奇妙な夢(「こころは存在するか」、番外1)
中井久夫に呼ばれて、小さな飲み屋に行った。ちょっと頭を下げて挨拶をし、顔を上げると中井久夫が古井由吉に変わっていた。そこへ大岡昇平が入ってきた。L字形のカウンターに座って、私はふたりが並んで話しているのを斜めから見る形で見ていた。大岡昇平が鞄のなかから一冊の本を取り出した。ずいぶん昔に書いたものだが、どこかに紛れてわからなくなっていた。全集にも収録していなという。「読んでみるか?」と、突然、大岡昇平が私に言った。「はい、感想を書かせていただきたい」。私はなれない敬語をつかって、そう答えた。その瞬間、それまで見ていた夢を奥底から破るようにして、大岡昇平があらわれて「おい、書くといっていたあの感想はどうした」と怒鳴った。そこで、目が覚めた。中井久夫が夢に登場するところまでは理解できる。実際に会ったことがあるし...奇妙な夢(「こころは存在するか」、番外1)
2024/10/31 11:23