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  • 全国民ポスト時代10

    大声を出したのはなんと大塚であった。立ち上がった大塚は鬼の形相をしていた。教室中がしんと静まり返った。そんなことは意にも介さず大塚は怒鳴った。「おい!担任!」クラス全員の心臓はヒュッとなった。先生に向かって担任呼ばわりだ。流石にそんなことをすれば黙ってい

  • 全国民ポスト時代9

    その言葉に再び耳を疑った。担任を見ると呆れた顔で岡田を見ていた。岡田は胸の奥が怒りで埋め尽くされる感覚を覚えた。なんだこいつは?話を聞いていたのか?2人で謝れ?議論を総括し公正公平な判断を下さねばならない、言わば裁判長のような役割を担うもの発言なのか?岡田

  • 人生走談2

    Q.30代男性。先日仕事で大変なミスをしてしまい、上司や先方に対して多大なる迷惑をかけてしまいました。謝罪をしてなんとか許してもらえたのですが、これまでに同じようなミスを何度も繰り返してしまい、同期からは「次はないぞ」と言われます。しかし気が緩むとまたやらか

  • 全国民ポスト時代8

    岡田は呆然とした。一瞬何を言われているのか分からなかった。そして今しがた加藤が言った言葉を頭の中で繰り返した。『大島くんが泣いているから岡田くんが謝った方がいいと思います』??岡田は加藤の方を見た。すると加藤はなんの曇りもない澄んだ瞳で岡田を見ていた。そ

  • 人生走談

    Q.現在夫一人子供一人の専業主婦です。30代で結婚と急いだせいか、すごく好きかどうかも分からない人と結婚し、ありがたい事に子供も1人授かりましたが、単調な毎日でどうしても幸せを感じることができません。思えば20代の頃に熱い恋をいたしまして、その時が人生のピークだ

  • ラーメン

    むしゃくしゃする。こんな気持ちになったのは久しぶりだ。今日は仕事が上手くいかなかった。演劇の舞台。なんだあのザマは。確かに客席はあったまっていなかった。この芝居でいちばんの冷え込みだった。だからと言ってあんな無様な姿を見せることないだろう。客を笑わせよう

  • オジイチャン

    👩「おじいちゃん、聴こえる?」👴「聴こえるよ」👩「そろそろみんな来るからね。待っててね」👴「はい」👩「ベッドで寝てるのもつまんないでしょ?テレビ見る?」👴「見ない」👩「なんか食べる?」👴「食べない」👩「そう」👴「あ」👩「どしたの?」👴「きた」👩「きた?」

  • 本当にあった怖い話

    あれは確か2年前、ある街へ引っ越しをする日の話である。その日は春にしては肌寒く、空にはどんよりとした厚い雲が覆い、シトシトと雨が降るという寒い日であった。俺は引っ越し代を浮かせようと、知り合いにキャラバンを借りていた。キャラバンはそこまで大きくなかったが、

  • 全国民ポスト時代7

    この言葉を聞いて俺は、大島が俺と大塚を間違えたのかと思った。岡田と大島で同じイニシャルOであるからだ。しかし加藤に「本当に岡田くんにそう言われたの?」と聞かれた大島は「うん。うん」と何度も頷いた。被害者である俺に謝りもせず、しかもそれに対して何も非難しなか

  • ハナシカ弟子入りクエスト3

    ストーリの正当性?何のこっちゃ?その他、合わせて7つの箇条書きが羅列されているが、はっきり言って意味がわからない。シンサクラクゴの7箇条なんだからシンサクラクゴを構成する条件なのだろう。しかしハナシカは俺に「体現せよ」と言った。そのこととこの文言になんの関

  • 週刊誌報道

    「あなた、明日の週刊誌に載るわよ」マネージャーからの電話を受けて原田はビックリした。寝耳に水であった。え?この俺が?なんかしたっけ?身に覚えがなかった。しかし人間誰しも品行方正ではないように、原田もまた過去の自分の行動に自信がなかったから、あれかな?これ

  • ハナシカ弟子入りクエスト2

    そういうことで俺は異世界に転生させられたのであった。そうと決まれば早速・・・と思ったが結局何をすればいいのか分からない。シンサクラクゴを作ればいいのか。そしてそれがハナシカに認められれば弟子入りが認められるのであろうか。話の流れからして多分そうだろうけど

  • ハナシカ弟子入りクエスト

    目が覚めると俺は町の酒場の2階にいた。どうやら昨日は飲みすぎで酔い潰れて、酒場のマスターにここまで運んでもらったらしい。まあいつものことだ。全くいつになったら懲りるんだか。学習しない自分に嫌気がさしつつも昨日のことを思い出そうとする。ええとどこまで覚えてる

  • 考え過ぎが過ぎ過ぎる男(心配性ケンジくん2024)

    俺は今大型バスに乗っている。新千歳空港から落語会の会場へと向かう貸切バスだ。乗車人数は出演者とスタッフ合わせて14人。30人乗りの大型バスだから車内の席はスカスカだ。各々が重ならないようジグザグに座っている。もしもドミノなら誰かが倒れても他の誰も倒れないよう

  • 全国民ポスト時代6

    大塚が大島の方を向いたとき、大塚の手はそのままパックを握っていた。牛乳が噴射されるのを阻止しようと、大島はパックを横取りしようとした。大塚は反射的にパックを取られまいとしたが、大島が巨漢であったためその力に抗うことができなかった。パックが大塚から大島の手

  • マイハッピーバレンタイン

    「今年もまだ貰っておりません」。ぼそっと鏡の前でつぶやく。自虐的にじゃない。(笑)はついていない。卑屈にもなってない。大丈夫。できてる。成長を感じる。改めて鏡の中の自分と対峙し背筋を伸ばす。目を開いて見つめる。息を口から思い切り吸う。そしてはっきりと「今

  • 全国民ポスト時代5

    岡田の大声に社内中がしんと静まり返った。そんなことは意にも介さず岡田は続けた。「おい!人が怒られてんのをSNSに投稿するって人間のやることか!お前は“はしだ“じゃない、社会の“はじだ“!」そう言われた橋田は豆鉄砲を食らったような顔をしている。お礼が成功したあ

  • 口喧嘩にルールを

    ①口喧嘩とはカップルや夫婦間においていざこざは必ず発生する。それはコンピューターにみられるバグのようなものであり発生すれば修復されなければならないものである。バグが修復ができなかった場合、それを抱えたまま作動し続ける場合もあるが大抵の場合は新しいバグが起

  • 全国民ポスト時代4

    嘘だろ!俺が誰かに言って欲しいメッセージそのままを送ってくれた奴がいた!その名は岡田!岡田はとても優しいやつだ。何があっても嫌な顔ひとつしない。決して怒らない。同期からの信頼も厚い。しかしみんなの意見に反して何か意見するやつではない。いつもニコニコしてい

  • サイコパス

    ある朝、俺はいつものように起きるとテーブルに座って朝食を食べていた。妻が用意してくれた焼いたトーストとサラダ。いつもは味噌汁とご飯だけど今日は洋風だ。なんでだろう。スーパーで安売りしてたのかな?本当は味噌汁がよかったけど、今日の朝はいつもより頭が働かない

  • 因果応報遅刻伝

    ある朝俺はYOUTUBEに上がっている違法落語動画を探しては規約違反として運営に報告しまくっていた。「全く、ただでさえ会にお客さんが来ないのにこんな動画あげやがって」。俺の趣味は落語だ。しかしそんじょそこらの落語ファンではない。YOUTUBEの違反動画の落語をちょろっ

  • こんなこと言われたら試したくなっちゃいそうな“新興“宗教のススメ

    『皆さん!私はAIが台頭している昨今にあえて言いたい!「神を信仰しませんか」と!人間が大切にしなければならないのは心であり、宗教は必ず心を豊かにする。目に見えないものを信じられるのは地球上の生物の中で人間だからだ。目に見えないものを信じることが人間を人間た

  • イヤホン

    ある朝俺は耳に違和感を感じた。外で鳥が鳴いている。その声があんまり聞こえない。左は聞こえる。右が聞こえない。右に何か詰まってる感じがする。人差し指でほじってみる。すると何か有る。なんだこれ?耳くそじゃない。何かゴム的なもの。輪ゴム?輪ゴムを丸めたもの的な

  • 電車の席取り物語

    私は強靭な体を手にしていた。東京から自宅のある千葉県蘇我駅までの約1時間、立ち続けても全く疲れない足腰。手すりなしも全くよろけない体幹。重い鞄を持っても引きちぎれない肩。スマホに頼らずとも窓の外を眺めているだけで時間の流れを楽しめるだけの集中力。それらは3

  • 全国民ポスト時代3

    そう言ったのは相川だ。気持ちわる!社会人にもなって学級委員やってる奴!自分の正しさを人に押し付けることの恥ずかしさに悶えたことのない奴!脳人!考えるのを諦め脳に操られている脳人!相川の一方通行の善意に怒りが湧く。そして同時に思う。もしかして本当に俺もお礼

  • 全国民ポスト時代2

    どういうことだ?渡辺は困惑した。心がざわざわする。俺の謝罪写真に係長が「いいね」?なぜ?怖いんだけど。俺っていじめられてるの?みんなグルなの?理由が知りたい。でも分からない。分かりようがない。こういう時はチーズを食べよう。なぜならチーズが大好きだから。美

  • グループLINEを最後に終わらせる能力を持ちし者

    我は偉大なる力を天から授かりし者。その力は世界を光から闇へと落とす。自ら制御することのできぬ恐ろしい力。その力の名は「グループLINEを終わらせる力」。我にかかればどんなに盛り上がりを見せているグループLINEもたちまち終わる。今まで連綿と続いていた楽しい会話が

  • 全国民ポスト時代

    「部長、今朝はいいねありがとうございます」新入社員の大きな声が車内に響いた。「おう」と恰幅のいい中年の男が返事をする。この部署の部長である。その真向かいに座る課長の席にも別の若手社員が。「課長、昨日の夜、我が子の写真Xに対してのいいね、ありがとうございます

  • 真っ暗の舞台でやる朗読劇(自転車)4

    女「ちょっとジロジロ見ないでよ」男「ああ、すまない」女「・・・・・」男「・・・・・」女「ちょっと。やっぱりこれあたしの自転車だったじゃない」男「ほんとだ。僕の自転車は偶然にも隣に止めていたこっちだった」女「全くしょうがないわね。まあもうどうでもいいわ。じ

  • 真っ暗の舞台でやる朗読劇(自転車)3

    男「あ、君は」女「え?なに?あたし知ってるの?」男「あっ!、いやあの・・・・・」(ナレーション)遡ること7年前。春の煌めく陽光の中、颯爽と自転車で駆ける少女がいた。彼女の名前は渡辺美沙代。当時高校1年生。キキーガッシャーン!女「いたた。何かにぶつかって転ん

  • 真っ暗の舞台でやる朗読劇(自転車)2

    男「とりあえず怪我ないですか」女「大丈夫だけど全部どっか行った。私のカバンも自転車もどっか行った。もう嫌」男「自転車を探しましょう。だいたいどこら辺にありそうか検討つきます?」女「つくわけないじゃない。そっちの方よ」男「ええとどこだろう(と言いながら女い

  • 真っ暗の舞台でやるコント

    (暗転する)男「あれ」女「あれ?」男「電気消えた?」女「やだ、真っ暗」男「えちょと待って。まずい。見えない。スマホスマホ」女「やだスマホ電源切れてる」男「ええとどこだ。カバンの奥に入れちゃったな・・・」女「ええと、今あたしB通路歩いてたよね。確かここら辺に

  • はらだいこ

    先輩「さあ今年も腹だいこ行くぞ!」後輩「よろしくお願いします」先輩「正月に叩くものだが、正月気分で叩いたらいい音が鳴らんぞ。分かったな」後輩「はい」先輩「気合を入れて叩くんだ。想いなかったら客には届かん。それじゃあ叩くときの心構え言ってみろ」後輩「腹が痛

  • 8歳

    小学2年生。私はこの頃から少しずつ太り出した。クラスでも揶揄われた。デブと言われたし私が狭い机と机の隙間を通れるかという賭けがなされていた。今考えればいじめられていたというわけではなかった。たまに揶揄われたが毎日ではなかった。友達もいた。しかし当時の私は

  • 7歳(2)

    とうとうやってしまった。しかしどうすることもできない。7歳の私にトイレに行ってどうにかするという選択肢はない。仕方なくアレを抱えたまま5時間目の授業を受けることになった。なんの授業だったかは覚えていない。しかし授業中に皆で相談しながら何かをするという自習時

  • 7歳

    小学1年生になった。その時に覚えていることは考えるまでもなく今から書くことである。1年生の秋にありんこ運動会というものがあった。これは通常の運動会とは別にその学年だけでやるミニ運動会である。そしてその当日、人生で3本の指に入るであろう大事件を起こしてしまい

  • 6歳

    6歳にもなるとたくさんのことを覚えているが、中でも強烈に覚えていることは卒園の時の出来事である。卒園の記念として冊子を作ることになった。園児には用紙が渡され、そこには自分の似顔絵と好きな食べ物や楽しかったことを書く欄が設けられていた。そこの一番下に「好きな

  • 5歳

    私は幼稚園に通っていた。丸山幼稚園という近くにある私立の幼稚園だ。幼稚園というのは当時3歳児の年少クラスはなく、4歳以上が通うある程度社会性が求められる場所であった。私はそれが嫌で嫌で仕方なかった。なぜならどうしても「きちんとする」ということができなかった

  • 4歳

    3歳の終わりに松戸に引っ越した。引っ越した日、私は人生で初めて湯沸かし器(みたいなもの)を見たということを覚えている。当時それがなんなのかは分かっていなかったが、今まで見たことのないヘンテコなものに興味津々であった。今思い出してもあれはなんだったのかよく

  • 3歳

    私の一番古い記憶は3歳の時である。そのとき私はほったて小屋に住んでいた。親に言わせれば普通の一軒家だったというだろうが、私の感覚ではあれはほったて小屋であった。おそらく父親の会社の社宅だったのだと思う。広さは狭い2DK。場所は群馬の館林で、ブロック塀で囲われ

  • 落語喫茶57(完)

    表には「落語会一周年記念第2回金玉落語会」と書かれたポスターに、筆で斜めに大きく「満員御礼」の文字が書かれている。結局あのあと、他の落語家さんも聴いてみたいというお客さんのリクエストが多数あり、この一年のうちに別の落語会を2回開催した。しかし普通のと言って

  • 落語喫茶56

    え?民枝は一瞬思考停止した。感動??用紙の上の方を見ると60代男性にチェックがしてある。え??60代男性が感動??慌てて次のアンケートを見る。「初めてでしたがめちゃくちゃ面白かったです!」その次、次と見る。「わかりやすくて面白かった!違う落語も聴いてみたい!

  • 落語喫茶55

    メンバーは着替えてギャラを受け取ると「またよろしくお願いしまーす」と言ってあっけなく帰っていた。驚いた。客席をあんな空気にしたのに、大成功と捉えていたとは。はあ、でもまあ終わった。終わりよければすべてよしとするか。。。とりあえず疲れたから座ろう。いや、ま

  • 落語喫茶54

    ゲボ丸がオチを言うと、楽屋からありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございまーーすという声が上がった。その声は深々と頭を下げたゲボ丸が起き上がって高座を降り、客席から見えなくなるまで続いた。こうして金玉落語会は幕を閉じた。お客さんが立ち上

  • 落語喫茶53(金玉橋25完)

    今日は村のお祭りです。今年から始まった、村の豊作を祈る新しい祭りです。出店が並びお囃子も朝から鳴り響いています。村は活気で溢れており人々は笑顔です。村を練り歩く神輿の上には金色の玉が乗っています。神輿を担いでいる男どもは「どえいやあ!どえいやあ!」と不思

  • 落語喫茶52(金玉橋24)

    しかし父のもっと間近で金ひもを噛んで握っていたのは母でした。「同じ過ちはしないよ!さあ人間さん!頼んだよ!」田吾作に母の言っていることは分かりませんでしたが、咄嗟に母が握っているひもを掴みに行きます。そして今度はゆっくりゆっくり引っ張ると、ようやく父を岸

  • 落語喫茶51(金玉橋23)

    田吾作は短くなった金ひもを間一髪のところで捕まえたのでした。「親子よ。お前らのおっとうはおらの命の恩人だ。絶対に引き上げて見せる」この言葉にタヌ吉の全身の力が抜けました。よかった。。。もう大丈夫だ。助かる。。おっとうは助かるんだ。絶望の淵で、目の前に現れ

  • 落語喫茶50(金玉橋22)

    父は衰弱し切っていました。無意識に対岸の金ひもを離しましたがどうすることもできません。濁流に身を任せ、ものすごい勢いで下流へと流されて行きます。しかし不幸中の幸いと言いますか、これまた無意識に妻と子の待つ岸側の金ひもはそのまま離さずしっかり掴んでいたので

  • 落語喫茶49(金玉橋21)

    田吾作は水かさの増えた川に流され、どんどん下流へ流れて行きます。「ごぼぼ!だめだ!じぬ!だずげで!」藁をもすがる思いで田吾作は必死に捕まるところを探しました。しかし流れが強くてどうすることもできません。そこにあったのが父の金ひもでした。「ぐいん!何かにひ

  • ケバブ

    「ケバブ」。なんて最高の響き。だって美味しい。すごく美味しい。お腹が減った状態でたらふく食べたい。ケバブはすぐ出てくる。すぐ出てくるから店頭で出来上がりを待つ。大概外から作る過程が見える店が多い。見えるから待つのも苦にならない。というか待たない。すぐでき

  • ある一日(2023/12/09)

    朝から出掛けて昼過ぎに家に帰る。玄関の前。するとそこで気がつく。あれ?家の鍵がない。なんで?家出る時はあったよね?そりゃそうだ家の鍵が閉まってるんだから。えーとポケットに入れたよな?コートのポケットには、ない。ズボンのポケットにもない。え?なんで?車の中

  • 落語喫茶48(金玉橋20)

    なんと先ほどの人間が追いかけてきたのでした。「おっかあ!どうしようどうしよう!」「バカたれ!迷ってる暇があるか!早くおっとうの金玉に喋りかけろ!!!」もう刹那の余裕もありません。気がつくとタヌ吉は、おっとうの金玉に近づきものすごい大声で叫び狂いました。「

  • 落語喫茶47(金玉橋19)

    「それだけは無理!おっかあがやりなよ!」「あたしの大人の声じゃ低くて届かないんだよ。お前の高い声の方がおとっつぁんに届きやすい。やりなさい!」「いやだ!きもい!」「いいからこっちに来な!」そういうと母は嫌がるタヌ吉を金玉が縛り付けてある木の元へ引っ張って

  • 落語喫茶46(金玉橋18)

    ものすごい音と同時に二人は引っ張っていた方向に弾け飛びました。そうです。引っ張っていた方の金の皮が切れてしまったのでした。「おっかあ!こっち側が切れた!」「あああ。ダメだった・・・もう本当にだめだ。あああ」嘆きながらよろよろと父の方へ駆け寄ります。すると

  • 落語喫茶45(金玉橋17)

    事態は一刻を争います。二人は早速金玉のひもを前足でびよんびよんしました。「おっとう!気がついて!こっちに金玉が繋がってるよ!びよんびよん!」「あんた!逆側の金を切るんだ!びよんびよん!」しかしいくらびよんびよんを繰り返しても父は気がつきません。それもその

  • 落語喫茶44(金玉橋16)

    そうです。先ほどタヌ吉に向かって飛ばしたもう一方の金玉です。あまりにも力を入れて飛ばしたため父と金玉を繋ぐ皮が伸び切ってしまっていたのでした。そして金玉は父の元へ戻ることなく川岸に浮かんでいたのでした。「右の金が浮いている!!!!」母はあまりの嬉しさに叫

  • 落語喫茶43(金玉橋15)

    母はすぐにタヌ吉の方に駆け寄りました。「大丈夫かい?」「僕は大丈夫だよ。でもおっとうが!」タヌ吉と母はすぐに父の方を見やりました。すると父が自分の伸びた金玉に捕まっておりました。濁流に飲み込まれないよう必死です。「ちくしょう。捕まってることしかできねえ。

  • 未来の苦悩

    皆さん。本日はお集まり頂きましてありがとうございます。寒いですよね。ほんの30分ほど、私にお時間をいただけませんでしょうか。通行人の皆様もこんにちは。是非私の話を聞いてください。損はさせません。よろしくお願いいたします。ご声援ありがとうございます。ありがと

  • ある一日(2023/12/03)

    朝起きる。7時。すでに石油ファンヒーターの電源はついている。だってタイマーにしてあったから。部屋は温かい。昨日23時に寝たからすでに8時間寝ている。目覚めはいい。部屋は暖かい。なのに起きれない。低血圧。全て低血圧のせいだ。しかしここで電子音のエリーゼのために

  • ある一日(2023/11/28)

    たぬきはちょっと一休み。___________朝を起きて布団を畳む。畳むだけじゃない。居間から寝室に布団を運ぶ。俺は寝室で寝ていないから。居間に置いておいたら邪魔だから運ばねば。お手洗いに行く。そして風呂に向かう。風呂釜洗うために。これがしんどい。冷たい

  • 落語喫茶42(金玉橋14)

    しかしその声はタヌ吉には届きません。そんなことより溺れないように必死なのでした。タヌ吉「ごぼぼ!溺れ!たずげで!!ごぼぼ!」そこへ父の金玉が飛んできました。タヌ吉にそれが分かるはずがありません。父の金玉は否応なくタヌ吉の顔面にぶち当たりました。バチン!!

  • 落語喫茶41(金玉橋13)

    父「タヌ吉ーーー!!!!!!!!」流れの勢いはすごく、タヌ吉はどんどん流されていきます。父に迷っている暇はありませんでした。金玉が小枝に引っかかったまま、川に飛び込んだのです。父「タヌ吉ーーーーー!!!!!!!!」母「お前さん!!」一瞬の気の迷いも許され

  • 落語喫茶40(金玉橋12)

    よく見ると父の金玉の皮が後方に伸びています。振り返ると皮の端が何かに引っかかっているようです。母「あんた!金玉の皮が後ろに伸びてるよ!何かに引っかかってんじゃないのかい?」父「あ!まずい!玉が弾に当たってできた穴に小木が引っかかってる!」母「どうするんだ

  • 落語喫茶39(金玉橋11)

    親子はやっとのことで川の麓までたどり着くことができました。大雨のせいで体はぐしゃぐしゃに濡れています。しかしタヌ吉と母は、父の金玉傘のおかげで寒さに耐えることができました。父「おお寒いな。おっかあ、タヌ吉。大丈夫か」母「あたしたちは大丈夫だけどあんた雨で

  • 落語喫茶38(金玉橋9)

    夜が更けるににつれ、雨が強くなって行きました。父「こりゃあ止む気配がねえな。おっかあ、先を急ぐぞ」母「そんな。こんな土砂降りの中危険だよ」父「俺の見たところおそらく明日の夜まで降りそうだ。そんなことになったら峠を超えることは不可能になっちまう」母「なんで

  • 落語喫茶37(金玉橋9)

    母「金玉迷路ってなんだい?」父「金玉には迷路みたいなシワがあるだろ。それと同じように、森が迷路みたいになって抜け出せなくなっちまったってわけよ」母「なんでそんなことが起きたんだい?」父「雨で靄がかかって、視界が悪くなったせいだろうな」母「金玉関係なくない

  • 落語喫茶36(金玉橋8)

    親子らはトコトコ歩いております。父「雨が強くなって来たな。イテテテ。さっき弾道を止めた金玉に雨水がしみらあ」母「大丈夫かい。今日はここらで休もうか」父「いや、いつ追っ手が来るか分からねえ。それにお隣さんだってその隣だってみんなとっくに逃げ出して峠を越えて

  • 落語喫茶35(金玉橋7)

    父が飛ばした玉は田吾作の顔左側スレスレを飛んでいきました。田吾作「な、なんだ。何が起こったかわからねえ。とにかくここにいちゃいけねえ。田五郎、みんな!逃げろ!」田吾作は恐れをなし、村民たちと一緒に山を下っていきました。父「ふうう。もう大丈夫だ。おっかあ。

  • 落語喫茶34(金玉橋6)

    玉を打ったのは田吾作でした。田吾作の撃った玉は父に命中しました。田吾作「ヘッヘッヘ。子ダヌキは連れて帰れねえかもしんねえけど、とりあえずタヌ公一匹は捕まえたぜって、なんだ?」玉が当たった父を見て田吾作は驚きました。それも無理ありません。なぜならそこにあっ

  • 落語喫茶33(金玉橋5)

    父「囮って。お前金玉ねえだろ」母「金玉関係ないだろ。いいかい。今からあたしが飛び出てあの人間を引きつけるから、その隙に抜け穴に入るんだよ」父「わかった。金玉入る」母「死ぬ気で掘るんだよ。どれだけ引きつけられるか分からないからね」父「わかった。金玉掘る」母

  • 落語喫茶32(金玉橋4)

    さあ痺れを切らしたのは人間です。田吾作「さあさあ子ダヌキ、出てこいや!」田五郎「田吾作、そんなに大声出したら出てくるもんも出てこねえよ。なんせ相手は子ダヌキだ。臆病にちげえねえ」田吾作「そうかも知れねえけどよ。もう山っこさ朝から歩き回って一匹も捕れねえ。

  • 落語喫茶31(金玉橋3)

    そんな下らない会話をしながら二人は家に帰りました、すると家の表の様子が何やらおかしいです。母「あんた!待ちな!」父「どうしたんだよ」母「あれ見てごらん!」そう言って母が顔を振った前方を見遣ると、なんと人間が我が家の前でうろうろしています。どうやら子ダヌキ

  • 落語喫茶30(金玉橋2)

    そんなことで、夫婦はタヌ吉をしばらく洞穴に隠すことにしました。母「タヌ吉、何があってもここから出ちゃいけないよ。わかったね」タヌ吉「分かった。おっかあとの約束は決して破らないよ。たとえこの金玉が破けようともね」母「お前まで何言ってんだい。まったく誰に似た

  • 落語喫茶29(金玉橋)

    俺はある片田舎のお話でございます。この片田舎では毎年秋になると、作物の豊作を願って神様に村の産物を奉納するというしきたりがありました。母「ブンブンブンブン!あんた大変だよ!」父「お前乳ぶん回して寄って来るんじゃねえよ。それにタヌキだったらタヌキらしく裸で

  • 落語喫茶28

    高座に上がりゲボ丸の頭がゆっくりと上がった。出囃子がフェイドアウトすると客席からのパラパラ拍手が鳴り止んだ。泣いても笑ってもこれがトリ、今日の落語会最後の高座である。民枝もただ見守るしかない。しかし客の表情は暗い。貴文も死んだ目をゲボ丸に向けている。この

  • 落語喫茶27

    「下ネタは嫌いじゃないし、みんなが好きっていうのも分かる」「そうでしょう。だから」「だけどあんたは勘違いしている。下ネタっていうのは一人で楽しむもの。あんな大勢の前で下ネタ言われても笑えないの。それは年配であればあるほどそう」「それは世間体でしょうか」「

  • 落語喫茶26

    「帰って下さい」民枝は真剣な表情で言った。「もう限界です。あなたたちふざけてるんでしょ?出演料はお支払いしますからもう帰って下さい」そのセリフにゲボ丸が返した。「姉さんすいません!確かに姉さんの言いたいことは分かります。でもあっしたちにもこれしかないんで

  • 落語喫茶25

    ここまでくるともう立て直しは不可能であった。落語というのはマクラでお客を引きつけなければ、文字通り噺にならない。最初は順調であったが、小噺の選択を間違えてしまい客席は再び凍りついた。せっかく芽吹いた蕾は花咲くことなく枯れていった。また、マクラを喋りすぎた

  • 落語喫茶24

    「えーこれはある老夫婦のお話でして。この老夫婦、とても貧乏だったので毎日食べる物に困っていました。家もほったて小屋で隙間風もあります。とても寒いです。「婆さん。家の中は寒いから、外に出て太陽に当たろう」「おじいさん、外は北風が吹いていて寒いですよ」「なあ

  • 落語喫茶23

    この自信に満ちた表情はなんなんだろう。はっきり言ってここまでお客はほとんど笑っていない。しかしゲボ丸の自信は揺らぎない。「前座の兵々は多少苦戦しましたが、あれも種まきみたいなもんですよ。下ネタに耐性をつけさせるっていうね。その証拠に、そろそろ芽吹いてきた

  • 落語喫茶22

    民枝のしなった腕が前方に向かうと同時にタオルが放たれた。しかしタオルは軽く、民枝の50cm手前で落下した。そして地面に落ちる寸前に左側から手が伸びてきた。その手はタオルをキャッチした。「姉さん。まだ諦めるのは早い」そこにいたのは金玉のリーダー、ゲボ丸であった

  • 落語喫茶21

    「ほんといい加減にして下さい。これ以上下ネタを言い続けるならこれで中止にしますから」鬼の形相となった民枝の顔を見て流石にマズいと思ったのか「すいません。普通にやりますから」と言った。「普通じゃなくてちゃんと笑ってもらってください!!!」民枝の怒りは頂点に

  • 落語喫茶20

    つかみは最悪であった。自己紹介もなくいきなり下ネタから入ったので、一般客は皆鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。それに気づかずか畳み掛ければなんとかなるかと思ったのか、結花(けつげ)はくだらない駄洒落を言い続けた。金玉も我々若手も引っ張っていくのが大事

  • 落語喫茶19

    二番太鼓のCDが鳴り終わると民枝は「それではお願いいたします」とメンバーに声をかけた。その言葉には、あとはもうどうにでもなれという思いがこもっていた。すると、メンバーで1番後輩である兵々(ぺっぺ)が言った。「姉さん。この度はこんな素敵な落語会を開いてくださり

  • 落語喫茶18

    「と、とにかく開場まであと30分ですからよろしくお願いしますね」「かしこまりました!!!」と3人が大きな声で返事をした。台所に戻ると民枝は冷や汗をかいた。怖い怖い怖い。なんなんだこの3人組は。今の呪文は絶対におかしい。芸人は普通じゃないと思っていたけどまさ

  • 落語喫茶17

    なんなんだこれは?民枝は震えた。落語会というのは裏側でこんなことが行われているのか?ちょっと宗教っぽくて怖い。最後の叫びで一通りの儀式?が終わったと見え、民枝は恐る恐る楽屋の中へ入っていった。「お、お茶どうぞ」と言うとメンバーは「ありがとござんす!ありが

  • 落語喫茶16

    思わぬ自己紹介に孝明は頭を抱えた。なんなんだこのやけに金玉を押してくる連中は。これでどうして人気があるんだ?下品極まりないじゃないか。しかしその一方民枝は好感触を感じてた。ギャップがあっていいじゃないと思った。下品さはマイナスだ。でもマイナスからスタート

  • 店の本音

    店員「いらっしゃいませ」客「どうも」店員「今混んでて対応しきれないんで。余裕できたら呼ぶんで。おとなしく待ってて下さい」客「席空いてるじゃん」店員「空いてるけど他にやること山積みなんでとりあえずそこに座っといて下さい」客「そうですか」店員「言っときますけ

  • 店の建前

    店員「いらっしゃいませ」客「どうも」店員「そちらにお名前お書きになってお待ち下さい」客「はい」店員「店内混み合ってきた場合二時間制となっておりますがよろしいでしょうか」客「はい」店員「こちらの2名がけの席どうぞ」客「はい。ここで」店員「ご注文お決まりでしょ

  • 常打ピンチ!12

    オーナーのバットは空を切った。これはすごい。来季はうちのチームで再起を図ってもらうぞ。オーナーは毛ヶ下の獲得を決心した。しかしそれと同時に何かに球が当たったような音がしていた。見るとマウンドの毛ヶ下の顔が青ざめている。声にならない様子だ。はてなんだろうと

  • 常打ピンチ!11

    オーナーは思った。彼の気概はチームに必要だと。今シーズン惜しい試合が何度もあった。勝ちたい気持ち一つあれば勝てた試合が。来シーズンのテーマは気概だ。つまり何とかしてそこを補強しないといけないと思っていた。そんな矢先のことであった。グラウンドが何やら騒がし

  • 常打ピンチ!10

    毛ヶ下は思った。これはもしかしたらチャンスかもしれないと。毛ヶ下はおそらく今年自身のチームを戦力外になる。どこかに拾ってもらえなければトライアルを受けることになる。そこで受かればまだいいが前線を退いた選手がどこかに所属できる可能性は低い。しかし球団オーナ

  • 常打ピンチ!9

    二人が呆然と立ち尽くしているところにスーツの男が歩いてきた。近づいてくるほどに彼の輪郭がはっきりしてきた。でっぷりとした体躯であるが品のいいスーツを着ている。頭部の髪は薄くなっていて年のころなら70代。その割に背筋が伸びてしっかりとした足取りである。その悠

  • 常打ピンチ!8

    常打にボールが向かってくる。ストレートだ。すごい速球だ。毛ヶ下はそこまで肩は強くない。なのにこのスピード。おそらく想いが乗っているのだろう。しかし明らかにコースはボールだ。せめてストライクゾーンに投げてくれよ、と常打は思った。だが振らないわけにはいかない

  • 常打ピンチ!7

    場が静まり返った。さっきまで笑っていた子供たちも黙っている。引率の大人もきょとんとしていた。「す、すいません。あのー、か、か、彼はですね。フ、フ、ファーストステージの相手チームの毛ヶ下選手です。ですからですね。あのーー」上手く言葉が出ない。が、それを聞い

  • 常打ピンチ!6

    常打は狼狽した。悪いことは重なるもんだ。神よ、早くこのスパイラルから抜け出させてくれ。常打は引率の大人を制することがどうしてもできなかった。常打はシミュレーションしたのだ。「いやいやそれは勘弁してくださいよ」と言ったら?しかしそんなことを言おうもんなら毛

  • 死んでもスマホ中毒

    「あれ、ここはどこだろう」「気がついたか」と誰かが言った。目の前に目をやると知らない老人が立っていた。彼は白装束を着て頭に三角の頭巾をかぶっている。明らかに死装束だ。恐る恐る「もしかして私は死んだんでしょうか」と尋ねてみる。「ああ、お前さんは死んだ。不運

  • 常打ピンチ!5

    毛ヶ下は引率の大人からスマホを受け取った。我々は皆で集まり毛ヶ下に向かった。すると大人が言った。「はい。じゃあみんなでニッコリ笑顔でピース!」常打は震えた。なんだこの状況は。さっきまで怒り狂われていた相手に向かって、俺はにっこり笑ってピースをしている。怖

  • 常打ピンチ!4

    嘘だろ!!?毛ヶ下にとって考えうる最高の屈辱!!「選手と認識されていない&一般人と間違えられる」!常打はより一層毛ヶ下の方を向けなくなっていた。毛ヶ下は何も答えず黙っている。彼はどんな顔をしているんだろう。子供たちよ、頼むから誰か一人くらい毛ヶ下のことを知

  • 常打ピンチ!3

    こんな時に限って!常打は焦った。なんとなく火に油を注ぎそうだと思ったからである。「ほら、恥ずかしがってないで」大人が子供たちに促す。もじもじして恥ずかしそうにする子供たち。その中の一人がやっとの思いで口を開いた。「ファーストステージの最後のヒットすごくカ

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