら、チョンさんの部屋の方が看病するのには楽なんだけど。こういう時面倒だなあと思うけれど、チョンさんの部屋には会社の書類やら何やらが置いてあって、入るなと言われているのだから仕方ない。スウェットに着替えてもらってベッドに横にさせれば、チョンさんは電池が切れたようにすぐに寝てしまった。風邪以前の問題で、チョンさんには...
ーあ、来た。始発駅だから、しばらく停車している電車。中に乗り込むなり、きょろっと辺りを見渡して、俺のところで視線を止める彼。2週間くらい前から、俺の隣に座るようになった高校生。もちろん、彼とは知り合いではない。彼も彼で、何をするわけでもなく、いつもリュックを抱えて寝ているだけ。けれど俺が降りる駅の2つ前の駅に着くと、ちゃんと起きて何事もなかったように降りていくのだ。だいぶ、不思議な奴である。着てい...
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