◇ 「イランは弱い」が市場の感覚に = ダウ平均は先週9ドルの小幅な値上がり。終り値は4万2207ドルで、5月27日からずっと4万2000ドル台で推移している。何も決められなかったG7(主要7か国)首脳会議、政策金利をまた据え置いたFRB、そしてイランを巡る中東情勢の緊迫化など。市場にとっては大きな悪材料が続出したが、株価は高値で頭打ちの形となっている。先行き不安はあるけれども、大きな落ち込みは回避した。日経平均...
経済問題の分析、解説。特に政府の政策に対する批判。いくつかの大学で教科書代わりに利用されています。
最近の例では、1000円高速料金やエコポイントへの批判。景気回復の芽をいち早く探し出しています。またアメリカのGMやクライスラーが破産法の申請しか可能性がないことも、数か月前から予想しています。 原則として祝日以外は、記事を更新。株価の上昇、下落も毎日予想しています。これまで3年間の騰落予想では、勝率が約7割。証券マンの読者も少なくありません。
◇ 日本の自動車メーカーも大打撃 = アメリカ商務省の発表によると、ことし1-9月間の実績でメキシコからの輸入総額は3788億ドル(約58兆円)。中国からの輸入額は3221億ドル、カナダからは3093億ドルだった。アメリカの側からみると、これら3か国が輸入額の大きい1-3位を占めており、これら3か国だけで輸入全体の約4割を占めている。トランプ氏はこれら3か国への関税引き上げで、まず貿易収支の大幅な改善を狙ったのかもしれな...
◇ 第1弾はなぜか中国・メキシコ・カナダ = トランプ次期大統領は25日、SNSで「中国のほぼ全製品に対して10%の追加関税をかける。またメキシコとカナダからの輸入品に対しても25%の関税をかける」と発表した。中国からメキシコなどを経由して、大量の合成麻薬フェンタニルがアメリカに流入していることへの対抗措置だと説明している。だが本当に麻薬対策なのか。続いて第2弾が発表されるのか。その辺の情報がないため、為...
◇ 政府の姿勢が見えてこない = 内閣府は今回の総合経済対策を実施することによって、今後3年にわたって実質GDPが毎年1.2%押し上げられると試算した。だが物価対策や安全対策には、大きな押し上げ効果はない。結局は「日本経済・地方経済の成長」を図るための5兆8000億円が、そのための原資。これが民間企業の資金も呼び込んで、1.2%成長につなげようという構想のようだ。しかし具体的にどう使うのかが、全く見えてこない。...
◇ 補正予算13兆9000億円の大半はバラマキ = 政府は22日の臨時閣議で、石破内閣としては初めてとなる総合経済対策を決定した。財源の主柱は24年度の補正予算で、計上する一般会計の総額は13兆9000億円。これに特別会計などを含めると、財政支出は21兆9000億円。さらに地方自治体や民間の支出を含めると、いわゆる総事業規模は39兆円に達する。24年度予算の3分の1を超える膨大な追加経済対策だ。その内容は、次の3本柱から成って...
◇ 明暗分かれたNYと東京市場 = ダウ平均は先週852ドルの値上がり。終り値は4万4297ドルに達し、11月11日に記録した史上最高値を4ドル上回った。景況判断指数が予想を超えて景気の底堅さを示す一方、10月の消費者物価は2.6%上昇で予想の範囲内。FRBによる年内の追加利下げは確実という見方がさらに強まった。ウクライナ戦争が中距離弾道弾の段階に突入した警戒感もあるが、経済的な先行き楽観論の方が上回った形。日経平均...
◇ 間違いではないが、違和感は残る = このブログでは22日付けで「企業業績は下り坂」という記事を載せた。そのなかでSMBC日興証券が集計した7-9月期の企業決算の内容を紹介「最終損益は前年比6.6%の減益になる見通しだ」と書いた。ところが読者の方から疑問や批判のメールが多数寄せられた。なかには「増益を減益と間違えたのでは」とか「意図的に株価を下げようとしているのでは」などというご批判もあった。調べてみる...
◇ アメリカはまだ増益、日本は減益 = 企業の最終損益が4四半期ぶりに減益となりそうだ。SMBC日興証券が、これまでに決算を発表したTOPIX採用988社(全体の77%)の決算内容を集計した。それによると、最終利益の合計は前年比で6.6%の減益。このうち製造業は10.4%、非製造業は1.7%の減益となっている。自動車と鉄鋼は、ともに約30%の大幅な減益。自動車は認証不正による減産、鉄鋼は中国産の安値輸入増が響いた。こ...
◇ 今回は‟驚き”がなかった = トランプ大統領が初めて登場した8年前、市場はびっくり仰天してその経済政策を歓迎した。法人税と所得税の大幅な減税、輸入関税の大幅な引き上げ、移民の完全シャッタアウト。どこからみても景気はよくなり、企業の業績は改善する。為替市場では選挙から1か月の間にドルが急速に上昇、円の対ドル相場は105円から118円に下落した。また株式市場でも、ダウ平均は16年11月4日の1万7888ドルから17年3月3...
◇ 日米で企業業績がやや下向き = ダウ平均は先週544ドルの値下がり。月曜日にはまた最高値を更新したが、あとはダレた。高値圏で利益確定売りが出たのと、トランプ政策で金利が上昇するという発想が株価の足を引っ張った。水曜日に発表された10月の消費者物価は前年比2.6%の上昇。やや高めだったが市場は予想の範囲内と受け取り、年内の追加利下げは確実という見方は変えていない。ただピークを迎えた企業の決算発表をみると、...
◇ 国民民主党はトリガー条項の復活に固執 = ‟少数与党”になってしまった自民・公明党。何をやるにも、国民民主党の協力がなければ動きがとれない。このため経済政策でも、政策の調整を開始した。その最初のテーマは「年収のカベ」問題。どうやら「103万円のカベ」は崩せそうだが、国民民主党が主張する非課税額を178万円に引き上げることは難しそう。結局は「130万円までのカベ」を無くすあたりが、落としどころのようだ。そし...
◇ 廃炉18基で16万5000トンの放射性廃棄物 = いま日本では、大事故を起こした福島第1原発1-3号機を含めて、合計21基の原発を廃炉にすることが決まっている。福島を除けば、いずれも老朽化によるものだ。これら18基の原発を廃炉にすることにより、16万5000トンにのぼる放射性廃棄物が発生すると試算されている。だが、これらの廃棄物をどう処理するかが決まらず、廃炉は遅々として進んでいない。原子炉の解体に伴って発生する...
◇ 福島第1原発で0.7グラムのデブリを取り出す = 東京電力は2日「福島第1原発2号機のデブリを初めて原子炉格納容器から取り出した」と発表した。デブリというのは東日本大震災で炉心溶融を起こし、燃料棒と機材などが溶けてできた塊。放射線量がきわめて高く、これまでは取り出すことが出来なかった。今回やっと取り出しに成功したが、その大きさは5ミリ程度、重さはたったの0.7グラム。それでも、このデブリを徹底的に調べるこ...
◇ 大統領に議長を解任する権限はあるのか = 「トランプ次期大統領から辞任を求められたら、どうしますか」と、パウエルFRB議長にきわどい質問が飛んだ。それまで和やかに答えていたパウエル議長は厳しい顔になり、「ノー」と一言。さらに「自ら辞任するつもりはない。解任は法律的に認められていない」とも付け加えた。FRBが政策金利の0.25%引き下げを決めた7日、その利下げを発表したあとの記者会見での出来事である。...
◇ トランプ政策 + 追加利下げ ⇒ ? = ダウ平均は先週1937ドルの大幅な値上がり。終り値は4万3989ドルで、またまた最高値を更新した。SP500も新高値を付けている。火曜日にはサービス業の景況指数が2年3か月ぶりの高さとなったことを受けて400ドル以上も上昇、さらに水曜日にはトランプ前大統領の勝利で1500ドル値上がりした。しかし木曜日にFRBが0.25%の追加利下げを発表しても、株価は全く動かなかった。日経平均も先週は144...
◇ 代わりに絶好調のエヌビディアが入る = かつては世界中で売られたパソコンに、インテル製の半導体が使われていた。その証拠に、日本で売られたパソコンには「インテル入っている」のシールが貼られていたことは記憶に新しい。ところが、こんどはそのインテルが出て、エヌビディアが入った。ダウ平均株価を構成する銘柄の話である。この8日から入れ替えると、ダウ平均を作成・管理するSPダウ・ジョーンズ・インデックスがこう...
◇ 玉木代表の戦略を読み解く = 国民民主党が公約として掲げた経済政策の内容は、多岐にわたっている。まず税制改正では、所得税の非課税限度を103万円から178万円に引き上げる。ガソリン税に関するトリガー条項を復活する。さらに消費税を一律5%に引き下げ、インボイス制度を廃止する。また電気料金を下げるため、再生可能エネルギー賦課金の徴収を停止する・・・。このほか現役世代の負担を軽減するため、後期高齢者の3割負担...
◇ まずは「103万円のカベ」を打ち壊す = 新しい経済政策、来年度の税制改正をどうするか。国民民主党はこうした重要な問題について、自民・公明両党との間で早急に協議することで合意した。国民民主党は「実質賃金の引き上げ」を公約しており、まずは所得税の非課税枠拡大を議題にしたい考え。またガソリン料金に関するトリガー条項の凍結解除も求める方針のようだ。国民民主党に離反されると政権がもたない自民・公明党が、ど...
◇ 大統領選後は「買い」か「売り」か = ダウ平均は先週62ドルの値下がり。終り値はかろうじて4万2000ドル台を維持した。10月の雇用統計、大統領選挙、FRBの政策決定会合と続くため、市場はなかなか手を出しにくい。それでも雇用者の増加数が1万2000人にまで落ち込むと、FRBによる利下げが早まるという見方が広がり、株価は上昇した。このことは、環境さえ整えば買いが入ることを明示している。日経平均は先週140円の値上がり。...
◇ 巨額のコストは誰が払うのか = 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が29日、東日本大震災で停止して以来13年7か月ぶりに再稼働した。いま日本にある原発は33基。このうち大震災のあと再稼働した12基の原発は、すべてに西日本に所在するもの。東日本で原発が再稼働するのは初めてのことである。経済産業省は「原発を出来るだけ活用する」という政府の方針に沿った動きと自画自賛。マスコミもだいたいは歓迎しているようだ。女川...
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◇ 「イランは弱い」が市場の感覚に = ダウ平均は先週9ドルの小幅な値上がり。終り値は4万2207ドルで、5月27日からずっと4万2000ドル台で推移している。何も決められなかったG7(主要7か国)首脳会議、政策金利をまた据え置いたFRB、そしてイランを巡る中東情勢の緊迫化など。市場にとっては大きな悪材料が続出したが、株価は高値で頭打ちの形となっている。先行き不安はあるけれども、大きな落ち込みは回避した。日経平均...
◇ これで本当に“票”になるのか? = 自民・公明党が公約した「現金給付」の欠点。まず高所得者にも給付されること。たとえば年間所得1500万円で区切ろうとしても、事務的な作業が複雑で出来ない。また過去の経験からみると、給付金の半分近くが貯蓄に回ってしまい、消費が目立って増加することはなかった。仮に現金給付の対象を「18歳以下の子どもと住民税非課税世帯の人だけ」に限れば、線引きも簡単に出来るはず。しかし、それ...
◇ 与野党ともにバラマキ専門 = 自民党は7月の参院選に向けた物価対策として「現金給付」を公約とすることを決めた。国民1人当たり一律2万円とし、さらに18歳以下の子どもと住民税の非課税世帯に住む大人には1人2万円を追加する。所得制限は設けないという内容になりそう。当初は渋っていた公明党も同調したので、与党の公約は「現金給付」で一本化された。野党の公約は「消費税の減税」に集中している。たとえば立憲民主党は「...
◇ 与野党がぐるになって無責任 = 年金改革関連法案が先週12日、参議院で可決され成立した。これにより、まずパートなど短時間労働者が厚生年金に入りやすくなる。具体的には106万円以上という年収条件や従業員51人以上という企業規模条件が撤廃される。また高所得者の厚生年金保険料の引き上げも決定した。ただし基礎年金である国民年金の底上げについては、5年後に考えるという。これではとても年金“改革”法などとは言えない。...
◇ 中東に上がった巨大な火柱 = ダウ平均は先週565ドルの値下がり。ハイテク銘柄の回復を中心に強含みの相場が続いたが、週末にはイスラエルのイラン核施設攻撃で急落した。それでも終り値は4万2000ドル台を維持している。しかし中東情勢は一気に緊迫しており、強い警戒感が続くだろう。イスラエル対アラブ諸国の全面戦争に発展するか。アメリカが巻き込まれるかどうかが、当面の焦点となっている。日経平均は先週93円の値上がり...
◇ 日米交渉も手詰まり感が強い = トランプ大統領が振りかざす最大の武器は、もちろん関税。だがいま、その関税引き上げの法的根拠が大きく揺らいでいる。国際貿易裁判所は5月28日「トランプ大統領が発動した相互関税などは大統領の権限を越えており無効」という判決を下した。トランプ政府の控訴で連邦巡回区控訴裁判所が「その判決を一時停止」としたため、相互関税はまだ効力を保っている。しかし8月以降に、控訴裁判所がどん...
◇ 習近平主席に弱みを握られた? = トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”大作戦が行き詰まっている。米中両国は9-10日、ロンドンで貿易摩擦を巡る2回目の閣僚交渉を実施した。出席者はベッセント財務長官、グリア通表代表部代表と何立峰副首相ら。アメリカ側はレアアースの輸出規制解除を強く要請、中国側もアメリカの輸出規制緩和などを主張した模様。結果として5月にスイスで行われた第1回閣僚交渉で決まった「出来るだけ...
◇ 昨年だけで香川県に匹敵する人口が消滅 = 厚生労働省が発表した24年の人口動態統計によると、日本人の出生数は68万6061人で前年よりも5.7%減少した。生まれてくる赤ちゃんの数が年間70万人を下回ったのは、初めてのこと。国立人口問題研究所は出生数が70万人を割り込むのは39年と推計していたが、それが15年も早まってしまった。一方で死亡者数は増加しており、人口の自然減は91万人を超えた。この減少数は香川県の人口に、...
◇ NY株価はトランプ就任直前まで戻す = ダウ平均は先週493ドルの値上がり。終り値は4万3000ドルに接近した。特に金曜日には発表された5月の雇用統計が予想より堅調だったため、景気に対する警戒感が和らいだ。SP500は3か月半ぶりに6000を回復、トランプ大統領が就任する直前の水準に戻している。この戻りの中核となったのは、M7と呼ばれる最先端企業。なかでも半導体関連銘柄が、大きく値を上げてきた。日経平均は先週223円の...
◇ 競争ではなく“協業”の勧め = 韓国の大統領選挙で、革新系の最大野党「共に民主党」の李在明前代表が圧勝。直ちに大統領に就任した。この人はかねて中国・北朝鮮に融和的であり、アメリカや日本を痛烈に批判したこともあった。このため日本国内では、その政治姿勢を警戒する風潮もないではない。しかし今回の選挙に関してみると、李在明氏は態度を全く変化させている。就任式の演説でも「韓米同盟を土台に、韓米日協力を固める...
◇ 26年3月期は6年ぶりの減益見通し = 日経新聞が東証プライムに上場する約1000社について、26年3月期の決算見通しを集計した。それによると、純利益は前年比7%の減少となる見込み。このところ絶好調を続けてきた企業業績も、6年ぶりに減益となる。トランプ関税や円高を収益悪化の理由として挙げている企業が多い。製造業も非製造業も7%の減益になる見通しで、特に自動車・鉄鋼・海運・電力の利益が大きく減少する。同じく日...
◇ 金融市場も仰天、消化不良 = 「トランプ関税は違法」という判決が出て、多くの人々をびっくり仰天させた。アメリカの国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領が実施した相互関税などは「大統領の権限を逸脱しており無効。10日以内に関税を停止するための行政手続きを発令せよ」という判決を公表した。これに対して、トランプ政権は直ちに控訴。すると連邦巡回区控訴裁判所があくる29日に「この判決を一時停止する」という命...
◇ 関税裁判に戸惑う金融市場 = ダウ平均は先週667ドルの値上がり。休日明けの火曜日に741ドル上昇したあとはほぼ横ばいで、終り値も4万2000ドル台を維持した。火曜日の上げは、トランプ大統領がEUに対する50%関税を7月9日まで延期すると発表したことを好感した。ただし「火を付けておいて、水をかける」トランプ・マジックのやり方はもう限界。株価の反発は小さくなってきている。エヌビディアの好決算を受けて、半導体関連銘...
◇ 市場も慣れてきたけれど・・・ = ダウ平均株価は休日明けの27日、740ドル以上も反発して4万2000ドル台を回復した。先々週は5営業日とも下落し週間1300ドル以上も値下がりしたが、これで下げ基調はいったん中断された形になっている。続落した原因は下院が減税法案を可決したことで財政不安が増大したこと、それにトランプ大統領が突如としてEUに50%の関税をかけると発表したことだった。そして急反発した原因は、トランプ大...
◇ 曖昧な石破首相の指示 = 「コメは買ったことがない」と放言して、江藤農水相が罷免された。後を継いだのは、小泉元環境相。苦虫を嚙み潰したような顔で「コメの価格引き下げに全力をあげる」と約束した。石破首相は新農水相に「競争入札は止めて随意契約にせよ。早急に5キロ当たり3000円台に下げろ」と指示している。この方向は正しい。だが「3000円台に下げろ」という指示は、あまりにも曖昧すぎる。3000円でも3999円でも、...
◇ 金利上昇に怯えたNY株式市場 = ダウ平均は先週1326ドルの大幅な値下がり。5日間の続落で、終り値は4万2000ドルを割り込んだ。トランプ減税法案が下院で成立、財政の悪化が見込まれることから長期金利が上昇。株式市場に冷風が流れ込んだ。また週末にはトランプ大統領がEUに対して50%の関税をかけると恫喝、貿易摩擦の悪化が心配されて、これも株価の下落につながった。日経平均は先週593円の値下がり。6週間ぶりの下落となっ...
◇ ゴーン流の大リストラで再建を目指す = 「デジャビュ」という言葉がある。もともとはフランス語だが、英語の辞書にも“dejavu”と出ている。訳せば「既視感」、つまり「いつか見たような光景に出会った感覚」のこと。日産自動車の今回の発表をみて、この既視感にとらわれた人は少なくないだろう。その「見たような光景」とは、あの悪名高いカルロス・ゴーン元会長が1999年に断行した大規模リストラ。5つの工場を閉鎖し、2万1000...
◇ 存亡の危機で7工場を閉鎖へ = テレビCMでは「やっちゃえ! 日産」と元気よく走り回っていた日産自動車が、またまた重大な経営危機に陥った。発表によると、25年3月期は最終6708億円の大赤字。そこへトランプ関税の影響も加わるから、このまま行くと倒産しかねない。そこでやむなく厳しいリストラに踏み切ることになった。28年までに世界に17ある完成車工場を10に減らし、従業員の15%に当たる2万人を削減するというのがその...
◇ 物価と円相場しだいの日本 = ちょうど1年ぶりに、マイナス成長に落ち込んだ。内閣府が先週16日に発表した1-3月期のGDP実質成長率は、年率換算でマイナス0.7%に。住宅投資や企業の設備投資は健闘したが、個人消費が年率換算でプラス0.1%と伸びず、また輸入が12.1%も増加して足を引っ張った。このほか輸出が2.3%の減少、政府の公的投資も1.8%減少してマイナス要因となっている。個人消費が伸び悩んだのは、物価の上昇で家...
◇ 伸び始めたトランプ関税の影 = ダウ平均は先週1405ドルの大幅な値上がり。終り値は4万2600ドル台を回復した。月曜日には米中両国が関税率をともに115ポイント引き下げることで合意したため、株価は1160ドルも上昇した。その後も貿易戦争の緩和期待から買い気は強かったが、その半面ではトランプ関税の悪影響が意識され株価の上値は重くなった。たとえば1-3月期の実質成長率はマイナス0.3%、景気の悪化を見越した個人消費の...
◇ 主要68都市で住宅価格が下がる = 中国の不動産不況は、なかなか改善しない。改善どころか、やや悪化している面さえ見受けられる。たとえば政府の発表によると、この5月に新築住宅の価格が下落したのは主要70都市のうち68都市。3月の57都市、4月の64都市よりも拡大した。統計局の発表によると、5月の鉱工業生産は前年比5.6%増、小売り売上高は3.7%増と底入れの形。しかし新築住宅の面積は24%の減少で、景気の足を大きく引っ...
◇ 韓国や台湾との奪い合いに勝てるか = 厚生労働省の集計によると、23年10月末時点で日本で働く外国人は204万8675人。前年より22万人増えた。出身地をみると、ベトナムが全体の25%を占めて最多。続いて中国、フィリピン、ネパールの順となっている。また働いている分野は製造業が55万人で最多、続いてサービス業、卸・小売業の順となっている。200万人を超えたのだから、ずいぶん多くなったという感じは否定できない。だが現実...
◇ 受け入れ制度は改善したけれど = 少子高齢化の急速な進行で、日本は恒常的な人手不足の状態に陥る。だから外国人労働力に頼らざるをえない。そこで政府は外国人労働者の受け入れ制度を、大幅に改善した。その目玉は「育成就労制度」の新設。技能を持たない未熟練の外国人でも受け入れて育成し、技能を積めば「特定技能」に移行して最終的には永住できる道も開いた。関連法案が14日の国会で成立、27年までに運用を開始する。「...
◇ なぜ、きちんと説明しないのか = 日銀は先週14日の金融政策決定会合で「長期国債の買入れを減額する方針」を決めた。ただ具体的な内容については「7月末の次期決定会合で決める」という。日銀は13年の異次元緩和から国債の購入を大幅に増やしてきたが、これで事実上の量的引き締めに転換する。植田総裁は記者会見で「減額は相応の規模になる」と述べた。だが、この日銀の決定については判らないことが多すぎる。まず、なんで...
◇ 日銀の国債買い入れ減額は消化不良 = ダウ平均は先週210ドルの値下がり。終り値は3万8589ドルで、この3週連続で3万8000ドル台を上下した。FRBは12日の会合で「政策金利の据え置き」を決定、年内の利下げ回数を3回から1回の予想に縮小した。このため市場には弱気が広がったが、大きくは下げていない。ほぼ織り込み済みだったこともあるが、たとえ1回の可能性でも利下げに頼らざるをえない状態を反映しているようだ。日経平...
◇ 岸田首相の大いなる誤算 = 所得税と住民税の定額減税が6月から実施された。原則として1人当たり所得税が3万円、住民税が1万円の減税となる。したがって夫婦と子ども2人の世帯では、16万円の減税となる計算。ただ納税者が年収2000万円以上の場合は対象外、減税の対象者は9500万人になる模様。岸田首相は「この措置によって家計の収入増が物価高を上回り、経済の好循環が始まる」と胸を張った。だが評判は、すこぶる悪い。新聞...
◇ ユーロ圏やカナダが利下げに踏み切った = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は6日の定例理事会で、政策金利を4.5%から4.25%に引き下げることを決めた。ECBはユーロ圏20か国の金融政策をつかさどる中央銀行。インフレに対処するため、22年7月から10回にわたって金利を引き上げた。ユーロ圏の消費者物価は22年10月に前年比で10.6%も上昇したが、最近は2%台の上昇に落ち着いてきている。ことし3月以降、主要国ではスイス、ス...
◇ それでも利下げに頼るしかない = ダウ平均は先週113ドルの値上がり。この2週間はずっと3万8000ドル台で上下している。そうしたなかでも、ニューヨーク市場では「9月の利下げは確実」という期待が膨らんでいた。小売り高が伸び悩み、求人数が激減するなど、景気の鈍化を示す指標が続出したからである。さらにECB(ヨーロッパ中央銀行)とカナダ中銀が利下げを発表、市場の期待はいっそう強まった。ところが週末に発表された...
◇ なぜ日銀はコソコソ動くのか = 東京債券市場で22日、10年もの国債の流通利回りが一時1%を超えた。13年5月以来11年ぶりのことである。理由は日銀が通常の買い入れオペで、国債の購入額を突如として減らしたからだ。このため国債の流通価格が下がり、利回りが上昇した。2年ものや5年もの国債の利回りも上昇している。市場では「日銀が政策金利の引き上げ準備を始めた」という観測が、一気に広がった。市場の観測はまだ収斂して...
◇ 補助金→生産増→安売り→輸出増 = いま中国は不動産不況に悩んでいるが、鉱工業生産だけは順調に増加している。だが主要製品の生産は過剰で、価格が下がっていることも事実。たとえば4月の卸売り物価でみると、鉄鋼の価格は前年比8.1%の下落。4月の消費者物価でみると、自動車は4.3%、スマホは2.9%の下落となっている。しかし価格が下落しても、生産は衰えない。政府が補助金を出して、増産を奨励しているからである。国内で...
◇ 米政府が中国製EVに関税100% = バイデン政権は先週14日、主要な中国製品に対する制裁関税の大幅な強化を発表した。EV(電気自動車)については25%だった制裁関税を100%に。また自動車などに使用する旧世代の半導体については25%を50%に。車載用リチウムイオン電池は3倍の25%に。太陽電池は2倍の50%に。さらに鉄鋼とアルミは3倍の25%に引き上げる。通商法301条に基づく措置で、「安価な製品の流入を防ぎ、国内産業...
◇ 当面の焦点は22日のエヌビディア決算発表 = ダウ平均株価は先週末、とうとう4万ドル台に乗せた。20年11月の3万ドル乗せから、3年半での大台替わり。4月の雇用情勢や小売り売上高、それに消費者物価が、そろって予想をわずかに下回る伸びに。FRBの利下げが早まるという期待が高まって、株価を押し上げた。ただ高値で確定売りも出やすくなっている。今後も株価は上昇を続けるのだろうか。当面の関門は、22日に発表されるエヌ...
◇ ダウの続伸は半導体の業績しだい = ダウ平均は先週491ドルの値上がり。金曜日には、終り値でとうとう4万ドル台に乗せた。1999年3月に1万ドル、2017年1月に2万ドル、20年11月に3万ドルという上昇の軌跡。この10年間では2.4倍に膨張している。先週の値上がりは、4月の消費者物価と小売り売上高が予想をやや下回ったことが原因。FRBが利下げを早めるのではないかという期待が、市場に広まった。日経平均は先週558円の値上がり...
◇ 物価の上昇で節約ムード広がる = 内閣府は16日、ことし1-3月期のGDP速報を発表した。それによると、名目経済成長率は年率換算でプラス0.4%、実質成長率はマイナス2.0%だった。不正認証問題で自動車の生産が減少、消費や輸出にも悪影響が及んだ。しかし名目成長率はプラスを維持。物価が3.6%上昇したために、実質成長率はマイナスに沈んでいる。こうしたなかで特に注目されたのが、個人消費の落ち込み。これで4四半期連...
◇ 達成できない計画の連続 = エネルギーの大半を輸入に頼る日本にとって「エネルギー基本計画」は最も重要な経済政策の青写真だと言える。2003年に初めて作成され、その後3年ごとに改定されてきた。だが残念なことに、この計画目標が達成されたことはない。目標の水準が高すぎるのか、それとも達成するための具体的な政策に欠陥があるのか。いずれにしても、責任官庁である経済産業省の失態。ことしは改定の年に当たっているが...
◇ 太陽光発電は余って困っているのに = 気象庁の予測によると「ことしの夏は猛暑になりそう」だという。そして気温の上昇とともに、電気料金もどんどん上がりそうだ。たとえば標準家庭について6月請求分をみると、東京電力は8538円で5月より401円高くなる。大手10社がすべて値上げし、いちばん高いのは北海道電力の9114円。いちばん安いのは九州電力の7101円ということになる。国際的なエネルギー価格の高騰に、円安による輸入...
◇ 景気後退の予兆も現われた = これまで暖流に囲まれてきたアメリカ経済に、寒流が入り込み始めた。再び暖流が勢いを取り戻すのか、それとも寒流が強さを増して行くのか。まだ断定はできない。ただ景気後退の予兆も現われており、もし寒流が勢いを増すと、FRBによる利下げが早まったり、円高が進行したりする。日本経済への影響も非常に大きいので、注意が必要だ。潮目の変化は、まず4月の雇用統計に表われた。非農業雇用者...
◇ ダウ平均は最高値更新の勢い = ダウ平均は先週837ドルの値上がり。5月に入ってからは8連騰で、終り値は3万9513ドル。3月末に記録した史上最高値まで、あと300ドルに接近した。4月の雇用統計で雇用者の増加数が予想を下回り、FRBの利下げ期待感が増大。また3月期の企業決算が好調だったことも、株価を押し上げた。さらにハマスが休戦案を受け入れたことで、安心感が広がった。日経平均は先週7円の小幅な値下がり。ニューヨ...
◇ 個人消費の減り方に注目 = 内閣府は16日に、ことし1-3月期のGDP速報を発表する。それに先駆けて民間の調査機関が、続々と予測の結果を発表した。読売新聞によると、民間10社が予測した実質成長率は年率換算でマイナス1.0%~マイナス3.3%。全社がマイナスを予測し、その平均値はマイナス1.8%だった。NHKも11社について、ほぼ同様の内容を報道している。民間の事前予測は当たらないこともあるが、全社がマイナスを予...
◇ 理屈に合わない日銀のアプローチ = FRBは急激な金融引き締め政策で、インフレを抑え付けようとした。しかし物価はまだ3%以上の上昇を続けている。これを2%の上昇にまで下げることが最終的な目標。だが、これ以上の引き締めは景気を悪化させる危険があるので難しい。このため政策金利をずっと5.25%に据え置いたまま、様子を見ているのが現状だ。それでも「物価2%」という目標は、満月のようにはっきりと見えている。日...