車椅子の視点に絞った万博の所感
身体障害1級(脳性麻痺)・精神障害3級(発達障害)です。障害者ネタや虐待経験等について綴ります。
2025年6月
車椅子の視点に絞った万博の所感
2025年6月
「ブログリーダー」を活用して、ダブル手帳さんをフォローしませんか?
車椅子の視点に絞った万博の所感
大変ご無沙汰しております。今日はタイトルにある2つの件につきご報告したく存じます。 ①ここ2年の状況 だいたい2年前に小説のオンラインクラスに通いました。ノンフィクションでは表現できないことが表現できると思ったからです。実際アイデアやプロットは無限に出るようになりました。でも書きたい場面と場面の間を書くのが私にはできません。ライター時代は2万文字くらい書いて4千字に縮めていくのが最大の勝負所でした。私は当時この工程が得意だったのか、死ぬ気でやれば納得いくものになりました。対照的に小説では1万2千字を超える作品さえ一度も完成させられませんでした。評価の壁の遥か手前、文字数の壁にぶつかった訳です。…
NIPTが終って僕等は生まれた NIPTを知らずに僕等は育った おとなになって歩きはじめる 共生讃歌をくちずさみながら 僕等の名前を覚えてほしい 染色体異常の子供たちさ 迷惑だからと許されないなら 手間だけが掛かると許されないなら 今の私に残っているのは 涙をこらえて歌うことだけさ 僕等の名前を覚えてほしい 染色体異常の子供たちさ 青空が好きで花びらが好きで いつでも笑顔のすてきな人なら 誰でも一緒に歩いてゆこうよ きれいな夕陽がかがやく小道を 僕等の名前を覚えてほしい NIPTを知らない子供たちさ
「自分の人生の主人公って自分なんすかね?」 イチロウは唐突にそう言った。トウマもこの程度はよくある事だ、という調子で答える。 「うーん、どうなんでしょうかねえ」 ほぼ情報量のない応答である。彼は洗濯物を畳む手を止めずにイチロウの相手をする。優れたヘルパーである証だ。イチロウが本から顔を上げる。 「いやね、よくいるじゃないですか、そういう感じのことを言う人が。実はあれね、僕ね、大嘘やと思ってるんです」 「ああー、なるほど」 トウマは聞き流している。イチロウもそれを承知で喋りたいから喋っているのだろう。自分に言い聞かせている感じだ。トウマはそういう相手と切り結ぶのが上手い。この間にも洗濯物を畳み終…
『A地点から』 西王地真 千日前通りを進むと〈笑いの館〉の看板が見える。少なくとも、館が大改装されて以降では初めての訪問だ。 今や無機質なIDスキャナしかない入口へ進む。「マイド!」という人工音声と共にドアが開いた。棺桶を思わせる真っ黒な空間だ。勇気を出して中に入る。すると「A地点に参ります」という音声が聞こえ、すぐに奥の扉が開く。 また同じような黒い箱型の空間だ。ただし今度は中央に椅子があり、奥と左右の壁が煌々と光っている。俺はゆっくりと椅子に腰掛け、右の肘掛けの穴に杖を挿す。左の肘掛けに被せてあるヘッドホンを耳に当てると、音声ガイドが始まった。「ようこそ〈笑いの館〉へ。しかしそもそも一体『…
今週「鳥取県立バリアフリー美術館」と「鳥取県立美術館」のそれぞれの担当課に問い合わせを行った。本稿ではその経緯とご回答、それに対する私の所感を述べたい。 【背景】 2025年開館予定の鳥取県立美術館が『ブリロの箱』をはじめとするウォーホル作品を約3億3700万円で購入し、これが賛否渦巻く大激論に発展した。双方の主張は概ね以下のようなものと理解している。〈賛成派〉全く問題ない。むしろウォーホルの価値も分からずクレームを付けるような無教養な大衆を生み出してきたことが嘆かわしい。文化政策の欠如のツケを如実に示している。〈反対派〉ただの箱に約3億も使うなど税金の無駄遣いだ。もっと優先すべきことがあるは…
人生において選択肢は重要だ。 乙武氏は「選択肢を増やそう」をモットーに活動を行ってきた。彼は少数者であっても多くの選択肢を持てる社会を理想とする。これに異を唱える人は少なかろう。以前バリバラでCIL西宮の玉木氏が「障害児は将来の選択肢を非常に乏しいと感じながら育つ」と指摘していた。私もそうだった。夢が描けないのだ。職業であれ他の活動であれ、将来について本当に狭いイメージしか持てない。それには色々な要因がある。 一つ目は、野球や力士などの健常者スポーツの選手には絶対になれないという物理的制約。 二つ目は制度的障壁やロールモデルの欠如といった社会構造的問題。 三つ目は「私のように迷惑な存在が希望や…
Twitterスペースを突発的にやります。主な内容は下記の書籍の紹介と感想です。よろしければ是非お越し下さいませ。 10月23日に通信問題等で延期した後、Wifi中継器を導入しました。従って接続への懸念はほぼ消えました。その節は大変申し訳ございませんでした。一応事前にテスト配信もするつもりです。 【最近読んだ書籍】 最近読んだ本が下記にあります。実際にTwitterスペースで言及できるのはこの画像の中の一部になると思います。 最近読んだ本。ブクログの本棚をスクショした画像です。 ※私の本棚:https://booklog.jp/users/fc67aec096c6a17c
Twitterスペースを2回やります。主な内容は本エントリ内のコンテンツの紹介と感想です。よろしければ是非お越し下さいませ。 〈〈10月 19 日(水)17:30~18:30頃〉〉 【朝日新聞】 10月19日(水)18時30分まで下記リンクから閲覧可能 ①(荒井裕樹の生きていく言葉)ざらつく心、研究者の欲:朝日新聞デジタル ②(現場へ!)介助者と拓く:3 弱さも認め合える居場所:朝日新聞デジタル ③難聴の娘亡くした悲しさ、裁判で上塗り 事故から3年:朝日新聞デジタル ➃ヘルパーをなめるな! 介護職が見た「どうでもいいこと」の意味:朝日新聞デジタル ⑤マッチョな介護士、人手不足の救世主 体力も知…
任意の文字列を入力すると、その文脈に沿う形で続きの文章を自動生成してくれる「AIのべりすと*1」というサイトがあります。そこに私の過去のツイートを素材として入力してみました。つまり本記事で列挙する文は、全て冒頭(つまり最大140字の範囲内で、文字数はまちまち。)が私のツイートで、それ以降は自動生成文ということになります。 その文が予想より遥かに滑らかで自然な意味の通ったものだったので驚きました。時には矛盾しまくったりもしていますが、それもまた味というものです。あと現実の私よりも遥かにモテる展開が多いのも複雑な気持ちになりましたが、これはおそらく学習されたデータセットの偏り(ネット上にある様々な…
女性の中絶の権利を認めたロー対ウェイド判決を米連邦最高裁が覆した時、私は驚愕するとともに地獄の釜が開いたと感じた。 先に申し上げておくと、米国で妊娠中の女性は目下悠長な議論どころではない状況だと認識している。立場に関わらず、何よりも優先して彼女らの安全と健康の確保がされるべき時だと思う。 結論から言えば私はいわゆるプロチョイス(中絶容認派)の考えのほうに近い。その理由は後述するとして、私はプロライフ/プロチョイスという二者択一の政治闘争からは少し距離を置こうと思う。むしろ生殖を巡る様々な思想(当然上記2つも含むが)について「誰を主語に論じているのか」を具に見ていきたいのだ。 私も(遺伝性でこそ…
2016年7月26日未明、障害者入所施設やまゆり園で連続殺傷事件が発生。19人の命が奪われた。 本稿では問題を1点に絞る。施設・家族会・県・警察・検察・地裁・報道機関等のアクターのいずれからも犠牲者の氏名が明かされなかった結果、6年経った今もなお十数名の方々が匿名であり続けていることだ(以後、これを「匿名化」と表記する)。施設の是非や地域生活の課題等、容易に正解の出ない複雑な問題は扱わない。障害当事者ご本人と周囲の方々が日々理想と現実の狭間で格闘しておられることと拝察する。ここではそのことに対して率直に敬意を表すにとどめたい。 以下、私は匿名化の話しかしない。 【不明瞭な経緯】 なぜ障害者は命…
各々の哲学者に主張の中身とは別に自問してほしいことがある。人生の意味や存在の良し悪しについて哲学的に議論する際、不幸・苦痛・害悪等の顕著な例として、障害をあまりに引き合いに出し過ぎてはいないだろうか。 前記事で言及した森岡氏の著書*1にも「たとえば、重い病気や障害を例にとって考えれば、」*2のように「重い病気や障害」という定型句が繰り返し登場する。これはベネターや森岡氏に限らず多くの哲学者に言える。その頻度の高さから察するに深い考えがあってのこととは思えない。むしろパッと思い付く不幸の代名詞、苦痛や害悪のワイルドカードのように認識されている感じがする。 もしよく知らないままにそうした理由で濫用…
7〜8月に投稿予定のA・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ(後述)、及び昨日投稿した Ⅰ の記事は緩やかに繋がり1シリーズを構成する。しかし同時に、個々の記事は単体でも成立するよう一話完結型にしてある。従って、興味のあるものだけを(あるいは違う順番で)お読み頂いても何ら問題なくご理解頂けると思う。 各記事のタイトルと繋がり Ⅰ 生まれてきて良かった ⇒7月16日投稿済 A 哲学者が障害を引き合いに出す時のこと ⇒7月18〜19日頃投稿予定 Ⅱ 生殖・検査・中絶・出産・養育・虐待の倫理 Ⅰで扱えなかった反出産主義や、中絶の権利を撤回した米国連邦最高裁判決なども含め、出産や養育を巡る様々な立場や問題を「誰が主語なのか」に…
「ここじゃ生きられないけどここが好き好きって分かったうれしい」*1 本稿ではべネターの反出生主義*2に私なりに向き合ってみたい。 誰にとっても、この世に生を受けることは、生まれてこないことよりも必ず悪い。生まれてくることは常に害悪であるーー そう主張する彼の本は、人生に悲観的な私にとっては極めて魅力的な思想に映った。彼の思想は障害者差別や優生思想ではない形で、私の辛さを説明し受け止めてくれるように思えたからだ。 しかし次第に疑問が頭をもたげてきた。ベネターが倫理的な問題を説こうが何を言おうが、人々はお構いなしにどんどんと生殖を行う。物理的に可能で、禁止されておらず、やりたいことであれば、人はそ…
一昨日(6月18日)は京都帝国大の創設記念日だったそうで、めでたいことです。京大と言えば障害学の一大中心地ですよね。彼らの知的営為にはいつもお世話になっているので、マジリスペクトしています。友人にも何人か在校生やOBが居ます。 そういった事を考えていたら「障害学」と「京大閥」で韻が踏めることに気付きました。とはいえ「だから何」という話なので暫く放置していたのですが、どうにも頭を離れない。そんな時「韻ノート*1』なるサイトを発見したのです。短い単語なら従来から個々人が独力で探せましたが、五文字以上の長い韻がこれ程簡単に探せるのは非常に革命的ですね。本職のラッパーでさえ、もはや使わずにいることは難…
【趣旨】 障害者に関する報道を実りあるものにしていくために、障害当事者とマスメディアとの間にどのような課題があるか考察する。 【目下の課題】 ①報道が一過性である(障害者問題に限った話ではないが) 少しでも初報から日にちが開くと、もはや重要な続報があっても伝えない傾向がある。報道が点に終止し、線にならない。 そのため、諸事象に通底する問題の枠組みがあっても見落としてしまっている。 結果的に、社会として本質を議論したり知見を共有したりする機会も無いまま瞬く間に忘れ去られる。 そして毎年の節目(起きてちょうど〜年といった日)の時だけ思い出したように定型句を並べる。 こうしたアリバイ作りのための文章…
ニューヨークタイムズの障害者に関係する記事の中で特に優れていると感じたものをご紹介します。 各記事は、本稿に記載のリンクからであれば、14日間は非購読者も含め誰でも全文をお読みいただけます*1。その後どうするかはまた考えます。もし「定期的に新しいリンクを振り出して貼り替えればこれらの記事を継続して読める」ということだったら、是非その都度そのように更新したいと思います。 《《記事①》》 【要約】筆者は聴覚障害者。過去約10年にわたり、周囲の無数の人がきまって思い付きで「あなたのために手話を学びたい」と安請け合いしてきた。しかしその約束を果たした人は誰もいなかった。その度に失望と諦念が心に刻まれた…
いつも大変お世話になっております。 タイトルの件ですが、私がやりたいと思っている配信には定期と不定期の2種類があります。 まず前者の説明をします。「明日キックオフ的なことをして、そこで上手く行けば継続したい」と思っているのは前者のほうだからです。以下は全てその皮算用の上に立つ仮定の話です。 《《定期配信》》 【時間帯】 ・火曜なら17時〜18時・土曜なら16時〜17時・延長は最大30分程度・頻度は今後決定・開場は五分前 A 粋なオープニングトーク ⇒たぶん十中八九アニメの話しかしないと思います。 B ふつおたのコーナー! ⇒ふつおたって言いたいだけ(来るか?)。 C 障害者の宝 ⇒優れた物品や…
本記事は私事の断片的な列挙も多く、滑らかな文でないことをご容赦願いたい。 ・感謝 世界は無秩序で不条理だと思い知らされた旨を前記事で述べた。しかしそれを強く認識すればするほど、その中にあっても存在する「良さ」の稀少性を痛感し、逆説的だが世界への感謝の念もいや増す。なにせ極めて無力な私に対して28年も良くしてくれたのだ。ここでの世界というのは超越的な存在や概念では決してなく、個別具体的な物事に宿る「良さ」の総体だ。例えば、私の生存基盤を構成する豊かさや権利、その獲得に一生を捧げた先人達、ヘルパーさんや友達、些細なできごと、お気に入りのフィギュアやクリアファイル、思い出の場所、温かい人達との出会い…
NIPTが終って僕等は生まれた NIPTを知らずに僕等は育った おとなになって歩きはじめる 共生讃歌をくちずさみながら 僕等の名前を覚えてほしい 染色体異常の子供たちさ 迷惑だからと許されないなら 手間だけが掛かると許されないなら 今の私に残っているのは 涙をこらえて歌うことだけさ 僕等の名前を覚えてほしい 染色体異常の子供たちさ 青空が好きで花びらが好きで いつでも笑顔のすてきな人なら 誰でも一緒に歩いてゆこうよ きれいな夕陽がかがやく小道を 僕等の名前を覚えてほしい NIPTを知らない子供たちさ
「自分の人生の主人公って自分なんすかね?」 イチロウは唐突にそう言った。トウマもこの程度はよくある事だ、という調子で答える。 「うーん、どうなんでしょうかねえ」 ほぼ情報量のない応答である。彼は洗濯物を畳む手を止めずにイチロウの相手をする。優れたヘルパーである証だ。イチロウが本から顔を上げる。 「いやね、よくいるじゃないですか、そういう感じのことを言う人が。実はあれね、僕ね、大嘘やと思ってるんです」 「ああー、なるほど」 トウマは聞き流している。イチロウもそれを承知で喋りたいから喋っているのだろう。自分に言い聞かせている感じだ。トウマはそういう相手と切り結ぶのが上手い。この間にも洗濯物を畳み終…