巻二の四 『二寸殿(にきどの)』のこと
<初出:2007年の再掲です>巻二の四『二寸殿(にきどの)』のこと丹羽長秀もできるだけのんびりと、できるだけ敵の目の届く木曽川に近い街路を、愛馬『二寸殿(にきどの)』にまたがって行く。金糸・銀糸の『狩衣』であでやかに着飾り、『二寸殿』も轡・貝鞍(螺鈿細工の鞍)・泥障(あおり)・鐙・腹帯(はるび)に鞦(しりがい)と皆具に仕立て、総体に金覆輪をほどこしてあり、目もくらむようなきらびやかさである。『二寸殿』もこれには上機嫌らしく、しきりに長秀の握る手綱を「ぐいっ、ぐいっ」と前に引っ張って鼻を鳴らし、「いいね、いいね」と主人に伝える。丹羽長秀が二寸殿にであったのはいまから三年ほど前の弘治三年(1557)年末、織田信長が舎弟勘十郎信行を誅殺した一件の直後であった。出合った時三歳の駒であったので現在は五歳ということに...巻二の四『二寸殿(にきどの)』のこと
2025/03/30 00:00