小説「北条泰時の野望」

小説「北条泰時の野望」

北条泰時と安達景盛が御所に実朝の前に伺候すると、実朝はいつものように人払いを行った。こうして宵の口になると三人で政の相談をする。それがもう何年も続いている。「京の様子はどうだ」と実朝が尋ねる。「伝わってくる話はいつも同じだ。上皇は相変わらず和歌を作り、武術を好み、そして大規模に国家鎮護の祈祷を行っているらしい。」と景盛。上皇とは後の後鳥羽院である。「鶴岡八幡宮のほうは」と実朝。「公暁殿も相変わらず、加持祈祷に熱心らしい。少し異常なほどな」と泰時。「何を祈っておるやら」と実朝は笑った。「あいつは俺を恨んでいるだろうな。やつは鎌倉殿になりたくて仕方ない。しかし母上と義時は先手を打って、さっさと京から皇子か藤原の息子を呼んできて、鎌倉殿に据えることを決めてしまった」「鎌倉殿はそれでいいのか」と景盛が尋ねる。「あ...小説「北条泰時の野望」