言葉を話さないホムチワケ
野見宿祢の自伝 14 サホビコの反乱から十数年の時が経った。 陛下はサホビメさまの後、后とされたヒバスヒメさまと一緒に過ごされていた。陛下はサホビメさまと同じように、いやそれ以上にヒバスヒメさまを寵愛されていた。 そして、サホビメさまの忘れ形見となった皇子、ホムチワケさま。 陛下も、また義母となったヒバスヒメさまも、ホムチワケさまには深い愛情を注いで養育されていた。 わざわざホムチワケさまのために、尾張の相津(あいつ)に二俣に分かれた杉が生えているときけば、わざわざ伐採させて取り寄せた。そして二俣舟を作り、それを大和の市師池(いちしのいけ)や軽池(かるのいけ)に浮かべては、ホムチワケさまをその…
2022/06/29 00:00