『電気蚯蚓は宇宙を夢見る』は、村松恒平責任編集のブログ文芸誌です。
面白い小説が読みたい人、小説家になりたい人、エッセイや文章が書きたい人、プロの編集者に編集してもらいたい人。 そういう人々のための必殺ブログ雑誌。
玄関まで庭を横切る黒い敷石のひとつには、石鹸置き程度の窪みがあった。蒸し暑い8月の夕方、少年はその傍らにしゃがみ込んで、こぶし大の石を持ってコツコツと「穴ぼこ石」を打っていた。窪みには、潰された毛虫と虹色に光る体液が澱み、手にした石の先には、毛虫の棘や毛が付着していた。 少年は、額から滴る汗を気にも留めずに、跡形もなく毛虫を潰すとすぐ後ろの柿の木を物色して、毛虫の付いた葉をちぎり、器用に石の窪み…
「あいたた」 左肩の痛みに幸太は体をひねった。さっき腰掛を粉々にした大男が背後から幸太の左肩をつかみ右腕を幸太の首に回して喉を抑えていた。王の兄さんが大男をなだめるように何か言った。大男は土間につばを吐いてしぶしぶと腕を緩めたが、幸太を放しはしなかった。 「私は頌世。弟、頌張が大切なもの持って逃げた。私たちは取り返す。」 「兄さんへの土産じゃと言うとったぞ」 「わたし、兄さん。吉林は兄さんいな…
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