−新宿2丁目−ひとりの少年が堕ちていった街。カラダ以外に売るものがなかった少年の叫びにも似た物語。
覚悟を決めて飛び込んだ世界「ウリセン」。 なのにどうして抱かれるたびに心を求めてしまうのだろう・・・。 この世に受けた性は「男」。 そして好きになる相手も「男」。 どうしようもない世界でもがきながらも、 ほんのひと筋の光を求めて今夜も2丁目に羽ばたいてゆく。
陽射しの中を降っていた天気雨ではない。短時間で降りやんだ通り雨でもない。いったいこんなふうに降る雨を、人はなんと呼ぶのだろうか。 お客さんのマンションを出る…
「先生、やめてくださいッ」 生徒役の少年が口にしていた言葉をそのまま言ってみた。「そんなんじゃないだろ。もっと感情を込めて」 僕の棒読みの台詞におじさんは呆れ…
時代がかった壁時計の秒針が、静まり返った室内に正確な時を刻んでいた。あと幾つこの音を聞けば、僕はここから解放されるのだろう。プレイを終えて寝息を立て始めたお…
一体、何が起こったのか。 人並みに目を凝らしてみれば、見慣れた早番のホストが何人かいた。誰もが釘付けになって丸く取り囲んだ円の中心を見据えていた。かすかなさ…
そのざわめきは、ビックスビルを出るとすぐに僕の耳を捉えた。この街がざわめきに包まれるのは、いつだって闇が辺りを黒く染め始める頃。ネオンの灯りが一つ二つと輝き…
「まあ、かわいいリボンだこと」 紙袋の中を覗き込み、アルバムに巻かれた薄紅梅のリボンを見て女性は微笑んだ。「これ、花嫁の好きな色なんです」「あら、そうなの。…
披露宴が始まってから三十分が経過していた。誰もいないと思って忍び込んだ控え室には、鼻歌を歌いながらテーブルの上を片付けている着物姿の女性が一人いた。「あの・…
ゆき姉(ねぇ)。 こうしてゆき姉に手紙を書くのは初めてのことだね。実の姉に手紙を書くっていうのはかなり照れくさいことなんだね。本当は結婚式に出席して、直接…
「今日はありがとうございました」 デパートを出ると、僕は人目につかないように軽く頭を下げた。「いやいや、俺のほうこそお礼を言うよ。こんな買い物にまで付き合って…
おじさんと奥さんは、学生時代からの友達だったという。おじさんは大学を卒業し、就職してからは仕事にのめり込み、あっという間に三十代を迎えた。おじさんの奥さんと…
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