料理が好きだ。材料を組み合わせて様々な過程を踏んで全く別のものに変化させる。ドラクエをやった時も錬金釜と話して過ごした。 大学生の春休みというのは長いばかりで密度に欠ける。なんとも大味なものになりがちらしい。車さえあれば暇など感じないのだが、とうとう外出すら禁じられた、それも国に。セカイ系主人公になりきることにも飽きた。唾棄すべき暇を、時間を重ねる楽しさに変換せねばならぬ。なにかしよう。料理をしよう。 投げやりな恋のように不遜な付き合い方だが、食事は本来メンドクサイ生理現象なのだ。「食の喜び=生の喜び」と直結出来ない私のような人間は、いつかゾンビを理想像に据えるやもしれぬ。「お昼ご飯スムージー…
目を覚ましたのは朝の六時半で、ほっと胸を撫で下ろす。昨晩はお酒を飲んですぐに眠ってしまった。一度も目覚めることのない深い眠りで、遅くも早くもない時刻に目を覚ます。パーフェクトな睡眠。 シャワーを浴びる。朝ご飯を食べる。荷物をまとめる。ベッドに寝転ぶ。 一週間お世話になった宿を引き払う。同室の白人は朝が早く、結局別れの言葉は告げられなかった。一度も会話はしなかったが、物静かでイビキもかかない彼に一言お礼が言いたかったのだが。 20キロのバックパックを背負って街を歩く。特に今更見るものもない。両肩の悲鳴が聞こえる前に、空港行きのバスに乗り込む。 航空会社の自動チェックイン機はまたしてもエラーを吐き…
行動時間は今日が最後。明くる日私は昼過ぎに空港に向かい、シドニーで3時間のトランジットを終えたのち日本へ帰る。到着予定時刻は朝の五時。嫌な顔一つせずに迎えに来てくれる小学校からの親友を誇りに思う。でもまだ貴方へのお土産買ってないごめん。 深夜の一時に目が覚めたのには理由があって、昨晩床に就く前にキッチンのご自由にお持ちくださいコーナーで見つけたココアが全ての始まりであった。これ飲んで寝よーと思いましてね、ちょっと濃いめに作ったんですよ。コーヒーだったの。ココアパウダーの容器にコーヒー入ってた。馬鹿野郎。 夜十一時くらいに入眠したのだけれど一時に目が覚めた。汗かくわなんやらでそこから一睡もできず…
風邪ひいたときに見る夢 『ゴールデン・プリンセス号』 26日目
長い夜だった。一時間半おきに喉の渇きか尿意のどちらかで目を覚ました。眠りは浅く、見る夢は普段にも増して支離滅裂な内容のものばかりだった。癪なので起きるたびに夢の内容を記録していた。サークルの前幹事長と副幹事長と私の3人で高輪ゲートウェイ駅に行く約束をしたので今度誘ってみようと思う。全てはサイケデリックな夢の世界の出来事だが。 朝方になると熱はすっかり収まり、軽い頭痛が残るくらいであった。ベーグルとリンゴで軽い朝食を済ませる。頭痛薬を嚥下し、大事を取って一眠りする。 昼過ぎに街へ散歩に出かける。街角の小さな本屋を見つける。雨が降ってきたので長居させてもらった。 店内は狭く、本が溢れていた。素敵な…
1日で250gのチョコレートを食べたら体調崩した。あの暴力的な甘さは、お菓子とジュースをやめてから一年経つ身には荷が重かったようである。そこはかとない倦怠感。 羊、牛、パスタ、トマトを合計1kgくらい腹に詰め込んだ。水を大量に飲んだ。今宵、枕元のペットボトルは1.5Lの大容量。 厚着をした。熱は身体に追いやって冷ます。多分これで問題ない。 帰ったら食べたいもの:白米 唐揚げ 豆腐 キャベツ
連日カフェや図書館に篭って文学フリマ用の原稿を書いた。まずまずの駄文が完成したと思う。 作業も昨日で一段落、今日は水族館に遊びに行った。なんでも、水中のトンネルからサメが優雅に泳ぐ様子を眺める設備があるらしい。 海沿いの道はジョギングコースに適しているようで、往来はそこそこ。 太陽の光をてらてらと反射する海面や波に揺られるボート、遠くに霞む家々を見て「夏だなぁ」と独り言を呟く。「仲間と海遊び!」といった経験が皆無なので、甦るあの日の思い出なんてものも特になかった。悲しきかな我が人生。 水族館の入り口が小さく、一度気づかずにスルーした。どうやらその水族館は海中に広がっているらしく、入り口の雰囲気…
コーヒーを飲んだ。こちらのコーヒーは水っ気が多く、さっぱりしている。結構好き。
今日も昨日と変わらないか、それ以下の一日を過ごした。大学生の群れに混じって歩いてみたり、話題のご飯を食べてみたり、フラフラと公園を散歩したり。 爪を切った。十徳ナイフに付いた小さなハサミを使って爪を切るのは何回やっても慣れないもので、今日も30分ほど格闘していた。仕上がりは何ともまあ不恰好なもので、ヤスリを使って整えてようやく及第点となった。次に爪を切る場所はきっと日本の自宅だ。私はワニが死ぬ前日の早朝に帰国する。思えば随分と長いこと旅をしていた気がする。一瞬だったような気もする。まあ振り返りは終わってからでいいや。 爪を切っている時にいつも思い出すのは、爪を噛んで千切っていた記憶だ。私が爪噛…
朝食のチョコシリアルをソシャソシャと口に運びながら考える。私がチョコシリアルを食べるのは、シリアルを食べ終えたお皿に残る、ほのかな甘い香りが付与された牛乳を飲むためではないのか、と。 昨日から滞在しているオークランドはニュージーランド最大の都市で、美しいオフィス街と吹き溜まりが共存する街だ。 宿が飲み屋街に位置しているため、夜になっても窓の外は明るい。沿岸部のおしゃれなバーに心理的に、金銭的に行く事ができない人間の溜まり場となっている飲み屋街なので必然的に治安もあまり良くない。昨夜は十五分おきにサイレンが鳴り響いていた。 旅の終わりが見え始めて不安だったのかもしれない。昨日は友人達と長電話をし…
キッチンに置いていたベーグルが紛失していたので、「ご自由にお持ちください」の箱にあった卵とパンで朝飯を済ませる。そこにあった牛乳もついでに飲み干す。この国の牛乳は甘みが少なくて不味い。 チェックアウトを済ませて街中をぶらつく。この街にまた戻ってくることはないだろうな、と考えた。 空港に向かうバスに乗る。運転手は減速目的で道に置かれている段差を意に介さずに駆け抜けるタイプのようで、バスが揺れるたびに何度も頭をぶつけた。 フライトの時間まで間があったので空港周辺をうろつく。広い土地が必要な空港は埋立地や平野にある事が多いが、この空港はバリバリ山間に位置しており、なおかつ広い。世界は広い。 飛行機に…
明日この街を去る。この街の美しい夕焼けを見られるのは、今日が最後だ。 意気揚々と、普段なら気後れする洋服屋を巡る。『極度乾燥(しなさい)』では、店内に並ぶTシャツの「自動車潤滑」が面白すぎて爆笑してしまった。近くにいた夫婦に意味を聞かれたので「Car slipping」と教えたら、笑っていた。「僕らも韓国で『Piss baby』ってTシャツ見たよ!理解できないからって、テキトーなこと書きすぎだよね!」と笑いながら言われた。まったくその通りだ。けれどその滑稽さがどうにもステキなものに見えてしまうから、『極度乾燥(しなさい)』はハイブランドでいられるのだろう。 街をぶらつく。有名なジェラートを食べ…
トレッキングに向かったら、立ち入り禁止の看板があった。がっかりして街へと引き返す。 植物園へ行くも、どうにも元気が出ない。思い当たる節として考えられるのはやはり、朝からリンゴ2つしか食べていないことだろうか。道の両脇に美しく咲く花が美味しそうに見えてきた。大人しく街に引き返す。 料理の手間すら惜しくケンタッキーに駆け込む。写真を撮るのも忘れてかぶり付く。私の身体は大きさの割に燃費が良く、少ない燃料でよく走ることが自慢だったのだが、ガス欠時に使い物にならなくなることを再確認した。 諦めて市街観光に切り替える。今回の旅でもっとも滞在する時間が短いが、この街は魅力と活気に満ちている。見て回る時間を少…
テカポ湖からクイーンズタウンへ向かうバスの道のりは、それはそれは壮大なものだった。この画像を見てほしい。 ミルフォードサウンド 交通アクセス - Cruise Milford 超、ドライブしたくなった。 クイーンズタウンとは「女王にふさわしい街」の意味だ。一体どれほどの場所なのだろうと期待していたが、なるほどこれは確かに。 高く聳える山に囲まれた湖、その周りに発達した小さな街。たくさんの笑顔で溢れかえるバーや港。露店が所狭しと並び、何処にいてもギターの心地よい音色が耳を掠める。 湖畔のバーの灯りが水面で妖しく揺れる。鳥の鳴き声。そろそろ夕陽が沈む。
黒く変色したバナナを、砂糖をたんまり溶かした紅茶で胃の奥へと流し込む。 今日は天気がいい。昨日敬遠した迂回コースでの登山を決意する。 同室の日本人が今日宿を発つというので、チェックアウトを済ませた彼としばし土産物屋を見て回る。来月から社会人となる彼は、三日後の夜には日本に到着する予定だそうだ。軽く握手をして別れる。 湖に沿って1時間ほど歩き、あとは大きな丘をのんびりと歩いた。昨日と比べて、登頂まで倍以上の時間がかかってしまった。しかし、大きいものばかりに囲まれて歩くことは楽しく、充実した時間であった。 今日もカフェで昼食を取る。今日はテラス席を取る。 遥か彼方へ飛んで行ったかと思えば、一瞬で舞…
昨夜は結局、深夜零時に月の消えた星空を見に行く、なんとも贅沢な夜更かしをしてしまった。「俺は今、宇宙空間を見ているな?」と、よくわからんことを確認したので、いい夜更かしだった。 宿に滞在した人が置き去った食料が詰まった箱があるのだが、そこにバニララテがあった。ありがたく拝借して、のんびりと寝ぼけ眼が開くのを待つ。 今日もトレッキングをする。昨日とは打って変わって急斜面の上り坂が続く、標高1000mの可愛い山を登る。 道中は鬱蒼とした林の中を、テキトーにスイッチバックしながら登るものであった。すれ違う人とにこやかに挨拶を交わすのは日本と共通であった。 頂上付近になると途端に景色は一変し、雄大な自…
午前十時ごろに目を覚ます。多分、変な夢を見た。 シリアルとパンのみの簡単な朝食を済ませ、トレッキングに向かう。 スタートはテカポ湖から流れ出る水が川を形成する場所。生まれたての川と、しばし並走。 しばらく進むと道は林の中へ。川に別れを告げて、険しい傾斜を登る。 坂を登りきると、視界が開ける。足元の草花を愛でながら、なだらかな丘陵をアップダウンする。 またもや林道へ。めちゃくちゃデカい松ぼっくりがあったので記念に写真を撮る。 開けた場所に出た。開け過ぎでは、ないだろうか。 見渡す限りの草原、その入り口に自分がいる。 風が強いが、少しも気にならない。このところ、地球に驚くばかりだ。 夢の中でもいい…
閉じかけた瞼に飛び込んできたのは丘陵と形容するにはあまりに壮大な、圧倒的な「地形」であった。 なだらかな斜面には羊がたむろしており、ぼけっとした顔で草を食んでいる。近くで寝そべる牛、動き回る馬、地形、地形。 目が離せない美しさだ。高速で走るバスの窓から見える風景は刻一刻と変化するが、そのすべての表情を観測したいがため、尚更目を離す暇がない。 「見渡す限り何もない」、海以外でこんな言葉を使える機会が来ようとは。本当に、凄まじい景色であった。 充実した道中を経て、テカポ湖に到着したのは正午を少し過ぎたころであった。 テカポ湖。知らない人が多いだろう。この機会に覚えてほしい。 今、自分の眼前に広がっ…
クライストチャーチで10日あまりを過ごした。車があれば一周するのに3分とかからない小さな街だ。 季節は夏の終わり頃。カラッとした気候で、山から降りてきた涼しい風に吹き荒らされる毎日だった。 背の低いビルの隙間を縫うように走るトラムは、おかしな表現だがミニチュアを大きくしたような見た目で、どれも色鮮やかで可愛いデザインだ。線路がショッピングモールの中を突っ切って敷かれている光景は、そこはかとなく幼少期に遊んだプラレールを想起させるものだった。椅子の脚の周りを通すのが特にお気に入りだったことを記憶している。 興味が唆られなかったので飲食店には一度も入らなかったが、一度くらいコーヒーを飲めば良かった…
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