茜とその色
流れる時間のなかで水を流した茜はテーブルに座った。茜と私は暗い部屋の大窓の右側へ没していく陽をながめた。向かいの家と家との隙間の南に夕日の名残りが見える。住宅地で、家と家の隙間から南の地平線が望めた。西へ没していく茜色が南の地平線をも染めていた。 二人は夕暮れの残した色あいに気をとられ、いままでお互いに話していた生活の問題も忘れた。家と家のあいだから望める南の地平線の色は、その下に隠された異国の空をほのめかしている。なおさら、西には陽が燦々と降り注いでいるだろう。遠い異国の色。 茜も私もどこで見たか記憶していないが、異国の落日を見た覚えがあった。その記憶の色彩を、いま見える縦
2024/10/25 18:00