軟骨無形成症(achondroplasia)は線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)の恒常活性型変異によって軟骨の成長に障害が生じ、低身長や四肢短縮を呈する疾患です。薬物療法としてはこれまで成長ホルモンの投与などが行われてきましたが、その効果は限定的でした。C-typenatriureticpeptide(CNP)は骨伸長促進作用をもつ生理活性ペプチドであり軟骨無形成症に対する効果が期待されていました。日本からも京都大学名誉教授の中尾一和先生のグループなどから優れた研究が報告されています。今回CNPアナログであるvosoritideの軟骨無形成症に対する有効性を検証した無作為化二重盲検第3相プラセボ対照多施設共同試験の結果が報告されました。5歳以上18歳未満の患者に対してvosoritide150μg/kgま...軟骨無形成症に対するvosoritideの有効性が示された
生物のしくみの巧妙さはヒトの発想を超えるものが多く、バイオロジーで言えばノーベル賞を受賞された下村脩博士がオワンクラゲから発見された緑色蛍光タンパク(GreenFluorescentProtein:,GFP)などは大変有名ですし、マテリアルの分野では蚊の針を模して作成した注射針なども好例として挙げられるかもしれません。この論文では深海に生息する六角海綿(hexactinellidsponges)の一種Euplectellaaspergillum(カイロウドウケツ;偕老同穴なんて少しロマンチックな名前ですね)の骨格系に注目しています。この海綿の骨格は、正方形の格子状の構造に二重の対角線ブレイシングを重ね合わせたもので、開いた細胞と閉じた細胞のチェーカーボードのようなパターンを形成しています。有限要素法で調べると、...海綿の骨格構造がすごい!
Sexualparasitismと言ってもヒモのことではありません。ある種のチョウチンアンコウは、小さなオスが大きなメスに付着し、場合によっては完全に融合してしまい、オスは全ての栄養をメスに依存するようになります。まぁそういう意味ではヒモですかね。。これは深海に住んでいるし活動度も低いために、中々オス・メスの出会いの機会がないので、貴重な出会いの場を逃さないためにこのような進化を遂げたようです。肉食系ですな。これは同種移植のようなものですから、普通はこのような状態になれば、ホスト(メス)側の免疫機構がオスを排除するように働くと思われます。しかし一時的に融合するような種類のチョウチンアンコウでは免疫グロブリンのクラススイッチなどに重要なaicda遺伝子を欠くことで抗体による拒絶反応が生じなくなっていること、そして...雄雌が融合する深海魚の免疫システム
日本でも帝王切開での出産が増えていますが、アメリカでは32%の出産がが帝王切開によるものだそうです。この論文は帝王切開後の手術部位感染(SSI)に対する陰圧閉鎖療法と通常のドレッシングを比較したものですが、対象とした患者はBMI≥30の肥満患者というところがアメリカらしいです。陰圧閉鎖療法群はPrevena(KCIUSA,Inc)という機器を術後7日間使用、通常ドレッシング群はガーゼで創を被覆する(1日でガーゼはオフ)というプロトコールで(1日でガーゼオフというのは産科では一般的なのですかね・・)、1624名をランダム化して、それぞれの群に816名、808名が割り付けられました。プライマリーアウトカムはCDC基準での表層あるいは深層SSIの発生です。結果は表層あるいは深層SSIの発生は3.6%vs3.4%と有意...肥満の妊婦に対する帝王切開後のSSI
ヒトが2足歩行を行うにあたって、様々な解剖学的な変化が下肢に生じましたが、その変化の一つが中足骨MTPJ関節面の背屈による足趾のMTP関節の背屈です。歩行時にはMTPJがさらに背屈することで巻き上げ作用(windlassmechanism)によって足底腱膜の緊張を高め、足底アーチを保つのに役立つとされています。靴の先端が反っている(toespring)はそのような足の動きをアシストし、歩行やランニングを楽にすると考えられています。この論文で著者らは様々な角度(10度~40度)のtoespringを有するサンダルを用いて、靴の背屈角度は足底腱膜の緊張にあまり影響しないが、toespringの角度が大きくなると歩行時に足部が必要とする仕事量が減少し、負担が減る可能性を示しています。一方これによって内在筋にかかる負荷...靴先端の反りかえり(toespring)の役割
腫瘍性骨軟化症症例に対してinfigratinibが有効であった
腫瘍性骨軟化症(tumor-inducedosteomalacia,TIO)はPMTMCT(phosphaturicmesenchymaltumor,mixedconnectivetissuevariant)によって産生される過剰なFGF23のためにリンの排泄が促進し、重篤な骨軟化症に至る疾患ですが、日本では抗FGF23抗体burosumabが治療薬として承認されています。FGF23は共受容体であるKlothoとともに受容体であるFGFR1に結合して細胞内へのシグナルを伝えますが、この論文では66歳の男性TIO患者に対してFGFR1–3tyrosinekinaseinhibitorであるinfigratinibが有効であったことを報告しています。Infigratinibは胆管癌などに対して臨床試験が行われていま...腫瘍性骨軟化症症例に対してinfigratinibが有効であった
コロナウイルスは他のRNAウイルスと比較して変異が起こりにくいことが知られておりSARS-CoV-2も例外ではありません。変異自体はそれでもたくさん生じているのですが、アミノ酸の置換を伴わないなど意味のない変異がほとんどです。しかしKorberとMontefioriらが報告した614番目のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に変異したD614G変異型ウイルスは2月以降拡大し、6月には世界のほとんどのウイルスを占めるようになりました。Korberらはこの理由がD614Gウイルスの感染力が高い可能性があると考察しました。以来様々な研究報告がなされていますが、それを肯定するもの、否定するものなど様々で、いまだに結論はでていません。COVID-19GenomicsUKConsortiumにおける約25,00...SARS-CoV-2のD614G変異型について
オランダのNeteaらは以前から"自然免疫記憶(trainedimmunity)"に着目して研究を行っています。Trainedimmunityとは、ウイルス感染などの記憶が自然免疫細胞においてヒストン修飾変化やDNAメチル化などのepigeneticな変化を誘導し、その結果再感染に対してT細胞とB細胞に依存せず自然免疫系の応答をもたらすという現象で、獲得免疫のような非可逆的な変異や組み換えには依存しない現象であるとされています(Neteaetal.,NatRevImmunol.2020Mar4.doi:10.1038/s41577-020-0285-6)。 彼らはBCGにはtrainedimmunityを刺激する効果があり、そのために他の感染症を抑制する可能性があるとの仮説から、65歳以上で何らかの理由で入院し...BCGワクチンが高齢者感染症予防効果を示した
「ブログリーダー」を活用して、sakaetanさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。