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最近映画ばかりなのでたまには小説でも、ということで平野啓一郎の『ある男』のご紹介です。丁度先日同氏の『本心』を読了いたしまして、せっかくなら平野啓一郎のヒューマニズム三部作の感想は書こうじゃないかと思い至ったわけです。弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。宮崎に住んでいる里枝には2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。『ある男』特設サイト|平野啓一郎より引用愛したはずの夫は、まったくの別人であった。出...ある男
非常に今更なんですがブログ上では書けていなかった昨年の映画ランキングベスト10を発表します。昨年は社会問題に切り込んだ作品に感銘を受けていたのか、社会派映画が多かったですね。比較的エンタメ寄りだった2021年の映画ランキングと見比べると傾向が違い過ぎて…【第1位】アテナ(Athena)ロマン・ガヴラス監督製作国:フランス日本公開日:2022年9月23日昨年No.1はロマン・ガヴラス監督の『アテナ』でした。過去観たNetflix映画の中で今のところベストです。フランスパリの移民を標的にした極右勢力による悲劇。まさに今同じようなことがパリで起こっています。警察官による移民青年の射殺、まるで予言のようにピタリと本作のストーリーと合致します。フランス南部マルセイユで衝突と催涙ガス警察による少年射殺に抗議続く-BB...【2022年】個人的映画ランキング
大変ご無沙汰しております、と書き出すといかにもビジネスメールのようですが、渡英して以来一度もブログを更新できず気づけば1年もの間放置しておりました…自分には継続力が足りないなとつくづく思う限りです。本当は去年ボテロの展示や2022年の映画ランキングについても書きたかったりしたのですけれども。ロンドンに住み始めてから、美術愛好家の私としてはこの上ない体験ができていますが、特にテート・ブリテンでミレイの『オフィーリア』を鑑賞した際の感動と言ったら!(※妹曰く絵と自撮りする人初めて見たとのこと)「おれが心から美しいと認めてしまったもの、その前でおれは無力になる…」というユダの台詞の深みを感じたものです。前置きが長くなりましたが、今回は美術展の感想文です。LondonDesignMuseumで開催されていたAiW...AiWeiwei:MakingSense
こんにちは。今回は久しぶりに音楽の内容で更新です。ここ数年で色々良い音楽に触れることができたので編集CDR、もとい編集プレイリストを作成しました。前回『Ombramaifu』を作成したのが2017年なので実に4年半ぶりですね。今回は『ゴジラキング・オブ・モンスターズ』で使用されていた「GhidorahTheme」と「ClaredeLuna」を起点に、月と夜に関する曲を集めて作ってみました。AppleMusicでもプレイリストを公開してみたので、良ければ聞いてみてください。編集プレイリスト『ClaredeLuna』01:三日月サンセット|サカナクション冒頭のシンセサイザーの入りがクール。日没の不穏さと夜が始まるワクワク感が共存した1曲目に最適な楽曲です。02:瑠璃色の地球|及川なずな(CV.広瀬すず)松田聖...編集プレイリスト『ClairdeLuna』
たまにはタイムリーな情報共有を、ということで先日会期が始まったばかりのミロ展をご紹介します。渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中です。ミロ展-日本を夢みて Bunkamura《展覧会概要》スペインのバルセロナで生まれた大芸術家、ジュアン・ミロ(1893-1983)。ピカソと並ぶ現代スペインの巨匠として日本でも広くその名は知られていますが、ミロの創作活動の裏側には日本文化への深い造詣があったことは意外なほど知られていません。一方日本では1930年代からミロの作品が紹介され、世界に先駆けて1940年にモノグラフ(単行書)が出版されるなど、日本は早くからその活動に注目をしてきました。そして現在も日本各地の美術館が数々のミロの名品を収蔵しており、今なおミロの人気は衰えません。本展では、若き日の日本への憧れを...ミロ展ー日本を夢みて
『ゲアトルーズ』鑑賞。デンマークの巨匠カール・ドライヤーの遺作。三人の男の間で愛を求めて揺れ動くゲアトルーズの物語。弁護士の妻であるゲアトルーズは夫との結婚生活に不満を抱き、若き作曲家エアランとも恋愛関係にある。ある日、彼女の元恋人であり著名な詩人ガブリエルが帰国し祝賀会が催され、ゲアトルーズはエアランの伴奏で歌唱するが卒倒してしまう。filmarksより引用カール・ドライヤーの作品は初めての鑑賞。シアターイメージフォーラムで「奇跡の映画カール・テオドア・ドライヤーセレクション」が開催されていたので、遺作かつ集大成と噂の『ゲアトルーズ』を観てきました。因みに"Gertrude"という名前は『「槍」と「強さ」を意味するゲルマン語のルーツに由来する女性の名』だそうです。AmorOmnia愛がすべて物語が開始されてか...ガートルード/ゲアトルーズ
新年あけましておめでとうございます。2021年、あっという間に終わってしまいましたね。初夢ではなぜか弟と一緒に大学の卒業証書を受け取っていました。昨年のハイライトは……①47都道府県踏破!②10年ぶり吹コン+アンコン、③ドバイ万博訪問、ですかね。今年の映画鑑賞本数は新旧含めて90本!楽器の練習に忙殺され、自宅待機期間の影響で目標の100本に届かず……無念でした。毎年恒例新作のベスト10を発表させていただきます。【第1位】アナザーラウンド (Druk)トマス・ヴィンターベア監督製作国:デンマーク日本公開日:2021年9月3日人は血中アルコール濃度0.5%においてパフォーマンスが改善するという学説にトライする飲んだくれ中年青春譚。「青春とは夢であり、愛は夢にある」という冒頭の主題。夢は必ず覚めるもの、友人の死をきっ...【2021年】個人的映画ランキング
ご無沙汰しています。2021年も前半が終わって久しいですが、今回は今年前半で観た映画の中で一番良かった福永壮志監督の『アイヌモシリ』をご紹介します。14歳のカントは、アイヌ民芸品店を営む母親のエミと北海道阿寒湖畔のアイヌコタンで暮らしていた。アイヌ文化に触れながら育ってきたカントだったが、一年前の父親の死をきっかけにアイヌの活動に参加しなくなる。アイヌ文化と距離を置く一方で、カントは友人達と始めたバンドの練習に没頭し、翌年の中学校卒業後は高校進学のため故郷を離れることを予定していた。亡き父親の友人で、アイヌコタンの中心的存在であるデボは、カントを自給自足のキャンプに連れて行き、自然の中で育まれたアイヌの精神や文化について教え込もうとする。少しずつ理解を示すカントを見て喜ぶデボは、密かに育てていた子熊の世話をカン...アイヌモシリ
久しぶりの更新です。4月・5月全く更新せず気づけば梅雨入りが目の前に……時の流れの残酷さは誰にでも平等ですね。今回は敬愛するSF作家上田岳弘氏の『キュー』をご紹介いたします。さあ、今から「世界最終戦争」を始めよう。人類を終わりにするために。平凡な医師の僕が突然拉致された先では、世界の趨勢を巡る暗闘が繰り広げられていた。その中心には、長年寝たきりのはずの祖父がいるという。そして明かされる祖父の秘密、それは人類を一つに溶かすという使命なのだが――上田岳弘『キュー』 新潮社より引用プロローグを除き全部で九章構成となる本作。章節タイトルはすべてが「キュー」という徹底ぶりで、順に急・旧・九・求・究・宮・久・球・救と流れていきます。現代の分断された社会を《世界最終戦争》という切口で捉えた見事な作品でした。人類の進化ーパーミ...キュー
前回の記事「燃ゆる女の肖像」と関連して、もう少しオルフェウス神話について思うところを綴っていきます。神話をテーマにした絵画はもう五万とあるわけですが、オルフェウスで多くの人が思い浮かべるのはギュスターヴ・モローでしょう。絵画そのものの美しさもさることながら、左上から右下への流れるような構図が素晴らしい。ギュスターヴ・モロー《オルフェウスの首を持つトラキアの娘》1865この神話は絵画以外でもテーマアップされています。フランスの詩人ジャン・コクトーの映画『オルフェ』がその一つ。オルフェウス神話を現代風に構成した作品ですが、その結末は大いに議論を呼びそうなものです。話の内容はというと、詩人オルフェ(オルフェウス)が亡くなってしまった妻ユーリディス(エウリディケ)を取り戻しに冥府へ降るという構成はそのままなのですが、な...オルフェウスの美学
ご無沙汰しております。少し古新聞になってしまいましたが、セリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』があまりにも素晴らしかったので紹介させてください。映画『燃ゆる女の肖像』公式サイトすべてを、この目に焼き付けた——2020年12月4日(金)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国順次ロードショー映画『燃ゆる女の肖像』公式サイト《Story》画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。キャンバスをはさんで見つめ合い、美しい...燃ゆる女の肖像
チベットの天才映画監督ペマ・ツェテンの作品が遂に一般劇場公開!一昨年の東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した作品『羊飼いと風船』をご紹介します。 《Story》神秘の地・チベットの大草原で暮らす三世代の家族。祖父は変わりゆく時代を憂いながらお経を唱え、若夫婦は3人の息子たちを養うため牧畜をして生計を立てている。いたずら盛りの子どもたちは、のびのびと大草原を駆け抜けている。昔から続く、慎ましくも穏やかな日々。しかし、受け継がれてきた伝統や価値観は近代化によって変わり始め、中国の一人っ子政策の波が押し寄せていた。そんなある日、母・ドルカルの妊娠が発覚する。喜ぶ周囲をよそに、望まぬ妊娠に母の心は揺れ動く。伝統的な信仰と変わりゆく社会の狭間に立たされ、次第にすれ違う家族―葛藤の末、彼女が選んだ道とは…(「『羊飼い...羊飼いと風船
こんばんは。もう会期が終了して暫く経ってしまいましたが、BunkamuraMuseumで行われていたベルナール・ビュッフェの個展に行ってまいりましたのでその備忘録を書いておきます。 ベルナール・ビュフェ回顧展私が生きた時代 Bunkamura 《展覧会概要》20世紀後半のフランスを代表する具象画家の一人ベルナール・ビュフェ(1928‐1999)。刺すような黒く鋭い描線によるクールな描写を特徴とする画風は、第二次世界大戦直後の不安と虚無感を原点とし、サルトルの実存主義やカミュの不条理の思想と呼応し一世を風靡しました。抽象絵画が主流となっていくなかで、人気作家となっていったビュフェは批判されながらも自らの道を貫きます。そして近年、パリ市立近代美術館で本格的な回顧展が開かれるなど、再評価が高まっています。疫病の不安が...ベルナール・ブッフェ回顧展-私が生きた時代
1月ももう下旬に差し掛かっていることがもはや恐ろしいのですが、とりあえず宣言通り去年の個人的ベスト10を紹介いたします。 【第1位】ハニーランド永遠の谷リューボ・ステファノフ/タマラ・コテフスカ監督製作国:北マケドニア日本公開日:2020年6月26日北マケドニアに居るヨーロッパ最後の自然養蜂家を追った極上のドキュメンタリー。こと「映画」に関しては、フィクションが主流ではありますが、「映像」の本質はドキュメンタリーだと考えさせられますね。「半分はわたしに、半分はあなたに」自然と共生するサステナビリティの精神を養蜂家の生活に垣間見ることができます。OGPイメージハニーランド永遠の谷-K馬日記ご無沙汰しております。最近文章を書く気力もなかったのですが、気を取り直して久しぶりに投稿します。そろそろ年の瀬、今年のベスト1...【2020年】個人的映画ランキング
新年あけましておめでとうございます。2020年はエジプト旅行中ナイル川の上で始まるという、自分史上最も印象深い新年のスタートとなりましたが、今年は一転「StayHome」で久しぶりに家族とゆっくり新年を迎えました。毎年恒例の映画ベスト10は別途書くとして、久しぶりに日記的な更新ということで個人的に2020年を振り返ってみます。 1月:エジプト、ナイル川ツアー後輩がカイロに住んでいるという稀有な状況で実現した年末年始ナイル川ツアー。数々の世界遺産を巡るという貴重な経験を差し置き、妙に印象に残っているのはカイロにある日本料理屋「牧野」でいただいた初日の夕食。MENA地域では信じられないクオリティの鰻重に和食欲が久しぶりに満たされました。 2月:カタール上空で"MementoMori"ベルギーに住んでいる先輩を尋ねに...新年のご挨拶と旧年の振り返り
ご無沙汰しております。最近文章を書く気力もなかったのですが、気を取り直して久しぶりに投稿します。そろそろ年の瀬、今年のベスト10を決めなければならない時期に差し掛かってきました。今回は今年上半期で一番面白かった映画を『ハニーランド』をご紹介します。映画『ハニーランド永遠の谷』公式サイト|6/26(金)アップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開アカデミー賞史上初!ドキュメンタリー映画賞・国際映画賞2部門同時ノミネート!!北マケドニアで作られた驚異のドキュメンタリー映画『ハニーランド永遠の谷』公式サイト|6/26(金)アップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開《Story》主人公は、首都スコピエから20キロほど離れた、電気も水道もない故郷の谷で、寝たきりの盲目の老母と暮らすヨーロッパ最後の自然養...ハニーランド永遠の谷
May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic
こんにちは。疲弊しつつも夏休み突入です。と言っても都民としては特にすることもないのですが。今日は久しぶりに美術の更新ということで、日本を代表するアーティスト集団Chim↑Pomの個展「May,2020,Tokyo/ADrunkPandemic」の感想をば。http://anomalytokyo.com/exhibition/may-2020-tokyo-a-drunk-pandemic/会場は天王洲アイルにあるギャラリー『ANOMALY』、2年前に同じくChim↑Pomの個展で柿落としをしたギャラリーです。今回は《May,2020,Tokyo》と《ADrunkPandemic》の二つのプロジェクトを見てまいりました。May,2020,Tokyo《May,2020,Tokyo》展示室緊急事態宣言発令後、自粛期間中...May,2020,Tokyo/ADrunkPandemic
カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した現代版『レ・ミゼラブル』を観てまいりました。ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を現代化。舞台は原作と同じく、パリ郊外のモンフェルメイユ。まず、余りにも挑戦的なタイトル。ミュージカル作品として広く知れ渡り、最早少女コゼットの成長譚でしかない『レ・ミゼラブル』という単語そのものを再定義するかのような作品です。それは「レミゼ好き」と宣う人々に対するメタ的な批判をも内包しているかのようで、「悲劇は現在も続いている」という監督の強い姿勢が垣間見えるようです。冒頭は人種を超えてオリンピックに熱狂するフランス国民の姿。仮初の一致団結を象徴する実にアイロニカルなシーンから始まります。ただ、実際のフランスではマリーヌ・ル・ペン率いる極右勢力が台頭してきており、移民への風当たりは年々強まっ...LESMISERABLES
自粛解禁後にいきなり忙しくなってしまい、更新滞っておりました。映画館解禁という吉報を受け観たかった作品の駆け込み観賞をしまくったので、ポツポツ紹介していきます。映画『三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実』公式サイト禁断のスクープ映像、解禁!自決1年前に何があったのか?伝説の討論会を13人の証言者と紐解く衝撃のドキュメンタリー!!映画『三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実』公式サイトTBSの保有する貴重映像がドキュメンタリー映画化。平野啓一郎や内田樹など知識人や、実際に全共闘に参加した活動家のコメントなどを交えながら、当時どういう思想で何が起きていたのかを紐解いていきます。懐かしき学び舎900番講堂を舞台に展開される三島由紀夫と東大全共闘の公開討論会。900番講堂って昔からこんな感じだったのね。(ここで社会学...三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実
Ludovico Einaudi - "Elegy for the Arctic"
久しぶりに音楽の話題です。英会話中講師のイギリス人に勧められて聞いてみましたが、曲以上に活動が素晴らしかったので共有します。LudovicoEinaudi-"ElegyfortheArctic"-OfficialLive(Greenpeace)直訳は「北極のためのエレジー(哀歌)」でなんと演奏に北極の氷が崩れ落ちる音を組み込んだ現代作品です。なんて大規模なアンビエント・ミュージックでしょうか。そしてメッセージは当然ながら"Greenpeace"、環境問題への提言ですね。確かに音だけで環境保護のメッセージが明確に伝わるのは北極の氷が崩れる音だけかもしれません。コロナウィルスのポジティブな面として環境問題の改善がありますよね。大気汚染大国のインドでは青空が観測され、ボスフォラス海峡にはイルカが戻ってきたそうです。人...LudovicoEinaudi-"ElegyfortheArctic"
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