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狩場宅郎
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2019/06/16

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  • 兄ホデリは・・・

    山幸彦の自伝 5 針を持っていかれた・・・わたしは青くなった。 兄ホデリが大事にしていた針をなくしてしまったのだ・・・ ・・・あんなに頼み込んで、やっと頼み込んで貸してもらった釣り針なのに・・・兄上はどんなにか怒るだろうな・・・ わたしは重い足取りで、とぼとぼと高千穂宮に戻っていった。 高千穂宮に戻ると、兄ホデリが先に帰っていた。服は泥で汚れて、体中擦り傷だらけだ。ホデリの山での狩りもうまくいかなかったのだろう。その顔、明らかに不機嫌で怒っている。 わたしの姿を見ると、ホデリのほうから口を開いた。 「ホオリ、どうだったか?小魚の一匹でも釣れたか」 「いいえ、兄上・・・何一つ・・・釣れませんでし…

  • 針が・・・

    山幸彦の自伝 4 さて、その翌日。わたしは兄ホデリの道具を持ち、勇んで日向の海にやってきた。そして、魚がよく取れそうな磯を探し出すと、そこに腰掛けた。 天気はとてもよく、穏やかな陽が降り注いでいる。磯に寄せる波の音が心地よい。絶好の釣り日和だ。 「よーし、やるぞー!!」 私はワクワクしながら、海に釣り糸を垂らした。さあ、どんな魚が釣れるだろうか・・・ ひとときの間が過ぎた・・つれない。なに、もう少し待てば釣れるさ・・・ ふたときもたった・・・つれない。場所が悪いのだろうか・・・少し移動して別の磯で釣り糸を垂らしてみた。 みときが過ぎた・・・つれない。やっぱりホデリの言う通り、道具を変えっこして…

  • 道具を取り換える

    山幸彦の自伝 3 「兄上・・・明日、わたしと道具を取り換えてみませんか」 「え・・・どういうことだ?」 「明日一日、兄上とわたしの道具を交換してみるんです」 「なに・・・?」 「わたし、兄上の道具を持って、海で釣りをしてみたいんです。代わりに兄上、わたしの道具をもって、山に行って狩りをしてみませんか?」 わたしは兄ホデリにこう提案してみた。しかしホデリはなかなか首をたてには降らなかった。 「断る。わたしは海で釣りをするのが好きなんだ。山での狩りなどには興味ない」 「そんなこと言わずに、いつもと違うことをやってみるのも面白いかもしれませんよ」 「やめておけ。なれないことをしたってうまくいくもんじ…

  • ある考え

    山幸彦の自伝 2 その日、兄ホデリは朝からいつものように海に釣りに出かけていた。わたしは高千穂の宮に残り、政務をとり行っていた。 夕方になり、ホデリが帰ってきた。 「ホオリ、今帰ったぞ。見ろよ、今日も大漁だ!」 ホデリが持ってきた籠には、今日も大小たくさんの、活きのいい魚がいっぱいまで詰まっていた。 「わあ、兄上、すごいですね」 「おう、今日もこれを臣下のものにふるまってやろう」 「民も喜びますね・・・」 そう言いかけたとき、わたしはある考えが浮かんだ。そしてホオリにその考えを伝えた。 「兄上・・・明日、わたしと道具を取り換えてみませんか」 前<<< 山幸彦の自伝 プロローグ - 古事記の話 …

  • 山幸彦の自伝 プロローグ

    山幸彦の自伝 1 わたしの名はホオリ。アマテラスから続く天つ神の子孫として、日向の高千穂の宮で生まれた。 わたしの父はニニギ。アマテラスの孫にあたる。すなわちわたしはアマテラスの曾孫、アマテラスから数えて4代目ということになる。 父のニニギは若いころ、高天原からアマテラスの命を受けて日本統治のために日向に降臨したという。そして日向でわたしの母、コノハナサクヤヒメを見初めて、后として迎え入れたのだそうだ。 そんな両親から生まれたわたしは、物心ついた時から弓矢を手にしては山に分け入り、山の獲物をしとめては宮殿に持ち帰っていた。そんなわたしの姿を見た日向の民は、いつしかわたしのことを「山幸彦」と呼ぶ…

  • 古志から

    国引き神話 4 新羅の国から、また北門の佐伎から、北門の波良から、わたしは国を引いてきた。 もう少しばかり国を広げたい。どこか、国が余っているところはないか・・・わたしの目に留まったのは、古志の都都(こしのつつ)の岬だった。 古志は広大な国で、土地も広い割には人口は少ない。よし、ここから国を引いてこよう。 そう考えたわたしは、また少女の胸のような平らな鋤を持つと、古志の国までやってきた。 そして岬の付け根にその鋤を突きさした。そしてすきを深く突き刺していき、その岬を半島から切り離したのだ。あたかも大魚のえらを突いて、その身を切り離すように。 そして切り離した土地に、三つ縒りの太い綱を打ちかけた…

  • 北門から

    国引き神話 3 さて、新羅から国を引いてきて、出雲の国の土地は少し増えた。しかしまだまだ小さい。もっと他にひいてこれる国はないかと、海の彼方に目を凝らしてみた。 すると、目に留まったのは北門の佐伎(きたどのさき)だった。そこはそのころまだ誰もいない離島だ。よし、ここからなら国を引いてきてもいいだろう。 そう考えたわたしは、少女の胸のような平らなすきを持つと、海を北門の佐伎に渡っていった。 そしてすきを深く突き刺すと、その地を島から切り離したのだ。大魚のえらを突いて、その身を切り離すように。 そして切り離した土地に、三つ縒りの太い綱を打ちかけた。そしてわたしは出雲の国に戻ると、その綱を手繰って引…

  • 新羅から

    国引き神話 2 八雲立つ出雲の国は、小さな国だった。まだ織っている途中の幅が狭い布のように。 しかし国ができて時が経ち、人口も増えてきた。この狭い国土のままでは民の暮らしは成り立たない。何か良い方法はないだろうか・・・ わたしは海岸に出て、海の彼方に目を凝らしてみた。するとそこに陸地があった。 それは新羅(しらぎ)の岬である。新羅は誰も住んでいない未開の地である。 よし、この地を出雲に引き寄せよう・・・わたしはそう考えた。 わたしは少女の胸のような平らなすきを持つと、海を渡って朝鮮の新羅の地に渡った。 そして岬の付け根にその鋤を突きさした。そしてすきを深く突き刺していき、その岬を半島から切り…

  • 国引き神話 プロローグ

    国引き神話 1 わたしの名はヤツカミヅオミヅノ。出雲に生まれた国つ神である。 わたしはスサノオの玄孫である。すなわちスサノオから数えて4代目の子孫ということになる。 スサノオは、出雲の人々を苦しめていた八俣のおろちを退治し、出雲の英雄と言われた偉大な神である。わたしはそのスサノオの直系として生まれ、スサノオより代々受け継いだ、出雲の国と民を統治しているのである。 しかし、出雲の国は、小さな国だった。そのころ人口も増えて、耕す土地も少なくなってきていた。 なんとかせねば・・・わたしは統治者として常々考えていた・・・ 次>>> 国引き神話 目次 ☆国引き神話 本日より「国引き神話」を、国を引いてき…

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