兄ホデリは・・・
山幸彦の自伝 5 針を持っていかれた・・・わたしは青くなった。 兄ホデリが大事にしていた針をなくしてしまったのだ・・・ ・・・あんなに頼み込んで、やっと頼み込んで貸してもらった釣り針なのに・・・兄上はどんなにか怒るだろうな・・・ わたしは重い足取りで、とぼとぼと高千穂宮に戻っていった。 高千穂宮に戻ると、兄ホデリが先に帰っていた。服は泥で汚れて、体中擦り傷だらけだ。ホデリの山での狩りもうまくいかなかったのだろう。その顔、明らかに不機嫌で怒っている。 わたしの姿を見ると、ホデリのほうから口を開いた。 「ホオリ、どうだったか?小魚の一匹でも釣れたか」 「いいえ、兄上・・・何一つ・・・釣れませんでし…
2021/11/30 19:25