私にはスーパーお金持ちな知り合いがいます。まあ、お金だけでなく殆どありとあらゆるものを保有している男ですが、そいつはでも随分と変わり者であって吝嗇家でもあるのですね。いや、けちというか、自分の目的には全部差し出せても、それ以外のことに無頓着...
譜を音にする。 それだけの慣れ親しんだ行為がこんなに緊張するとは思わなかったと、オーキッドプロダクションの若き編曲家、類村慎樹は三つ色で染めた短髪を指先で掻きながらそう述べた。 素直に音楽に仕立て上げる、それだけの本来そう過つことのないはず
片桐朝茶子という少女は人界にあってしまった天国である。 そして、町田百合は人界に溢れ出ぬよう地獄を抑える蓋だった。 『そういえば結局、あの音楽家さん? あたし達の曲書いてくれなかったねー。どうしてだろ?』 「はっ、そりゃ心壊れた後に他人のこ
この世に太陽が一つしかないというのは常識ではあるが、それは果たして何故だろうか。 生命が育まれるに丁度いいのがこの奇跡の恒星一強の環境であるが故に、大星は複数に並ばない。 だが、並べてそれと喩えてカシマレイコを太陽と呼んでいるばかりのアイド
七坂愛はこれまで姉という人を今ひとつ知らなかった。 なにせ、姉だという舞は自分のことをよく見てくれないし、直ぐお父さんお母さんと口喧嘩を始めるし、何よりお家に帰ってくることすら希なのである。 また寒そうな服に強い匂いを纏う目つきの悪いお姉ち
さき。それは、町田百合の数少ない友人、遠野咲希のアイドル名である。 名称のひらがな二文字で可愛さを全力アピールしているつもりの彼女は、2メートルにすら迫らん程の成長を見せる物理的大型新人。 彼女はアイドルって何だっけ、という程凄まじい身体能
アイドル四天王というものが出来たのは、カシマレイコという天上に付き添うように高度化した少女たちをただのアイドルたちと纏めるのが不可能になった群集の心理に拠って撚られたためとされる。 だがそんな緊急退避的な称号が今や四様の篩のよう。彼女らの何
「……美味しいです」 一人蕎麦屋のカウンター席に座して、一口いただいて直ぐにそう零したのは碧い目をした栗毛のウマ娘。 主人が少女のためにとせいろ蕎麦たっぷりと盛りに盛ったは十人前。だが、彼女にとってそれは腹八分目に収められる程度でしかないの
「♪」 目隠し少女が歌った、踊った、微笑んだ。そればかりで華やぐのは、少女の実力が上等に至っているがため。 何もかもが見かけばかりのハリボテでもいい筈のアイドルというものの中で、つま先からてっぺんまで基礎から何までしっかりと詰まった希少な本
遠野幹彦は、カシマレイコを見いだした栄誉からマネージャーという名のままになっている彼女専属プロデューサーである。 独立した後、社長業も行うというよく分からないことになっているが、それくらいに幹彦という男はカシマレイコというバケモノアイドルに
望遠鏡で空を覗いてみたところで神と視線が合わないように、人と神々とはあまりに遠すぎる。 だが、アイドルという人界の賑やかしの中にのみ、それは確かに近くあると多くにされて崇められてすらいた。 握手なんて以ての外。電子に載っかった顔と美声ばかり
実力を天にまで示した。そして、それは網によって地べたに広く拡散されていく。 情報化社会においても遍く全てが、とはいかなくてもそれは少女が傑物であると世に知らしめるのには十分なもの。 それくらいに、初ライブの映像はしばらく多方面に注目された。
はじまりがあれば、終わりがあるのは自然。 また、その間隙に全力が賭されていたならば、そう長い間続くものではない。 町田百合の記念すべき初ライブは、駅前に熱狂をもたらしながら一時間足らずで彼女のばいばいと共に終わった。 虜となった聴衆に背を向
高遠稲は、芸能事務所として老舗の域に入っている中堅どころ、オーキッドプロダクションのアイドルである。 子役として事務所入りしてから、カシマレイコに憧れてアイドルの道へ進んだ彼女。 今は亡きお婆ちゃんから貰った名前に芸名を被せることなく大切に
それは、ただ映るだけで世界を墜とせたというのに、彼女はあまつさえ歌って舞って、終いに笑んだ。 やがて世界は、彼女のために凝った。 そう、彼女こそとびきりのアイドルという偶像。 偶像を計るには、持つ権能を見ればいいのだろうが、生きとし生けるも
「ふへぇ……意味分かんねぇですぅ……」 一日終わり、歩む目隠し少女は懊悩に首を傾げる。 毎年周ってくるバレンタインデーというものは、これまで町田百合の心を動かすのに足る一日にはなっていなかった。 そう、たとえ自分の作ったケーキを踏みつけられ
輝田(きだ)プロモーションに所属するアイドルチーム、トゥインクルチアーズの吉野友実と言えば最近そこそこに知られるようになった存在である。 センター、でこそないがチームの中でもアイドルに必要なすべての技術が際立った一人であれば、自ずと目立つ。
遠野咲希にとって、二月十四日というものは、近頃甘いより苦いイメージが強い。 咲希は、食べ物、ひいてはチョコレートが大好きである。花より団子という言葉があるが、花も団子もいらないからチョコを口いっぱいに含みたい、というのが咲希の本音。 特に幼
「ふあぁ……もう甘ったりぃ匂いがする気がしますねぇ……」 二月十四日はバレンタインデーであるという情報くらい、百合だって知っている。 コマーシャルに、誰かの話題、創作の一部。そこら辺が二月のはじめ頃から甘い茶褐色に切り替わっていくのだから、
炎は、燃焼している。罪科を薪として、かけがいのない命だったものを煤として、それでも彼女の内では無常が盛んに。 地獄というのは、本来何より空想であるべき代物である。末期の先の罰なんて、諭しのための道具でしかない方が良かった。こんなの、信賞必罰
「はぁ……どうしてオレったら、こんなに面倒なことばかりやらされるかねぇ……」 中井裕太は昨今流行りのアイドルマネージャーになって日が浅い男性である。 もともと手足の長さが自慢の彼は男性アイドル志望であったが、事務所に所属し年若くして重く下積
偶に幻想物質ではなく、タンパク質等を主にして創られてしまった地獄の蓋であるところの町田百合。 本来無機質であるべきなのに、熱情によって活動的に動いてしまっている彼女は、存外見目を気にしていた。 まあ、その目を開けばどんな格好をしていようが台
遠野咲希は高身長に長い手足が特徴的で、そこに少し肉が付いてきてしまったことを気にする年頃の女の子だった。 そんな、体重計を蛇蝎のごとくに嫌う少女は、しかしトレーニングを欠かすことはない。 「一、二、三、一、二……」 美しく、コンパスのように
町田百合は悪辣な視覚情報である。一度奥まで見れば、終わりを知る。最果ての地獄を孕んだ生き物など、蠢くべきですらないかもしれない。 そんなものが眼帯をつけて偶像になりきろうとしているのだ。当然、無理が出るというものである。 「あぐっ!」 地熱
吉野友実という少女は、アイドルになるために生まれてきたような存在である。 見目は当然のように麗しく、運動神経も抜群で体躯はどこまでも柔らかく、目的のためには媚びることすら容易い精神まで持ち合わせていた。 笑顔なんて、意識するまでもなく人生の
与田瑠璃花という元アイドルであるトレーナーにとって、町田百合という少女は不可解そのものだった。 稚児より下手な歩みで、驚くほどに音痴であり、笑顔を作ることすらぎこちない、そんな無才の全体で彼女はトップアイドルに本気で至ろうとしている。 この
町田百合は地獄に繋がる目を薄く塞いで生きている、少女である。 彼女の視界は常に薄くベールに覆われているし、もとより良くない視力は世界をそのままには映さない。 汚穢すらも彼女に届くまでには大いに欠けていて。 だからこそ、百合にとって世界は遍く
好きという言葉は嘘で、嫌いという思いも間違いで、なら私に正しさなんて一つもない。 嘘つきの自分はきっと天国にはいけないだろう。あの果てしない清涼には至れやしない。 つまり、これから向かうのは地獄なのか。私は痛くて辛いばかりの、どん詰まりに至
田所釉子は、アイドルだった。 それも、ただのアイドルではない。天上には及ばずとも、まずただの花として飾られるばかりの代物ではなかった。 喩えるならばそれは、輝石。可憐を綺羅びやかな明かりの中輝かせて、その多面な美を周囲に振りまく、そんな少女
地獄に焦がされ続ける普段から我慢は得意で、身体は役目に則り復元力に富んでいる。 ならば、何本か欠かした歯を食いしばった百合が、痛みに耐えながらベッドの上に固定されたひと月を狂わずに過ごせたのは当然だったかもれない。 だが、普通ならば、ただの
百合は、地獄の蓋である。 つまり地獄の天板であり、皆がそこまで落ち込んでしまないように、踏み敷かれる役割。最低値を超えないようにある、底辺。そんなヒトガタが、百合だった。 だが、ヒトガタであるからには、成長が許される。ならばと焦げ付いた心で
町田百合は、地獄が溢れぬように取って付けられた蓋である。それが偶に人の形をして産まれているだけ。 彼女はその役割故に何より地獄に灼かれ続けることこそ重要であり、人間としての能力はおまけに近かった。故に、少女の持つ能力は最低限。 しかし、悪に
ぎゃあぎゃあとカラスが大いに鳴いた、それは、昏い、昏い一日の終りのことだった。 今より十六年と少し前。町田家に、とある赤子が生まれた。性別は、女である。そして、何より彼女の属性は。 「うあぁ」 「なっ!」 地獄だった。 最初から開いていたそ
地獄の蓋として生まれた少女。彼女は瞳の奥に地獄を映してしまうために、目を隠して生きています。 ですがそんな彼女、町田百合には夢がありました。それは、トップアイドルになること。 ――悪こそ、この世のあらゆる善の番。
博麗霊夢には、親はない。 いや、正確には棄てた産みの親に育てた先代の巫女が居る筈なのだが、それらを彼女は親と見做していなかった。 顔も名前も知らない覚えていないそんな実父母は勿論のこと、没する前まで確かに衣食住を用意してくれいただろう先代の
生きるということは、ただ意識があるだけの状態ではないと小さな頃の朝茶子は思っていた。 生は推移であり、変化と反復を交えた動きの総称だと幼き少女は考えていたのである。 つまるところ、朝茶子にとっては世界の多動が生々しいものに映るのだった。太陽
〇〇〇〇は目立つことが好きだ。それは、以前までそうあることが通常だったからだったかもしれない。 だが、荷物運びで際立つことに慣れて、そして駆けっこで一番を続けることにも飽いて、やがて彼女は当たり前の勝利をつまらなく思うようになる。 なにせ、
今より十六年と少し前。町田家に、とある赤子が生まれた。性別は、女である。そして、何より彼女の属性は。 地獄だった。 その瞳は、窮まっている。腐りを過ぎて終わっていて、更には死んだ後の何かだった。そして、残酷にも、幸せな未来などそこには映って
あたしは片桐朝茶子。今日はお歌をうたうよ。 そう、さっきからあたしはなんだか趣味の入ってる狭いスポーツカーの車にゆうちゃん社長とまこさんと一緒に乗ってスタジオに向かってるんだ。 それも、歌を録音するために。いや、知らない間に作詞作曲してもら
「朝茶子様、おはようございます」 佐々木夕月にとって、朝に片桐朝茶子に挨拶をするのはとても大切なことである。 そもそも、人間関係に言葉をかけることは大事であるが、それより何より朝茶子は忘れっぽい。 少し気にしている程度の相手なんて翌日の記憶
あたしは片桐朝茶子。高校2年生の女の子だよ。 そんなあたしは朝早くからすいすいと車に乗っかったまま通学してる。学校向かうのは慣れたけれど、でも自分の足で通学出来ないってのは面白くないね。 まあ、お父さんお母さんの方針ってやつだからこれも仕方
「はぁ、めんどいですけど、仕方ないですねぇ」 日差しまだまだ暑いに足りない淡さの中。しかし天から降りてきたそれらが自分に沁みるのを嫌がる少女は、日傘を差す。 それがふりふり黒レースと白いラインに覆われているのは彼女の趣味だろうか。暗がりの衣
あたしは片桐朝茶子。実はジェンガが好きな女の子だよ。 あの積み木って、とっても楽しいよね。何しろ続ければ続けるほどどんどんもろく、スカスカになっていって、最後は崩れて台無しに。そんなのはとっても命に似ていて可愛いと思うんだ。 あたしは、一人
水木巫女子は、自分を世界で一番キレイな存在になれると思っていた。そして、キレイであれば、何もかもを思い通りに出来る、と。 そんな勘違いをずっと続けていた少女だったのである。 巫女子は小さい頃からよく言われていた、可愛い子だ、という褒め言葉を
あたしは皆のアイドル、片桐朝茶子。あ、でもまだ誰にもアイドルっぽいところって見せてなかったかも。 ということは、まだ誰のアイドルでもないんだね、きっと。これから頑張らないと。せめて、一人くらいお友達作ることが出来るようになるまでは、ね。 「
ぱたん、と扉が閉じられる。それだけですべての無闇な緊張が解けるのだから、恐ろしい。 絶世に対する畏れから逃れられた後に、残るは男二人の無意味な沈黙。寡黙では決してない大男二人であっても、しかし開放からの快感はどうしようもなかったようだ。 全
あたしはあたし。片桐朝茶子。 最近身体が硬いってことが判明したから、毎日お風呂上がりにストレッチを日課にしている女の子なんだ。 さて、そんなあたしがストレッチ以外にしていることといったら、それは芸能事務所に土日通うこと。けっこうこれ、大変な
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私にはスーパーお金持ちな知り合いがいます。まあ、お金だけでなく殆どありとあらゆるものを保有している男ですが、そいつはでも随分と変わり者であって吝嗇家でもあるのですね。いや、けちというか、自分の目的には全部差し出せても、それ以外のことに無頓着...
私のお隣の埼東ゆきちゃんはポメラニアンのワンちゃんを飼っています。そして、私は一年ほど前から首狩りウサギのミリーちゃんを飼っているのですね。生の人参と採れたてのきゅうりを用いた冷や汁が大好物の、ふわふわ綿あめみたいな改造動物さんです。普通の...
なんだかイザナミだのテュポエウスだので拡張型人間や改造人間や魔法使いみたいなちょっと人間やめてる能力者が多い「錆色の~」シリーズ世界。まあ前世の私が読んでても誰が一番強いんだよ、いや、あんた強そうなのにここで負けるのかよとなっていたのですが...
私はこの世界の大本たるお話をテキスト方式で知っています。右も左も分かっていれば、横断歩道の確認も楽ちんであるのと同じように、私はだからこそ結構危ないこの「錆色の~」シリーズ世界を渡って来れたのでしょう。まあ、実のところは悪のトップをやってる...
この世界には【イザナミ】という組織があります。世間一般には正義の組織とされている、「錆色の~」シリーズ主役の海山宗二君が所属しているとある研究所を母体として発生した団体ですね。名前はあの国生みの【イザナミ】様から採ったのでしょう。随分大仰な...
私はこの世に生じる前、ずっと『ゴミ捨て場』を眺めていた。始められたのは、ミノタウロスの伝説と多少の混合があった私は、迷宮の主としての権能だって僅かに持っていたからのことである。だが、それを続けたのは私の意志だ。おかげで捨てるべき何もかもにだ...
あまり読者様方にこう言うのは自慢をしているようで気恥ずかしいのですが、実際私は前世そこそこの天才でした。一度勉強をすれば殆どを学びきりますし、以前の学びと結びつけるのだって得意な方で、強いて言うならば発展を望むのが少し苦手でしたね。むしろ、...
さて、私はこの世界の大本が読まれるためにあるひとつなぎであることを識っています。ならば、この二次派生的な世界、ひいては私も読まれていると考えるのが自然でしょう。ただどこが最初の切れ目なのか無知な私には分からないので、今日も再びに自己紹介を重...
単純で勧善懲悪な小説の世界にTS転生しちゃった主人公さんが、私全部知ってるよとうそぶきながらなんでか全体複雑にしっとりさせちゃうお話です!ギャグがメインの架空原作に入り込んだ原作ファンが織りなす原作ブレイクぶりをお楽しみ下さいー。
この世には昔『牛の首』という怪談があった。そして、それはもうない。何故なら、その怪談を聞いたもの全てがあまりの恐ろしさに直ぐ死んでしまうからだ。そして、私はそれそのもの。終わりと同義の存在だから、故に終末の今それを物語るために生まれてしまっ...
「……ほろ、ぶ……せ、かぃ」未熟にて生まれた私は、産声よりも先に必死になってこう伝えた。これで死んでしまっても本望だからと目も見えないままに発した私の『予言』は、しかし懸命に私を生かそうとする医療現場の人間たちの騒々しさにかき消されてしまう...
心とは金剛石のように頑なでなくても良い。別段飛沫すら含んだスポンジのように柔く感じたって構うまい。擦り切れて役に立たなくなるまでに使われるそのことにもし、愛があったのなら。蝶とはひどくぶよぶよとした腹を持つ生き物である。綺麗とされる色づきが...
どう読み上げようとも世界は終わる。なら、地平に立ってみようと彼女は決めました。これはどうあっても救われない神なし世の中での、ホラーの後に残った終末にて語られる愛のお話。
「ふぅ……」一人ぼっちには、ため息が似合う。だがキングの私がするようなことではないのに、と思いながらも止められなかったことが少女の疲れの証。本日はレース後の休養に充てられた日。平素はそこそこドライな自身のトレーナーにかけられた、今はまず身体...
硬質な材の廊下に降ろされるは、靴下に包まれた柔らかなつま先。よって特に忍んでおらずとも音も立てることなく彼女は残骸としたばかりの出入り口を背に進む。背負うコウモリの羽根が骨ばかりになっているとはいえ、空を行くことが出来る少女が階段へと伸ばす...
風はどこか冷たさを帯びていながら、日差しは熱そのもの。そんなこの頃の秋の天気のもとに、優駿ばかりがくつわではなく肩を並べて競い合う。炎天に長く伸びすぎたため刈られて整ったばかりの街路樹が風に撫でられざわめいた。良バ場で行われる9月20日、日...
「ウララ……起きて」「うう……――ちゃん。分かったよお……」柔らかで心地よい、ハスキーボイス。それを何時も明日の朝の楽しみにしながら少女は寝て、起きる。ぴこぴことピンクの耳はすぐ近くの彼女の心音をすら探ろうしているかのように動く。やがてここ...
百合は、町田百合ですぅ。ちょっと前までトップアイドルってのを目指してましたぁ。そして、ちょっと前になれたんですねぇ。らくしょー……ってわけじゃなくって結構頑張らなきゃだったのが悔しいですがぁ、でもなんとかなったのは嬉しかったですぅ。これで、...
紅魔館の地下には数多の書籍を蔵した図書館が広がっている。その中心、本の山を通り越して最早奇っ怪なオブジェと化したテーブルにて一冊の厚い本がまるで風の悪戯にさらされたかのようにさらさらと読み解かれていた。そう。そこにはいっそ幼気なまでの指先を...
――――という少女は一見とてもそれらしい、ウマ娘だ。愛らしい容貌には大きな栗色の瞳がぱっちりと。耳のてっぺんからよく梳かれた髪は、例え海水をまとい二つ別れていようとも目を惹いて離さない。その上で、節々の細さに合わぬ隆々とした筋がむっちりとす...
メモ代わりにチョコザップで何をやったほうがいいか、というものを他ブログを参考に書いたものとのなります。 リンクを辿ってどうか参考ブログ様へと向かってみて下さい!
イクスは光彦の家、白河家の屋根裏に住み着いてる。 いや、以前見た光景を思い出すに、屋根裏にて大量の漫画本の隙間にて過ごしているといった方が正しいのかもしれない。 千の次の単位は、確か万だったよな。きっとそれくらいは漫画の数はあったろうし、何
先生。 それはここ幻想郷の人里において小さな寺子屋などを運営する教師達の呼称としてよく用いられているものだ。 そして、この頃新たに先生と呼ばれるようになったのは、稗田の家お抱えの賢者とされる上白沢慧音。 里の中程に新設された寺子屋にて彼女は
抜けるような蒼穹。自然こそがこの世の美しさのベーシック。だがある日、それはナンバーツーに堕した。 「よくないよねー」 世界に天井があることがつまらないというのは、一般人杉山ゆずだからこそ考えることだろうか。 いや、それとも彼女が天を射抜かん
アリス・マーガトロイドは魔界生まれの少女である。 そのため生まれつき魔法使いである彼女には、本来衣食住に対する意識は希薄であっても良い筈だった。 だが、神綺という魔界の神を手本にした彼女曰く子供達同士の相互扶助により大いに学んだアリスは心に
親知らず後に鼻から口まで空気の流れを感じたならばどうすべきか。 それに対してまずは対応医への相談を自分はお勧めいたします。 その理由、結論に至った流れを羅列しますので、どうか判断の一助にして下さい。
町田百合というのは最低値、いやそれこそマイナスから開始した小さき命である。 実親ならまだしも余所人が愛するには些か地獄的に過ぎていた子。 踏みしだかれるべき最低値、哀れまれるべき地獄の蓋はだがしかし。 『トップアイドルになるですぅ!』 地獄
ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。 そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。 最悪没した先に
前衛的を通り越した狂的。赤の強弱だけでどうして美観を創れたのか見るものが見たら唸ること間違い無しの紅魔館。 今日も今日とて湖の霧に包まれた館の底。地下を居住地として構え、むしろ館をただの日光を遮る蓋と捉えている出不精の魔女は手近に居た悪魔に
百合は、ひゅ、と緊張に喉からよく分からない音が出たことを感じた。 それが唐突に乱入し楽曲を中断させた招かれざる客に向けられた、数多の視線の物理的に迫る程の印象の圧力によるものであるのは、語るまでもない。 沈黙の中知らずぎゅ、っと握ったマイク
幼少の妄想。人を殺めかねない不安。崇め立てるべき神聖。 それらは妖怪、怪人、神等など。彼ら発生が空想信仰に依る者どもは、空から生まれた単一であるからこそ、多くが親愛など知らない。 だからその存在が絶対であろうがなかろうが、殆どを対面のみで済
紅美鈴というよく分からない妖怪は、出自を辿ると神獣へと行き着く。 ドラゴン、龍。大いなる自然の具現で、混沌たる力の根源。少し傾けば善となり、反対に向いてしまえば悪となる。そんな、茫漠とした上澄み。 そこから誕生したのが、紅美鈴という妖怪だっ
夢幻。それは、創造に至らぬ想像。とりとめもない、不確か。 夢は消えるもので、幻だってそれと同じ。だがしかし、強度が違うばかりで、ひょっとしたら現実もそれらと変わらないものではないか。 胡蝶の夢。邯鄲の夢。主体は果たしてゆらゆらと、思考を待っ
蝶よ花よの言葉はあれども、誠に野花の生は辛いもの。 日に灼かれて虫にたかられ、水を蓄えることすら難儀する。そもそも、身を委ねた地に命を預けることすら生半可な生き物であっては出来ないこと。 だが、それでも花は咲く。歪であっても汚れていようが、
「はっ、今日も生きるには丁度いい天気だっ」 独り言つ、晴天に白を混じえた黒き一線。 逃げゆく金の長髪を魔女帽で押さえながら昼に忘れた闇夜を空に描くように飛翔しているのは、魔法使いの少女霧雨魔理沙だった。 彼女は霧雨店のお嬢様を辞めて久しく、
全てに見上げられるためにある輝き。何よりも美しく刺激的な、一つ星の形象。 それを計る数字になど欠片の意味もなく、どこまでも幻想的なその決めつけにこそ価値があった。 曰く、最強。 別段三千世界にて比べあったことすらないというのに、その個体はそ
人において分かりやすい証というものは、名前と立場であるだろう。 こと現世においては名刺にでかでかと書かれた名前と所属により、その人を信頼する場合も往々にしてあった。 しかし、幻想に捨てられた際全て忘却してしまった少女には何も存在せず、故にサ
時を止めてしまえば止めた人だって動けない。 そう、時間を止めてしまえば従属する空間だって凍る。そんな中を泳げる人間なんて果たして存在するのだろうか。 勿論、ただの人がそんなことを可能にするのはきっと難しい。また、粒ごと固定された全てを退かす
その銀の少女が人里に現れたのは、酷く暗ったい夜も更けた頃合いであったようだ。 少女は、幻想郷では珍しくもない木造の家屋の間をきょろきょろと驚きに怯えながら歩いていたらしい。 酔いに酔った、問屋の番頭が赤ら顔で目抜き通りを歩んでいたところ、そ
彼女、〇〇は己が稀なる血の先祖返りであるということは知っていた。 それもそうであるだろう、こんなシルバーブロンドの自毛を生やした日本人なんて、他にはいない。祖父が厳しく話すのを聞くまでもなく、自分が他と違うことくらい分かっていた。 「でも、