天野信景『塩尻』が示す古規復古について

天野信景『塩尻』が示す古規復古について

『塩尻』は、尾張藩士の天野信景(あまのさだかげ、1663~1733)が元禄年間から諸方の記録を書き溜めて著した随筆で、全100巻もある。以前から、幾つかの記事で採り上げてきたのだが、今回は黄檗宗と臨済宗、そして曹洞宗の関係を示した一節を見出したので、記事にしておきたい。○隠元禅師東来の後、万福禅寺を創建して大いに黄檗の風を振へりされば、殿堂の奇製の荘厳よりはじめ、木魚・引磬の音を珍らかに明音の誦経いとゞ面白し、衣体異にして其観一ならざるが故に、緇素一時風をなし、倣て本宗の法式を変革せしもの都鄙多かりし、寛文年間、妙心寺派の寺院、好事の禅子新奇を衒ひて旁観を駭す事ありしかは、花園の老衲等議して誓書を製し、凡四派の禅侶本山の規範を免して他門の法則を執行する事を戒禁せし〈答客問に詳なり〉、堂持台座主職に禁止の令...天野信景『塩尻』が示す古規復古について

2023/04/06 02:33