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  • 脊髄反射

    未経験の分野でも、反射的に段取りを語り出す人がいる。流れは確かに合っている。処理も見た目にはスムーズだ。けれど、その手順に“なぜ”がない。 彼らの思考には、内容の重みや意味の深さが欠けている。ただ、「どう動かすか」だけを重視して、「なぜそうするのか」には踏み込まない。いわば、エンジンの中身を知らずに車を運転するようなものだ。 こういう人たちは、答えを出すのが速い。脊髄反射で答えている。処理の流れさえ組み立てられれば、それで一仕事終えた気になる。だが、実際に動かし始めると、肝心の部分でつまずく。なぜなら、大脳や記憶で考えてないので、本質に触れていない。 そして不思議なことに、彼らはその責任を自分…

  • 「OKですが、」の正体

    感じが悪いメールというのは、別に悪口を書いているわけじゃない。言っていることは事実だし、文法的にも間違ってはいない。ただ、受け取ったこっちの胸のあたりに、なんとも言えない違和感がこびりつく。 典型的なのが、「OKですが、」というメールだ。 たとえば、「◯日の15時からで大丈夫ですか?」と送る。返ってくるのはこうだ。 「OKですが、その日は会議が立て込んでいるので、できれば早めに終われると助かります。」 ……え? じゃあダメなの? それともOKなの? というか、こっちはあなたに頼み込んでいるわけじゃないのよ。ただ日程の確認をしてるだけなのに、なぜか「無理して受けてやってる」みたいな雰囲気を全面に…

  • 「正論」と「意地悪」

    職場における「正論」は、しばしば剣のように使われる。 それも、斬るための刀ではなく、試し斬りするためのカミソリだ。 「言ってることは正しいけど、なんで今それ言う?」というタイミングの悪さと、 「あなたがそれ言う?」という人選ミス。これが最悪の居心地の悪さを生む。 で、正論を武器にする人たちは、往々にして、自分が意地悪をしているという自覚がない。 むしろ「私はルールに忠実なだけ」「他の人が甘すぎるだけ」と、どこか得意げですらある。そしてそのルールが自分で勝手に作ったルールだったりするのが癖が悪い。誰も作った時に反対しませんでしたと言い切る。 こういう人がひとり職場にいると、空気がピリつく。 一人…

  • 寓話: 『ウサギとカメ』一度しか言わない

    ある日、フクロウ校長がウサギとカメを呼びました。 「今日は森を出て、山の頂上にある“知恵の実”を取りに行ってもらいます。ただし途中の石橋は、一度しか通れません。間違ったら戻れませんよ。道順を今から言いますが、一度しか言いません。」 ウサギは「よっしゃ、一発で覚えた!」と胸を張り、カメは困った顔をしました。 「校長先生、私は覚えるのが遅いので、もう一度教えていただけませんか?」 しかしフクロウ校長は目を細めて言いました。 「大事なことだからこそ、一度しか言わないのです。」 ウサギはぴょんぴょん跳ねながら出発。カメは道順を思い出そうと必死でしたが、途中で混乱してしまい、誤って崖の方へ進んでしまいま…

  • 虫に食われる

    蒔いた20日大根が、ようやく赤く膨らみ始めた。ほんの少し前まで土の中で眠っていた種が、いまはしっかりと根を張り、地上に葉を広げている。その姿は頼もしく、いとおしい。 ところが最近、葉っぱに小さな穴が空き始めた。犯人は言うまでもなく、虫たちだ。サラダ用の葉物も同じ運命をたどっている。人間の舌に合わせて柔らかく改良された野菜たちは、当然のように虫にとっても魅力的な存在になる。つまり、人間にとって「おいしい」ものは、自然界でもまた「狙われやすい」存在なのだ。 ふと思う。これは今の人間社会ともどこか似ているのではないか。私たちは効率や快適さ、便利さを求めて日々進化している。けれど、そうやって整えられ、…

  • 「ズレた決断と、無理な正義」

    前回に「決められない男」と「勝手に決める女」の話をした。 職場にありがちな、でもできれば一緒に仕事したくない二人。で、じゃあこの二人が“決める”という行為に到達したらどうなるのか、というのが今回の話だ。 まず、決められない男がついに何かを決める。 これはこれでめでたい。腰の重い象が動き出した、みたいな出来事だ。 ただ問題は、決めた内容がズレてる。 こういう人、たいてい「何かを決める」という行為自体がゴールになっていて、その中身が現実に即してるかどうかは、わりとどうでもいいらしい。 結果として、決めたはいいが、誰も動けない。動きようがない。 そしてまた振り出しに戻る。 一方の「勝手に決める女」は…

  • 「決められない男と勝手に決める女」

    世の中には二種類の人間がいる。 決められない男と、勝手に決める女だ。 まず、決められない男。 たいていの場合、肩書きは課長とか部長とか、そんな「一応えらい人」である。にもかかわらず、彼らの口から出てくるのは、「うーん、どうしようか」「うん、ちょっとみんなの意見を聞いてから決めようと思ってて」などという、責任回避の香り高いフレーズばかりだ。 この手の男の言う「みんな」は、だいたい誰でもない。 そして「意見を聞く」と言いながら、結局は何も聞いていない。 なにより問題なのは、この人が決めないことで、他の全員の時間がどんどん消耗していくという事実である。沈黙は金ではない。沈黙は「予定が立たない地獄」で…

  • 「箱の方が大切なとき」

    箱と中身、どちらが大切かと問われれば、多くの人が「中身」と答えるだろう。だが世の中には、そうとも言い切れない場面がある。 たとえば、プレゼント。中身がハンカチ一枚でも、金色のリボンで包まれた箱を見た瞬間、人は期待に胸をふくらませる。あの高鳴りこそが、本当の価値ではないか。 あるいは、棺。中身はこの世を去った人。だが、残された者たちは、その人の人生に敬意を表し、美しい棺で送り出そうとする。中身の重みが失われたとき、箱がその象徴を引き受けるのだ。 そして、空の宝箱。何も入っていないのに、見る人に夢を抱かせる。それが昔の海賊の地図のような、金の香りを感じさせる箱だったらなおさらだ。中身が空であること…

  • なぜペットの犬猫は可愛がられるのか

    例によって余計なことを言って国民の逆鱗に触れ、ニュースに取り上げられて炎上してしまっている。 「辞めろ」は江藤大臣なんだけど、ほんとうに辞めるべきなのは石破、お前じゃないのか、と国民の8割くらいは感じていたと思う。彼の下品さは国の恥とさえ言えるレベルだ。 さて、本題に入る。 ペット、である。 犬とか猫とか、あるいはインコとか、名前を呼べばこっちを見てくれる系の動物たちの話だ。 彼らはなぜ、こんなにも人間に愛されているのか。 見た目がかわいいから? もちろんそれもある。 でも、それだけでは説明がつかないくらい、ペットたちの「癒し力」は高性能なのだ。 まずひとつめ。サイズと見た目。 小さくて、ふわ…

  • 余計なことを言う人の脳内地図

    たとえば、舞台の真ん中でマイクを握った政治家が、笑いでも取ろうと思ったのか、いや、もしかしたら真剣にウケると思って言ったのか、「米は買ったことがない。売るほどある」と口にしたとき、その場の空気がスン……と冷えた瞬間を想像してみてほしい。米の価格が跳ね上がって、スーパーの棚ががらんどうになってるこのご時世に、そんなセリフを堂々と放つ農林水産大臣。米の担当大臣が、米の心配をまるでしていないどころか、「ウチは余っててね」などと自慢気に語ってのける。これ、なかなかの事件である。 昨日書いたタイミングの話で言うと、最悪のタイミングでの発言だった。 さて、こういう「余計なことを言う」心理には、いくつかの段…

  • タイミング

    ミッション・インポッシブル最新作を観てきた。 今回作で何度も繰り返された「タイミング」という言葉。それは、チームメンバーの盗みの名人も、爆弾解除も、命知らずのスパイも、結局はこの一言にすべてを託す。「今だ!」の一瞬に、すべてを懸けていた。 考えてみれば、私たちの日常も同じかもしれない。満員電車のドアが閉まる直前に飛び乗る瞬間。道路をわたる瞬間、上司の機嫌がいいタイミングで休暇願を出す瞬間、苦手な奴に話す瞬間、告白するなら今、いや、もう少し待つべきか…そんな小さな「瞬間」の連続で、人生は形作られていく。 だが、この「タイミング」は気まぐれだ。待ちすぎればチャンスは消え、焦れば失敗する。実際には、…

  • 寓話:正論だけを食べるリス

    アニマル王国には「ツッコミリス」という生き物がいた。森の平和にも仲間の苦労にも興味はなく、他の動物の話や看板から小さな言い間違いだけを探しては指摘することに情熱を燃やしていた。 その頂点に立つのが、大ツッコミリスのガズーム。どんな立派な計画でも、「ここ、“木の実以外”が“木の実意外”になってるよ!」と小さな尻尾を誇らしげに振っては、正しさの実績を積み重ねていった。 ある日、ライオン国王が「大干ばつ対策・命の森プロジェクト」を発表した。森を救うための大計画だった。しかしガズームは玉座の前に飛び出し、「陛下!この看板、“または”と“もしくは”が混ざっています!」と声高に叫んだ。 ライオン国王は静か…

  • 寓話: 『北風と太陽、転職を考える』

    ある日、北風は古びたマントをたたみながら言った。 「なあ太陽、もう俺たちの出番なんてないんじゃないか?」 「そうだねえ」と太陽はうつむきながら、自分の光がすっかりソーラーパネル頼りになっていることに気づいていた。 二人は転職サイトを開き、まじめに新しい仕事を探し始めた。 北風は「最新冷却システムの開発部門」に応募したが、「あなたの風は強すぎて、製品がすぐ壊れます」と断られた。 太陽は「再生可能エネルギー広報大使」に応募したが、「あなたは照らしっぱなしで、かえって地球温暖化を進めてしまう」と不採用だった。 「なあ、世の中って案外シビアだな」と北風は苦笑い。 「ぼくら、もう求められてないのかもしれ…

  • 寓話: クマと旅人

    2人の旅人が山道を歩いていると、突然、大きなクマに遭遇した。 一人は反射的に木に登り、あっという間に高い枝へ逃げ込む。もう一人は取り残され、地面に倒れて息をひそめるしかなかった。 やがてクマは興味を失い、その場を立ち去った。 木の上からのんびり降りてきた男は、涼しい顔で言った。 「おい、大丈夫だったか?それで、クマは何か言ってたか?」 倒れていた男は苦々しい顔で答えた。 「『本当の友達は危機の時に分かる』って言ってたよ。」 すると木に登った男は、鼻で笑いながら胸を張った。 「は?それって、お前が地面で頑張る係で、俺が生き残る係ってことだろ?立派にチームワーク発揮してんじゃん!」 さらに厚かまし…

  • 寓話: 「ウサギとカメとアリとキリギリス」

    森の評判というものは妙なものだった。 ウサギとキリギリスは能力も才能もあるはずなのに、なぜか「怠け者」として語り継がれている。一方で、アリとカメは地味な働き者なのに、なぜか「美徳の象徴」扱いだ。 「納得いかないよな」とウサギが言った。 「まったくだ。オレなんか、冬に備えてオンラインで音楽教室まで開いてるのに!」とキリギリスはバイオリンを肩に担ぐ。 そこでふたりは決意した。もう過去のイメージに縛られるのはやめよう。新時代にふさわしい「カッコいい自分たち」を見せてやろう、と。 ウサギはマラソン大会に出場し、一切立ち止まらず、最後まで全力疾走。ゴール直前ではスマートに一礼してからフィニッシュし、「謙…

  • 会話が噛み合わない理由

    IQが20違うと会話が成立しないらしい。なるほど、それは便利な言い訳だ。だが実際の職場では、もっとやっかいなズレがそこかしこに転がっている。それが「経験20年差」だ。 特に、技術革新の荒波が押し寄せる分野ではなく、職人芸や現場勘、積み上げた失敗と微調整がモノを言う世界。たとえば老舗の営業現場、職人気質の製造業、あるいは政治的な調整力が求められる渉外担当。こうした場所では、知識ではなく“空気の読み書き”が主戦場になる。 そこで何が起きるか。簡単だ。若手は「それ、意味あります?」と聞く。ベテランは「意味を考えずに手を動かせ」と返す。若手は「効率が悪い」と言い、ベテランは「お前は無駄の意味を知らない…

  • 「最後の1%が、みんなを不幸にする話」

    世の中、「だいたいこのへんで手を打っとくか」という勇気ほど、入手困難なものはない。これは家庭の話でも、技術の世界でも、そっくりそのまま当てはまる。 たとえば、機械づくりの現場でよくある話。あの「最後の1%」を求めたばかりに、プロジェクトはズルズル遅れ、予算は青天井、エンジニアは前髪を捧げていく。で、得られる成果はというと「ふーん、それだけ?」程度。これ、昭和の親父が日曜に車をピカピカに磨いた直後に雨が降るのと同じ種類の徒労感だ。 具体的な話をしよう。 まずはNOx(窒素酸化物)排出の話。90年代、エンジニアたちはガスタービンのNOx排出を1桁ppmまで減らそうと無茶な努力を重ねた。でも、今にな…

  • 短篇SF 「考える時間」

    この国の教育は、生成AIの進歩によって劇的に変わった。授業ではAIが即座に途中式やヒントを示すが、結論は必ず24時間後にしか開示されない。「自考促進法」による規制だ。 だが生徒たちは、その時間を無駄に過ごし、翌日には問題自体への興味も失っていた。 「ふーん、そうだったんだ。」 問題は次々に出され、答えはただ待つものになっていた。 少年Tはふと考えた。 (本当に、待つだけでいいのか?) 彼は自分で考え抜き、翌日の発表前に正解にたどり着いた。それが嬉しくて、以後も必ず自分の答えを出すようになった。次第に彼の答えはAIの模範解答を超え、独創的なものとなっていった。 「答えは待つものじゃない。生み出す…

  • 短篇SF:「2oo4の賭け」

    西暦2090年、人類はかつての反省を踏まえ、新たな意思決定システム「2oo4裁定」を導入した。かつて主流だった2oo3システムは三つのAIモジュールによる多数決で合理的な判断を下していたが、モジュールの一つが故障すれば、決定不能に陥るという致命的な弱点を抱えていた。 そこで、モジュールを四つに増やすことで冗長性を持たせた。しかし今度は別の問題が発生した。四つでは2対2の引き分けが頻繁に起こる。どちらにも決められず、物事は停滞し始めた。 この問題に対して、一人の気まぐれな工学者がこう提案した。 「人生には偶然も必要だ。行き当たりばったりこそが、最高のスパイスだよ。」 こうして、2対2の引き分け時…

  • 短篇SF:「2oo3裁定」

    西暦2085年、人類はついに「完全な意思決定アルゴリズム」を手に入れた。それが“2oo3裁定システム”だった。2oo3とは2 out of 3の略。 あらゆる問題は三つの独立したAIモジュールにより審議され、多数決で決まる。二対一で決まれば即実行。それが最も合理的かつ迅速だと証明されていた。政治、経済、教育、そして個人の人生まで──あらゆる選択がこの方式で管理されるようになっていた。 このシステムはやがて、個人の思考プロセスにも適用されるようになる。「内蔵意思補助装置(MDC)」が脳に埋め込まれ、合理性モジュール、感情モジュール、そして衝動モジュールの三体が、本人に代わって最適な決断を下すのだ…

  • 寄せ集め

    会社というのはつくづく奇妙な集団である。とりわけ、寄せ集めや中小企業と呼ばれるところは、その奇妙さが際立っている。何しろ、集まってくる面々がバラバラだ。学歴も職歴もバラバラ、何なら人種や国籍まで多様だったりする。これは、要するに「中途採用の寄せ集め」という現象が生む自然の成り行きだ。 一方で、大企業というのはその点で実に均質だ。いや、もちろん最近ではダイバーシティとか何とか言って、いろんなバックグラウンドの人材を積極的に入れようとしているが、やはり主力は新卒採用組である。要するに、同じ釜の飯を食い、同じ研修で眠気をこらえ、同じ上司の無駄話にうなずいてきた戦友たちである。入社10年もすれば、互い…

  • 寓話:アニマル村の転職動物たち

    アニマル村には、いろんな動物たちが働く会社がある。特に「ナマケモノ製作所」は、どこからともなく集まった動物たちの寄せ集めだ。 新しく入ってくる動物たちは、最初はみんな猫をかぶっておとなしい。でも、時間がたつと本性が出てくる。会議で急に声を張り上げるマントヒヒや、横文字ばかり使うインコが出てくる。「あぁ、やっぱり猫じゃなかったんだ」とみんな思うわけだ。 でも考えてみれば、自分だって誰かからはマントヒヒに見えているかもしれない。だから、この村で大事なのは「礼儀を忘れないこと」。相手が牙をむいても、自分は落ち着いて猫のふりを続ける。イライラしても、「あ、牙が出ちゃいましたね」と笑って流すのが一番だ。…

  • 「One on One」

    最近はどこの会社でも「One on Oneミーティング」なんて横文字が飛び交っています。でもこれ、実は従来の面談とは全然違うらしいのです。 従来の面談は「上司が診察医、部下は患者」。ひたすら上司から問診され、「で、最近どうなの?」と詰問されるだけ。でもOne on Oneは違います。これはお互いに健康診断する“相互問診”の場なんです。つまり、こちらも上司を面接していいというわけ。 【受ける側が最低限話すべきこと】 1. 最近の仕事と感想 単なる報告じゃなく、「やりがいはありますが、もう少し時間が欲しいですね」など感情を一言プラス。 2. 困りごと 「こんなことで悩んでまして…」と言うと、日本の…

  • 「話しかけにくい人、という職場の災厄」

    話しかけにくい人というのは、得てして「威厳がある」とか「自分に厳しい」などと、好意的な解釈をされがちだ。だが、ハッキリ言っておこう。それ、迷惑である。 まず、話しかけにくい人の周りには情報が集まらない。上司であれ、同僚であれ、「あの人、今話しかけたら殺されるかも」みたいな緊張感を常にまとっているようなタイプは、重大なトラブルが起きても「まあ、もう少し様子を見てから話そう」と周りにに思わせる。これ、放っておくと火災報知器が鳴っても「いや、たぶん誤作動」と言われて全員が焼け死ぬタイプの職場になる。 さらに、こういう話しかけにくい人というのは、えてして「なんで自分に何も言ってくれなかったんだ」と後か…

  • インドとパキスタン

    インドとパキスタンの関係を見ていると、つくづく「隣人というのは厄介な存在だな」と思わされる。 もともとひとつの国だった両者が、宗教の違いを理由に分離し、その結果、カシミールをめぐって今なお銃火を交える関係が続いている。民族も文化も似通っているのに、そこに「違い」を見出しては対立し、何度も戦争を繰り返してきた。 この構図、どこかで見たことがないだろうか。そう、日本と韓国、そして中国の関係にも、驚くほどよく似ているのだ。 日本と韓国。文化的には本当に近い。料理、音楽、ファッション、―若い世代ほど似ている。でも、ひとたび歴史問題や領土問題の話題が出ると、空気は一変する。慰安婦、徴用工、竹島。たった一…

  • 「知らぬことには口をつぐめ」

    世の中で「常識」とされていることが、個人にとって「未知」であることは珍しくない。たとえば、スマホの中身がどう動いているかを知らずとも我々は日々使いこなしているし、宇宙の仕組みや金融工学だって、世間には詳しい人がいる一方で、私のように全くわからない人間もいる。 だからといって、その未知を補おうとする場で、「いや、それはね」と素人が得意げに語り始めると、場の空気が一気に重くなる。聞いている側は疲れるし、説明する側は徒労に終わることが多い。それよりも、自分の得意な分野を深掘りしてくれた方が、よほど周囲にも貢献になるし、本人も輝ける。 特にリーダーの立場にある人は注意が必要だ。未知の分野において判断を…

  • ターンダウン

    「ターンダウン」という言葉は一般的だろうか。 音を下げる。主張を抑える。存在感を消す。要するに、あらゆるものを「控えめ」にする美徳である。発言だとトーンダウンと言われているかも知れない。空気を読むのと同じ系統の、やりすぎると呼吸困難になる類の行動様式だ。 もちろん、抑えることが悪いとは言わない。音楽の音量、エアコンの設定、会議中の発言時間――これらはツマミをひねるように調整ができる。そして、やり過ぎないというのは、それだけで一つの才能だ。 ただし、感情や情熱や不安といった、身体の奥から湧いてくるやつらについてはどうだろう。怒りをターンダウンできるなら夫婦喧嘩は半減するし、心配をターンダウンでき…

  • 「疑似的な認知症」

    認知症の母と会話していると、記憶力の低下については本人もある程度自覚している様子がある。だが、「人の話を聞いて理解する力」や、「自分の考えがおかしい可能性」に対しては、ほとんど自省がない。加齢による認知症で仕方がないとは思うが、問題はそれだけでは済まない。気に入らないことがあると暴言を吐き、特に世話になっている人に対して感情をぶつける。 もともと感情的で扱いにくい性格だった。認知症によって理性のフィルターが薄れ、元からあった「悪い部分だけが色濃く残っている」ようにも見える。 ここで感じるのは、「認知症だから仕方がない」という一言で全てが納得できるわけではないということだ。 母は、以前より「バカ…

  • 「楽しみが増えると心配も増える」

    トマトとナスを植えた。 土を掘り返し、指の間に湿った土を感じながら苗を植える作業というのは、思いのほかセンチメンタルなもので、たとえるなら、はじめてランドセルを背負った子供を校門の向こうに送り出す親の気持ちに少し似ている。 言い過ぎかもしれないけれど、そんな気がしたのだ。 で、昨日は大雨。 トマトとナスは、まだかよわい。風に煽られて、ひょろひょろと身体をしならせながら、「もうダメです」と言っているように見えた。 仕方ないので、傘をさして外に出て、支柱を足して、ひもを巻き直して、ちょっとした応急処置をしてやった。 それで、ようやく一息ついた。 こういう時に思うんですな。 猫もそう。クルマもそう。…

  • 「最後に被せる」

    口げんかに限らず、議論というのは、発言の順番が意外にものを言う。プロ野球のホームゲームと同じで、「後攻」が強い。いや、むしろ「最後のひとこと」によって、勝敗が決まってしまうことすらある。 たとえば、職場の会議で「経費削減のためにプリンターを共用にしましょう」と誰かが言い出す。こちらは「業務効率が落ちる」と懸命に反論し、論理も実例もきちんと挙げて説明したのに、最後の最後で部長が「ま、今は経費が最優先だから」で締めくくってしまう。はい、終了。プリンターは撤去され、印刷のために廊下を往復する日々が始まる。 このとき、会議の参加者たちの多くは、自分の考えではなく「最後に聞いた意見」を無意識に採用してし…

  • 人格と人望は両立するか

    人格者というのは、たいてい「いい人」だ。ただし、“いい人”すぎて、気楽につきあえる感じではない。正義感が強く、嘘がつけず、たとえばゴミの分別にも本気で取り組んでいる。尊敬はする。でも、飲みに誘うかというと、ちょっと躊躇する。こちらの愚痴を正論で打ち返されそうだからだ。 逆に、人望のある人は、いわゆる「人気者」。場を和ませ、話を合わせるのがうまく、敵を作らない。だけど、そのぶん、自分を多少は曲げている。場の空気に応じて意見を変えたり、誰にでも調子を合わせたり。裏を返せば、ブレやすいとも言える。 で、人格と人望は両立するのか? 理屈の上では、もちろん可能だ。実際、歴史上の偉人の中には、その両方を備…

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