私に何の相談もなく留学を決めたことに、元夫の両親はひどく恐縮してすんなりと離婚手続きが完了した。元夫が自らの意思で決めたとはいえ、私はいつも彼に対して何か秀でた能力を持つことの必要性を過度に煽っていた。私は何も努力していなかったにもかかわらず、周りの友人知人や里帆からの自慢話を聞かされるたびに生じる焦りと劣等感が、一番身近な存在だった元夫の尻を乱暴に引っぱたく攻撃性に変わった。元夫は私を見返すために留学という手段を選んだのかもしれず、それなら私も彼のお手並みを拝見してあげるべきだったけど、私以上に互いの家族が離婚を急いでいるのがわかると彼に対する執着心も弱まってしまい、私たちの夫婦の絆とは水産缶詰の中骨のように脆いのだと彼に打ち明けると、彼は「せめてサクサク感があってくれたら踏みとどまれたんだけどな」と返...連載小説「1999-お菓子系20年目の総括」⑦
本心とは裏腹の言葉を並び立てて里帆と話を合わせるのが自分をごまかしているような気がしてならず、私は早く電話を切りたくて彼女との要求どおり、祝儀の現金を渡して祝いの品物を一緒に選ぶ段取りを約束した。きっぱり断って里帆との腐れ縁を絶ち切る選択もあったけど、高校時代の少しだけ背伸びした思い出を共有している仲間を失うのは惜しい気がして、彼女への挑発も中途半端に終わった。今が大事。公務員の妻と教育熱心な母親の顔を持つ里帆にとっては至言なのかもしれず、メディアで嘲笑の対象とされている岡野のぞみも過去の男性遍歴を芸の肥やしにすることなく、今の自分を真剣に愛してくれている同級生の信金職員との結婚を決めた。過去が軽んじられるどころか、なかったことにとしらばっくれている二人のあざとさに共感が持てないのは、私が今の自分を嫌悪し...連載小説「1999-お菓子系20年目の総括」⑥
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