朝霧が立ち込める西山のふもと。 健一は、魚屋の主人から聞いた「天狗の伝説」の真相を探るべく、山へと足を踏み入れた。 (この山に、“何か”がある…) ザクッ、ザクッと落ち葉を踏む足音が静かな森に響く。 ◉ 出会い 山道を登る途中、一人の旅装束の男とすれ違う。腰には太刀を携えた、いかにも武士らしい佇まい。 「旅の方か。珍しいな、この奥山で出会うとは…」 名は柴田新之助。浪人姿ながら、言葉遣いも礼儀正しく、どこか謎めいている。健一は、軽く事情をぼかして名乗る。 「私は…健一。ちょっと天狗のことを調べに来まして」 「天狗…ふむ。ならば、お主に頼みたいことがある」 ◉ 武士からの依頼 新之助の話によると…