【SS】:三月の雪の夜
こんなことでもなければ、20代でふるさとの地をもう一度踏むことはなかっただろう。 視線をめぐらせ見あげる空から、気まぐれに三月の雪が降ってくる。そういえば、この地では死んでいく冬が最期の力を振り絞るように、こんな雪が降ることがあるのだった。襟足から容赦なく冷気が忍び込んでくる。薄手のコート一枚でやってきたことを後悔した。音もなく降る雪に、無沙汰を咎められている気がして、柚希(ゆずき)はちいさく肩を...
2024/01/28 21:33
2024年1月 (1件〜100件)
「ブログリーダー」を活用して、風埜なぎささんをフォローしませんか?