ウパニシャッドやバガヴァッド・ギーターからのサンスクリット語を、ヴェーダーンタの教えに沿って紹介。
ウパニシャッドやバガヴァッド・ギーターなどの文献を引用し、サンスクリット語の単語の意味を、語源や派生から深く、詳しく、ヴェーダーンタの教えに沿って説明します。
91.ラーマーヤナ(रामायणम् [rāmāyaṇam])- ラーマの人生を題材にした文献
伸ばす母音に注意しましょう。 ラーマという名の王子の人生を描いた物語(アヤナ) ですから、 ラーマ + アヤナ = ラーマーヤナ となります。 母音の長短に気をつけましょう 長短を無視して、日本では「ラマヤナ」とか、 ラテン系だと「ラマヤ~ナ」など、いろいろ間違われているようですが、 正確には「ラーマーヤナ(रामायणम् [rāmāyaṇam])」です。 最初の2つの音節が長く、続く2つの音節は短く発音します。 ちなみに、最後の「ナ」 は舌を内側に反らして発音します。 詳しくは、下の「文法的な説明」 を参照してください。 サンスクリット語には、母音の長短の違いで 意味が全く変わってしまう単語が多々あります。 そしてなにより、口伝により継承されて来たサンスクリット語においては、 発音の正確さはとても重要ですから、 ひとつひとつの音を、マインドフルに発音しましょうね。 日本でよく見かけられる、母音の長短の間違いが起きている言葉は、 ヴェーダーンタ、サードゥ、プージャー、プラーナーヤーマ、等々でしょうか。 特に、短い i と u で終わる単語の最後が伸ばされているのと、 長い ā で終わる単語の最後が伸ばされていないのが気になります。 あと、日本語の小さい「ッ」のように、詰まるべき音が、 日本人の場合、詰まっていない、というのも気になります。 サティヤ、ニドラー、等々、このタイプはたくさん見かけます。 文字だけ追いかけて、きちんと耳から学んでいないから、なのでしょうね。 伝統的な学びをおろそかにしているから、劣化していくのです。 ちなみに、1拍の長さの母音は、ह्रस्व [hrasva]と呼ばれ、 2拍の長さの母音は、दीर्घ [dīrgha]と呼ばれます。 発音する時は、長さの区別をしっかり意識して、 正しい発音を身につける努力をしてください。 ラーマーヤナという言葉の意味と語源 「ラーマ」とは、今でも存在するインド北部の都市アヨーディヤーの、 ダシャラタ王の息子である、王子の名前です。 「ラーマ(रामः [rāmaḥ])」の語源に関しては、 それだけでひとつの記事になるので、後日書きますね。 ヴィシュヌ神が、人間にダルマとは何かを体現して見せるために、 「ラーマ」という人間の姿をしてこの世に表れ
90.マハーラタ(महारथः [mahārathaḥ])一万人の弓兵と同時に戦える戦士
バガヴァッド・ギーターの第一章で出てくる言葉です。 ドゥリヨーダナ(दुर्योधनः [duryodhanaḥ])が、 敵対するパーンダヴァ軍を見渡しながら、 ドローナ・アーチャーリヤ(द्रोणाचार्यः [droṇācāryaḥ])に、 「(この戦場に集結した各国の王や王子達)彼らは皆、マハーラタです」 と紹介しています。(सर्व एव महारथाः ॥1.6॥) マハーラタとは、戦士の強さを表す言葉です。 さらに、アティラタ、ラタ、アルダラタという言葉もあります。 1.マハーラタ 一万人の弓兵と同時に戦い、武器や戦法に詳しい戦士 2.アティラタ 千~一万人 3.ラタ 千人 4.アルダラタ 千人以下 定義は以下のシュローカから。 एको दशसहस्राणि योधयेद्यस्तु धन्विनाम् । शस्त्रशास्त्रप्रवीणश्च महारथ इति स्मृतः ॥ eko daśasahasrāṇi yodhayedyastu dhanvinām śastraśāstrapravīṇaśca mahāratha iti smṛtaḥ अमितान् योधयेद्यस्तु सम्प्रोक्तोऽतिरथस्तु सः । रथस्त्वेकेन यो योद्धा तन्न्यूनोऽर्धरथः स्मृतः ॥ amitān yodhayedyastu samprokto:'tirathastu saḥ rathastvekena yo yoddhā tannyūno'rdharathaḥ smṛtaḥ [पदच्छेदः] एकः 1/1 दश-सहस्राणि 2/3 योधयेत् III/1 यः 1/1 तु 0 धन्विनाम् 6/3 । शस्त्र-शास्त्र-प्रवीणः 1/1 च 0 महारथः 1/1 इति 0 स्मृतः 1/1॥ अमितान् 2/3 योधयेत् III/1 यः 1/1 तु 0 सम्प्रोक्तः 1/1 अतिरथः 1/1 तु 0 सः 1/1। रथः 1/1 तु 0 एकेन 3/1 यः 1/1 योद्धा 1/1 तत्-न्यूनः 1/1 अर्धरथः 1/1 स्मृतः 1/1॥
89.ユユッツ(युयुत्सुः [yuyutsuḥ])- 戦おうとしている人
バガヴァッド・ギーターの冒頭のシュローカにある言葉です。 धर्मक्षेत्रे कुरुक्षेत्रे समवेता युयुत्सवः । मामकाः पाण्डवाश्चैव किमकुर्वत सञ्जय ॥ 1.1॥ dharmakṣetre kurukṣetre samavetā yuyutsavaḥ māmakāḥ pāṇḍavāścaiva kimakurvata sañjaya 1.1 この「ユユ」 という重なった音は、 「~したいと願望する」という意味の表れです。 ムムクシュ(मुमुक्षु [mumukṣu]、自由になりたい人)も、 同じような構造です。 この言葉は、 戦う + ~したいと願望する + ~する人 युध् [yudh] + स [sa] + उ [u] という、みっつの要素から出来ています。 ひとつひとつ、説明していきますね。 ブラジルなど南米で良く知られている「柔術(jiujitsuと発音される)」 は、サンスクリット語の「ユユッツ(yuyutsuḥ)」から来た! と言う人もいますが、それは違うような気がするなぁ。 ちなみに、上のギーターのシュローカでは複数形で使われています。 u で終わる男性形のプラーティパディカ(名詞の原形)なので、 第1格複数(1/3)だと、u の部分が avaḥ になりますね。 言葉の成り立ち 上にも述べたとおり、ユユッツ(युयुत्सुः [yuyutsuḥ])という言葉は、 युध् [yudh] という、「戦う」という意味の動詞の原形に、 सन् [san] という、「~したいと願望する」という意味の接尾語を付加し、 さらに、उ [u] という、「~する人」という意味の接尾語を付加して出来た言葉です。 サナンタ・ダートゥ सन् [san] という接尾語は、動詞の原形の後ろに付加して、 「~したいと願望する」という意味の新しい動詞の原形を造るために使われます。 この接尾語で終わっている動詞の原形を、サナンタと呼びます。 san + anta(終わり)、ということですね。 (8.3.32にてnがもういっこ増えてसन्नन्त となります。) सन् [san] の最後のnは、音の抑揚の
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