河原者と天部について~その⑪ 千本河原者の赤(しゃく)について
これまでの記事で紹介したように、京における河原者の村で最大のものは「天部」であった。天部は四条河原にあり、その名の通り彼らは河原に住んでいたわけであるが、河原に住んでいない河原者もいた。例えば千本河原者、或いは野口河原者とも呼ばれた者たちである。(両者は別物である可能性もあるが、この記事では同じ河原者集団として扱う) 千本という地名は、広義の意味では船岡山の西から南の地域にあたる。この辺りは蓮台野と呼ばれる古くからの葬送地であった。野地秀俊氏の研究によると、「洛中洛外地図屏風」において描かれた「千本閻魔堂」の門前にあたる場所に、「野口ノ大藪」という但し書きのついた藪があり、その中に数軒の家屋の…
2023/06/28 12:47