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  • 微熱 - 109 -

    「ほんと、ごめん……」 自分のやってしまったことに打ちひしがれていると、また強い力で俺の手首が引っ張られ、勢いよく流れ落ちる水の中に引き摺りこまれた。「おまえの方が重症だろう」「へ……いきだし」 と言えるほどほんとうは平気じゃない。ヒリヒリと肌を刺すような痛みとジンジンとした疼くような痛みが内側から突きあげてくる。夏とは言えここの水は井戸水で冷たく、冷やしているうちにちがう痛みまで感じはじめて、逃げだ...

  • 微熱 - 108 -

    着替えを終えて向かったのは西の離れではなく、階段を降りてすぐのところにある二間続の部屋だった。そこは庭の眺めがいちばんよく見える部屋で、俺も子供のころにはよくその部屋の前の縁側に座って庭を眺めていた。(なんでわかったんだろう?) 客が待てそうな部屋は十くらいあるのに、啓史さんは迷わずこの部屋の襖をひらいた。そして、樫木もそれが当然とばかりに、その部屋のソファに主のようにどっかりと腰を据えていた。...

  • 微熱 - 107 -

    樫木と啓史さんが、俺が啓史さんと知り合うずっと前からの知り合いだってことは知っている。そのことで嫉妬するのはまちがいだってこともわかっている。わかってはいるけど、啓史さんが今でも樫木のことを『龍成』と下の名前で呼ぶと胸の奥がモヤモヤとする。それだけで嫌な感情に支配されるっていうのに家の鍵まで渡していたと知らされて、俺は泣きたいような喚きたいような、そんな感情を抑えるのに必死にならなきゃならなくな...

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月下香 〜男たちのものがたり〜
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