その夜。宿のオーナーから貰った慰謝料で、私達は大騒ぎをし。そして翌日、それぞれの旅に戻って行き、私達はバラバラになりました。こうして、その事件は終わりました。…
宿のオーナーが、札束を謝罪の言葉を残して去ると、和解の話し合いも終了です。部屋を出るように指示され、イグチに頭を下げて退出します。通訳のPも用事があると去って…
目の前で、警察官により、青年二人が棒で打擲される姿を、私達は黙って眺めます。相当に長く感じたその時間が、ようやく終わると。二人は立たされ。警察官に連行され、ヨ…
その日私達は、いつものように警察署に向かいます。その長い道を歩くのももう三回目、いい加減飽きて来てはいますが。それでも、これで最後だと思うと、多少気合は入りま…
翌日。警察署に到着した私達の前に、一人の日本人が現れました。Pという名の、私達より少し上の年齢の彼は、ネパールに留学中であり、ネパール語を非常に流暢に話しまし…
翌日昼過ぎ。私達は、宿から小一時間歩いた所にある、大きな警察署にいました。ツーリストポリスオフィスは、旅行者のトラブルを扱う窓口でしかなく。被害届を受理した後…
首尾よくJのバッグを取り戻して、私達は宿に戻ってきました。車を降りる際、警察官は私達に、後でもう一度、ツーリストポリスオフィスに来るよう告げます。被害届を出す…
翌朝、早く。安宿街のすぐ近くにある、ツーリストポリスオフィスに行きます。話をちゃんと聞いてくれるかどうか、不安はあったのですが。宿のスタッフである、ラジュとい…
その乱闘から、どうにか全員逃れ出て。私達は、自分達の宿に向かい、夜道をとぼとぼと歩いていました。フライパンで頭を殴られたHは、顔に血を滴らせていて。Sは靴をな…
Nに抱えられた青年を取り戻すべく、そこに突っ込んむネパール人達、そこに突っ込む私達日本人達、そこに突っ込む新たなネパール人達。怒号飛び交う、大乱戦です。流石に…
その宿は、路地の奥にありました。ネパール人が、以前にも増して外国人旅行者に群がり出した時代。ゲストハウスは、どんな場所にもありました。路地奥の暗がりにある、扉…
ネパールの首都、カトマンドゥにて。私達が泊まるドミトリーに、Jという日本人女性が泣きながら駆け込んできた所から、その事件の話は始まります。Jは、若く綺麗な女性…
チベットの定日という街で一泊、さらに国境の街で一泊。朝、国境の坂道を歩いて下り、ネパールに入国。そこでタクシーに乗り、夕方には、ネパールの首都カトマンドゥに到…
鳥葬ツアーから帰還した私は、ようやくラサを離れる踏ん切りがつきました。自堕落な日々を、早く終えなければ、そう思えるようになったのですが。それは、鳥葬を見て、価…
十分か、二十分か。どれほどの時間が経ったのかは、まるで分からぬ内に。気づけば、サークル内の鷲の数が随分減っています。見回すと。遥か上空をゆったり旋回するものや…
男性四つの遺体。僧侶達が操る鉈に。内臓が溢れ、零れ落ち。骨と肉が、切り離されて行く。日本で見る、司法解剖を行う解剖医の手際と。解体を続ける僧侶の手際と。共に、…
葬場の門が開けられました。僧侶達が中に入り、大きな袋を背負った男達が続きます。と、同時に。空を埋めていた黒い影が、一斉に舞い降りて来る。着地する場所はそれぞれ…
その寺は、丘の中腹にありました。中腹というより、山肌に張り付くように建てられている、という方が正確でしょうか。くりぬいて作っただろう狭い平地に、鐘楼や宿坊、本…
旅行者の誰かが、鳥葬を見られるツアーがあると聞きつけてきました。ラサを早朝にランドクルーザーで出発し、途中立ち寄った村で温泉に入り、夕方に着いた寺で宿泊。そし…
たどりついた、ラサで。自堕落な日々が、始まりました。ラサには、何でもありました。ワインも、パスタも、ケーキも、お菓子も、映画館も、デパートも、インターネットカ…
私の乗ったランドクルーザーは、素晴らしい速さで走っていました。運転手と助手席の男は、共にスーツ姿の漢人です。助手席の男は特に太っていて、態度も大きく、どうやら…
私は、停まってくれたランドクルーザーに乗り込み。タシ達四人の姿は、すぐに見えなくなりました。たった数日間ですが、文字通り寝食を、苦楽を共にした彼らとの日々は、…
私は、日本人に戻りました。芒康で公安に呼び止められて以来、約十日ぶりのことです。バックパックの底に押し込まれていた服は、ひどくヨレヨレで、汚れていたのですが。…
故障して動かなくなったトラックの横で。その夜、ラサで楽しく過ごすどころか、また野宿しなければならないことに。その大きな失望感に。暫くの間、私は悲嘆にくれていま…
余り、風景の美などは分からない人間ですが。日の出前の、途轍もなく冷たい空気に、耐えた末に。広々とした荷台に足を投げ出して、のんびり眺める、その朝日は。素晴らし…
那曲には、大きな建物と、大きな街灯が立ち並び。夜中でも十分に明るい。そしてその街に入った途端。荷台の上の誰かが、大きな声を上げます。そうすると、荷台の前方に座…
旅の後。就職の面接で、こんな質問をされたことがありました。「今までの人生で、一番辛かった時は?」そう聞かれて真っ先に浮かんだのは、その夜のことです。チベットの…
もう、夜中は過ぎたでしょう。なのに、街の灯りは見えず。トラックは停まる気配を見せない。もう、ダメだ。もう、ダメだ。朦朧とする意識の中で。私はついに、死を意識し…
夕方が来ても、トラックは走り続けていました。那曲はまだか、まだ見えないか。そうワクワクし続けて来た私も。何度も何度も停車しては故障を直し、坂道に差し掛かっては…
私は、壊れたウォークマンの前で、途方に暮れていました。先刻は、怒れば怒るほど、チベット人の間から笑いが起こるので。途中から怒りを忘れ、調子に乗ってしまい、つい…
トラックの荷台の上で、私は目を覚ましました。朝日の中。人々が、次々と荷台を降りて行っています。ああ、朝だ。という思いと。ああ、助かった。という思いが入り混じり…
そのトラックに乗っている間、検問自体は、それ以前にも何度かありました。しかし、大きな問題はありません。三十人以上の巡礼者を積んでいるトラックです。巡礼者一人一…
朝は、凍りつくような寒さでした。そんな中で、タシ達は平気で顔や手を洗っています。私は無論、そんな芸当は出来ず。一足先に荷台に上り、膝を抱えて震えていました。辛…
夜が来ました。トラックは、荒野の中で停まります。計画通り進まなかったせいで、夜までに街に到着出来なかった、というより。そもそも、宿に泊まるつもりなどない人々、…
トラックはゆっくり進みます。切り立った懸崖は減って来て、だだっ広い草原が広がり始めます。その風景に、私は圧倒されます。山岳地帯の風景は、それはそれで壮大な物で…
朝。朝に光の中で、私は目を覚まします。ぼんやり周囲を眺めているうちに、人々が次々とトラックの荷台に上がって行くことに気付きます。ああ、出発か。ぼんやりした頭で…
太陽が没する前に、トラックは停まりました。前日、日没後まで走っていたために、今日もそうするのかな、と思っていたのですが、そうではないようで。それぞれが荷台を降…
三十人以上もの人を載せて、トラックはゆっくりとゆっくりと進みます。走っている時でも、速度はせいぜい時速20km程度。しかも、頻繁に停車します。川に差し掛かるた…
丁青の町を、出発する時点で。既に、荷台には、見知らぬチベット人が、五人座っていました。家族なのでしょう。老夫婦、若い夫婦、そして五歳前後の娘。分厚い服に身を包…
朝目覚めると、タシとマンルは同じベッドで寝ていましたが、もう一つのベッドは空で、女性二人は室内にいませんでした。部屋から出て見ると。何と、乗って来たトラックが…
丸太の上の恐怖の移動が続き、肉体的にも精神的にも限界が近づいて来た頃に。太陽が没します。普通なら、こんな危険な山道、夜間運転する車などないのですが。そのトラッ…
覚悟を決めて、トラックの丸太の上に乗った私は。そこから、ただひたすら恐怖の時間を過ごします。低速ではあるものの。コーナーに来るたびに、荷物も体も、遠心力で外側…
突然、エンジン音がしました。慌てて周囲を見回すと。確かに、道の向こうにトラックが一台見えます。ラサの方へと向かう車。私は急いで、四人組に声を掛けます。私の指差…
男性の、髪の長い方がタシ、もう一人がマンル。女性の、字が書ける方がニマ、書けない方がタシゲレ。その四人組は、近くの村の幼馴染同士で。彼らだけで、ラサに巡礼に出…
道端で腰掛け、俯いていた私が、影に気付いて顔を上げた時。私は、若者複数人に取り囲まれていました。オヤジ狩りか。瞬間、驚き、怯えますが。真昼間、店のすぐ前、滅多…
トラクターに乗って、五時間余り。昼過ぎのことです。小さな集落に着いたところで、突然私は、そのトラクターを下されたのです。私は一旦慌てふためき。どういうことだ、…
トラクターの荷台の上は、意外に快適です。道がバンピーなのは、チベットに入ってからずっと、もう体が慣れていますし。何より、壁などなく直接風が当たるのが心地よい。…
箪笥女を見送った後。暫くは女の正体を考えていたのですが。待望のエンジン音が響いてきて、箪笥女のことは、一瞬のうちに意識から吹き飛びます。音は街の方から聞こえま…
その女の姿を見たのは、類烏斉での、五日目の朝でした。二日目、パコと五体投地の人々を見送った後。午前の道端でのヒッチハイクに失敗しただけでなく、その後戻った街に…
類烏斉の街外れで転寝していた私は、目覚めた時に、大勢の人々に取り囲まれていることに気付き、慌てふためきますが。しかしすぐに、彼らに、私への敵意はないことに気付…
朝早く。私とパコは連れ立って宿を出ます。私は道端でヒッチハイクをし、パコは自転車で次の街に向かいます。自分の方が先にラサに着いて、妻と共にスペインに戻るから、…
その日、私達は夜遅くまで話しました。ただ、パコは英語がほとんど出来ず、意思疎通がスムーズに行かない。仕事は何か、という私の質問に、病院、病院と繰り返す。医者な…
夕方前に、バスは類烏斉に到着しました。三叉路の周辺に、いくつかの家が集まっている、小さな集落のようです。昌都とは随分サイズが違いますが、それでも交通の要衝とし…
バスの中で私は、チベットの地図を広げます。地図上では、昌都から類烏斉まで100km余り。山道、古いエンジン、大勢の客、全くスピードの出ないバスではありますが、…
ゆっくりと公安は近付いて来ます。私は左右を見回しますが。他に人通りはない。彼の視線から見ても、間違いなく、私の方に向かって来ています。逃げよう、と。僅かに体が…
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