痛いくらいの力。苦しくて、上がっていく息が苦しくて堪らないのに、その息苦しさの分だけ、現実のこいつの存在を感じられる気がして。どうしても突き放す事ができなかった。「もしかして……妬いてくれた?」「バ……ッ!そんなんじゃ…っ!」「大丈夫、あい
出て行けと言った俺の言葉に、戸惑うように瞳を揺らした仁志が、それでも動こうとはしなくて。それどころか、ゆっくりと近づいてくるその動作に、不覚にも俺の方が後ずさってしまう。「どうしたんだよ?俺、ちゃんと思い出したよ?だから帰って来たんだ」「思
「こんにちは」一瞬、時間が戻ったのかと思った。「何……してんの…?」とぼとぼとアパートに帰りついた俺は、階段を昇り始めてすぐに気づいた気配に立ち竦む。目の前にあるはずの現実が信じられなくて、震える声であの日と同じ質問を投げかける。「雨やどり
走って、走って、走って──…。今、目の前に見た光景を頭の中から追い出そうと躍起になる。俺の事を覚えていない、そんなあいつを見ていたくなかった。親しげにあいつに話しかける女の子を、見ていたくなかった。何よりも、彼女に笑いかけるあいつを見ていた
「おまえ、飼い犬だろ。飼い主さまはどうした〜?」チビを抱き上げた仁志が、その首に巻いてある青い首輪をちょいちょいと突付きながら問いかける。それは、あいつがうちに来た翌日に、あいつの服を買った時に俺が一緒に買ったものだった。もし仁志が全てを覚
仁志がいなくなってしまってすぐに訪れた週末。先週と同じようにして過ぎていく休日の時間は、一週間前とたいして変わらないというのに。つい2、3日前まで、それこそ3日間しかこの部屋にいなかった人間がいないというだけで、妙な喪失感を煽られる。これで
結局、朝になってもあいつは帰ってこなかった。恐らくは小銭だけを握り締め、俺が買ってやった服を着てこの部屋を出た仁志は、ここに来たときに身に着けていたものの全てを置き去りにしたまま。一睡もできずに、何度となく視線を流した先の玄関の扉は、開かれ
熱いシャワーを浴びながら、たった今あいつの唇が辿った痕跡の全てを洗い流してやろうと躍起になる。ごしごしと、少し乱暴に擦った自分の身体につけられた、いくつもの赤い鬱血の痕。「あの野郎…」思いっきり痕を残しやがって。こんなものを、もし誰かに見ら
腹が満たされれば、落ち込んでいたはずの気持ちまでも満たされた気分になるから、現金なものだ。「食った食った。おまえ、うまいじゃん」「本当!?ありがとう。これからもさ、勉強のために俺が作るよ。いいでしょ?」ごちそうさま〜と言いながら、すぐにごろ
人は弱っている時、どうしてこんなにもどうしようもない程に、人肌の温もりを求めるのだろう。そして、どうして弱っている時に限って、見たくもない現実を突きつけられるのだろう。広いキャンパスで、学部も選択している授業も全く違う2人に会うことなんて、
(R-18)四つん這いで尻を高く上げるという、とんでもない体勢で散々後ろを指で弄られ、何で高校生のくせして男同士のヤリ方なんか知ってんだとか、その慣れた手つきに、今まで遊びまくってただろとか、とにかくたくさんついた悪態もその端から奪われてい
(R-18)なんで……?どうして俺は、こいつとキスなんかしてんだろ……。頭に浮かんだそんな疑問も、ふわふわと定まらない思考では長続きしない。ただ、ふうわりと包み込まれた腕の力強さが、そして唇にそっと押し当てられた柔らかな優しい感触が、アルコ
卓上のガスコンロの上に乗った鍋の中身は、1時間後には雑炊まで綺麗に平らげられていた。俺だって食が細いわけでは決してないが、さすが育ち盛りの高校生といおうか…仁志の食いっぷりは、思わず呆然と見つめてしまうくらいの勢いがあった。「ご馳走様でした
今日は午前中だけだった講義を終え、大学の帰りに駅前で適当に服を見繕い、夕飯の買い物をして帰途に着く。ガサガサと、歩くたびに耳に届く袋ずれの音に、こんなに買い込んであいつがいなかったら虚しさが増すだけだと思いながら。昨日の今日で記憶が戻り、自
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