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青リンゴ観察日記 https://blog.goo.ne.jp/1225greenapple

韓国漫画「世紀末青リンゴ学習塾」観察ブログです。<br>*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*<br>

Yukkanen
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2020/12/28

  • 第八十四話③

    終礼の時間も、上の空だった。「みんな期末の準備は始めてるわね?時間はあっという間に過ぎるから・・」落ち着かない足が、小刻みに震える。ずっと思っている、「このまま消えてしまいたい」という思い。[・・そんなん無理だと分かってるけど]現実にはそんなこと出来ないことくらいわかっている。ただ何もなかったようには振る舞えない。密かに、ミエの方を窺った。若干眉間に皺を寄せたような表情で、前を向いている。けれどチョルの目は、どうしてもミエの唇に吸い寄せられた。横から見ているからか、今度はエラーが出なかった。だからチョルは、そのままじっと見ていたのだ。ミエがこちらに気づくまで。「さような・・」ドビュンッ!!!!即座に、またまたエラーが出た。チョルは光のように教室を駆け抜けると、そのまま家まで全速力で走った。「ただいま!」「...第八十四話③

  • 第八十四話②

    一晩中転げ回ったチョルはというと・・。[いずれにせよ朝は来る] 見上げた空は、雲ひとつない青空だった。その青の中を悠々と飛ぶ、白い飛行機をぼんやりと見る。あまり眠れなかったので、チョルの目の下にはクマがあった。チョルは複雑な気持ちのまま、重い足を引き摺って学校へと歩く。気がついたら、もう正門が閉まる時刻だった。「お前達、あとちょっとで遅刻だぞ!早く教室入れ!」「キム・チョル!お前のことだぞ!」「すみません・・」教室の前まで来ると、いよいよ足が動かなくなった。暗く重たいオーラを背負いながら、じっとその場に立ち止まっている。ふと顔を上げて中を見ると、真っ先にあのおかっぱ頭が目に入って、パッと体を引っ込めた。けれどいつまでもこうしていても仕方がない。チョルはグッと奥歯を噛み締めると、遂に中へと足を踏み出した。不...第八十四話②

  • 第八十四話①

    それでは、キム・チョル視点からのここ数日の流れを追ってみよう。[またあの日に戻るとしたら]あの日、とはもちろんあの事件があった日である。チョルの脳裏で、昼間の衝撃シーンがもう何回目かのリピートを始めた。チョルは無音で「うわああああああ!!」と叫びながら飛び起きる。ガバッ!!はぁ・・はぁ・・冷や汗が止まらない。体は小刻みに震えていた。こんなはずじゃなかった、と何度もチョルは思っていた。[いや・・俺はただ・・][約束してたから][だからビデオとか一緒に観ようとしただけなのに・・][なんで・・]そう思うたびに、また同じシーンがリピートする。ボスッ!![違う]バタバタバタ!!バタバタバタバタ!!![こんなん違う]無言の叫びを上げながらバタバタする息子の振動を感じながら、チョル母は心配そうに妹に聞いた。「ねぇファニ...第八十四話①

  • 第八十三話⑤

    翌朝。登校中のミエだが、キョロキョロとあたりを見回しながら歩いている。数メートル先に、探していた背中が見えた。昨日のユンヒの電話を思い出し、ミエは鼻の穴を膨らませた。もしユンヒの話が本当なら、今頃チョルはミエの誕生日に頭を悩ませているはず・・。すると目の前に、こちらを見る人物がいた。デレた自分の顔を白けた顔で見るモ・ジンソプ——・・。そして後ろからは、大あくびのソ・ジス——・・・。「あ、ファン・ミエ。週番なのに遅刻じゃん。でもあんたの顔がまたウケる・・」ソ・ジスの話を最後まで聞く前に、ミエは教室へと急いだ。やはりあの男はよくわからない・・。 けれどそれ以上に、胸の中にワクワクと弾む星の存在を感じる。ミエは朝食の時、父親に誕生日のことを聞かれたことを思い返した。「ミエ、もうちょっとで誕生日だなぁ。何か欲しい...第八十三話⑤

  • 第八十三話④

    ファン・ミエ、NeverDie。[けれど、意地を張れば空回るファン・ミエ]イライラMAXのまま、終礼は鳴った。チョルを逃がさないように、週番の仕事はソ・ジスに任せる。「あんたやっといて!」「ちょっと!あん・・」ドドド・・とチョルを追いかけたミエだったが、相手はミエを上回るスピードで逃げた。シュンッ!!肩を落として戻った教室では・・倒れたバケツから水が流れ出ているのに、気づかずにモップを掛けるソ・ジスの姿が・・。「あれ?いつ倒れたんだ?」結局掃除のやり直し。ミエは、もう全部嫌になってしまった。おでんを片手に黄昏れるミエに、ユンヒらが声を掛ける。「ね〜ファン・ミエ〜聞いてる?」「おーい!」「ほっといてよっ」そう言ってぐいっとやるミエに、ユンヒが「死にそうに暑いのにホット飲んでるよ」とヒソヒソ言った。何をやって...第八十三話④

  • 第八十三話③

    不敵な笑みを浮かべた三人。[彼女らの作戦はこうだった]ユンヒはミエの肩に手を置くと、余裕の笑みでこう言った。「ミエ、あんたもうすぐ誕生日だよね?」「え?あ・・そうだね・・誕生・・」「うちらが自然に仕掛けてくるからさ、あんたはヨユーで待っててよ」「え、え?!何?何を待つって?」 ユンヒ達はそのまま、キャラキャラと笑いながら行ってしまった。ミエは口をあんぐりと開けたまま、ポカンと立ち尽くした・・。「・・・?」   ユンヒ達はそのまま廊下の一角に固まった。キム・チョルが、そこを通りかかるのを待つ。そしてすれ違うその一瞬を待って、さりげなく口を開いた。「あ〜もうすぐファン・ミエの誕生日だね」「そうだよね!何日だったっけ?」「え?知らないの?6月・・」  しかし誤算が一つ。 チョルは、イヤホンで音楽を聞いていたのだ...第八十三話③

  • 第八十三話②

    教室に戻ったミエを待っていたのは、激怒した担任であった。「私の受け持ち授業の時だけ黒板消してないってことかしら?!」次の授業が始まる時間になっても、板書が消してなかったのだ。ミエはソ・ジスと並んで、大きなたんこぶを作って立っている。「すみませんでした」「ペナルティで週番してるのになんなのその態度は?!もう一週間やりたいの?今すぐ消しなさい!」 ”午前中の仕事はソ・ジスが全部やる”という約束だったはずだ。ソ・ジスは頭を下げた姿勢のまま、ボソッとミエに言った。「あ・・うっかりしてた」「ごめん」ミエが怒り&呆れに震えていると、ガラリとドアが開いた。「遅い!」「すみません」チョルは「すみませ」でソッコーで移動して、「ん」で席に座った。ミエのことを見ないようにして。担任が「教科書開いて」と言って、授業が始まろうとし...第八十三話②

  • 第八十三話①

      なんとか職員室で反省を終えたミエは、教室で席についていた。授業が始まる前のそこは、ザワザワと騒がしい。チラッミエは隣の席をチラリと見た。そこにはチョルの姿はない。ふん、ウケるんだけど。さっき登校してたのにまだ来ないの?ソ・ジスとゴタゴタしていた時に、チョルは確かに登校して来ていたはずだ。けれどギリギリまで教室には姿を現さないつもりらしい。するとチャイムが鳴る数秒前、ようやくドアが開いた。ガラッビクッだんだんと近づいてくる足音に、なんだか胸がドキドキしてしまう。それを悟られないように、ミエはふんふんと咳払いをして誤魔化した。ドキンドキンドキンチョルが座った気配を感じて、ミエはさりげなく声を掛けた。「おはよ。なんで今頃来てんの?あと昨日なんで塾休ん・・」ガガガーーーーッ!なんとチョルはイヤホンをしたまま、...第八十三話①

  • 第八十二話⑤

    ダダダダダ・・!ミエはゴミ袋をソ・ジスに押し付けて、キム・チョルの元へと走った。あの接触事故から二日後、ミエは彼に伝えたいことが山ほどあるのだ。 今日こそ捕まえてやんよ!! あいつ塾にも行かないし私がずっと連絡してたのに全部無視して・・ そうなのだ。あの事故があった日、まずチョルは塾を休んだ。ホンギュもびっくりしていた。「えっ?!キム・チョル欠席!?聞いてねーけど?!何があったんだ?!」部屋だって明かりがついているのに、まったくミエの呼びかけに応答しない。「ちょっと!キム・チョル!ちょっとぉ〜!出てこい!出てこいよぉ〜!」かくなる上は、電話攻撃も仕掛けた。「もしもし、チョル君のお宅ですか?私ミエですけど、チョル君は家に・・」ガチャッ!!ツーツーツー・・・[いやおかしいでしょ。なんで私にこんな仕打ち・・]ミ...第八十二話⑤

  • 第八十二話④

    あれから約二日後、つまり月曜がやって来た。 ミエはカサブタになった上唇をめくって見る。[16歳][かなり敏感なお年頃]ミエは鏡の前で、唇をむにゅっとやってみた。「ん」「ちゅ・・」・・・・・。ミエは一際大きな声で母に「行ってきます!」と言った。「あんた、今日成績表が出る日だからね?!もう調べはついてんのよ!」「わかってるよっ!!」 ミエはプリプリしながら学校へ行った。まだかなり早い時間なのだが。ドサッしん・・・・[そして全てにイライラするお年頃][その中でもファンミエを一番苛立たせているのは・・] チラッ こんなに早い時間に登校するのには理由があった。 キム・チョルが原因ではなくて・・・    主な理由はこっちだ。   ミエは自分とペアで週番を言いつけられた相手の机を見た。 来ている様子はない。  ギリッ・...第八十二話④

  • 第八十二話③

    ミエは唇に手を当てたまま、チョルとキスをした後のことを思い返した。  ありえないことが起こりすぎて、二人ともふわふわと現実感がなかった。ただ心臓の振動だけが、二人の間の空気を震わせる。ミエの上唇から、たらりと一筋の血が流れた。その赤い滴を目にした途端、チョルは現実に引き戻されたようだ。バッ!叫び声が、青い空に響き渡る。「うわああああああ!!!!」ミエが叫ぶならまだしも、誰よりも大きな声を上げたのはチョルだった。そのチョルの狼狽っぷりに、ミエもファニもファニの二人の友人も、思わずポカンと口を開ける。そこからのチョルはすごかった。叫び、項垂れ、突っ伏し、壁に頭をぶつけ・・。「うおおおおおおお!!うわあああああ!!」ブルブル・・・「があっ!!うわぁあああ!!」「ぐああああああああああああああああ!!!!」ミエは...第八十二話③

  • 第八十二話②

    ゆらゆら、と天井で光る星が滲む。というのも、それほどミエが目を血走らせているからであった。昼間起こった衝撃な出来事により、ミエは到底眠ることなど出来ないでいた。[その日の夜、ファン・ミエは・・][まるで全身がプカプカと浮いているような・・]脳裏に、もう何十回と巡らせた場面がプレイバックする。「ぬわぁぁぁ!!いやいやいや!!」ミエは叫びながらガバッと身を起こした。ドアの向こうで母親が「うるさいわよ」と怒っているが、それどころではない。汗がとめどなく流れてくる。「うわあああ!!違う違う違う違う!!」「何が?」「あんた寝ないなら勉強しなさいよ!」「寝るよ!うわあ〜〜〜」「うるさいってば」 ミエはしばらく母とそんなやりとりを繰り返した。昼間起こった出来事に、脳がまったく対応できていないのだ・・。  <幻想と現実>...第八十二話②

  • 第八十二話①

    <ファーストキスの味>  [キスってどんな感じなんだろう?綿菓子みたいに甘いかな?]  [プラムの飴みたいに甘酸っぱいのかな?]  [それとも・・]  彼女らのその問いに、ファン・ミエがリアルに答えます。   時は数分前。  「お兄ちゃーーーーーーん!!」  すごいスピードで迫り来るファニ。  「えっ?!ファニ・・」   チョルは前から来るファニと、後ろにいるミエを助けようと両方に手を伸ばした。 だから両手は塞がって、下りてくる重力に従う他なかったのである。   倒れ込んだミエの顔に、チョルの顔が近づいてくる。 まるでスローモーションのように見えた。   触れた唇は、衝撃のせいで互いの歯まで接触を許した。 ガチッ、と骨と骨が当たる音と振動が伝わる。  そして、この状態である。  ファニの取り巻き(?)が心...第八十二話①

  • 第八十一話④

    時は数十分前に遡る。コトッ「チョルの家、誰も電話に出ないや。みんな出かけてるみたい」パク・ジョンウクは受話器を置いて、ゲーム中のベ・ホンギュに声を掛けた。ここはホンギュの部屋である。「別にいーって。新しい友達とやらと遊ぶのに忙しくて、俺の誕生日なんて興味ねーんだろ」「全く・・子供かって」「はっ!だーれが」拗ねるホンギュと、ため息をつくジョンウク。すると、電話が鳴り出した。 「おい、電話だぞ」「お前が出ろよ」「なんで俺が。ここはお前んちだろ」「そんじゃお前がゲームしといて」  「もしも・・」「ベ・ホンギュ、このクソ野郎」聞き覚えのある声だった。ホンギュは反射的に声の主の名を言い返そうとする。「あんだぁ?イ・・・」が、すんでのところで止めた。ジョンウクに聞かれるとややこしいことになる。ホンギュは子機を持ったま...第八十一話④

  • 第八十一話③

    事態は急速に進行中だった。ミエの家に今までのミエの奇行をバラしに行くと言うチョルを、ミエは全力で止めなければならない。「ちょっと!!あんたバグったの?!いきなりなんなん?!」「バグってんのはお前だろ」「さっきはその・・キ・・・いや口・・その・・とにかくその・・・しそうだった・・から?」「おい黙れっ!!口に出すんじゃねぇ!!」「してないよ!!してないじゃん!!頭ぶつけただけ!!」「してなくて助かったな!!」 「もししてたら、俺は屋根に上ってお前の正体を全世界に全部暴露してたところだ」ゴゴゴゴ・・と音が聞こえてきそうなオーラを纏って、チョルはズンズンと進んで行く。「ダメーッ!!」「やめて下さいっ!キム・チョル様!!だめっ!!お願いですからっ!!」あと数秒もすれば、チョルはミエのマンションに辿り着いてしまう。[...第八十一話③

  • 第八十一話②

    ビデオは一時停止していた。しんとした静寂がリビングに広がる。チョルとミエは、接触の衝撃にしばし目を瞑っていた。「うう・・・」「う・・頭が・・」パチッ目を開けたその瞬間、数センチの距離にお互いの顔がある。二人は額をぶつけたまま、ピントが合わない相手の顔を見つめた。ドクン、ドクン、と跳ねる心臓の振動が伝わるようだ。相手の瞳に、自分が映っているのが見える。そして唇と唇が、かつてないほどの距離で近づいている——・・・・。 すると次の瞬間、静寂を切り裂くような電子音が響いた。  鳴り響く電話の音に、ようやくチョルの正気が戻った。ひいっ!!「わあっ!!!!」チョルは衝動的にミエを跳ね除けた。ミエはそのままゴロゴロと、台所の床を転がって行く。「ちょ・・あんた・・」「出てけーーーーーっ!!」  [結局事故が起こった]  ...第八十一話②

  • 第八十一話①

    チョルが自分の気持ちを持て余していた時、ファン・ミエはあくびをしていた。「ふわぁぁ」キム家のソファに寝転びながら、先程キッチンに立ったまま帰ってこないチョルを見る。チョルは立ち尽くしたまま、微動だにしない。 ミエの頭の中に、チヘ先生が浮かんだ。「どう?確認した?どうだった?」「気になるでしょ?ね??」”確認”の結果、チョルはこうなってしまったということなのか?ミエの目がキランと光る。「あ、そういえばあんた模試どうだった?また成績上がったりした?」ミエが軽くジャブを入れると、チョルの背中がピクリと反応した。と同時に、電子レンジがチン!と鳴る。「私また落ちたっぽくてさ〜どうしよ〜またお母さんにゲキ怒されるわ。あんたの家も勉強しろって首根っこ掴まれたりする?うちのお母さんもう完全に私の調教師だから」「あんた成績...第八十一話①

  • 第八十話④

    キム・チョルがもしミエのことを好きだとして、その先は一体どうすればいいんだろう?考えたことのないその問いを、ミエは今初めて目の当たりにしている。 <自然ということは>ミエはブンブンと頭を振り、とりあえず考えるのを止めにした。いやいや!ビデオ観よっ! 気づけばビデオの内容は佳境で、バスジャック犯からの連絡のシーンだった。とりあえず字幕を追うミエ。主人公がバスと並走し、事態が目まぐるしく進行して行く。この辺りから、ミエはビデオの内容に引き込まれて行った。おお・・その様子を隣で見ているチョル。食い入るように画面を追うミエ。なんて分かりやすいんだろう。口を開けっぱなしで画面に釘付けのミエを見て、チョルは(よだれ垂れそう)と思って少し笑う。そんな折、画面の中で大爆発が起こった。ドカーン!!「うわぁっ!」驚いた拍子に...第八十話④

  • 第八十話③

    「大人しく観てろよ」チョルに体を近づけすぎて怒られたミエ。けれどさっきのは”自然”さが足りなかったのかもしれない、とミエは思っていた。自然・・自然に・・ミエにとっての”自然”は、父親と一緒にソファに座っている時の自分だ。父のお腹に足を乗せ、ダラダラと自然にふるまっている時の自分・・・。映画は緊迫感のある場面だったが、ミエもある意味正念場だ。ミエは”自然”を意識的に、チョルに対して行った。ドスッ「あー足だるー」これを受けてチョルがどういう風に出るか。結果は・・・   「大人しく観てろって!」「さっきから何なんだよマジで!」どうやら、足を乗せるのは違ったらしかった。では肩を組むのではどうだろう?自然に・・「だからってそんな押しのけなくてもさぁ・・肩痛ぁ・・」そう言いながら、ミエはできるだけ”自然”にチョルの肩...第八十話③

  • 第八十話②

    バッミエはもう一度確かめることにした。Eyetoeye、目と目で通じ合うその確信を探して。じーっ・・「何・・」ミエはひたすら見つめ続けた。チョルがどんな反応を見せるかを見るために。まるで超音波を発しているかのような眼差しで・・・。バッ「なんなんだよ?!」チョルは勢いよく顔を逸らした。「なんか言いたいことがあんのか?ふざけてねーでビデオ観ろよ!借りてきてんだぞ」この反応は・・ほお・・?[この程度なら可能性は低いんじゃ?]そんなチョルの反応を見て、ミエは次の作戦に出る。 <それなら二段階目は>ミエの頭の中で、チヘ先生の教えが響いた。[一段階目の反応で脈があったら][二段階目は、あんたから直接近づくの]ターゲットが一人でいるところを見計らって、自分から意識的に動けとチヘ先生は言った。[偶然じゃなく][自然にね]...第八十話②

  • 第八十話①

    ミエは今、チョルの家にいた。大きなテレビ画面には、ビデオの冒頭にある警告文が表示され、やがてお決まりの警告が流れた。チョルとミエは、同じソファに座りながらそれを観ている。ふと、チョルがミエのことを窺う。同じタイミングで、ミエもチョルのことを見た。パッ同時に目を逸らして、ミエはこの間聞いた話を思い出した。その声の主は、友人のノ・チヘだ。目を合わせた後の反応はどうだった?なんかロボットみたいじゃなかった?[気まずくない?][だったらこの次は・・]なんだっけ、とミエは改めて思い出そうとする。再び、チヘの声が蘇った。ここから、チヘ先生の恋愛指南の始まりである。[じゃあ始めるからね。聞いててよ?][気になる男の子がいるなら試してみて]恋愛は相手に背中を向けたところから始まる。相手の表情が読めなくて、心を騒がせるとこ...第八十話①

  • 第七十九話⑤

    「私は100%確信してるから!!キム・チョルは絶対にあんたのことが好きだって!!!」  はっきりとそう言い切ったユンヒ。 ミエは未だに信じられなくて、モゴモゴと反論する。 「違うってば!小さい時から知ってるから、気に掛けてるだけであって・・」 「い〜や合ってるね」「違うってば!」「合ってるってば」「違うったら!」 「合ってるんだって。じゃあ私が当たったらどうする?」  「どうするったってどうするのさ。それをどうやって確認すんの?」 「”どうやって?”」  パチッ それを”どうやって”確認するか。 その答えを思い出したミエは、ベッドからパッと起き上がった。 そしてそのまま窓を開ける。  スチャッ  双眼鏡を覗き込んだミエは、チョルの部屋を見る。 カーテンが閉まっていた。  続いて路上を見る。 人が歩いている...第七十九話⑤

  • 第七十九話④

    <気にする必要ある?>ミエは先ほどモ・ジンソプから言われた言葉を聞いて、目を丸くした。キム・チョルのミエに対する態度はどう見ても「特別」だと・・・。「特別?キ・・キム・チョルが私を?」「うん、あ〜それはそれでまた・・うん・・」「?」  言葉を濁すモ・ジンソプ。 すると向こうの方がにわかに騒がしかった。二人はそちらの方を見る。 なんと、キム・チョルが女子たちから一斉攻撃されてるではないか。 しかも、チョルに話し掛けていたショートカット女子は泣いている。 チョルはそのまま逃げ出し、女子たちは怒りながら彼を追った。見かねたジンソプがそちらに走る。「あーあーあいつ・・あれなんとかしなきゃな」「ねぇ!話は最後まで・・」「気になるならまた俺んとこまでおいで」 「じゃーねー」そう言ってモ・ジンソプは行ってしまった。チョ...第七十九話④

  • 第七十九話③

    ファン・ミエとモ・ジンソプはまだわちゃわちゃやっていた。ミエがぶちまけたゴミを、ジンソプが横取りして拾う。「私が拾うから!離してっ」「いや俺が拾うし」「私のだっつーの!離せってば!」 「君、いつも自分のだって言うね」「だって私のだもん!!」以前自販機の下にあった小銭を取られた恨みを、ジンソプはまだ持っていたらしい(笑)相変わらずニヤニヤと笑いながら、ジンソプはミエに言う。「あ〜だからキム・チョルのことも・・・」自分のものって思ってるの?と全て言葉にする前に、大魔王が現れた。グシャッ!「俺が半分に分けてやるから離せ」というわけでゴミは、公平に分配されました。「いや、これはマジで俺の・・」「シャーッ」チョルとジンソプはゴミが半分ずつに分けられてるかどうかまだ議論していたが、ミエの心の中は平静ではなかった。あの...第七十九話③

  • 第七十九話②

    ニヤッモ・ジンソプの微笑み(?)に困惑しているミエであったが、チョルもまた、当惑していた。  <当惑と困惑>「な・・何?ツ・・?」「ツーツー!知ってる?ギョン・フンとジュ・ヨンがツーツーだから、ローリングペーパー書いてるの」 「何?ツーツーって」「付き合って22日になったって意味だよ」 チョルは聞いたことのない呪文のような言葉に、ただただ戸惑っていた。まごつくチョルを見て、ショートカット女子はケラケラと笑う。「ていうかマジで知らなかったの?ピュアすぎだよ〜」「俺その人達のこと知らねーけど・・」ツーツーというのはカップルの記念日だと、ようやく理解したチョル。けれど見たことも聞いたこともない二人に、一体何をしたらいいのか分からない。とりあえず「おめでとう」と紙に書いた。「大丈夫大丈夫、ただ集まってお祝いするだ...第七十九話②

  • 第七十九話①

    ミエは口を開けたまましばし固まった。チョルと、長身ショートカット女子が会話している光景から目が離せない。なんだか面白くない気持ちを持て余しながら、ミエは一人毒づく。てかゴミ拾いにきて何してんのさ。チョルがちゃんと答えるとでも・・そう思ったのに、意外にもチョルは彼女を拒絶せずに話を聞いていた。女子の方は笑いながら、親しげにチョルに触れる。これにはミエもビックリだった。あ・・・知り合いなのかな?私の知らないチョルの友達?あ・・もしかしてあの時のパンの・・?以前目にした光景が思い浮かんだ。自分以外にチョルと親しい女子がいると知って、モヤモヤしたあの時の・・。   その女子を連れてきた、三組のシン・チャンヒョンにミエは気づいた。が、パッと目を逸らす。この間背中越しに聞いた、棘のある言葉を思い出した。「あの女子がい...第七十九話①

  • 第七十八話④

    五年前のミエが言う。「うちらもう友達だよね?」その時、チョルは答えなかった。もう滞在も残り少なくなってからもう一度、ミエは問うた。「うちら・・友達だよね?」数日間一緒に遊んで、ミエはもうチョルのことを友達だと思っていたのだ。しかし・・・「そんなわけあるかよ」まるで雷のような、低い音が脳天から降ってきた。いつしかそれは電子音へと変化し、ミエの意識を覚醒させた。パチッ電子音が止み、ドアの向こうで母の声が聞こえる。「もしもし?」ガバッ遠くで雷鳴の音がした気がしたので、てっきり雨が降っていると思っていたら、窓越しに見える空は快晴であった。カーテンを開けっぱなしで寝ていたらしい。チョルの部屋のカーテンは閉まっているが。心の襞は幾分波立っていたが、なぜそんな気分なのかは説明つかない。どんな夢を見ていたのか、もう忘れて...第七十八話④

  • 第七十八話③

    不機嫌なホンギュと、彼に傘を差しかけながら帰って行くジョンウクを、チョルとミエはそこで立ちながら見送った。チョルはホンギュとの関係がこじれたことに頭を悩ませる。「あいつ本気で拗ねてたね」「別に大したことじゃないのに、一人で大騒ぎして拗ねてさ。なんかオーゲサだったよね?うちら、友達なのにさ!」 ミエは真っ直ぐ前を向きながらそう言った。ミエのことを見るチョル。「でしょ〜?」キラキラ星を飛ばしながら、念願の「友達」認定を、ミエは満面の笑みでチョルに確認する。チョルは複雑だ。一旦ミエから視線を外して前を向く。唇を尖らせて。仏頂面で。隣ではミエがずっとチョルの肯定を促してくる。ね?ね?そうだよね?ね?ね?キラキラ、キラキラ・・これには流石のチョルも・・・・。「・・おう友達だ、友達!」大きく息を吐きながら、遂にチョル...第七十八話③

  • 第七十八話②

    「でしょ?!だよね?!」 「うちら友達だから!」とチョルの手を取ったミエは、ギラギラした眼差しで念を押した。「だ・よ・ね?!」「お・・・おう・・」「とも・・だちだ・・」ミエの気迫に押されて、とうとうチョルが皆の前で肯定した。「ほらね?!」「この人は私の黒騎士——そして私の友達なの!だからもう喧嘩は・・」 その瞬間、意外な人が大きな声を出した。「だよねーっ!」「俺たちみんな友達だよね?なぁ?」「だからみんな仲良くしようよ、Sクラス!」ほとんど力技で、ジョンウクがまとめた。ミエはピースし、ジョハンは友達認定を受けて花を飛ばす。チョルは苦笑いだ。この場にいる五分の四は肯定ムードだ。この人を除いては・・。  <猿も木から落ちるので>雨は続いていた。その中で、傘も差さずに帰ろとしているのはベ・ホンギュだ。「おい、一...第七十八話②

  • 第七十八話①

    「いやなんでこいつと!!」二人が声をハモらせてそう言った後、場は非常に微妙な空気になっていた。呆然とするジョンウク。同じくジョハン。そしてこの人・・。全員、言葉を失くしたのだった・・・。 <違うって>  雨は本降りとなり、雨粒がザーザーと地面を叩く音があたり一面に響いていた。ゲームセンターの中は騒がしい。しかしチョルとミエの周りだけ音が無くなったかのようだった。はっと口を噤むチョルと、同じく息を呑むミエ。目が合った二人は、やはり同時に逸らした。パッそしてそんな様子を注視していたのはジョハンである。ハッ!なんだか怪しいこの二人・・と言わんばかりのリアクションのジョハン。ミエは必死でジョハンからも目を逸らした。するとこちらにも二人を注視している人物が・・。ホンギュが冷静に聞く。「なんだ?なんでちゃんと話さねー...第七十八話①

  • 第七十七話④

    ベ・ホンギュは文字通り絶句していた。面と向かって二回も、チョルから否定されたのだ。「・・・・・」チョルは再び、しまったと思っていた。正しいと思うことをしたと思うのに、思うように伝わらない。その緊迫した空気の中で、ミエはひたすらオロオロしていた。「あの・・ねぇ・・あんたら・・とりあえず落ち着いて・・」「狭いとこで騒いでんじゃねーよ。邪魔。あ?何見てんだクソが」するとそこで、高校生らしき男が通り過ぎ様に文句をつけてきた。険しい顔をしているホンギュにガンを飛ばす。「お前が見てんだろ?お前こそ見てんじゃねーぞクソが」不機嫌MAXのホンギュは、売られた喧嘩を買ってしまった。男は呆然と口を開けた。自分よりも年下の男から言い返されたからである。「あ?!んだと?!この中坊が!お前いくつだ・・」このまま喧嘩か殴り合いが始ま...第七十七話④

  • 第七十七話③

    ゲームセンターの中は騒がしかったが、ミエたちのグループには静寂が立ち込めていた。チョルがはっきりとホンギュを否定したからだ。一番驚いていたのはやはりベ・ホンギュだった。目を丸くして、チョルの方をじっと見ながら動かない。そんなホンギュを前にして、チョルは「しまった、」と小さく呟く。ホンギュの口から、地を這うような声が出た。「おい、お前・・・」「お前、今これの前で俺に意見した?お前これの味方なの?」「いや、味方とかじゃなくて・・さっきのはお前がひどいだろ」  「どうして俺にこんなことができんだ?お前はこの豆より俺を選ぶべきだろ!」 豆子・・もといミエを巻き込みながら、 チョルとホンギュの言い合い(主にホンギュが噛み付いているだけだが)は続いていた。「ガキじゃあるまいし何言って・・」「は?!ガキ?」「ガキだとぉ...第七十七話③

  • 第七十七話②

    ジョンウクがホンギュとの対戦をしている間、チョルとミエは若干気まずくなっていた。よろけたミエを支えたチョルが、ミエの手に触れた。手と手が触れ合った後二人は、なんとなく気まずい思いをしているのだ。「ねぇ」「あ・・あ?」先に口を開いたのはミエだった。「あんたもジョンウクもゲーム上手いじゃん?二人ならホンギュに勝てるよね?」「んー・・いや、ホンギュはちょっと次元がちげーから・・俺ら負けんじゃねーかな・・」 「ええ〜?!」  チョルの冷静な分析を聞いて、ミエは落胆の声を上げた。 しかしチョルはそんなことよりも、”あの約束”のことをミエに確認したかった。「ダメじゃんー!一回コテンパンにしないと気が済まないよ!!ダメダメ!絶対勝ってよ?!」「おい、ファン・ミエ」 「えっ?」「模試終わったから、その・・」それを切り出す...第七十七話②

  • 第七十七話①

    かくしてバトルは始まった。一回戦は、ジョ・ハンVSベ・ホンギュ!ガガーン!!ドドーン!早速ジョハンがホンギュにやられているが、ホンギュはというと、このような楽々プレイスタイルであった。口笛まで吹いている。 防戦一方のジョ・ハンは、見るからに苦戦していた。ホンギュは対戦中に「おーちょっとは上手くなったんじゃね?」と声を掛るくらい余裕である。ドン!!完敗・・・。「ジョ・ハニー、やる気は認めてやんよ」「くぅっ・・」「けど挑んで来るなら、お前も飯食うかゲームするかの日常を送らねーとダメだな」  悔しがるジョハンに、ホンギュはダメ押しのセリフを口にする。 「泣いちゃダメよ?ハニーちゃん」  「心配しないで!私が仇を討ったげる!」 ジョハンの弔い合戦改め二回戦は、ファン・ミエVSベ・ホンギュ! 「俺指2本でやったろか...第七十七話①

  • 第七十六話④

    ミエがこんな顔で座っている今の状況はこうである。そして、[直前の状況はこうである]巻き戻し!「俺たち、本気で勉強してみない?」[似たような日常、似たような反応]ジョンウクがミエを勉強に誘った場合、この人が黙っていない。「つーかお前!止めろよな!なんでいつも豆子に絡むんだよ!こいつ勉強しねーだろ!?」[・・・と思ったのだが]ミエが声を上げる前に、ジョンウクはホンギュに向かってキッパリとこう言った。「俺がいつお前と勉強するって言った?俺はミエとするんだけど」「はぁ?!」ジョンウクの言葉に、ホンギュのみならずチョルも驚いた。何だって?そして一応当事者であるはずのミエも驚いた・・。えっ?!私?!「お姫様は大人気ね」ジョン・ソラが皮肉を吐いて行った。苦い顔をするミエ。ホンギュは当然納得がいっていないようだ。「おいジ...第七十六話④

  • 第七十六話③

    ゴロゴロ・・黒い雲は垂れ込めていたが、ミエはなんとか濡れずに帰ってこれた。「まだ雨来てないや。降られなくて良かったぁ」ほぼ無意識に、制服を脱ごうとして気がついた。カーテン開けっ放し・・!チョルの部屋のカーテンが閉まっていたから良かったものの、危うく自分が変態を生み出すところだった。「ふん・・変態・・」と呟きながらカーテンを閉めようとしたミエだが、窓に貼っていた「最強の変態」がなくなっていることに気がついた。「あれっ?」振り向くと、その残骸がゴミ箱に・・。「ちょっとお母さん〜!窓の紙なんで勝手に取るの?!せっかくのからかうチャンスがぁ」「何言ってんの!」「あんなの貼ってご近所さんの笑い者よ!それにそんなこと気にしてる場合なの!?あんた模試どうだったの!?ちゃんと解けたの?!」 ガミガミ捲し立てる母に、ミエは...第七十六話③

  • 第七十六話②

    「・・・・」担任から言われた言葉の意味を少し考えているミエ。しかし次の瞬間、職員室からソ・ジスが出て来たので、それ以上考えることは出来なかった。ドアの隙間から学年主任の声が漏れ出ている。「お前反省文書いてこなかったら両親呼び出すぞ!忘れたら今度こそ大目玉だからな!」思わずミエは、ソ・ジスに駆け寄った。「ねぇ、あんた大丈夫だった?!一体何発殴られたの!?保健室行かなくても大丈夫?!あ、お尻を見ようとしたわけじゃないからね! 誤解しないで!変態じゃないから!」 お尻をさするソ・ジスに、ミエはペラペラと喋りかけ続けた。「てか学年主任も大概だよね!0点・・うん、生きてたら0点取ることもあるよね!不思議っちゃ不思議だけどさ・・。内申に入らないし自分の担任でもないくせになんで叩くんだろ?!やりすぎだよねホント! しか...第七十六話②

  • 第七十六話①

    放課後、生徒たちはガヤガヤと帰路についた。その中にはチョルもいたが、担任に呼び出しをくらったミエのことが気掛かりのようだ。「模試も終わったし、サッカーしない?」と、クラスメートは気楽なようだが。そしてその頃、職員室では・・。「避けるんじゃないぞ」ブンッ!ヒィィィ!バシッ!!学年主任が振り上げた物差しは、ソ・ジスの背中に向かって振り下ろされた。「このバッカもんがぁ!去年は絵を描いて、それでも一学期はちゃんと試験を受けたから、大丈夫だと思っていたら!」  「0点とはなんだ0点とは!間違ってるのはわしか!?えぇ?!わしの方なのかぁ!? しかもなんだこの髪は!?なんでこんなに長いんだ?!切れって言ったよな?! バリカンで刈ったろか?!」 どうやら真面目にテストを受けないソ・ジスに、学年主任はおかんむりのようだった...第七十六話①

  • 第七十五話④

    一学期最後の、模擬試験が始まった。しかしチョルは、いまいち集中しきれずにいた。[名札を注文したのに、まだ言い出せてない][それに、みんなで街に遊びに行くという話も]モ・ジンソプはああ言っていたものの、後でソンイに突っ込まれていた。「あ、でもジンソプ、明日は模試だよ?」「あー・・知ってるけど、期末もあるからさぁ」[どうせポシャるだろうけど]そう思いながら、チョルは自分とミエとの”約束”を言い出せないことを気にしていた。「・・テスト終わったら観るんだよ」ジンソプの言う通り、模試が終わったらすぐに期末の準備だ。”約束”を果たすのに、そんなに時間は残っていないのだ。 ミエもまた、試験に臨む傍らで、昨夜ベッドで一人考えたことを思い出していた。ボー・・パチッ思い出していたのは、自分のために全速力で駆けて行ったチョルの...第七十五話④

  • 第七十五話③

    塾の時間になっても、チョルは昼間と同じような顔をしていた。[一日中回復しなかった16歳][話しかけるどころか目も合わない]ミエからの拒否オーラがすごくて、チョルは弁解はおろか声も掛けられなかった。そうこうしている間に塾も終わり、席を立つ生徒達に向かって塾講師が、「みんな明日の模試頑張ってね」とエールを送った。 「ミエ、模試頑張ってね。ヨンヒ、君も!」「うん!ジョンウクもね!」「へーい」 塾を出たところで言葉を交わすミエの後ろにチョルはいた。視線に気が付いたのか、不意にミエが振り返る。ビクッダダダ・・しかしすぐに行ってしまった。そして家に帰ったチョルが目にしたものは・・・。最強の変態ここに!まるで数日前の反転のような事態に、チョルはブルブルと怒りで震えた。そんなチョルに、スンジョンが声を掛ける。「つーかあん...第七十五話③

  • 第七十五話②

    先に教室に戻ったチョルは、一人ペンを動かしていた。しかしその表情は死んでいる・・・。[この出来事をどう収拾すべきか悩む16歳]チョルはボーッとしながらも、先程の自分の言動と出来事をプレイバックした。[わざと狙って言ったわけじゃないが][自ら友達だと認めたのに、全くの無反応・・]てっきり目をキラキラさせて近寄ってくると思ったのに、ミエはチョルに向かってこう言ったのだ。「この変態」[つーかなんで俺が変態なんだ?][お前はわざと堂々と(?)見ておいて、なんで俺の方が・・]チョルはそう不満に思いながら、またあのシーンを思い出してしまった。透けて見えた下着の線、そしてあの視線・・・。ストーーーーーップ!!止めろ!考えるな!!チョルは記憶を掻き出すように激しく髪をグシャグシャした。後ろの席のオ・ヨンスは「どっか痛いの...第七十五話②

  • 第七十五話①

    チョルは「ファン・ミエと自分は友達だ」と堂々と宣言し、シン・チャンヒョンを見下ろしていた。シンはというと、そんなチョルを前にポカンと口を開けていたが、やがて引き攣った笑いと共に口を開いた。「お、おお!そうだったんだ〜!?」わざとらしいくらいの明るさで、シンは友人たちと共にうなづいて見せる。「そっか〜友達か〜」「友達なんだな〜」「そっかそっか、分かった!これからは気をつけるな!ファン・ミエ・・よし、覚えたぞ!じゃあ先に教室に・・」 シンがチョルの後方にある階段に向けて歩き出そうとした途端、 チョルが長い足を出してそれを止めた。 「お前らのクラス、あっちから行った方が早くないか?」  「え、え・・?」  シンはそう言って振り返った。 遠くに階段がある。 チョルの後ろには近くの階段・・・。なんで敢えて遠い方に・...第七十五話①

  • 第七十四話③

    怒った(ように見える)大魔王を前にして、シン・チャンヒョンは狼狽した。「いやちょっ・・怒んないでよ!俺たちはただちょっと気になって話してただけ!なぁ?!てか俺たちだけじゃなくてみんな気になってるって!」その最中に、ミエにピンチがやってきた。鼻がムズムズして、くしゃみが出そうになったのである。あ・・ダメ・・クシュッ・・!ガッ!くしゃみが弾ける直前に、背中を強く掴まれた。その衝撃でミエのくしゃみは消滅したのだった。「二人・・チョルとあの小さい女子が、付き合ってんのかとか・・」チョルはゆっくりとミエから手を放す。シンからの質問に、ゴゴゴゴ・・と黒いオーラを放ちながら・・。「は?付き合うって何?違うけど」「そ・・そうなんだ・・よくわかったヨ・・・」[ファン・ミエ、寿命が十年縮んだ] セ、セーフ・・・。   <だか...第七十四話③

  • 第七十四話②

    トントントン、と静かな足音が廊下に響いている。今は授業中。びしょ濡れになったチョルとミエが、ひっそりと廊下を早足で歩いていた。スケスケ制服になってしまったのにズンズン先に行くミエに、チョルが苛立って静かに叫んだ。「おい!ファン・ミエ!ちょっと止まれ!」「その格好で教室行くのか?!」「ついてこないでくれる?この変態!」「いや誰が変態・・じゃなくて!おい、とにかくこれで隠せって」 「はーめんど」 「別にいいって、この変態!裏口から出て乾かすから!あんたはもうあっち行って!」そう言いながら、ミエは裏口の方に進んで行く。「いや、何・・」そんな折り、チョルは裏口近くに見覚えのある男子生徒が歩いているのに気がついた。ミエは気づいていない。「あんたが変態なのは事実だけど、これは偶然起こった事故でしょ?この前のあんたのス...第七十四話②

  • 第七十四話①

    絶句している二人の間に、水が流れるジャアアという音だけが響いている。そして二人の意識は、そのまま遠ざかっていった・・・。 [遙かなる宇宙・・][幾多の星々の間、地球上に位置する、][セモドン地方の、] [百済中学にいる、][チョルとミエ・・・]  二人の意識は遠い宇宙空間を彷徨い、そして再びこの場所に帰ってきた。 相変わらず水は流れ続けている。  「・・・・」  「あ、その・・いや・・こんなことになるとは・・その・・」  汗なのか水なのか、チョルはびしょ濡れのまま、目の前の光景にただ動揺していた。 対照的にミエは、光を失くした目を見開いたまま動かない。  「服が・・」  「服・・」 チョルはそう言った後、またミエの透けた制服に目をうつしてしまって狼狽えた。 「いやそうじゃなくて・・とりあえず・・」  [と...第七十四話①

  • 第七十三話④

    もう初夏のような日差しの下、チョルは考えていた。[六月の初旬は、もう暑い。記憶が熱のようにもくもくと立ち上るから][冷やさねば]次々に浮かんでくる記憶や、上昇していく熱を冷やすために、チョルは頭から水をかぶった。隣にはミエがいる。「もー朝から汗だくだよ!」わざとらしく鼻歌など歌いながら、チョルの隣で水を出す。また上半身裸のチョルのことを思い出しているのだろうか。「男子はいいよねー暑い時も気楽に脱げてさぁ。教室でもすぐ脱ぐし窓脱いで・・じゃなくて窓開けてても・・」[こいつも冷やしてやろうか?]チョルがそう思っているその隣で、ミエが顔を洗い始める。チョルはミエのことを見ながら、先ほどのモ・ジンソプの言葉を思い出した。「よし、じゃあ友達記念に街で遊ぼーよ」「だね、ファン・ミエも一緒に・・」  ブルブルッミエの名...第七十三話④

  • 第七十三話③

    ダダダダダダ・・キム・チョルは再び走っていた。もう授業は始まっていたが、校庭を走っている。その彼の後ろを、ファン・ミエもまた走っていた。「うわああ〜!」「朝からこんなん聞いてないって〜!」結局、罰として運動場10周を言い渡されたチョルとミエ。ミエは名札忘れとその反省中に抜け出した罰で、チョルは服装違反で呼び止められたのに走り去って行った罰であろう。ミエは、自分の名札を付けていた”ヘッドフォンの男”を追いかけて行ったチョルに聞く。「ねぇ!あんたあの男子の顔見た?」「見てねぇ!」「見てないの!?あんなにマッハで走って行ったのに?!じゃあヘッドフォンとカバンがどんなんだったか・・」「覚えてねぇ!」「なんで覚えてないの〜?!」「見てねぇからだよ!!」そのチョルの剣幕に一瞬ミエはビクッとなったが、構わずチョルの後に...第七十三話③

  • 第七十三話②

    一方こちらはキム・チョルの朝。彼の部屋の窓には、「変態退散」がまだ貼ってある。ファン・ミエの変態疑惑は更に深まり、昨日は・・チョルは胸をドンドンと叩きながら、一人呟いた。「マジで変人じゃねーかよ・・」「ファン・ミエ!まともになってくれっ!」半分カーテンが開いた窓を見上げながら、チョルはそう口にしたが、彼女が顔を覗かせることはなかった。そしてチョルは、朝一番に「三角文具店」へと向かったのだった。放課後に訪ねたときの閑散とした雰囲気とは真逆の、ワイワイガヤガヤとした空気がそこにあった。店内は学生たちで溢れ、店主のおじさんはあっちこっちに呼ばれとても忙しそうである。「おじさーん」「はいよ、ちょっと待っててよ」「えーあんたも来てたのー」「え?名札?今日の放課後来てくれよ!」「おじさーん」「ねぇおじさーんこれいくら...第七十三話②

  • 第七十三話①

    未だ風紀検査は続いていた。ミエは下を向きながら、先生の説教を聞いている。「お前、カバン開けてみろ」「あ、先生ちょっと待って!」「早く!」なんて日だ・・!と思いながらミエは項垂れていた。身悶えしながら、いつの間にか首をぐるぐる動かしている。持ってきた日は検査なくて、なくなってから検査するじゃん・・あいつなんで名札持ってこないの?もう二日経ったんでは?変態だから名札くれなくなった?だめじゃんあいつめ・・ふと、目の端にブレた自分の苗字が目に入った気がした。その名札は、とある男子生徒の胸に掛かっている。ミエはまだ下を向いていた。しかし瞼の裏にある残像が、「ちょっと待って」とミエに知らせる。そして数秒後、顔を上げた。名札をつけていた男子は、ヘッドフォンをしていた。肩が凝っているのか首をコキコキと鳴らしながら、そのま...第七十三話①

  • 第七十二話④

    しばしソラは沈黙していたが、やがてミエから目を逸らさずにこう言った。「ねぇ、私と一緒に勉強したいってこと?」「うん!」喜んで返事をしたミエに、ソラは手をおいでおいでとひらひらさせた。ミエは首を傾げながらソラに近づく。コソッ「え?」ミエが目を丸くして聞き返そうとした時、ドアがキイッと開いた。「あ、二人もう来てたんだ」「ミエ、早いね」「あ、ジョンウク」パク・ジョンウクたちがゾロゾロと教室に入って来た。ジョンウクの後ろにいるキム・チョルは、不穏なオーラをまといながらミエを睨んでいる。ヒィィィ!青くなるミエを見て、ホンギュが「なんだ?どーした豆子」と聞くも、ミエは答えなかった。ジョンウクはジョン・ソラにも声を掛ける。「ソラ、君も早いんだね。二人ちょっと仲良くなったみたいだね」声を掛けられてもツンとしているソラ。ホ...第七十二話④

  • 第七十二話③

    その日家に帰ってから、ミエは泣きながら母親に訴えた。「お母さん!私今日塾行かないからーーっ!キム・チョルにコテンパンにされるー!」「はぁ?」母はそう言った後、ミエに鉄槌を食らわせた・・。 プシュゥゥゥ・・頭に出来たたんこぶと、引っ張られ伸びた耳たぶをさすりながら、ミエは涙目でこう思う。「本当に私は実の娘なの?たまに分からなくなるんだけど・・」プリントを出しながら、ミエはチラッと右方向に目をやった。そこにいるのはジョン・ソラなのだが、なんと目が合ってしまった。ビクッ「何見てんのよ」[ファン・ミエにはあまり怖いものはないが]「え・・いえ・・見てませんケド・・」[この子は・・ちょっと怖い]そして今この部屋で、二人きりという状況である——・・! <突発的な状況> えーっなんで二人きりなの?!「ちょっと、うるさいん...第七十二話③

  • 第七十二話②

    チョルとミエが追いかけっこ(?)をしている頃、こちら高句麗中学では・・・休憩時間に、男子生徒が数名でガヤガヤと歩いていた。すると彼らの前に、スッと一人の男性生徒が飛び込んでくる。「よぉ!イ・インウク!」「うわっ!」ドサッ!男子生徒が足を出したせいで、イ・インウクは派手に転んでしまった。「あれ?」「げっ」「おいインウク・・大丈夫か?」インウクは足を出した張本人、ベ・ホンギュに向かって声を荒げた。「おい何すんだこの野郎・・!」「あ〜ごめんな〜。ちょっと強すぎたか?さ、捕まれよ」そしてホンギュがインウクに嫌がらせをするのは、これが初めてではないらしい。「おいベ・ホンギュ!これで何回目だよ?!マジで死にてぇのか?!」「おいおい!」「離せ!今日は逃さねぇぞ!」「おお?」「インウク、やめろって」「え?どーしたんだよ、...第七十二話②

  • 第七十二話①

    辺りはしんと静まり返っていた。ここは化学室のある、あまり人通りのない校舎の一角。そんな場所でファン・ミエは、キム・チョルから壁ドンの体勢を取られ、身動きが出来ずにいた。「どうした?」「ほら、言ってみろよ、あ?」チョルが目の前にいるこの状況に、ミエは自分が「変態」呼ばわりされていることも忘れて、ただ目を丸くして固まっていた。「そんでお前は何を見たって?」チョルからの質問など耳に入らず、ミエはトッポギを食べながらチソンが口にした言葉を思い出していた。「大魔王はアリじゃね?」そして両親が言った言葉も。「チョル君?」「チョル君はイケメンでしょう!」同級生から”アリ”で、親からは”イケメン”評価のチョルが、目の前数十センチのところにいる。「なんだ?」そしてミエの頭の中では、チャ・ヨンヒの言葉が蘇った。「キム・チョル...第七十二話①

  • おまけ漫画④(スピーキングマックス)

    久しぶりのおまけ漫画です!お楽しみください〜「あーマジで英語つまんないや・・こんなに勉強してもどうせ一言も話せないし、やる気が出ないよー。あー塾代がもったいない」「どーすればやる気になんのかなー・・ん?」「ペラペラペラ」「えっ何?!いま英語で話してなかった?!宿題あったっけ?」「え?いや、これは自学してんだ」「スピーキングすんなら、絶対に真似しながら話さねーと。金も稼げるしモチベーションも上がるぞ。俺は今月11万ウォン稼いだ」「えっ!なにそれ!?私にも教えて!」「スピーキングマックス・お金を稼ぐ英語!英語を真似して話すと、点数によってコインが貯まって、あとで現金に払い戻せんだ。面倒なミッションとかなしに、一日15分ずつ地道にやれば、お前のパン代はすぐに稼げるだろーな」「そのまま真似すればいいってこと!?」...おまけ漫画④(スピーキングマックス)

  • 第七十一話⑤

    ミエは今日、ようやくチョルと目が合った。 <クラクラ>まるで時が止まったかのように、まるで世界に二人だけしか存在しないかのように、チョルとミエは互いに目を見合わせていた。ミエが、今の状況に気が付くまでは。ゆっくりとミエの視線が、チョルの顔から腹に落ちる。その視線を辿って、チョルもまた今の状況に気がついた。ドドン!チョルの引き締まった腹が見えている!それに気づいたチョルの目は吊り上がり、それを見ていたミエも「しまった」という顔をした。バッ!と即座に腹を隠すチョル。この変人が!と表情で感情を訴えてくる。「あ・・いや・・違・・」「違う違う違う!!」ミエ、必死の弁解も虚しく、遂にチョルはミエを・・変態変態・・・・・”変態”認定したのだった・・。掠れた声で弁解を試みるも、友人たちすらミエの明け透けな表情をからかって...第七十一話⑤

  • 第七十一話④

    さて”大魔王”化したチョルであるが、彼の昨日の詳細はこうである。「なんなんだよっ!!」「なんで部屋交換したんだよ!!もう一回戻して・・」「はぁ?お姉様があんたに勉強頑張れって応援の気持ちで交換してやったってのに!この恩知らずが!」スンジョン姉はチョルにチョップを繰り返した・・。キム家の女三人は長男が何事もなかったことを確認し、部屋を後にする。「うちは7月までは絶対エアコンつけないってルールだかんね?だから体調管理よろ」「気をつけて着替えなさいよ?ミエちゃん驚いたでしょうね・・」「ふむ、異常なし!」「いや俺が自分の部屋で・・・!」チョルは「着替えようとしただけ・・」と続けようとしたが、すでに皆出て行ってしまった。そしてチョルは新たに気がついた。ジーンズのボタンを、外そうとしていたことに——・・!下も脱ぐとこ...第七十一話④

  • 第七十一話③

    朝、ファン家の電話が鳴っている。そのベルを、ミエはげっそりした顔で聞いていた。「はいもしもし?もー!なんなの昨日から!」「行って来ます・・」「ちょっと!ふらふらしないで真っ直ぐ帰って来なさいよ!わかった?!」調子の悪い電話機にイラつきながら、母は忘れずにミエに釘を刺した。しかし心ここにあらずといったミエの姿を見て、母は思わずため息をつく。ミエは、何度もあくびをしながら道を歩いた。昨夜の衝撃で寝付けず、眠いのだ。あー寝たんだか寝てないんだか・・ていうか今日会ったらなんて言おう・・まず謝って・・でもお互いやらかしたんだからお互い様・・そこまで思ったところで、視線に気づいた。二人はこうしてバッタリと会う運命らしい。「あ・・あの・・」ミエが弁解を口にしようとした矢先、チョルの眼光が厳しくミエを貫いた。ギッッ!「あ...第七十一話③

  • 第七十一話②

    気が遠くなるような現実の中、ミエの意識は今、宇宙空間へと旅立っていた。[遠い宇宙・・幾千万の星の中で][地球上、セモドン地方に住んでいるこの少女は][16歳にして、これまで経験したことのない衝撃を次々と味わっていた]宇宙空間を漂っていたミエは、ゆっくりと地球に戻ってきた。パチ、と目を開ける。暗い部屋の天井に、ぼんやりとミエの星々が光っていた。そこでようやくミエは実感した。自分がチョルにどう思われていたかを。え、は?!何?!わざと見たと思われてる?! ミエは、チョルが帰って来てからの自分の行動を、もう一度思い起こしてみることにした。パッ「おーい!チョル・キム!」[そもそもカーテンも締めずにいきなり脱ぎ出したのは自分・・][じゃん・・]気がついたら、上半身裸のチョルが立っていた。目を逸らさずにいたのは、ミエの...第七十一話②

  • 第七十一話①

    「え・・え・・・・・?」まさかの上半身裸のチョルを前に、文字通り目を丸くしたミエ。嫌な汗が背中を伝う。「え・・・いや・・いや・・」「いやいやいやいや!!」ミエのその叫びを皮切りに、この事態のとんでもなさが、二人に実感として降り注ぐ。「ぎゃああああああああ!!!!」「ああああああああ!!!!」ミエはスケッチブックを上げたり下げたり、裸のチョルを見たり隠したり・・。「おい!何見てんだよ!早く行けよ!」「いやあんたが行ったか確認・・」「おいファン・ミエ!ありえねーだろこの変っ・・」ブチブチブチッ!ぐわんっ!ドタタッ!!チョルは、それはもう派手にすっ転んだ。見てるんだか見てないんだか分からないミエの向かいで。バタンッ!「何してんの!」「何事?!」大きな物音に驚いた3人は、勢い良くチョルの部屋に入って来た。しかしそ...第七十一話①

  • 第七十話②

    母親とバトルしたミエであったが、結局母の勝利に終わった。「それ全部解くまで寝ちゃダメだからね!」問題集の前に座らされたミエは、悔し涙を滲ませながら唇を噛む。母親はかかってきた電話を取りにリビングへ向かった。ボスッ「もー最悪・・」全部うんざりだし・・やりたくない・・怒られるのも、受験問題集も、外出禁止も、もう飽き飽きするほど憂鬱だ。はぁ・・ミエは、願い事を叶えるために数えていた飛行機のことを思い出した。頑張ったのになぁ・・何機数えたか忘れちゃったから、無効になっちゃったのかな遠い空を飛ぶ飛行機に、「天才になりたい!一度見たら全部覚えちゃうとか!」と願掛けしていた。しかし何機数えたか忘れてしまったら、またふりだしに戻って数え直しなのだ。そして願掛けをしてるのは、ミエだけではない。お母さんも頑張ってお寺通いして...第七十話②

  • 第七十話①

    授業が終わり、学生たちが外に出て来た。夜の街は、ガヤガヤと騒がしい。ミエはというと、塾から家へのバスに乗り込み、いまだに消化しきれない気持ちを抱えていた。チョルをからかうと決めてみたものの、いざとなると言葉が出てこなかった先程のことを振り返る。てか考えてみれば、人前で話すにはちょっと恥ずかしい話じゃんね?けどせっかくのチャンスなのに、このまま逃しちゃうの?ギャラリーがいた方が盛り上がるけれど、ギャラリーがいるからこそ恥ずかしいのだ。ミエは一人で、チョルをからかう練習をする。「私見たの!あんたが私をあ・・」「愛・・」プシューやはり言えない。「ファン・ミエの弱虫・・」と自分で呟く。すると窓の外に、自転車に乗ったチョルがいるのに気がついた。パッ顔を逸らしたミエだったが、即座にまたチョルをからかうことを思い出した...第七十話①

  • 第六十九話⑤

    こそっキム・チョルが自販機でジュースを買っている姿を、ミエはガラス戸に隠れながら見ていた。ようやくこの時がやって来たのだ。ふふふふふふ・・観客はベ・ホンギュ、そしてパク・ジョンウク。この子らは大丈夫っしょむしろいてくれた方が良い!このショーに必要なギャラリーも揃った。ミエは今一度チョルの方を見る。ふと、心臓が鳴った。ドクンけれどミエは、それをこの後始まるショーへの興奮だと解釈した。心臓もワクワクドキドキしちゃってるあれをからかわずにはいられないっしょ!この機会を逃したら、きっと一生後悔するっ!深呼吸して、カウントダウン!「いち〜、にの〜」「さんっ!!」勢いよく飛び出したミエ。するといきなり、目の前に赤い缶が現れた。「コーラ!」なんと、チョルの方が一枚上手であった。コーラでミエを釣り上げたのだ。「コーラ!ち...第六十九話⑤

  • 第六十九話④

    <エビのアドバイス> さて、とばっちりを受けたミエともう一人のエビ、ジョハンは非常階段で密談をしていた。「だからさ・・」「もう一回、もう一回でいいからホンギュに声を掛けてくれよ。俺が言っても鼻で笑うだけで、全く会話にならないんだから」 「いや〜私だって同じようなもんだって・・。 ていうか、とにかくうちらとゲーセン行くの面白くないんだってさ。 ネカフェに行くんだって」  ジョハンは、なんとかしてもう一度ホンギュとゲームセンターに行きたいらしい。「あ、そんじゃネカフェに追いかけて行ってみる!?」「いや、それはちょっと・・」 「?・・じゃあ私と遊ぼーよ!絶対にベ・ホンギュがいいの?私とゲーセン行こうよ!」 「いや・・」   「あんたと行っても、ゲーム下手だから面白くない・・言っちゃなんだけどクソ下手・・」「?!...第六十九話④

  • 第六十九話③

    <鯨が邪魔をする>「鯨の戦いにエビの背中が破ける」=「とばっちりを受ける」からの、このタイトル。さて鯨とは誰なのか? 塾は休憩時間になり、教室からは生徒たちがわらわらと出てくる。Sクラスでは、ヨンヒのリュックに入れたポケベルが鳴った。「ねぇねぇヨンヒ、うちら一緒に・・からかいに・・」 ミエがそう言うやいなや、ヨンヒは秒で身支度をして教室を出て行ってしまった。「先帰るわ。じゃ」「えっ!?まだ授業終わってな・・」「チャ・ヨンヒやべー。マジ帰ったし」「ええっ?えええっ?」「待って!一緒に・・」そう言ってヨンヒを追いかけようとしたミエだったが、後ろからこの人が邪魔をした。「ファン・・」「ちょっと待てファン・ミエ!!」ビタンッ!ジョハンが思い切り引っ張ったので、ミエはそのまま地面に落下してしまった。ミエの「グエッ」...第六十九話③

  • 第六十九話②

    <あなたと私のテレパシー>反省時間が終わり、ミエはヨンヒとソラと共に教室に戻された。講師は大量のプリントを生徒たちに配ると、早速模擬試験の話を始める。「模試に備えた過去問を、新たに採用しました。特別にソウルの有名塾から苦労して手に入れたものなので、全問解けるように」 「では、はじめ!」それらに真面目に目を通すチョルと、慌てふためくミエ。前のも全部できなかったんだけど!いつの間にこんな溜まってたの?!そんなミエの様子を見て、ベ・ホンギュがからかってくる。「どっかで仔犬がキャンキャン鳴いてっぞー」そしてジョ・ハンは、そんなホンギュのことをじっと見ていた。何やら思うところがあるようで・・・。  ミエはやる気の出ないまま、机に突っ伏しながら問題を解いていた。あぁ・・やりたくない・・前を見ると、男子たちが(主にホン...第六十九話②

  • 第六十九話①

    タバコを潰されたジョン・ソラから、黒いオーラが立ち上った。低音ボイスがミエの目前に迫る。「この・・・クソが・・・・・」「いやいやいやいやいやいやっ!」顔面蒼白のミエ。そして次の瞬間、目の前に手が飛んで来た————・・!バシッ!しかしその手はソラの手ではなく、チャ・ヨンヒの手だったのである。「おっとそこまで。子供相手に何してんの?情けねーなぁ」「へぇははへよ(手ェ離せよ)」「は?何て?よく聞こえねーな。もっとはっきり言ってくれる?」  突然始まった喧嘩に、ミエは「え?なに?いきなりなに?この人たち・・?」とパニックだ。その間に、ソラがヨンヒに向かって攻撃した。かわすヨンヒ。二人は互いの襟元を掴み、そのままボカボカと殴り合いを始めたのだった!ミエは衝撃のあまり固まっている。   「あーーーっ!このクソがっ!!...第六十九話①

  • 第六十八話④

    <作戦名はL・O・V・E>塾のバスを降りてからミエは、[しつこいミエ]としてリベンジに臨む。「よーっし!塾で再チャレンジだ!」「おっ!すぐさま発見!しかも金魚のフンまで〜!」  すぐにキム・チョルとベ・ホンギュが一緒に歩いているのを見つけた。 買ったらしいパンを、チョルがムシャムシャと食べている。 「シールまだ集めてんのか」「チッ、またこれかよ〜。ゲッ、一口で・・」そこで叫ぶのだ。往来の真ん中で、大きな声で。「ねぇ!チョルキムチョル!私見たんだからね!」「あんた、私を・・愛してるんだって〜?!」顔色の変わるチョル。「なっ!」バカ笑いするベ・ホンギュ。「なんだ?何の話?まじかよ、愛?」 「おいっ!ファン・ミエーーーッ!」 そしてそう叫ぶチョル——・・・・。  ・・・という光景を、ミエは想像して笑っていたので...第六十八話④

  • 第六十八話③

    「たっだいまーーーっ!!」”キム・チョルをからかってやろう”、ファン・ミエの頭の中はそのことでいっぱいだ。「ちょっとあんた!さっき文房具屋で見たぞ!あんたが私を、愛してるってー!!」みんなの前でそう叫んだら、チョルは血相変えて飛び上がるだろう。 「はっ?!なんで知って・・!」 想像するだけでもワクワクが止まらない。ミエは待ちきれずに、まだ塾の始業まで大分あるというのに家を出た。「めっちゃ面白そう!塾行ってきまーす!!」後ろで母の「ミエ!あんた外出禁止・・」という声が聞こえたような気がするが、それどころではない!そして道に出るやいなや、キム・チョルと出くわした。「あっ!ここで会ったが100年目!」「ちょっと!さっき・・」ミエがそう言おうとすると、チョルは急にハンドルを切って、ミエの前にキッと自転車を止めた。...第六十八話③

  • 第六十八話②

    <愛と美愛>ミエは文具店の側で立ち尽くしていた。[ファン・ミエは耳を疑った][え?さっきなんて言った?]「あ・・・あ・・」ミエは先ほどのチョルの言葉を、少し誇張して思い出してしまう。「愛するの・・美愛」頭の中に、バーンと大きなハートマーク。”愛”・・?思い浮かぶ愛の歌を歌う歌手。「愛とは〜!」[キム・チョルと私の・・]”愛”とは・・昔話でよくあるこんなのとか・・少女漫画でよく見るこんなのとか・・・・てこと!?愛!?頭の中で何度も「愛とは〜」の歌が聞こえる。[初めて肌に直接触れた、自分の名前と”その”単語は]自分の名についた”愛”が、鳥肌となって浮き出てくる。そしてついに、ミエは耐えきれなくなった。ぶふぅーーーーっ!!!「ぷははははは!!!」空に、町内に、ミエの大爆笑が響き渡る。「きゃはははははは!!!!」...第六十八話②

  • 第六十八話①

    ミエの頭の中に、大きなハートマークが浮かんだ。そのハートの名前とはまさしく、”愛”である。歌謡曲で愛を歌う歌手の歌声を思い出す。「愛とは〜!」[ファン・ミエにとって”愛”とは]それに初めて触れたのは、小学生の時だった。[退屈な、お茶の間で偶然見つけた、][コーティングされた野花のようなものだった]偶然見つけたその花と一緒に、”愛”が綴られた手紙を見つけたのだ。「ジンオクさん、僕はジョンナムです。良い天気の下で、空を見上げて道を歩いていると、時々ふと、地面に咲く小さな野花が目に入ります。 ジンオクさんのことを思い出したので、恥ずかしいけれどそれを持って文具店に入って、店の人に話して・・」 「お父さんがお母さんに?」その”愛”の結晶、ファン・ミエにとって”愛”とは。[ブラウン管越しの、]タイタニックにもロミオ...第六十八話①

  • 第六十七話⑦

    <君から目が離せない> [その渦中に、来るべきものはやって来る]名札は見つからないまま、HRの時間になった。黒板には「模擬試験期末試験」と書いてある。「それぞれ6月10日と7月10日よ。気を引き締めて真剣に取り組むようにね」教室はため息と落胆の声でいっぱいになった。「静かに!あんたたち高校に行きたくないの?二つともすごく重要なテストだからね。模試は内申には関係ないからって、まさか適当に受ける人はいないわよね? もう一度言うけど、気を引き締めて真面目に取り組むように」 ミエはその話を流し聞きしながら、ちらっとチョルを見る。「普段よりも結果がすごく伸びる子も出てくるから、今回は頑張ること!分かった?」すると、横目でこちらを睨んでいるチョルと目が合った。ミエは咄嗟に逸らす。「模試の試験範囲は1、2年生の学習範囲...第六十七話⑦

  • 第六十七話⑥

    ミエは9組に着くと、早速彼を呼び出した。「ねぇねぇモ・ジンソプ!」「あんた私の名札見なかった?毛虫見てビックリした時」 「え?見てないけど?てかビックリしてねーし。なんで?失くしたの?」 「うん」 「一緒に探してあげよっか?」「え?!いや大丈夫!あんたに責任はないし!誰かさんは手伝ってくんないけど!」「へーそっか」 「さっきは支えてくれてありがと・・」 ミエがそう言うと、モ・ジンソプはイケメンスマイルでこう返した。「どういたしまして。てか支えて当然でしょ、ミエを」ミッ・・不意に名前を呼ばれたミエは、なんだかゾワっとした。”ミエ”だって?かゆっこの人を思い出す。ジョンウクみたいw「ミエ〜」 そしてモ・ジンソプは、ずっと根に持っていたことを口に出す。「あ、ミエさ」「え?なに?」「キム・チョルと同じクラスだって...第六十七話⑥

  • 第六十七話⑤

    朝の毛虫踏みつけ事件を経た日中、ミエの大声が教室に響いた。「あれっ?!」「私の名札は?!」気付いたら、ついているはずの名札がなかった。ミエは慌てて周囲に目を配らせ、隣の席のチョルに話し掛けた。「えーっなんで!?どこいった!?なんか今日服装検査がある予感がしたから、つけてきたんだよ絶対!!チョルキム!さっき私の名札見なかっ・・」「誰がチョルキムだ」チョルはミエが口にした妙なあだ名を、低いトーンで否定した。何〜?「おーいキム・チョル!昼休みサッカーしない?」顔を顰めるミエの方を振り返りもしないまま、チョルは教室から出て行く。そんなチョルの背中に、サッカー部のオ・ヨンスが嬉々として話しかけていた。ミエはおかんむりである。だって自分がチョルって呼ばせないからじゃん!昔も今も「名前を呼ぶんじゃねぇ」と発狂しているチ...第六十七話⑤

  • 第六十七話④

    [こいつ、本当にどうしたら・・・]妹(10歳)よりも子供っぽいミエのことを考えると、チョルは途方に暮れるような気分だった。心配するミエの父親と同じように、自分もこの子のことを目にかけてやらないと、と。 [・・そう思ってたんだけど] けれどその考えが、少し揺らぐ出来事が起こった。それが今朝のこと。  「うおおおお!」突然の毛虫爆弾に驚いて立ち止まったチョルの背中に、ミエが激突したのだ。「ファンッ・・!」慌てて手を伸ばしたチョル。その目が、予想だにしない展開に丸くなる。「気をつけなくちゃ。チョルもね」突如彗星のように現れ、二人の女子を助けたイケメン☆モ・ジンソプに、ギャラリー達は沸き立った。「わ、モ・ジンソプ!」「かっこいー」まだ固まってるチョルに、ジンソプは言葉を続ける。「お前にぶつかったら、小さい女の子た...第六十七話④

  • 第六十七話③

    休み時間、教室がざわついた。「あっ!変態がいるっ!」「どこ?!」「行こう!」走り出す生徒たちに続き、ファン・ミエも立ち上がる。「どこどこ!?・・うわっ!」ガンッしかし突然隣の席から足が伸び、ミエは強制的に座らされてしまった。ミエの視線の先には、ドス黒いオーラをまとったキム・チョルが・・。[何はともあれ] [確かにこいつは落ち着くってことを学ばなきゃならないんだと思う]チョルはそう思いながら、怒るミエの隣で耐えていた。教室の皆はそんな二人のことを努めて知らんふりをしながら、何の変哲もない話をしている。「なにさ!何すんのさ!なんで止めるのー!離してよー!」「静かにしてくれ・・」「今日のお昼何だっけ?」「ハヤシライスだって」 「えージャージャー麺とカレーの残り混ぜたのじゃないの?」 そんなこんなで、今日がまた終...第六十七話③

  • 第六十七話②

    ここでチョルの視点から、これまでの二人の関係について追ってみよう。[1999年、一学期の約3ヶ月間、チョルとミエには][変わったことばかり起こった][このような一連の出来事の後、一週間ほどが経ったわけだが、] [実際、彼らの関係性にはそれほど大きな変化はない][しかし、キム・チョルは気になっていた][こいつ、どこかで一度頭を強く打ちでもしたんじゃないか?と] こいつ、とはもちろんミエのことである。 [そうじゃなきゃこんなことできないだろ!]チョルにとってミエは、幼い時からずっと”理解できない生き物”らしい。ある時はリュック全開のまま走り・・「おいっ!」「え?」[なんなんだ?]ある時はどうしてそうなった?と思うところにご飯粒をつけ・・「それはお前のおやつか?」「あっ!」[毎日] 「おっはよー!」「宿題は?」...第六十七話②

  • 第六十七話①

    [1999年3月XX]まだ3年生が始まってすぐの、肌寒い春の夜。キム・チョルは一人ベンチに座っていた。[孤独を噛み締める16歳]田舎の空とは違い、ここには一つの星も見えない。真っ暗な空と同じように、チョルの心の中も暗澹としていた。光の見えないこの空に、このまま吸い込まれてしまいそうに——・・・。「そうだよなぁ、田舎ではたくさん星が見えたろうに、ここでは見えないよなぁ」「どぅあっ!!」突然背後から現れたミエの父親に、チョルは心臓が飛び出そうなほど驚いた。「あっ、こんば・・」「あぁ、塾に行ってきたのかい?」「んは・・」「ハンサムなお顔を隠さなくても」「えっ・・」 「チョル君は学校でも人気者だろう?背も高くてハンサムで」「へ?い、いえ・・・」 「あ、そういえばミエと同じクラスになったんだって?席も隣同士だって」...第六十七話①

  • 第六十六話④

    時は過ぎ、[1999年5月末]今日もファン・ミエは元気です!「はははははっ!」ドスドスドス!ダダダダダ!競歩さながらの歩きを見せるこの二人に、道ゆく学生たちが皆振り返って行く。「あ、チョルとミエだ」という声が聞こえた。もう今やこの二人を知らない者はいない。百済中チョルとミエ参上!しかしチョルは不本意である。青い顔をして、小さくミエにこう声を掛ける。「なぁ・・ちょっと離れて歩かねぇ?」「なんで?うちら友達同士でしょ?」ミエは堂々とそう答え、友達から挨拶をされたのを笑顔で返す余裕っぷりだ。それならば、と歩行速度を早めるチョル。「おっ?!」「おりゃっ!」「キム・チョル、おはよう!」「え?あ・・・」早く歩いても余裕でミエは追いついてきて、さらにチョルは挨拶されるとドギマギして上手く返せなかった。今のところ全てにお...第六十六話④

  • 第六十六話③

    [1993年夏]田舎町に着いたミエは、とりあえずその辺を散歩してみた。蝶が飛んだり、バッタが跳ねたり、蝉が鳴いたりする、田舎の夏。地面に、一列に並んで歩くアリの集団。それを見ていた時、薄々気づいていたことが口をついて出た。「え、つまんない」ひとりぼっちで地面を眺めているなんて、退屈そのものだ。やたら蝉の声がうるさく感じた。”仲良くしなさい”と半ば強制的に言われたチョルが、少し離れた場所からその少女を見ていた。イライラしている。女と二人でどーしろって言うんだよ・・勝手に遊ぶだろバチッ不意に目が合った。するとその少女は、まるでマシンガンのように喋りながら近づいてくる。「ねぇどこ行くの!?一緒に行っていい?!これは何?!あれは何?!面白いものない!?」「うわっ」  掴まれた手を、強く振り解いた。 バッ!  「迷...第六十六話③

  • 第六十六話②

    時は再び5年前の夏。少女ミエが、チョルのいる田舎町に初めて来た日のことだ。  90年代仕様のセダンが、慣れない田舎道を走っていた。小さなミエの手が、手動窓のハンドルをくるくる回す。「うわ〜酔った〜!死にそう〜吐きそう〜」長時間に及ぶガタガタ道のドライブで、ミエはもうヘトヘトだった。「もうちょっとだけ我慢して」「お母さ〜ん、いつになったら着くの?」「もうすぐよ」「さっきもそう言ったじゃん〜〜」 予定外の夏休みに、ミエは正直不満タラタラだった。海に行こうって言ったのに〜一体何時間走るの〜〜?「ていうかこんな山の中で何して遊ぶの〜?」「いやいや、きっと面白いよ」「渓谷もあるし、お姉ちゃんも妹もいるし、あんたと同い年の友達もいるわよ」「トモダチ?」不満だらけのミエの心に、一点の光明が差した。”トモダチ”。 「ねぇ...第六十六話②

  • 第六十六話①

    5年前の夏。小さなミエが、こう聞いた。「”しばらく”ってどれくらい?」「1年?2年?」15歳のスンジョンが答える。「や、もっとでしょ」「んー・・じゃあ5年とか?」「もうちょいじゃない?」「じゃあ6年?」「1年しか変わんないじゃん。てか子供相手に私も何言ってんだか」 「じゃああたしが14、15、16・・」”しばらく”経った後、自分が何歳になるのかを数えているのだ。「もう中学生になってるじゃん!」 ほんの数日いただけの田舎町で、ほんの少し一緒にいただけの少年を、ミエはサンダル履きで必死に追いかけた。「一緒に行こうよぉ〜!」「ねぇーっ!」「一緒に行こうったらぁー!」ガクッドタッ「うっ・・チョル・・」少年チョルは、一人でズンズンと歩いて行く。「チョル!チョルぅぅぅ!」「待ってよぉ!一緒に行こうよぉ!」「一緒に・・...第六十六話①

  • キャラクター紹介

    第六十五話の掲載を機に入られた休載期間に、キャラクター紹介がアップされました韓国語で書いてあるところを日本語に直した画像を載っけてます。読みにくかったらごめんなさい韓国語版が読みたい方は本家までGOで! 全体的に、ニックネームのところは何が何やらで・・これはこういうことだよ〜とお分かりになられる方がいらっしゃいましたら、コメント欄にて教えていただけると嬉しいですあと最後の「座右の銘or好きな言葉」ですが、「よく口にする言葉」くらいのニュアンスかもですそれでは全部で19人分載っけてますので、楽しんで下さいね〜  ↑苦手な食べ物、第一話で出てきた小豆!あったな〜あとあだ名いっぱいあるw↑身長ダントツ高いですね〜甘すぎるもの苦手なんだ・・ ↑特技すごくないですかwそして皆の中で一番座右の銘が立派 ↑個人的に苦手...キャラクター紹介

  • 第六十五話⑤

    こうして体育祭は終わったが、まだ陽は高い。太陽が照りつけていた。まだ五月だけれど、もう初夏を思わせるその日差しにチョルは目を細めた。暑・・すると後ろから、聴き慣れた声が聞こえた。何やら歌を歌っている。「やったのよ〜見たのよ〜勝ったのを〜」「うちら今日サイッコーにカンッペキによくやった!!よね?!二人三脚は置いといて・・全校生徒の前でお目汚ししなくて良かったし・・ てなわけで〜〜〜」「はいっ!」ミエはそう言って、チョルに向かって手のひらを向けた。互いを讃えあうハイタッチだ。「頑張った!本当にお疲れ様!我が同志よ!!」「なんだその言い方・・」チョルはそう言いながらも、小さく、ミエにハイタッチを返した。ミエは大満足!ご機嫌モードのミエの、マシンガントークが炸裂開始である。「あんたお腹空かない?!ピザとハンバーガ...第六十五話⑤

  • 第六十五話④

    体育祭の競技は終わり、あとはクラス別出し物が残るのみとなった。12組が集まった体育館に、フォークダンスの音楽が鳴る。踊る彼らを見ながら、違うクラスの生徒達が話している。「なぁマジで12組フォークダンスやんの?」「チョルとミエってまたペアなん?」彼らはそう言ってミエを探した。チョルとは踊っていない。「違うっぽい」チソンとペアになったチョルは、チソンから「あんたサイコー!」と褒められて気まずそうに会釈をしていた。モ・ジンソプをはじめとする9組男子が2階から見ていた。「みんな上手じゃん」と口にする。モ・ジンソプは、先ほどのことについて考えていた。二人三脚でのチョル&ミエ逃亡劇の時に、モ・ジンソプは先輩からの電話に出ていた。「あ、先輩?今体育祭中です。だから終わるのは遅いですって」そして戻って来たとき、校庭はやけ...第六十五話④

  • 第六十五話③

    その後、チョルとグ・ソンハンはようやく対話することができた。頭を抱えて心情を吐露するグ・ソンハン。溜まりに溜まった感情を全て吐き出していた。こっそり覗いているミエにも、単語単語で会話内容が聞こえてくる。「お前だけゴールして・・俺も練習・・短距離も・・マジで2回目のはわざとじゃないんだ・・」「うわぁ〜〜〜っ」そしてとうとうグ・ソンハンは泣き出してしまった。チョルがオドオドとその肩に手を掛けようとすると、「うおーーーーん!!」すごい勢いで抱きつくグ・ソンハン。しかしチョルはそれを受け止めながら、「・・んじゃその辺のこと相談してみようぜ」と静かに声をかけた。ミエは「泣き虫じゃん」と呟きながら、一人ニヤリとほくそ笑む。とにもかくにも、楽勝じゃのお〜〜・・ということがあっての、今日の決勝を迎えたのである。  ミエの...第六十五話③

  • 第六十五話②

    わああっ!体育祭は終盤で、ついにサッカーの決勝試合が始まった。モ・ジンソプの属する9組と、キム・チョルの属する12組の対戦だ。目にも止まらぬ速さで走るのは、やはりこの二人だった。ヒラリ、とモ・ジンソプが身をかわしてボールを奪う。ボンッ「9組ゴール!」流れるような動作で、ボールはゴールへと吸い込まれて行った。9組のギャラリーからは黄色い歓声が上がる。「きゃあああ!」 けれどチョルも負けていない。ボールを運ぶモジンソプの元に、パワーで道を塞ぐ。走りながら、二人の肩が接触した。そしてそのイケメン×イケメンが揉み合う様子を、女子たちは尊いものを見るような目で眺めている・・・・・とその間にチョルがボールを奪った。素早い足捌きで、味方にパスをする。ポンッなんとその相手は、あの因縁のグ・ソンハンだった。チョルは口を「行...第六十五話②

  • 第六十五話①

    太陽が真上に上がる頃、体育祭も佳境を迎えていた。木々の幹にクモが巣を張り、バラは爛々と咲き誇っている。これらは後にお話に出てくるのだが、とりあえず体育祭の行く末を追っていこう。 [そんなこんなで爆笑体育祭は繰り広げられ]二人三脚が終わった後、ファン・ミエは時の人となった。「トイレ」「トイレだったんだって」「トイレならしょうがねーわ」「大魔王、二人三脚だったから一緒に走ったんかな」ヒソヒソ声と笑い声を背中で聞きながら、ミエは友人らに毒づく。「自分たちは水しか飲んでないってか?!」「人間は水飲んだだけでもトイレに行くようになってるから」「うちらだってあんたがズボン濡らしてまで一位になって欲しいとは思ってないって」[何はともあれ幸いだったことは、キム・チョルがこの辺りから抱えて走ってくれたことだ。 みんなに見ら...第六十五話①

  • 第六十四話④

    <望んでいた協働>転んで地面に転がっているミエに、12組からのエールが届く。「ミエ、起きろーっ!」「大丈夫だよ!」「わ、痛そ・・」「ゴーゴー12組!」「ファイティーン!」 クラスからの期待を一身に受けて、ミエは心の中で叫んだ。ダメだ、ここでやり遂げないと・・ 私たち二人が一緒に勝たないと・・!「よしっもう一回!」「ファン・ミエ、」張り詰めた表情で顔を上げたミエに、隣のチョルが手を差し出し、こう言った。「もう一回、落ち着いて行こう」ミエはハッとした。そこで初めて、これは一人で走るのではなく、チョルと走るのだと気づいたのだ。差し出された大きな手。大丈夫、一人じゃない。「うんっ!」ミエは大きく頷いて、力強くその手を取った。ガシッ「行こうっ!!」再び走り始めたチョルミエコンビを見て、12組のギャラリーが沸く。「行...第六十四話④

  • 第六十四話③

    チョルが、学校が楽しくなって、田舎に行くことを考え直してくれたら——・・。そんなことを思いながらチョルの背中を見ていたミエだが、不意に級長に名前を呼ばれた。「あ!ファン・ミエ!ちょっといい?」「え?どしたの?」「ミエ、足速いよね?!ちょっと来てくれる?!急いで!」「へ?どうしたの!?なに?!」「二人三脚の男子と女子が、急に二人抜けることになったのよ。出る予定だった子が足首を挫いて、他の速い子達も見つからなくて・・、 出れそうならちょっと出てくれない?!」 「うん、分かっ・・」ミエが返事を全部口にするより早く、二人三脚に出場予定の人が集まる場所へと連れてこられた。ミエの姿を見て、担任が少し驚いた表情になる。「早く早く!男子の方はもう待ってるわよ!・・あら、ファン・ミエなの?」「あれっ?」そこにいたのは———...第六十四話③

  • 第六十四話②

    <友達の活躍>この体育祭、キム・チョルの活躍は本当に目覚ましかった。パーン!バッ!続くリレーでも、チョルはその実力を発揮させた。「12組の勝利!」わああっ!12組ギャラリーの盛り上がりは最高潮!他のクラスは、怒涛の展開に若干引き気味だ。走り終わったハン・ソンイの元に、激励すべくミエが近寄った。「ソンイ、めちゃ速かったね!」「ありがとう、ミエもさっきすごく速かったよ。リレーも出たら・・」 「リレーは選抜落ちー!」  そしてソンイもまたチョルに声を掛ける。「やっぱりチョルはすごく速いね!」「えっと・・・ありが・・」激励が激励を生む、まるで称賛リレーである。ソンイはキョロキョロとあたりを見回した。モ・ジンソプを探していたのだが、9組の応援席にはいないようだった。頑張った姿を見て欲しかったその気持ちが、ため息とな...第六十四話②

  • 第六十四話①

     チョルは短距離走の1等景品のナイキのリストバンドを、ミエに渡した。「やるよ」「えっ?」そのシチュエーションで、ミエの脳裏の浮かんだのは・・・。 「やるよ」「えっ?なんで私に・・・」まるで少女漫画のワンシーン。二人の背後にはバラが咲き乱れ、キラキラした光の中で二人は見つめ合う——・・。   ・・と、そこでミエは現実に戻った。あっ昨日のことを思い出したからだ。 「その上であなたはどうしたいの?」職員室で聞いたチョルの言葉。「・・俺は、もう一度話をしてみたいです」覗き見したその場面を思い出して、ミエはチョルにとある話をすることにした。塾が終わり、一人自転車で帰路に着くチョル。・・のことを、待たしても待ち伏せしたミエw「ねえっ!」「うわっ!」「こんの・・バカ!変態!」「誰がバカで変態だって?!シニタイノカナ?」...第六十四話①

  • 第六十三話⑤

    ミエは勢いよくスタートラインを蹴った。グ・ハンソンが欲しがっている一位の景品目掛けて。風を切って走りながら、各クラスの応援が聞こえる。そして結果は・・! 「12組、一等ファン・ミエ!」頑張りの成果が全部出て、見事一位でゴールした。友人達が労ってくれる。「よくやった!」「おお〜!」「わー!」そこでチョルと目が合った。ミエは勢いよくガッツポーズ!私はやったよ!あんたも頑張れ!行け行けファイティーーーーン!!その暑苦しいほどのやる気に、チョルは少し引き気味・・・。あ、ハイするとひょっこり現れたモ・ジンソプが話しかけて来た。「何、ファン・ミエ短距離走に出たの?頑張ったね〜すごいじゃない(小さいのに)」「え?あんたも出るの?」「当然」「私は男子の一等景品が欲しかったな〜」「なんで?」「え、だって男子の景品の方がいい...第六十三話⑤

  • 第六十三話④

    <友達は見守ってくれるものだ> リンボーダンスが惨敗に終わった12組。しばし寝ていたミエだが、バッと起きてこう言った。「いやいや!次こそは頑張るし!だよね!?」すると目の前に、いつもいちゃもんをつけてくるあの男子がいた。男子はミエの背後からじっと見てくるチョルを見て、ヒッと息を飲む。ダダダ・・・ミエは(あいつめ・・・)と思いながら、先日のサッカー準決勝の様子を思い出していた。「おい!パスしろよ!」「え?あっ・・!」「うわっ!?」大事な試合中に、彼は大ミス連発だったのだ。「い、いや・・マジでこれは・・」ズオオオオオオ・・・そして遂に、皆の彼に対する不満が爆発した。「違う!違うって!」「おい、もうお前抜けろよ!」「は?!このクソ・・」 「もう勝手にしろよな!」「はぁ?なんなんあいつ」「冗談じゃねーよ」チョルの...第六十三話④

  • 第六十三話③

    <友達は一緒に挑戦するものだ>[そして約二日間、ファン・ミエはそれなりに特訓した]  家に帰ってからも、ミエはフォークダンスの練習に明け暮れた。 もちろん、カーテンが閉まってるかの確認は欠かさない。  こんなのまで準備してくれちゃって・・ それに・・・  ミエはあの時見たチョルの横顔に、肯定的な意味を感じ取っていた。 早速今日ちゃんと上手く行ったから嬉しかったっぽいよね ふふっと笑うミエ。 するとドアの隙間から、ムンクがこちらをのぞいているのに気がついた。 「ん?何見てんの?ムンク」  ミエはそこで、自分のやる気に火がつくのを感じた。 父親と母親と共に、走りの練習のために夜の道路に出る。 「ねぇなんで夜中に・・お父さん明日会社なのに」 「大丈夫大丈夫。ミエが体育祭頑張りたいって言うんだから」  キム・チョ...第六十三話③

  • 第六十三話②

    ”友達は助け合うもの”というゴン・チソンの言葉を反芻しながら、チョルはダンスに苦戦するミエのことを見ていた。チョルが見ていることに気づいたミエは、「大丈夫だよ」とサムズアップして見せる。グッ!そしてそんなミエの後ろに、チソンが微笑んで立っていた。「友達は助け合わないとね!」その言葉を思い出しながら、チョルは一人考えた。んなことわざわざ言い出さんでも・・だからチョルは、少し手を伸ばせば食いついてくると思っていたのだ。「教えてやろうか?」”気にするな”なのに・・・。”できるし。いい加減しつこいよ?あんたは上手で良かったね〜”全然思った通りの反応が返って来ず、チョルはイラついたし、何より理解が出来なかった。なんでこんなに頑固なんだよ!?そしてチョルは一人消しゴムを持って、ミエの家の前に立ったのだ。ああして欲しい...第六十三話②

  • 第六十三話①

     音楽に乗せて、二人は踊った。手を重ね合い、交互にステップを踏む。一曲終わる頃には、ミエはすっかり踊れるようになっていた。ジャン、と音楽が終わる。二人ともお辞儀の姿勢のまま、しばし立ち止まる。ミエの口角が、ジワリと上がった。「やったぁーーーっ!」「やー爽快!方向だけしっかり確認したらできたじゃん!」「それ俺が言ったことだろ。家でもっと練習しろよ」「私でもできるじゃんってことだよ!」「見てろよぉ〜目に物言わせてやる!」「ほら荷物。授業始まるぞ」そう言ってカバンを取るチョルに、ミエは無邪気な笑顔を向ける。「あんたマジで教え方上手だね!」「そうか?俺には教えられないって思ってたんだろ?」心の中のざらりとしたものが、僅かにチョルの口から溢れ出た。しかしミエには、チョルの少し上がった口角しか目に入らない。「え?あん...第六十三話①

  • 第六十二話④

    <93年と99年の飛行機> ようやく二人の覚悟が決まり、フォークダンス練習が始まった。「もうマジで始めようぜ」「あっ音楽音楽!」カチャッ「俺の合図と色だけに集中な」「うん・・!」そうして二人は手を繋いだ。93年のあの夏ぶりの、99年のフォークダンス。「タタタンタタタン」「左の青から」「左、右」「左、右」赤・・いや青  ミエは方向と色を関連付けて覚ようと必死だ。 左、右、と言いながら、頭の中で色を思い浮かべる。  ミエが動きやすいように導いてくれるチョルに、ミエは素直についていく。「動いて、右から」「三回拍手」「ターンしたら赤から。もう一度繰り返し」 「お?おおお・・・」 じわじわと、ミエの思いは確信に変わる。 おっ?思ったよりできそうだぞ? あれだけ出来なかったのが嘘みたいに、 ミエはちゃんと動きについて...第六十二話④

  • 第六十二話③

    結局ミエはどうやって家を出れたのかと言うと・・・。「塾の宿題が溜まってて、みんなで一緒にやるんです。塾の子達とやれば力もつくし・・」「チョル・・キム・チョルと一緒に行ってくるね!塾の子達はみんな勉強よくできるし優しいし・・」「今日だけよ?チョルくん、しっかり見張っててね。他の所に寄り道しないように」「ハイ・・」[そう言ってお母さんを説き伏せてくれた] 晴天の空の下、少し強めの風が吹いている。[こうして、ここに立つことになったのだった]と、これが事の顛末であった。二人の間に置いてある、塾から借りてきたカセットデッキには、担任が作ったフォークダンスのコピーテープが入っている。  [嬉しくてついていく時はいつだって] [なんだか微妙な気分もついてくる]  [ああしたいこうしたいとコロコロ意見が変わるのは、キム・...第六十二話③

  • 第六十二話②

    帰り道も、ミエはダンスの練習をしながら歩いた。「タタタタン、左、右・・」「いや左?タッタッタッ」他のみんなはすごく上手なのに、私だけできてない・・ [プライドが傷つく] わざとじゃないのに、必死なのに、間違えるたびに笑われる。 しかも、 [友達はもう諦めてしまった]「もううちらも無理だ。そのままただ方向を覚えるしかない!」「ビデオで撮ってそれ見ながら練習してみたら?」「そしたら反対に見えるからもっと混乱するんじゃない?」 「あー」 友からも見放され、そして・・[キム・チョルはサッカーの練習に行ってしまった]差し伸べてくれた手を断ったからしょうがないけれど、キム・チョルも離れていく。ベ・ホンギュの言葉が追い打ちをかけた。「方向音痴〜w」「お前は黙っとれ!」こうなったからには、一人でやるしかない。[意地でもやり切る...第六十二話②

  • 第六十二話①

    学校では、今日もフォークダンスの練習が行われた。「1、2、1、2」[残念ながら、キム・チョルの言葉は間違いではなかった][方向を間違うと覚えてても理解できず、一人だけ追いつくことが出来ない]ミエはみんなとは反対方向に飛び出して、先生から「逆!」と常に叱られていた。「おいこっちだ!」先日、ゲームセンターでベ・ホンギュから言われた一言が思い出される。「ファン・ミエ、完全に方向音痴だなw」心の中で[お前は黙っとれ]と毒づくものの、依然として方向は覚えられない。「ファン・ミエ、一人で忙しいな!」先生がミエを注意するたび、ワハハと笑い声が上がった。ミエは恥ずかしさを堪えながら、ペアの男子と手を合わせようとする。「なぁ」「えっ?」「あんた前髪切れよ」「前がよく見えてねーんじゃね?」ペアの男子は、それだけ言って移動してしまっ...第六十二話①

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