秋の味覚について、少し思い出を交えながら書き記し、深まる秋を味わいたい。題名にもあるが、私の秋の味覚は銀杏である。かつてあった小学校の校庭に大きなイチョウの木があって、毎年重そうにその多くの銀杏をボトボトと落としては悪臭を放っていた。その大きな銀杏の影に隠れながら、背中を丸めてその悪臭も物ともせず銀杏を拾う先生がいた。図画工作の先生で、退職間近の永井先生という白髪頭で無精ひげをたくわえた、いかにも好々爺という優しい先生。よく私の書く絵を褒めてくれたっけなあ。実は私も一緒になって銀杏をかき集めたのだが、ぎんなんの実の部分で手を痛めるからもういい、と私を遠ざけ、何杯のバケツいっぱいになったぎんなんを冷たい水につけ、なにか作業をしていた。おそらく実を除く作業だろうが。その銀杏は全校生徒全員に茶封筒に配られるほど...ぎんなん