愛の横顔 ~地獄変~ (壱)法事:後
「本日は、わたくしめの愛娘、妙子の法事でございます」キョロキョロと辺りを見回し、坂田かね三十三回忌法要の文字を見つけられると、満足そうに頷かれるのです。「三回忌、三回忌ですぞ。かくもにぎにぎしくお集まりいただいて、わたくし感極まる思いでございます」そこまでおっしゃられると、目頭をおさえられ声をひそめられました。「ご老人!たえこさんとか、言われましたか?ここは、坂田かねの法要の場ですが。なにか思い違いをなされているのではありませんかな?」大叔父の善三さんが、声を上げられました。みな一斉に、善三さんに視線を注ぎます。そして、大きく頷かれます。これでご老人が勘違いに気付かれることだろうと思いましたのですが、「だまらっしゃい!」と、一喝でございます。「わしの話を聞けぬと言う不らちな輩は、即刻この場を立ち去りませい...愛の横顔~地獄変~(壱)法事:後
2024/02/28 08:00