私は部屋に戻った。すると浜子がまたaikoを歌っていた。曲はスターだった。浜子は歌が上手く、みんなそれに聴き入っていた。私も悔しいけど聴き入った。浜子は嫌味なくビブラートを駆使した。私はビブラートの振動を体で感じるたびに、その波形を想像し、その波形から眉間の
あれは確か2年前、ある街へ引っ越しをする日の話である。その日は春にしては肌寒く、空にはどんよりとした厚い雲が覆い、シトシトと雨が降るという寒い日であった。俺は引っ越し代を浮かせようと、知り合いにキャラバンを借りていた。キャラバンはそこまで大きくなかったが、
この言葉を聞いて俺は、大島が俺と大塚を間違えたのかと思った。岡田と大島で同じイニシャルOであるからだ。しかし加藤に「本当に岡田くんにそう言われたの?」と聞かれた大島は「うん。うん」と何度も頷いた。被害者である俺に謝りもせず、しかもそれに対して何も非難しなか
ストーリの正当性?何のこっちゃ?その他、合わせて7つの箇条書きが羅列されているが、はっきり言って意味がわからない。シンサクラクゴの7箇条なんだからシンサクラクゴを構成する条件なのだろう。しかしハナシカは俺に「体現せよ」と言った。そのこととこの文言になんの関
「あなた、明日の週刊誌に載るわよ」マネージャーからの電話を受けて原田はビックリした。寝耳に水であった。え?この俺が?なんかしたっけ?身に覚えがなかった。しかし人間誰しも品行方正ではないように、原田もまた過去の自分の行動に自信がなかったから、あれかな?これ
そういうことで俺は異世界に転生させられたのであった。そうと決まれば早速・・・と思ったが結局何をすればいいのか分からない。シンサクラクゴを作ればいいのか。そしてそれがハナシカに認められれば弟子入りが認められるのであろうか。話の流れからして多分そうだろうけど
目が覚めると俺は町の酒場の2階にいた。どうやら昨日は飲みすぎで酔い潰れて、酒場のマスターにここまで運んでもらったらしい。まあいつものことだ。全くいつになったら懲りるんだか。学習しない自分に嫌気がさしつつも昨日のことを思い出そうとする。ええとどこまで覚えてる
俺は今大型バスに乗っている。新千歳空港から落語会の会場へと向かう貸切バスだ。乗車人数は出演者とスタッフ合わせて14人。30人乗りの大型バスだから車内の席はスカスカだ。各々が重ならないようジグザグに座っている。もしもドミノなら誰かが倒れても他の誰も倒れないよう
大塚が大島の方を向いたとき、大塚の手はそのままパックを握っていた。牛乳が噴射されるのを阻止しようと、大島はパックを横取りしようとした。大塚は反射的にパックを取られまいとしたが、大島が巨漢であったためその力に抗うことができなかった。パックが大塚から大島の手
「今年もまだ貰っておりません」。ぼそっと鏡の前でつぶやく。自虐的にじゃない。(笑)はついていない。卑屈にもなってない。大丈夫。できてる。成長を感じる。改めて鏡の中の自分と対峙し背筋を伸ばす。目を開いて見つめる。息を口から思い切り吸う。そしてはっきりと「今
岡田の大声に社内中がしんと静まり返った。そんなことは意にも介さず岡田は続けた。「おい!人が怒られてんのをSNSに投稿するって人間のやることか!お前は“はしだ“じゃない、社会の“はじだ“!」そう言われた橋田は豆鉄砲を食らったような顔をしている。お礼が成功したあ
①口喧嘩とはカップルや夫婦間においていざこざは必ず発生する。それはコンピューターにみられるバグのようなものであり発生すれば修復されなければならないものである。バグが修復ができなかった場合、それを抱えたまま作動し続ける場合もあるが大抵の場合は新しいバグが起
嘘だろ!俺が誰かに言って欲しいメッセージそのままを送ってくれた奴がいた!その名は岡田!岡田はとても優しいやつだ。何があっても嫌な顔ひとつしない。決して怒らない。同期からの信頼も厚い。しかしみんなの意見に反して何か意見するやつではない。いつもニコニコしてい
ある朝、俺はいつものように起きるとテーブルに座って朝食を食べていた。妻が用意してくれた焼いたトーストとサラダ。いつもは味噌汁とご飯だけど今日は洋風だ。なんでだろう。スーパーで安売りしてたのかな?本当は味噌汁がよかったけど、今日の朝はいつもより頭が働かない
ある朝俺はYOUTUBEに上がっている違法落語動画を探しては規約違反として運営に報告しまくっていた。「全く、ただでさえ会にお客さんが来ないのにこんな動画あげやがって」。俺の趣味は落語だ。しかしそんじょそこらの落語ファンではない。YOUTUBEの違反動画の落語をちょろっ
こんなこと言われたら試したくなっちゃいそうな“新興“宗教のススメ
『皆さん!私はAIが台頭している昨今にあえて言いたい!「神を信仰しませんか」と!人間が大切にしなければならないのは心であり、宗教は必ず心を豊かにする。目に見えないものを信じられるのは地球上の生物の中で人間だからだ。目に見えないものを信じることが人間を人間た
ある朝俺は耳に違和感を感じた。外で鳥が鳴いている。その声があんまり聞こえない。左は聞こえる。右が聞こえない。右に何か詰まってる感じがする。人差し指でほじってみる。すると何か有る。なんだこれ?耳くそじゃない。何かゴム的なもの。輪ゴム?輪ゴムを丸めたもの的な
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私は部屋に戻った。すると浜子がまたaikoを歌っていた。曲はスターだった。浜子は歌が上手く、みんなそれに聴き入っていた。私も悔しいけど聴き入った。浜子は嫌味なくビブラートを駆使した。私はビブラートの振動を体で感じるたびに、その波形を想像し、その波形から眉間の
「いつもしかめっ面してるのよくないよ」って浜子に言われた。今言われた。一瞬何言われたか分からなくて目が点になったんだけど、恐る恐る己の眉間に人差し指を当ててみたら、確かにあたしの眉と眉の間はぐちゃぐちゃってなってた。それはまごう事なきしわだった。しかも結
隣に座ってる男がよく分からんカクテルを持って「これ飲んでみる?」と言った。俺は(ほらきましたよ)と思った。どうしてこういうウェイウェイ系の男って(女もそうだけど)自分が美味しいと思うものを人に味わわせたがったり(あれ?味わわせたがるであってるっけ?味あわ
テレビを見ていた妻が、私の方に振り返って言った。「ところでどうして下の毛整えてるの?」私は妻の前で裸だった。下半身を露わにしていたわけではなかったが股間はタオル一枚で隠れていた。脱衣所が寒いので、風呂上がりにこうやって居間で全裸でいるのはいつものことだっ
私の名前はいちごパンツ朱美。もちろん本名じゃない。芸名。芸名と言っても、私はお笑い芸人じゃない。画家。ライブドローイングをしたり、たまにSNSに絵を上げたりする。まあそれも芸といえば芸だけど、芸能ではなく芸術の方。芸術やってるっていうのは譲れない。どんなに揶
「高橋、部活辞めるってよ」副会長の阿部がそういうと、ざわついていた部員らが静まり返った。突然のことに皆耳を疑った。「ちょっと待ってくれよ。高橋ってあの高橋?」驚いた横田がそう聞くと阿部はこっくり頷いた。「そうだよ。部長の高橋だ。昨日、本人から聞いたから間
彼には変な癖があった。それは女性を頭の中で裸にしてしまうというものであった。彼がすこぶる性欲が強いという訳ではない。彼は哲学的であり思想的であった。あらゆる事柄について物事の本質を知りたいと思っていた。それは女性に対しても同じであった。より良く理解するた
クリスマスからわずか10日しか経っていないという驚愕の事実を世間の誰もが忘れるどころか考えもしない今、奇跡の9連休が終わる。たった9連休に「奇跡の」とつけてしまうところが日本人の勤勉さを物語っていて、それほどまでに日本人の休むことへの罪悪感は根深いが、とに
「写真撮りましょうよ」の一言にプロレスラーたまべはギョッとした。目の前には、今回の興行の主催元である羽村興業社長の羽村氏と、その妻である美穂子がニコニコして立っていた。僕が撮りますよと、練習生の一人が気を利かせて美穂子のスマホを受け取った。じゃあ明るいと
味平は苦い顔をしていた。人間が梅干しを思い浮かべると涎を垂らしてしまうように、味平は人生で一度も飲んだことのないコーヒーを目の前にしてうげえの顔を隠せなかった。しかしその顔は、日曜の人気店だとしても長すぎる待ち時間に対しての苛立ちということにしていた。目
事実上のオリンピック選考会を兼ねたフルマラソン大会の35km地点、残りの距離7キロ強という地点で、地元出身の優勝候補である柴田はしゃがんでいた。しゃがみながら、ふーっふーなんて息をして顔を歪めていた。オリンピック男子マラソンで久しぶりにメダルを取れそうとまで言
なにしろ俺の左肩の力は強大すぎる。どれくらい?と問われればパッとは思い浮かばないので、番組アンケートよろしく「特になし」と返答するしかないのだが、例えばメジャーでも大活躍間違いなしの力だといえば分かりやすいだろう。もしも俺がドジャース所属選手だ仮定すれば
今回お呼ばれしたのは、赤坂の老舗料亭での和食フルコースでした。月に一度、異業種の方々と美味しい料理を囲んでお話をするというのは本当に楽しい時間です。こういった場ではマナーが大事。当たり前ですが、皆が気持ちよくお食事をしてお話をする場所ですからね。ただ私“
「ほらお新よ。あそこにあるのが月じゃて」お新は草原でじじと空を見上げた。空にはまんまるの大きな黄色に光る玉が浮かんでいた。お新は、丸いだけで玉に見えるのは不思議だな、と思った。涼やかな風が吹き、すすきが揺れて頬をくすぐった。「月のおかげで我らはここにおる
ある朝目が覚めると、自分の体に違和感を感じた。重さがあり、普段より重く動かしにくいのであった。ふと顔に触れると、これまた奇妙なことに骨張っており、鼻は幾分高く感じられた。私は頭を少し上げた。すると、目に入ったのは中年男性のような体躯であった。体は一回り大
新宿駅の待ち合わせ場所に着くと、仕事の同僚である彼女はほっかほかの肉まんを両手に持っていた。形としてはちょうどウェイトレスがおぼんを持つ形であった。彼女の持つ肉まんからは湯気が出ており、そのものが持つ熱を彷彿とさせた。道ゆく人々がその異様な光景をチラ見し
新幹線なうです。今ね、ネタを書こうと思ったんだけどね、パソコンを広げて書きかけのネタブログ見たら全部消えててやんの。だからこんな文章書いてんだけどね。もうこのイライラをぶつけるんだったらパソコンにしかないよね。だから言ってやる。ダッサて。だってデータを有
池中「いやあ増岡さんて若いよねえ」増岡「え?私ですか?そうですかね?」池中「今いくつ?」増岡「53です」池中「全然見えないよね」増岡「何歳に見えます?」池中「うーん、30代半ばくらい」増岡「え?本当ですか?私そんな若く見えます?」池中「見える見える。言われる
僕は今おしっこをちびりそうになっている。不良に絡まれているからじゃない。そんなことが理由じゃない。今僕は吉野家から出てきたばっかりで、その時水をジャブジャブ飲んじゃったからだ。だけど偶然、不良に絡まれてもいる。僕が道を歩いていると、不良は「何見てんだよ」
家の鍵がぶっ壊れたせいで、橋下工務店の佐藤さんを家で待っていた俺は「佐藤さんが今日来なければいいのに」とずっと思っていた。だって今日佐藤さんが来ないことが確定すれば今すぐ俺は出かけられるし、近所の花屋のよしこちゃん通称スーちゃんの顔を見にターリズに行って
ゴミ捨てをして家に戻ってきたら、居間に知らないおっさんがいた。ゴミを捨てて戻ってきたのはたった2分の間だったのに、家の中に知らないおっさんがいたんだ。一瞬夢かと思って目を擦ったがやっぱりおっさんはそこにいた。僕はびっくりしすぎて目が点だったが、おっさんも僕
なんでだ。やめてくれ。そんなの酷すぎる。耐えられない。なぜこんな仕打ちを。何か俺が悪いことをしたのか?前世の因縁か?どうすればいいんだ。分からない。誰か教えてくれ。もう嫌だ。おじさんの乳首が浮いてる。笑っちゃう。おじさんが真面目な話をしているのに。職場の
ホテル内に併設された教会での結婚式にて、誓いの口づけの前に神父が言った。「あなたはやめるときも健やかなるときも妻を愛し続けることを誓いますか?」「誓います」「本当に誓いますか?」その言葉に出席者らはざわついた。だって新郎が誓いますって言ったらだいたい次の
パーティーテーブルの上に一輪挿しが置いてあったんだけどね、お花が飾ってあったんだけどね、そのお水を飲んじゃった人がいたのよ。多分緊張しちゃって思わずだったんだと思うんだけどね、でもその様子を見ていた出席者たちが一斉に俺のことを見たわけよ。これはつまりどう
おしっこがしたい。だけど我慢している。だって目の前に須川さんがいるから。この尊い時間を1秒でも無駄にしたくないから。それに立ち上がったら帰るきっかけを与えてしまうかも知れない。だから爆発しそうな股間に痛みを抱えて、前屈みで座っている。須川さんはというと、と
ああこんな会社もうやめてやる。やめてやるやめてやるやめてやるったらやめてやる!だって今後のあたしにとって良いとこ無しなんだもの。考えれば考えるほどデメリットしかない。まず会社が一部上場してない。私はもはや一部上場してない会社はクソだと思ってる。世の中に名
「いや、これは流石に無理ですよ」通信販売会社グッドネット、営業担当のエース柏原は直属の上司、部長の北村にそう言って顔をしかめた。部長の方も困り顔で柏原に手を合わせた。「いやそこをなんとか頼むよ」「そう言われたって、このスペックでこの値段じゃ誰も買いません
俺はとにかく近所の喫茶店で朝11時までやってるモーニングを食べたいから、朝は軽めで済ます。だってモーニングはコーヒー頼めばタダでついてくるし、しかも俺はコーヒーチケットを以前安く買えるキャンペーンがあったときに30万円分買っているから、気持ち的にはタダでモー
今日は彼女とドライブデートだから朝起きて鼻毛も切ったりするぐらいばっちり支度をしていざ彼女を迎えに行こうと家の外に出たら車庫に車がなかった。そのとき一瞬頭が真っ白になってえやべえ盗まれた?と思ったけどよくよく考えてみたら昨日車で都内に行って仕事先のビルに
日本映画大賞の授賞式で壇上に上がった俺は、日本映画協会の会長からトロフィーを受け取ると、ステージ真ん中のマイクの前に立った。ライトが照らされて眩しかった。この眩しさは俺が今世間から浴びている注目、そしてこれからも浴び続けるであろう注目を予感させた。この光
喫茶店に来た。普段はコーヒー一択だが、今日はなんか食べようと思った。なぜならお腹が減っていたからだ。「いらっしゃいませ。ご注文どうぞ」「ええと、サンドイッチかなんかあります?」「サンドイッチですと、キャロットラペかミラノサンドとなっております」ええとキャ
箱根駅伝で、我がわし田大学は先頭を走っていた。なんとまだ3区にも関わらず、2位集団に5分の大差をつける圧倒的な走りだ。ここまでは予想通り、いやそれ以上の走りを選手たちがしてくれている。他大学は助っ人外国人を出しているのに、我らわし田大学は日本人だけしか出
Vaundyの踊り子が超好きだ。出会いはカーラジオから流れてきた今週のポップチューンである。私はこの曲が流れてきたとき、思わず車を路肩に停めた。聞き逃してしまえばいつまた出会えるかわからない。だから集中して歌詞を覚え、スマホでそれを検索し、その曲がVaundyという
朝、会社で朝礼を待っていると、社長が入ってきた。社員らはすぐに椅子から立ち上がり、直立して社長のデスクの方を向いた。この会社は今どき上下関係や規律が結構厳しめのところなので、そういうのが当たり前だった。「気をつけ、礼」と、日直の須田が号令をかけると、みん
電車の車内で立っていると、目の前で男が足を組んで座っていた。帰宅ラッシュで混み合っていたが、男はふんぞり返って足を組んでいた。外は暗かったので、窓ガラス越しに男がパズルゲームをしているのが見える。赤とか青とか黄色とかの玉を並べて消すことに夢中になっている
小学校の国語の授業で先生が「転失気というものを知っていますか」と質問したとき、生徒たちは一斉にスマホを開いた。学校でスマホが禁止だったのは一昔前の話で、今や当たり前のように学校全員がスマホを持っていた。転失気とは何かっていう答えの調べ方はふた通りあり、ブ
私は考えた。このストレス社会、どうやったらストレスなく生きられるのかを。そして今、一つの答えに辿り着いた。その答えをここに記したいと思う。それは『毎日完璧にスケジュール通りに動き続ける』ということである。朝起きる時間、ご飯を食べる時間、家を出る時間、仕事
「おめえ、はなくそくっついとるぞ」相川桜は目の前の客にそう言われ、ん?という顔をした。知らない顔だった。おそらく初めてきたのだろう。年齢でいえば80代。自分の祖父より年上だ。孫に連れられてという感じでもなく、一人できたようだった。アイドルの握手会では珍しい
ある日あるところで誠実な男が死んだ。死んだものが皆そうされるように、男は生前の行いを神によって審判されることになった。男が裁きが執り行われる部屋に通されると、奥の祭壇に神が鎮座していた。男は固唾を飲んで神を見た。しかし神は黙って何かを読んでいた。男はどう
会社が非番だったので、何となく家の周りをぶらついていた。春の割に暑く、半袖でいても差し支えないような陽気であった。ふと小学校の前を通りかかると子供たちの声がした。私は金網越しに小学校の校庭を見た。どうやら昼休みのようで、たくさんの子供達が校庭で遊んでいた