チャンドラーの『高い窓』を村上春樹の新訳で読んだ。ほぼ50年ほど昔、たぶん清水俊二訳で読んでいるのだが、まるっきり筋立てを忘れていて、初めて読む本と同じだった。ところが妙なことに情景描写に既視感があった。たとえば次のような箇所。「外はもう暗くなり始めていた。ラッシュ時の車の騒音はやや静まったものの、開けた窓から入ってくる風は、まだ涼しい夜風とは言いがたく、そこには一日の終わりにつきものの埃っぽい、くたびれた匂いが含まれていた。自動車の排気ガス、壁や歩道から放射される陽光の余韻、無数のレストランから立ち上る料理の匂い(略)温かい気候の中でユーカリの木が発する雄猫のような、あの独特の匂いだ」この描写はハリウッドの丘の住宅地のことである。私が初めてアメリカ西海岸を旅し、ハリウッドの安ホテルに泊まっていたとき、どこかで...村上春樹新訳『高い窓』を読む
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