トーベ・ヤンソン『ムーミンパパの思い出』小野寺百合子訳、翻訳編集:畑中麻紀
わたしはたのしくてたまらず、この時間がすぎていってしまわないかと心配する気持ちさえ起きませんでした。 「たのしんでる?」 わたしは聞きました。 「たのしんでるさ」 フレドリクソンは口の中でいって、とてもはずかしそうな顔をしました。(p.106) 上記は、若かりしムーミンパパが、とある場所で、友人のフレドリクソンと会話を交わす場面である。 あまりにも瑞々しいやりとり。 言葉にした瞬間に損なわれてしまうような、ふたりのあいだに通う優しい何かと、ムーミンパパの見ていて心配になるほどの繊細さ、それらがさらりと表現されているとても素敵な文章だと私は思うのですが、みさなんは、どう思われましたか。 前作『た…
2023/04/21 23:03