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2019/03/12

  • ■ 新年度ですよ

    「おまえは一体何をしているんだ」 大きな厨房で、突然玲良に声をかけてきたのは予想外の人物だった。 いつもなら、このくらいの時間になると料理人や上層部の幹部たちが匂いを嗅ぎつけて、 味見と称して玲良の料理を食べにくるのだが、今日の声は違う。 無意識に背筋が強張ってしまう。 「・・・相樂が厨房に入るなとは言わなかった」 「たしか、金輪際・・・いや、来世以降も会わな…

  • ■ 新年ですよ

    次に目が覚めたときは牢の中だった。 小さなその部屋の隅で、玲良が目を覚ましたことに気付いた男がふとこちらを振り返った。 「起きたか」 「・・・猫」 「その呼び方はやめろ」 「親しみを込めているつもりだ」 ゆっくりと身を起こしつつ、不機嫌顔の現代に反射的にそう返すと、冷めた目で軽く睨まれた。 「俺には喧嘩を売られているようにしか聞こえない。 大体何なんだ、あん…

  • ■ トラブルメーカー

    「私のエネルギーだけではだめなのか?」 「残念ながら無理だ」 「だが、現代は今ここにはいない」 「ああそうだ。 ・・・おい待て、どこへ行く」 「現代になら連絡は付く。 それに、この件についてはもうすでにある程度の話はしている。 今すぐ事情を話して中国まで来てもらう」 「くだらないことに私の大切な財産を巻き込むな。 それに、この話をもうあの子にしただと?」 現代の…

  • ■ 大好き!無明ヶ丘♡

    「明成、俺はあなたをあの男と関わらせたくない」 「なぜ」 「危険だからに決まっているだろう」 「具体的に」 「・・・やつは・・・」 駄目だ、これを言ってしまえば関わらせたも同然ということになってしまう。 やはりこの男をその場凌ぎの言葉で説得するのは不可能だ。 だったらどうすれば。 「明成・・・。 わかって、くれ・・・頼む、このとおりだ」 現代は深々と頭を下げた。…

  • ■ I Can't Stop !!

    帰宅した現代は、一度自分の部屋に戻り、手帳を見つめてしばし考え込んでから、 普段は滅多に近付かないある部屋のドアを静かにノックした。 「どうした」 静かな声とともにドアが開き、中から明成が現れた。 ここは書斎兼、明成の仕事部屋だ。 「仕事中にすまない。 その、今夜か・・・明日の朝早くでもいいんだが、時間を取ってもらえないか。 ほんの十分程度で構わない。 少し…

  • ■ 茶請けは甘い悲鳴を・・・

    「んまあ、筋トレもするけどさ、俺はほら、一応、昔、全国大会優勝してるからさ。 空手で」 あえてサラリと言うが、これは拓磨(たくま)の最も自慢のアピールポイントだ。 十年前の話だが、盛り無しの実話だ。 当時に比べて筋力は少し落ちたかもしれないが、身体能力的にはまだまだ現役だと思っている。 今、社会人の部で大会に出ても、さすがに優勝とまではいかないかもしれないが、 それ…

  • ■ ブラックスワン

    心持ち歩くペースを上げた静流の目に一人の青年が映った。 みやげ物屋の前、興味津々といった様子でショーケースの中のかまぼこを真剣に凝視している。 十代後半か、もしかすると二十歳前後で自分とそう変わらないのかもしれないが、 表情や仕草がやけに幼くて、どことなくアンバランスな気がした。 艶やかな黒髪と目を引く綺麗な顔立ちもあり、気になってしばらく見ていると、 何やら店の人…

  • ■ 時間が足りなーい。

    もう一度店内を振り返ると、またもやあの男と目が合った。 と、いうよりも男がじっと現代のほうを見ていた。 そして静かにこちらを指差し、先ほどの女性店員に一言。 「そうだな、彼のイメージでもらおうか」 それは命令することに慣れた温度を感じさせない口調だった。 訝しげに男を見ると、男はやけに冷たい表情で現代の視線を受け止めた。 見るからに大企業の上層部といういで…

  • ■ 執筆の息抜きに

    とりあえずこの短時間で男についてわかったことは、 何らかの望みがあることと、やけにマイペースな性格であるというこの二点だ。 さて、どう話を進めるべきか。 「ふむ。 では、あなたは? あなたもそれの一員ということですか? それともチームBの新メンバー?」 「俺は違う」 これは即答。 表情からも嘘ではなさそうだが、しかしそこから自己紹介が続くわけでもない。 ふむ、…

  • ■ 我慢はするほど・・・?

    「それで、そいつはおまえにあえてそんな風に絡んできて、一体何がしたかったんだ? というかその手口は・・・引き抜きの誘い、か」 「な、なんでわかるんですか!?」 「なるほどな。 だったらある意味、成功かもしれないな。 誰だか知らないが、理季に目を付けたこととあえてその攻め方を選んだことは、 ビジネス戦略的には上出来だ。 ただ・・・」 東條の表情が、すっと冷た…

  • ■ ピーコックラブ

    「おい何考えてんだ?」 「楽に死ねる薬が欲しい」 「馬鹿かおまえ、さっきの俺の話聞いてたのか?」 「あんたが男役スターに惚れる変態だって話ならテキトーに聞いてた、どうでもいいと思いながら」 どうせきっともう死ぬのだ、今さら上司だからといって気を使う必要もない。 優明希(ゆめき)はキッチンのほうに目を向けた。 包丁で首か腹を切れば死ねるだろうが痛いのは嫌だ。 何かも…

  • ■ 休日は高速で過ぎ去る

    「巽、私にはわからないんだ。 何が自分のエゴで、何がそうでないのか。 何が最善で、誰のために選択することが真の意味で正解といえるのか・・・本当に、わからない」 自分にとってのエゴとは何か。 視点と角度を変えれば、何を選択しようと明成のエゴだ。 それこそ、何も選択しなかったとしてもエゴだ。 逆にこの状況では、何を選択しても間違いや判断ミスとは言えないのかもしれない…

  • ■ 言い訳三昧でゴメン☆

    「身体が何ともないのなら、まずは食事を摂ろう。 現代はもう出かけたから私と二人でランチだ。 といっても、きみは数日間何も胃に入れていなかったから、食べられるものは限られてくるがな。 本当はきみの好きなキッシュでも焼いてやりたいところだが・・・」 「そんな・・・、明成さんも忙しいんですから、僕にあまり気を遣わないでください。 それに あれは・・・僕の、自業自得だ…

  • ■ 本命はだれだ!?

    男はぼんやりと一史の手元を見つめている。 あえて心を覗かなくてもわかる。 今、この人はなぜか相当落ち込んでいる。 「どうしました、瑞貴(みずき)さん。 あなたの行きつけはあのワインバーのはずでは?」 努めてさらりと訊いてみる。 瑞貴とは、瑞貴の栄転がきっかけで上司部下の関係ではなくなってからも、 たまに会って酒を酌み交わす間柄だった。 しかしその際に瑞貴は必ずとい…

  • ■ 生産することが趣味

    「夕方、きみは帰宅後に買ってきた食材を持ってキッチンに来ただろう。 あのときの顔は、とくにひどかった。 今すぐに抱いてくれとせがんでいるようにしか見えなかった」 「はあっ? なぜそうなるんだ・・・」 すっかり息があがってしまった現代は、肩で呼吸をしながら本当に解せないといった声を出す。 たしかにこめかみを押さえて何やら物憂げな顔をしているから、 余計なことをし…

  • ■ お久しぶりです。

    「ところで、その様子は本当に用事があったわけでないんだな」 「うん。 最初にそう言っただろ。 ・・・その、やっぱり、いけなかった? ごめん、ちゃんとアポ・・」 急に少し不安そうな声を出す巽に明成は小さく苦笑した。 いいかげんに明成という人間をわかってほしい。 「いや違う、そうじゃない。 たしかにきみがアポ無しでやってくるとは少し意外だったが、むしろ・・・嬉し…

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雪混じりの雨の夜、突然目の前に三日月が落ちてきた。
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