四月尽
四月逝く百花騒然たるなかに相馬遷子春らしい気候が続くことなく逝こうとしている。草花の生命は力づよく季節をたくましく乗り切っていく。それに比べると人間の生命力はか細いものだ。春の花に力をもらって夏を迎えるほかはない。一夜明けて新しい月、朝、イワシの煮つけにベランダのサンショウの葉を手で叩いて乗せる。五月の香りが食卓から漂ってきた。四月の終りに観たアマプラの映画は「情熱大陸土井善晴」だ。一昨年テレビで放映された情熱大陸に手を加えて映画化したのもだ。すでに『一汁一菜でよいという提案』という本を書いた土井だ。映画の冒頭のシーンで椀に具材をカットして入れるところがいい。彩りを考えた具材が無造作にカットされて椀いっぱいになる。加えるのは椀に入るだけの水。鍋でグツグツと煮立てて、カボチャに箸が入るようになってから、ほど...四月尽
2025/04/30 09:29