巻一の八 信長、首実検を行なうこと
<初出:2007年の再掲です>巻一の八信長、首実検を行なうこと永禄三年(一五六0)五月二十日朝、丹羽五郎左衛門長秀は冷たい水で顔を洗い、はれぼったい目を強引に開け、清洲城下での首実検の準備を続ける。昨夕織田信長と打ち合わせをした後、一睡もしないでこの日の朝を迎えていた。まずは昨夜のうち、訪問したばかりの黒田城に、「今回たまたま乱戦となり恐れ多くも駿河の太守義元殿の首級を獲ってしまった。駿河に対しては何の意趣もないので申し訳ないことをした」と使者を立てて伝え、京都方面への情報を操作する。和田新介定利からは了承した旨の返答が入ったので、おそらく近江の兄和田惟政から京都へこの旨確実に伝わるだろう。次に『飛び馬』を鳴海城に走らせ、岡部元信に今回討ち取った駿河衆・三河衆の姓名をわかる限り伝え、それぞれがどういう宗教...巻一の八信長、首実検を行なうこと
2025/02/23 00:00