chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 「成瀬は天下を取りにいく」 宮島未奈

    本屋大賞の「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未著2023年3月新潮社201p)を読みました。読みはじめはう〜んと思っていたけれど読み進むにつれて主人公・成瀬あかりの魅了にはまっていきました。近くの西武大津店が閉店するというのでテレビのローカルニュースに映るために毎日西武に出かけて行く成瀬突然M−1に出ようと思いつく成瀬このあたりまでは???「線がつながる」という章で成瀬とは対照的に常に周囲を観察して浮かないようにしている同級生の大貫かえでを描くことによって成瀬像がいっそうくっきりとする。東大のオープンキャンパスに行った成瀬はかえでを誘って西武池袋本店に行き記念写真を撮る。「わたしは将来、大津にデパートを建てようと思ってるんだ」と成瀬は真顔で言う。しがないと卑下せずに好きな西武を好きと言う成瀬。「天下を取る」...「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

  • 「世田谷イチ古い洋館の家主になる」 山下和美

    「世田谷イチ古い洋館の家主になる」1(山下和美著ホーム社)を読みました。新聞に紹介されていた(洋館保存のために家主になって大きな借金を背負った山下さんが「描くぞ」(借金を返すために)と決意した)話を読んでクラウドファンディングならぬクラウド本ディング(本を買って応援する)になればと。北海道に住んでいた子供のころから「素敵な建物」好きだった著者は(お父さんは大学教授)間取り図を描くのが大好きな子どもだった。(わたしもです)漫画家になって世田谷に住むようになった著者は通りかかるたびにこの「水色の洋館」に胸をときめかせていた。この洋館の名前は「テオドラ邸」テオドラ英子は尾崎行雄の妻で尾崎三良男爵の娘。(同じ尾崎なのは偶然)尾崎三良が娘テオドラのために建てた家。戦後は借家人たちが住みその中には島尾敏雄の息子で写真...「世田谷イチ古い洋館の家主になる」山下和美

  • シリーズ古代史をひらく 「前方後円墳」

    シリーズ古代史をひらく「前方後円墳」(吉村武彦他著2019年5月岩波書店312p)を読みました。前方後円墳は謎に満ちている。どうしてあの形?(ひょっこりひょうたん島のような)なぜ造られるようになってなぜ、ぱたりと造られなくなったのか?朝鮮半島にもあるのは、なぜか?執筆者の中に韓国の学者を迎えている本書そのあたりが分かる?と思って読んでみました。復元された前方後円墳に登った時前方部から接合部で一度下がって後円部に上っていく落差が思ったよりもダイナミックで後円部の高さの効果を感じたのでした。しかし観衆はいったいどこに居たのでしょう?彼らが前方部から後円部に向かって歩いたとは考えられません。その動きをしたのは一部の人だと考えると果たしてあの形は何のため?と謎は深まるばかり。(美しいけれど)前方後円墳を造るのにど...シリーズ古代史をひらく「前方後円墳」

  • 「神田ごくら町職人ばなし」 手塚治虫文化賞新生賞

    「神田ごくら町職人ばなし」(坂上暁仁著2023年9月リイド社)が手塚治虫文化賞・新生賞に!(ずっと読んでみたいと思っていたらマンガ大賞の候補になったのでもう、これは読むしかないと)短編集です。桶職人刀鍛冶紺屋畳刺し左官女性職人が主人公です。(違うものもある)舞台は江戸まだ底の入っていない桶越しに描かれている職人の顔のアップ熱した刀を水に入れた瞬間、だけで4コマどれもいいけど左官の章がいい。手拭いを巻いた頭が振り返ると顔は女。長兵衛店(だな)左官のお七で長七は蔵を任されている職人頭だ。腕を持っているけれど人をまとめていくのは難しい。何かと妨害するのは六次左官の腕もいいが、腕っぷしも強いで、すぐに腕をふるってしまう。長七は思う「あたしはただ土をいじるのが好きなだけなのに」女が頭になったことで周囲の気が緩むこと...「神田ごくら町職人ばなし」手塚治虫文化賞新生賞

  • 「うらはぐさ風土記」 中島京子

    「うらはぐさ風土記」(中島京子著2024年3月集英社273p)を読みました。夫バートの浮気で離婚し勤めていた大学での講師の仕事が無くなって30年ぶりにアメリカから帰って来た主人公・沙希人生の大転換点のはずなのに何だか実感がない。ぽけっとしている。というところに母校の大学から講師の口が舞い込み住まいは祖父の家を貸してもらえることになったて(祖父は今は施設にいる)「うらはぐさ」での暮らしがはじまる。30年ぶりの日本での暮らしでは(自分を浦島花子だと自認している)何とも奇妙な味のある人たちが沙希の周りを巡る。庭の手入れをしてくれる秋葉原さん。商店街の足袋屋の主人で店の屋上で「屋上菜園」をやっている(!)「これまで一度も、働いたことがありません」「もう、この年になると、おんなじだもんね」(働いていてもいなくても)...「うらはぐさ風土記」中島京子

  • 「小公女たちのしあわせレシピ」 谷瑞恵

    「小公女たちのしあわせレシピ」(谷瑞恵著2023年10月新潮社302p)を読みました。「小公女」で「しあわせ」で「レシピ」と来たらずいぶん甘そうな感じがするけどそうでもありません。舞台は家族経営の小さなビジネスホテル。そこにメアリさんという老女が長期滞在していた。自分の家を持たずホテルに住んでいたひと。まぁ、お金はあったらしい。メアリさんは、ある日、外で倒れて死んでしまう。どこの誰とも分からないメアリさんは行路病死人という扱いになってしまう。ピンクの服に麦藁帽子、大きなスーツケースを引いて、ミニ豚を連れていたメアリさん。スーツケースには古い児童書がいっぱいにつまっていた。メアリさんはその本を、あちこちに置いて歩いていた。作品にちなんだお菓子のレシピを挟み込んで。レシピはホテル備え付けの便箋に書かれていたの...「小公女たちのしあわせレシピ」谷瑞恵

  • 「水車小屋のネネ」 本屋大賞2位

    「水車小屋のネネ」(津村記久子著2023年3月5日毎日新聞出版刊)が本屋大賞の2位に!予想以上です!文中に挿絵が多いなあと思ったら新聞連載小説なのでした。ネネというのはヨウムという鳥ヨウムの寿命は50歳くらいで3歳児くらいの知能を持っている。ネネは水車小屋に住んでいて蕎麦粉を挽く手伝い(見張り番)をしている。住み込みで働ける仕事を探していた理佐は「鳥の世話じゃっかん」という求人票を出した蕎麦屋に勤めることになる。18歳の理佐は、母と8歳の妹律と3人で暮らしていた。が母子家庭暮らしに疲れた母が恋人をつくり理佐はアルバイトをして貯めた入学金を恋人に貢がれ家を出る決心をする。母の恋人は律に暴言を吐いたり夜に家から追い出したりしていた。理佐は律を連れて出ることにする。第一話(1981年)は理佐の物語。理佐の仕事は...「水車小屋のネネ」本屋大賞2位

  • 「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」 本屋大賞翻訳小説部門 第1位

    「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」(ボルム著2023年9月集英社)が本屋大賞翻訳小説部門第1位になりました!モモタロウ・ストーリーになっている。勤めを辞めて書店を始めたヨンジュの前に現れる人たち。ブック・カフェとして営業するためにバリスタを募集するとミンジュンという青年が。常連になったヒジュは店で読書会を開くようになりヨンジュの呼びかけで講演をした作家のスンウはヨンジュが依頼を受けて書いた原稿を見てくれるようになる。イベントが増えて多忙になったらサンスという読書好きの青年がバイトに立候補し客たちに本を薦める役をしてくれるようになる……「和音が美しく聴こえるためにはその前に不協和音がないといけない。今生きているこの瞬間が和音なのか、不協和音なのか……」という今を登場人物たちは生きている。ヨンジュは書店を開いた経...「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」本屋大賞翻訳小説部門第1位

  • 「卒業生には向かない真実」 本屋大賞 翻訳部門第2位

    「卒業生には向かない真実」(ジャクソン著2023年7月東京創元社)が本屋大賞翻訳小説部門第2位に。「自由研究には向かない殺人」「優等生は探偵に向かない」の続編(ミステリ)です。主人公を苦しい状況に置きそれを取り除く(指圧効果=ギュッと抑えてから取り除くと血行がよくなる)という小説の場合どれだけ容赦なく主人公を苦しい状況に置けるかが腕の見せどころだとは思うけれどこれはもうすごい。あの「賢くかつ愛らしいが、すこしクセの強いオタクめいた少女」(訳者)ピップが冒頭から「隠し持ったプリペイド携帯で精神安定剤を注文してそれを飲まないと眠れない」のだ。そして誰にもそれを相談できずにいいる。母、義父、恋人のラヴィ、友人たちの誰にも。2作目で遭遇した事件の影響だ。加えて繰り返される不気味なメールチョークで描かれた頭のない棒...「卒業生には向かない真実」本屋大賞翻訳部門第2位

  • 「BLANK PAGE 空っぽを満たす旅」 内田也哉子

    「BLANKPAGE空っぽを満たす旅」(内田也哉子著2023年12月文藝春秋288p)を読みました。ご存知樹木希林と内田裕也の娘で本木雅弘の妻で内田也哉子のエッセーです。人に会ってそのことを書いている。ちょっと一般人とは違うなと思うのは谷川俊太郎養老孟司坂本龍一桐島かれん是枝裕和横尾忠則などの会った人のほとんどが既に知り合いであるということ。樹木希林は著者を「人」に会わせることに熱心だったというから。どの人とも母と子、父と子の関係について話題が収斂していく。著者は、両親を亡くして間もない時期だった。面白く読んだのは写真家の石内都と会った話。石内都は亡き母の下着を作品として撮っている。石内のお母さんは群馬県で2人目の(女性で)自動車免許取得者だ。バス、ハイヤー、ジープ、何でも運転した。1人目の夫が戦死したの...「BLANKPAGE空っぽを満たす旅」内田也哉子

  • 「リカバリー・カバヒコ」 青山美智子

    「リカバリー・カバヒコ」(青山美智子著2023年9月光文社234p)を読みました。本屋大賞の候補作です。(4月10日発表)小さな公園にあるカバのアニマルライド(人形)、カバヒコ。喋りも動きもしないただいるだけ。だけど治したいと思っている部分にさわると回復すると言われているカバなのだ。思うように成績が上がらなくて悩んでいる高校生ママ友との付き合い方に悩んでいる母親耳が不調で仕事を休職している若い女性足が痛い小学生長年営んで来たクリーニング屋をやめようかと悩む80代の女性いかにもこの世に落ちていそうな悩みが取り上げられている。そして(カバヒコではなく)登場した人の「言葉」によって登場人物は悩みから方向転換していく。まことに的確な「言葉」によって。足が痛い勇哉に整体師が言う。「足から意識を飛ばす」ように。「痛い...「リカバリー・カバヒコ」青山美智子

  • 「受験生は謎解きに向かない」 ジャクソン

    「受験生は謎解きに向かない」(ジャクソン著2024年1月東京創元社172p)を読みました。「自由研究には向かない殺人」シリーズの前日譚です。自由研究の課題として町で起こった殺人事件を選ぶピップ推理力抜群でちょっとこだわりが強いタイプ。本作はでは殺人事件は起こっているけれどまだ自由研究が始まっていない。ピップは友達に誘われて謎解きゲームに参加する。場所はコナー・レイノルズの家。「1日に1回しか船が来ない島のお屋敷」で当主のレジナルド・レミーが殺されるという設定だ。友人たちはそれぞれの役に扮している。当主の長男で一族の経営から外されているロバート当主の後継者と目されている次男のラルフラルフの妻でカジノの経営を任されているリジー執事のトッド料理人のドーラピップの役は当主の姪のシーリア・ボーン金持ちの一族から何の...「受験生は謎解きに向かない」ジャクソン

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、ゆらゆら荘にて さんをフォローしませんか?

ハンドル名
ゆらゆら荘にて さん
ブログタイトル
ゆらゆら荘にて
フォロー
ゆらゆら荘にて

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用