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  • 「真夜中法律事務所」 五十嵐律人

    「真夜中法律事務所」(五十嵐律人著2023年11月講談社259p)を読みました。特殊設定ミステリです。ある日なぜか死者が見えるようになってしまった検事の印藤累は案内人を名乗る男に「真夜中だけ開かれる法律事務所」に連れて行かれる。ってもうそれだけで前のめりになるような設定。法律事務所には死者が見える弁護士の深夜朱莉(あかり)がいた。死者がみんな幽霊になったら見える人にはうじゃうじゃ幽霊が見える?ということはなくて幽霊は命が絶えた場所から離れることは出来ないが午前2時から明け方までは自由に動くことが出来深夜法律事務所の椅子に座った時だけ話すことができるのだ。殺害された霊は犯人が明らかになったら成仏できる仕組みだ。(だから、この世に幽霊はそんなにいない)印藤が見かけた青年は(どうやら有名アイドル)個室スポーツジ...「真夜中法律事務所」五十嵐律人

  • 「バイバイ、サンタクロース」 真門浩平

    「バイバイ、サンタクロース麻坂家の双子探偵」(真門浩平著2023年12月光文社305p)を読みました。「麻坂家」は「まさか家」小学生の双子の男の子が探偵役のミステリ。短編集です。小学生の双子の男の子が登場して日常の謎を解く、ほっこり系だろうと思っていたらまったく違いました。毎回死体が現れる探偵役が滔々と謎解きを語る本格モノです。探偵役は兄の圭司弟の有人は毒舌の兄をカバーする気遣いの役回り。母を早くに亡くし2人は刑事の父と男3人で暮らしている。第4話の「黒い密室」では山の民宿で起こった殺人事件を(警察の到着が遅いのをいいことに)圭司が勝手に現場検証をし高校生を1人ずつ呼んで取り調べをし事件の解決を滔々と語る。(爽快です)でもね刑事の父が捜査情報を子供に言ったりそれを双子が友達に言ったり学校モノなのに教師がま...「バイバイ、サンタクロース」真門浩平

  • 「冬に子供が生まれる」 佐藤正午

    「冬に子供が生まれる」(佐藤正午著2024年2月小学館364p)を読みました。落とし所はどのあたり?とにかくそれが気になる。7月のある日、丸田君のスマホにメッセージが入る。「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」???語り手は、普通、登場人物を「君」づけでは呼ばないでしょう。今どきは、小学校だって男女を問わず「さん」づけだ。ましてや会社だって。(丸田君は勤め人らしい)丸田君が小学生の時にもう1人の丸田君と佐渡君と仲が良かった。2人の丸田君は背格好も雰囲気も似ていたので佐渡君は2人を区別するためにマルユウ、マルセイと呼んでいた。(この丸田君は、どっち?)彼らは、小学生の時に山で宇宙船らしきものを見てそれが新聞に取り上げられてちょっとした有名人になった。高校生の時に当時の新聞記者に声を掛けられて3人は宇宙船を目...「冬に子供が生まれる」佐藤正午

  • 「あきない世傳 金と銀 特別巻下」 高田郁

    「あきない世傳金と銀特別巻下幾世の鈴」(高田郁著2024年3月ハルキ文庫319p)を読みました。(読者が)気になっていた人の様子が見える望遠鏡の特別巻嫁いだ先の店を失った結(主人公幸の妹)のその後が描かれている章もある。結夫婦は小さな旅籠を営んでいた。四十過ぎて産んだ娘が2人十になる桂と七才の茜やり手だった夫の忠兵衛は釣り三昧の日々を送っている。旅籠は結の美味しい料理でそこそこ繁盛しているけれど……結は思う。「こんなはずはない私の人生こんなはずはない」よく気がつく働き者の文字もすぐに覚えた聡い桂に姉の幸の面影が重なって、結は苛立つ。姉の店から奪った染めの型紙が何かにならないか何か、起爆剤に……一方桂は客から貰った縮緬の端切れでお守り袋を縫うようになる……まだ続くというこのシリーズ桂という少女が印象に残りま...「あきない世傳金と銀特別巻下」高田郁

  • 「あきない世傳 金と銀 特別巻上」 高田郁

    「あきない世傳金と銀特別巻上契り橋」(高田郁著2023年8月ハルキ文庫)を読みました。「みをつくし料理帖」シリーズの主人公に比べてどうも親しみの持てない主人公「幸(さち)」(次々に襲って来る困難を乗り越え次々に呉服屋商売のアイディアを繰り出していく)と思っていたけれどようやく著者はスケールの大きな人物を描きたかったんだなと分かってきた。自分の店のことだけではなく社会全体に目を向ける利益が上がることばかりではなく客の暮らしが豊かになることを願っているそんなスケールの大きな人物。閑話休題NHKのドラマ「あきない世傳」を見たけれどどうもね……人物に品がないというか厚味がないというか……そう思ったのは本書の第1話で弟に店を託して去った(幸の2番目の夫)惣次が江戸で姿を見せるまでが描かれていたからだ。惣次は井筒屋保...「あきない世傳金と銀特別巻上」高田郁

  • 「化学の授業をはじめます。」 ガルマス

    本屋をはじめた作家の今村翔吾さんはある賞をもらった時書店員さんにこそお礼をしたいと100日あまりかけて(その間一度も家に帰らず)47都道府県の書店を回った。原稿は車中泊をしていた車の中で書いた。今村さんは言う。「朝ドラのように日々のルーティンの中に文学がちょっと落ちているというのはすごくいい国だなと思っています」そういえばこのところフィクション味が足りないなと反省。「化学の授業をはじめます」(ガルマス著2024年1月文藝春秋535p)を読みました。すごく面白いです。「調子は合わせません」と言う主人公エリザベスは化学者だ。(1960年代が舞台)女であるということで不利益を被ってきた。大学院では教授に乱暴されそうになり持っていた鉛筆で刺して怪我を負わせたため博士号を得られず、事件は隠蔽された。勤めた研究所でも...「化学の授業をはじめます。」ガルマス

  • 「超人ナイチンゲール」 栗原康

    「超人ナイチンゲール」(栗原康著2023年11月医学書院241p)を読みました。講談のような文体(高校時代、よくラジオで講談を聴いていたものです)が面白い。「おめでとう。フローレンス・ナイチンゲールの誕生だ。ときは1820年5月12日。場所はイタリアのフィレンツェ……」(ナイチンゲールは両親の3年に及ぶ大新婚旅行中に生まれた)といった調子だ。子ども向けの伝記全集には欠かせないナイチンゲール灯を持って病室を回る場面が印象に残っている(というより、そこしか残っていない)ナイチンゲールは大金持ちのお嬢様だったので(父親の年収は億単位)看護師として働きたいと言ってもとんでもないと家族から反対された。(子ども向けの伝記では、そのあたりはぼかしてある)社交会にデビューして条件のいい人と結婚することを期待されていたのだ...「超人ナイチンゲール」栗原康

  • 「母の最終講義」 最相葉月

    「母の最終講義」(最相葉月著2024年1月ミシマ社169p)を読みました。「絶対音感」を書いた最相葉月さんのエッセー集です。お母さんが脳出血で倒れ脳血管性の認知症になったので著者の介護生活は20代からはじまった。26年続いた遠距離介護に限界が来た。ヘルパーさんの支援があってもお母さんの生活が立ち行かなくなったのだ。食材を大量に注文し届いた冷凍食品を冷蔵庫に入れて腐らせるヘルパーさんに暴言を吐く日に30回ほど電話を掛けてはワン切りするテレビで見たことと現実の区別がつかなくなった……(著者は思う認知症者はテレビが好きなのにテレビは彼らを見ていない片思いである彼らがニコニコ気持ちよくなれる番組を開発するというのはどうだろうか)著者はお母さんを東京に引き取って施設に入れる。一日おきに通って洗濯物を持ち帰る。お父さ...「母の最終講義」最相葉月

  • 「イラク水滸伝」 高野秀行

    「イラク水滸伝」(高野秀行著2023年7月文藝春秋474p)を読みました。古代文明誕生の地チグリス、ユーフラテス川が作った湿地帯は今、どうなっているだろうか?湿地帯というところは住みにくいところなのではないだろうか?それなのになぜ人々古代から連綿と住み続けているのだろうか?「誰も行かないところへ行き誰もやらないことをし誰も書かない本を書く」がモットーの高野さん今度の旅はいかに?と興味津々で読みはじめた。(表紙写真の前から2人目が高野さん)◯タラーデ(表紙写真の舟)を作ってそれで湿地帯の水路を旅する◯マーシュアラブ布(刺繍をした毛布)の正体を探る◯湿地帯の住人の生活を知るという3つの目標を立てた高野さんと同行者の山田高司さんしかし思うように計画は進まない。イラクでは外国人が単独で行動することは「あり得ない」...「イラク水滸伝」高野秀行

  • 「百人一首 編纂がひらく小宇宙」 田渕句美子

    「百人一首編纂がひらく小宇宙」(田渕句美子著2024年1月岩波新書258p)を読みました。「百人一首」といえばお正月に、親類が集まればやったものでした。今では小学校でもやっているところがあるとか。(歌の作者もまして順序など考えたことはなかったその順序が重要だったなんて……)前半は「百人一首」の編纂をしたのは藤原定家ではなかったという話。定家は「百人秀歌」というのは作ったけれど「百人一首」は「秀歌」に後世の人がちょっと手を加えたものなのだ。(え、そうだったの…)「百人一首」を編纂した人は(初めは札ではなくて冊子)「誰の次に誰を置くか」という配列を重視した。たとえば13番筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりけるの陽成院と15番君がため春の野にいでて若菜つむ我が衣手に雪は降りつつの光孝天皇の関係は陽...「百人一首編纂がひらく小宇宙」田渕句美子

  • 「常設展へ行こう!」 奥野武範

    「常設展へ行こう」(奥野武範著2023年12月左右社347p)を読みました。「ほぼ日刊イトイ新聞」に連載されていた時ぽつぽつ読んでいたのですがまとめて読みたくなったので一度読んだから新鮮味がない?と思っていたけど、そんなことはなくてなかなかよかったです。webで読んでいた時よりも学芸員さんの「じまん話」が可愛らしく感じられて、ほっこりしてしまいました。(紙で読んだせい?)美術館のウリ作品はもちろん自分のオシ作品になると急に饒舌になる学芸員さんたち。館林美術館では彫刻家のフランソワ・ポンポン67才で「シロクマ」を発表して大人気になり77才で亡くなるまでたくさんの作品を発表した。「こんなにも美しい輪郭でできた彫刻他にはなかなかありませんから」と。青森県立美術館ではウルトラマンの生みの親・成田亨「成田さんのお宅...「常設展へ行こう!」奥野武範

  • 「現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていた」 大滝ジュンコ

    今年いちばん(といってもまだ3月ですが)の面白さという書評を見て読みたくなって書店に行ったらあったので(最近ポチッとするのをやめています)「現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていたマタギ村・山熊田の四季」(大滝ジュンコ著2024年3月山と渓谷社255p)を読みました。著者(以下ジュンコさん)は山形の東北芸工大を出て長崎県波佐見、富山県氷見でアートマネージャーなどをし新聞連載記事も書いていた。新潟県の県北の人口37人の集落・山熊田で農業とマタギをしている人と結婚ししな布(シナノキの樹皮から作った布)作家として活動している。ジュンコさんのドラマチックな人生記と思ったら違っていた。結婚までのいきさつシナ布織りをはじめるまでのことなどは何も書かれていない。読者の野次馬的好奇心はさらりとかわされ...「現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていた」大滝ジュンコ

  • 「あっぱれ! 日本の新発明」 ブルーバックス探検隊

    「あっぱれ!日本の新発明世界を変えるイノベーション」(ブルーバックス探検隊著2024年1月講談社219p)を読みました。日本の「ものづくり」が危機に瀕しているってそんなことはない!という一冊。代替フロンを使わない冷蔵庫人間のような姿をして大工さんをお手伝いするロボット300度に熱しても手で持てるレンガなどなどの中で1番面白かったのはアンモニア問題。アンモニアといえばあのにおいと思うけれどアンモニアはNH3窒素と水素がくっ付いているものなのだ。窒素は今第3の環境汚染問題として浮上している。酸性雨、赤潮、海の富栄養化などに関係しているからだ。大気中から窒素を減らさなくてはならないのだ。減らすためには集める必要がある。臭いとりによく使われる活性炭は穴を持っているから吸着できる。穴があればいいのだ。でも、活性炭の...「あっぱれ!日本の新発明」ブルーバックス探検隊

  • 「不完全な司書」 青木海青子

    「不完全な司書」(青木海青子著2023年12月晶文社253p)を読みました。不完全を完全にする必要があるのだろうか?不完全な人間は人を助けることはできないのだろうか?そんな想いで書かれた一冊です。著者夫妻は奈良県の村に移住して「ルチャ・リブロ」という私設図書館を開いている。そこで司書をして読書会などもしている。読書会の1つが「生きるためのファンタジーの会」福祉社会学者の竹端寛さんが「普段、ノンフィクションとか研究書ばかり読んでいるので根詰まりして息苦しくなることがある。そんな時に読む本を何か紹介してほしい」というので始めた会だ。(わたしも絶好調に固めの本を読んでいると思うとぱたりと嫌になってフィクションに走るということがあります)読書会で取り上げたのは「夏の王」「フィオナの海」「トムは真夜中の庭で」「新月...「不完全な司書」青木海青子

  • 「手話だから言えること 泣いた青鬼の謎」 丸山正樹

    「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ作品でシリーズの2作目「手話だから言えること泣いた青鬼の謎」[丸山正樹著2024年1月偕成社165p)を読みました。児童書です。「デフ・ヴォイス」の主人公荒井が再婚したみゆきの娘・小学生の美和が主人公。毎日いっしょに下校していた友達の英知が転校することになり美和は落胆する。英知は場面緘黙でそれまでは文字で伝えるしかなかったのが荒井に手話を習ったことによって美和とも手話で会話ができるようになったのだった。母親のみゆきにすすめられて美和は手紙を書くようになる。美和は英知が場面緘黙だからといって「配慮」したりはしない。ただ、いっしょにいると楽しいのだ。多様性について考えさせられる。「配慮」という発想を持つこと自体上から目線ではないのか……と。美和に妹が生まれる。妹の瞳美は耳...「手話だから言えること泣いた青鬼の謎」丸山正樹

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