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長内那由多のMovie Note https://blog.goo.ne.jp/nayutagp01fb-zephyranthes

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

最新映画や海外ドラマ、Netflix配信作を中心とした映画レビュー。アカデミー賞予想記事も有り。半期毎に総括ベストテン記事も書いています。「ドラマも同じくらいの熱量で見ていなければ今の映画は語れない!」が最近の信条です。

長内那由多のMovie Note
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2017/03/20

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  • 【ポッドキャスト更新】第40回 意地悪さが堪らない『アメリカン・フィクション』『ザ・カース』他『スペースマン』

    ポッドキャスト最新エピソードではダークコメディを中心に御紹介。アカデミー脚色賞に輝いた『アメリカン・フィクション』、U-NEXTで配信中のTVシリーズ『ザ・カース』の意地悪さに悶絶。その他、3月のお気に入りの1本『スペースマン』についてお喋りしています。音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で言及している各作品のレビューはこちら『アメリカン・フィクション』『ウエストワールド』『フレンチ・ディスパッチ』『スペースマン』『アンカット・ダイヤモンド』『HUSTLE』『プロミシング・ヤング・ウーマン』『SHESAID』『マエストロ』『哀れなるものたち』『リコリス・ピザ』【ポッドキャスト更新】第40回意地悪さが堪らない『アメリカン・フィクション』『ザ・カース』他『スペースマン』

  • 【ポッドキャスト更新】第41回 『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』を観た!

    ポッドキャスト最新回では先行上映された『DUNEPART2』についてお喋り。「熱狂はしていない」と断りつつ、まだ消化しきれていないまま、やや興奮気味に振り返っています。詳しいレビューのUPはまた後日!音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で言及している各作品のレビューはこちら『DUNE/デューン砂の惑星』『ブレードランナー2049』『エルヴィス』『ボーダーライン』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』【ポッドキャスト更新】第41回『DUNEデューン砂の惑星PART2』を観た!

  • 【ポッドキャスト更新】第40回 アカデミー賞直前予想!

    例年、本ブログでのオスカー予想を楽しみにしていた人にはゴメンナサイ。今年はポッドキャストで受賞予想を行います…が、授賞式も間近のこのタイミングで、レースも鉄板。それでもあれやこれやと話すのがオスカー観戦の楽しみなのです。音声はこちらからもお聞き頂けます【ポッドキャスト更新】第40回アカデミー賞直前予想!

  • 『スペースマン』

    1986年の“チェルノブイリ原発事故”を迫真のホラー演出で描いたHBO作品『チェルノブイリ』でエミー賞をはじめ、賞レースを席巻した監督ヨハン・レンク。『ブレイキング・バッド』など数々の作品に携わってきたベテラン職人監督がついに大輪の花を咲かせたが、その後『チェルノブイリ』のショーランナー、クレイグ・メイジンと再タッグを組むとされていた『THELASTOFUS』から離脱、去就が注目されていた。最新のインタビューによれば精も根も尽き果てた彼は家族との時間を優先するため、半ば引退を決意していたという。そんな折、彼の手元に届けられたのがチェコの作家JaroslavKalfarの小説を元にした本作『スペースマン』の脚本だった。地球の上空から遥か宇宙に輝く星雲が出現し、その調査のためアダム・サンドラー扮するヤコブ船長...『スペースマン』

  • 『リディア・ポエットの法律』

    20世紀初頭に活躍したイタリア初の女性弁護士リディア・ポエットの活躍を描いたドラマが、歴史に忠実かどうかはそんなに大きな問題じゃない。才気煥発ぶりから早々に弁護士資格を剥奪されてしまうリディアは、辛辣でリアリストな妹思いの兄エンリコの力を借りて毎話、難事件に立ち向かう。1話完結のシーズン構成は法廷ドラマ、というよりほとんど金田一か名探偵コナンかという作りで、劇伴も1つも2つも前の時代錯誤なセンス。もっと他に語ることがあったのでは、という気がしなくもないが、自宅でナポリタンを食べるにはこのくらいが丁度いいだろう。それでもNetflixのローカルプロダクションによって一級品の美術が実現。なにより登場シーンごとに衣装が変わる主演マチルダ・デ・アンジェリス嬢(『フレイザー家の秘密』)の華を観ているだけで全6話は充...『リディア・ポエットの法律』

  • 『ブラック・バード』

    かねてから“TVシリーズ見ずして俳優のベストワークを語れない時代”と書き続けてきたが、躍進著しいAppleTV+による『ブラック・バード』ではタロン・エガートンとポール・ウォルター・ハウザーが共にキャリアを更新している。エガートン演じるジミー・キーンは薬物、銃器の違法所持で逮捕された密売人。冒頭、筋骨隆々に肉体改造されたエガートンの異様な迫力にたじろぐと、本作が遺作となったレイ・リオッタが父親役で登場し、そうかエガートンはこの怪優に寄せたのかと合点がいく。ドラマは司法取引に応じたキーンが刑務所に潜入、収監中の連続殺人鬼から自白と死体の隠し場所を聞き出す物語で、これが実話というのだから戦慄が走る。殺人犯ラリー・ホールに扮するのはポール・ウォルター・ハウザー。田舎に住む南北戦争マニアの独身男性で、誇大妄想狂と...『ブラック・バード』

  • 『アメリカン・フィクション』

    セロニアス・“モンク”・エリクソンは大学で文学を教えている小説家。過去に3冊の本を上梓。そこそこの評価を受けたが、これで食っていけるような大成はしなかった。映画冒頭、フラナリー・オコナーの『人造黒人』について講義していると、白人の生徒が「その表現は間違っています」と手を上げる。やれやれ、またか。『TAR』のケイト・ブランシェットは「女性蔑視者のバッハなんて演奏したくない」と言う生徒を完膚なきまでに叩き潰したが、どうやらモンクも歴史的経緯から作家性に至るまで懇々と説き、教室から叩き出したのだろう。ところが長らく新作を書いていなければ何の権威もない彼では、単なるパワハラに過ぎない。あえなく休職を言い渡されたモンクは郷里に帰るのだが…。TVシリーズ『ウォッチメン』『マスター・オブ・ゼロ』などの脚本を手掛け、本作...『アメリカン・フィクション』

  • 【ポッドキャスト更新】第39回 『落下の解剖学』証言が生む”物語”

    ポッドキャスト最新回ではアカデミー賞5部門ノミネートのフランス映画『落下の解剖学』についてお喋りをしています。様々な角度から語ることができる傑作。長内はある視点が気になって…音声はこちらからもお聞き頂けます。レビューはこちらからどうぞ【ポッドキャスト更新】第39回『落下の解剖学』証言が生む”物語”

  • 【ポッドキャスト更新】第36回 週末にハリウッド映画を『マダム・ウェブ』『コヴェナント 約束の救出』

    ポッドキャスト最新回では2月公開のハリウッド映画2本と、たまたま再見した1997年の映画『コンタクト』についてお喋りをしています。ひと口に“ハリウッド映画”と言ってもバラエティに富んだ豊かさがあるのだなぁと再認識。週末のお伴探しにどうぞ。音声はこちらからもお聞き頂けます。【ポッドキャスト更新】第36回週末にハリウッド映画を『マダム・ウェブ』『コヴェナント約束の救出』

  • 『コヴェナント 約束の救出』

    1998年の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』でデビューして以来、『スナッチ』『ジェントルメン』『キャッシュトラック』など一貫してクライムアクション映画を撮り続けてきた監督ガイ・リッチー。『シャーロック・ホームズ』シリーズや『アラジン』などで手堅く興行的成功も収めつつ、気付けば55歳。もはや立派なベテランの域である。本作『コヴェナント』は培われてきた経験と技術による最高作だ。舞台は2018年のアフガニスタン。武装勢力タリバンの拠点を捜索、殲滅し続けていたアメリカ軍は、多くの現地通訳者を雇い、作戦行動に従事させてきた。主人公キンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)の部隊に新たな通訳者がやって来る。ダール・サリム演じるアーメッドは4ヶ国語に精通。かつてはタリバンにも協力していた。アフガニスタン...『コヴェナント約束の救出』

  • 『マダム・ウェブ』

    本流とも言うべきMCUがいよいよ『マーベルズ』で底を打ち、続いてソニーからリリースされたマーベル映画『マダム・ウェブ』も批評、興行共に大惨敗である。まるでここ15年間にMCUも『ダークナイト』3部作も存在しなかったかのような本作は、続編展開することなく消えていった2000年代初頭までのアメコミ映画群を思わせるが、積極的にマルチバースやユニバースに加担しないソニーは、半ばこのレベルの娯楽映画を狙って作っている節もある。S・J・クラークソン監督はダコタ・ジョンソンに間抜けなスーパーヒーロースーツを着せることなく、予知能力に目覚めたヒロインが3人の少女を救おうとするスリラー映画として、一定の緊張感を得ることには成功している。少女たちを付け狙う謎の男(フランスの演技派タハール・ラヒム。無駄遣いではあるが、少なくと...『マダム・ウェブ』

  • 『マーベルズ』

    そろそろ「今回のMCUは最近ではマシ」という無益な会話はやめないか?MCU史上最低の興行収入を記録した『マーベルズ』は、『アントマン&ワスプクアントマニア』『シークレット・インベージョン』『ロキ』『エコー』と低迷するフェーズ5にトドメを刺した(こうやって並べただけでも目眩のするようなラインナップだ)。女性スーパーヒーローだけで編成された初のMCU映画だから素晴らしい?冗談じゃない。どう考えてもシークエンスが1つも2つも抜け落ちている杜撰な脚本、説明セリフの洪水、カリスマ不足のヴィランにペラペラなVFX。確かに目を見開いているはずなのにストーリーは良くわからず、果たして映画のクライマックスが『CATS』になる必要なんてあったのか(ハリウッドはメタメタにしてしまった実写版の大惨事を忘れたらしい)。『ミズ・マー...『マーベルズ』

  • 『落下の解剖学』

    ※このレビューは物語の結末に触れています人里離れた山荘で起きた夫の転落死。容疑者は作家でもある妻。唯一の目撃者は視覚に障害を持つ11歳の息子。果たして事件の真相は?2023年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールに輝き、アカデミー賞では作品賞はじめ主要5部門にノミネートされているジュスティーヌ・トリエ監督の『落下の解剖学』は、シンプルな筋立てから始まる正統派ミステリーだ。トリエの揺るぎなく厳格なまでの筆致は往年の名匠を思わせ、まさにフランス映画の真髄とも言うべき仕上がりである。妻による殺人か、はたまた事故かと探る152分間の法廷劇は、やがて外界からは見えない夫婦の力学を解き明かしていく。ブラッドリー・クーパーの『マエストロ』同様、夫婦関係における“暗黙の了解”を解剖したスリラーとも受け取れるが、それはトリエと...『落下の解剖学』

  • 『アボット・エレメンタリー』

    エミー賞の歴代受賞作を見渡せば、ドラマ部門は強力な作品がブレイク後、シリーズ終了まで独占し続けるのが通例だが、コメディ部門に至ってはここ数年、次々と覇者が入れ替わる激戦区であり、多様な発展をし続けているジャンルと言える。2017年に『Veep』が勇退後、2018年には『マーベラス・ミセス・メイゼル』、19年に『フリーバッグ』、2020年は『シッツ・クリーク』が最終シーズンで栄冠に輝き、21〜22年はAppleTV+の『テッド・ラッソ』が連覇。23年は新たなる覇者『TheBear』に取って代わられている。21年に放送がスタートした『アボット・エレメンタリー』もそんなコメディ全盛期の一角を担う作品だ。フィラデルフィアの公立小学校を舞台に、ドキュメンタリーの撮影が入っているという設定のモキュメンタリーで、俳優陣...『アボット・エレメンタリー』

  • 【ポッドキャスト更新】第35回 人生について想わずにはいられない『コット』『夜明けのすべて』『リハーサル』

    今回は人生の機微について想わずにはいられない3本『コット、はじまりの夏』『夜明けのすべて』、そしてTVシリーズ『リハーサルネイサンのやりすぎ予行演習』についてお喋りしています。中でもエマ・ストーン主演の最新TVシリーズ『THECURSE』のクリエイターであるネイサン・フィールダーの前作『リハーサル』は必見です!音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『コット、はじまりの夏』『夜明けのすべて』『ケイコ目を澄ませて』『哀れなるものたち』『ボーはおそれている』【ポッドキャスト更新】第35回人生について想わずにはいられない『コット』『夜明けのすべて』『リハーサル』

  • 『コット、はじまりの夏』

    2022年のアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされた本作は、美しい映像と慎ましやかな出演陣による真心のこもった映画だ。舞台は1981年のアイルランド。劇中、時代についての言及がないだけにもう20年は前の風景にも思えるが、当時の農村地域はまさに世界から隔絶されたような環境だったのかもしれない。9歳の少女コットの家は農業を営むも、父は酒浸りでろくに働かず、母は幾人目かの子供を身ごもり、完全なネグレクト状態にある。コットはいつもお腹を空かしており、お風呂にも入れてもらえないのか足は黒ずみ、服はいつも同じだ。姉や級友たちに蔑まれる環境も影響しているのだろう。コットは識字や発話にも問題を抱えているように見える。そんな彼女は母が出産を迎えるひと夏の間、親戚のもとへ里子に出されることになる。劇中、コットの読む本が...『コット、はじまりの夏』

  • 『夜明けのすべて』

    『ケイコ目を澄ませて』で数々の映画賞を受賞し、一躍日本映画界のフロントラインに飛び出した三宅唱監督の最新作となれば、こちらも気負って劇場の椅子に腰掛けずにはいられない。瀬尾まいこの同名小説を原作に三宅が自ら脚色を手掛け、上白石萌音、松村北斗という若手人気スターが主演。劇場はミニシアターから都心は大型シネコンだ。でも安心してほしい。ぐっとメインストリームに近づいた企画でも三宅はなんら気負うことなく、変わらぬ繊細な眼差しと語り口を披露している。だが、上白石演じる藤沢が自身の境遇を延々とボイスオーバーで語り続ける冒頭にはぎょっとさせられた。『夜明けのすべて』は『ケイコ』ほどストイックに削ぎ落とせていなければ、ステップにも時折、乱れがある。PMS(月経前症候群)によって日常生活を満足に送ることができない藤沢は、や...『夜明けのすべて』

  • 『ボーはおそれている』

    「お母さんごめんなさい、ごめんなさい!」アリ・アスター監督の『ヘレディタリー』がまさに恐怖の絶頂に達しようとする瞬間、息子は恐ろしい秘密が隠された屋根裏部屋で泣き叫ぶ。監督第3作目『ボーはおそれている』にはこれと全く同じシーンが登場する。いや、『ヘレディタリー』からの引用だけではない。母親との宿縁に疲れた主人公ボーは、まるで『ミッドサマー』のホルガ村のようなコミュニティに漂白する。『ボーはおそれている』はアリ・アスターの集大成、グレイテストヒッツなのか?いいや、彼は『ヘレディタリー』も『ミッドサマー』も家族に起きたパーソナルな出来事を基にしていると言っている。本作を見れば屋根裏部屋も、首のない死体も、母親との呪いとも言うべき関係も、アリ・アスターの具体的な体験から成るモチーフが存在することがわかるだろう。...『ボーはおそれている』

  • 【ポッドキャスト更新】第34回 そして私たちは愛に還る『雪山の絆』『ビフォア・サンライズ』『mr.&mrs.スミス』

    ポッドキャスト最新回ではJ・A・バヨナ監督のアカデミー賞ノミネート作『雪山の絆』、95年のリチャード・リンクレイター監督作『ビフォア・サンライズ恋人までの距離』、AmazonPrimeで配信中の『mr.&mrs.スミス』についてお喋りしています。たまたま同時期に観た3本ですが、自ずと繋がっていく不思議。音声はこちらからもお聞き頂けます。番組内で言及されている各作品のレビューはこちらをどうぞ。『雪山の絆』『生きてこそ』『6才のボクが、大人になるまで』『アトランタ』新たなスミス夫妻ドナルド・グローヴァー【ポッドキャスト更新】第34回そして私たちは愛に還る『雪山の絆』『ビフォア・サンライズ』『mr.&mrs.スミス』

  • 【ポッドキャスト更新】第33回 PeakTVの御世は永遠に『ザ・クラウン』

    ポッドキャスト最新回では2023年末にシーズン6で完結を迎えたNetflixのTVシリーズ『ザ・クラウン』についてお喋りしています。ファイナルシーズンを中心にしながらシリーズを振り返り、ショーランナーであるピーター・モーガンの作風や、他の作品に与えた影響について分析しています。音声はこちらからもお聞きいただけます番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『ザ・クラウンシーズン1~2』『日の名残り』『ザ・クラウンシーズン4』『ザ・クラウンシーズン5』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』『キャシアン・アンドー』『メディア王〜華麗なる一族〜』【サクセッション】シーズン4【ポッドキャスト更新】第33回PeakTVの御世は永遠に『ザ・クラウン』

  • 『雪山の絆』

    1972年、ウルグアイの学生ラグビーチームを乗せた飛行機が遠征先のペルーへと向かう途上、アンデス山脈に激突。72日間のサバイバルの末、乗客乗員45人中16人が生還した“ウルグアイ空軍機遭難事故”再びの映画化だ。監督のJ・A・バヨナは実に10年もの歳月をかけて本作を企画。93年にはフランク・マーシャル監督が『生きてこそ』のタイトルで映画化したハリウッド版があるものの、バヨナは事実通り全編スペイン語で再現し、30年分の映画技術の進歩によって決定版とも言える仕上がりとなった。93年版は74年に刊行されたビアズ・ポール・リードのドキュメンタリー小説『生存者』を原作にし、イーサン・ホークが演じたナンド・バラードを中心とするアドベンチャー映画としての色合いもあった。今回のバヨナ版は2009年にパブロ・ヴィエルシによっ...『雪山の絆』

  • 【ポッドキャスト更新】第32回 アカデミー賞ノミネート作を観る『哀れなるものたち』、ドキュメンタリー映画群

    1月23日に発表された第96回アカデミー賞ノミネートを受け、今年の傾向や候補作についてお喋り。音声はこちらからもお聞きいただけます。収録の直前に観たばかりの『哀れなるものたち』についてはまだトークがまとまっていないのは御愛嬌。詳しくはレビューを御覧下さい。例年、いくつかの部門ではノミネート発表前に一次選考を通過した作品のロングリストが公表される。これを頼りに普段はなかなか手が回らないドキュメンタリー作品を見るのが楽しみ。ポッドキャストでは以下の作品についてお喋りしています。『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』『キャンプ・カレッジ勇気の先に輝くもの』『STILL:マイケル・J・フォックスストーリー』『はじめから烙印を押されて』『ラスト・リペア・ショップ』【ポッドキャスト更新】第32回アカデミー賞ノミネート作を観る『哀れなるものたち』、ドキュメンタリー映画群

  • 『哀れなるものたち』

    今から13年前、エマ・ストーンが『EasyA』(『小悪魔はなぜモテる』という日本劇場未公開作らしい酷い邦題が付いた)で学校中の非モテ男子‐彼らは“男らしくない”ばかりに虐められ、境遇から脱するには童貞を卒業したと公言する必要があった‐を救い、代償にヤリマン“EasyA”として石を投げられるという、ホーソーンの『緋文字』をパロディにしたコメディで大ブレイクした時、彼女がこんな偉大な女優になると想像した人がどれだけいただろう?もちろん、弾けるようなスマイルと抜群のコメディセンスに多くの人がジュリア・ロバーツ以来のスター誕生を確信し、予想よりも早く『ラ・ラ・ランド』でオスカー女優となったストーンだが、まさかギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスとコンビを組み、ハリウッド最強のオルタナ女優になるとは思ってみなかった...『哀れなるものたち』

  • 『彼方に』

    第96回アカデミー短編映画賞ノミネート作。例年、若手監督の登竜門とも目されてきた部門であり、受賞をきっかけに長編デビューする作家も少なかったが、今年はロングリストの段階でペドロ・アルモドバル『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』、本戦ではウェス・アンダーソン『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』ら巨匠の名前が並ぶ異例の年である。突然の凶行に家族を奪われた男の彷徨を描く本作は、大きなキャンパスにも映えそうな主題を取り扱っており、プロデュースを兼任する主演デヴィッド・オイェロウォも名演だ。しかしミサン・ハリマン監督のストーリーテリングは18分という短編にはやや字余りな印象で、撮影、編集を含め“素描”という感は拭えない。部門の意味合いから考えれば不釣り合いではあるが、受賞はアンダーソンだろう。『彼方に』23・英...『彼方に』

  • 『ラスト・リペア・ショップ』

    今年のアカデミー賞でドキュメンタリー賞候補のリストに目をやると、批評家賞で善戦した有力作が軒並み落選していることに驚く。そんな大番狂わせの中、短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『ラスト・リペア・ショップ』は受賞の最有力かもしれない。舞台はハリウッドのお膝元LA。小中高学校から送られてきた楽器を無償修理する職人たちが主人公だ。人には歴史がある。音楽や楽器との出会いを紐解けば、ある者は性的マイノリティであり、ある者は移民だ。ランニングタイム40分の本作は自ずとアメリカの成り立ち、かつてあった寛大さを浮かび上がらせる。一心不乱に楽器と向き合う子どもたちと織りなす合奏に、ブラスバンド出身の僕は胸熱くならずにはいられなかった。『ラスト・リペア・ショップ』23・米監督ベン・プラウドフット、クリス・パワーズ※ディ...『ラスト・リペア・ショップ』

  • 『はじめから烙印を押されて』

    イブラム・X・ケンディのノンフィクション『人種差別主義者たちの思考法黒人差別の正当化とアメリカの400年』を原作とする本作は、作者自らをはじめ、識者による解説とアニメーションによってまとめられたドキュメンタリーである。そもそもの“人種”という言葉の起源から遡る本作は、ヨーロッパに始まりアメリカで完成した奴隷制度というシステムが、今なお姿形を変えて存続していることを看破する。Netflixのアルゴリズムではなかなかレコメンドされる機会も少なく、語り口に堅苦しさがあるものの、ネット記事を斜め読みするよりはよっぽど有意義な85分だ。『はじめから烙印を押されて』23・米監督ロジャー・ロス・ウィリアムズ※Netflixで独占配信中※『はじめから烙印を押されて』

  • 『ライ・レーン』

    フレッシュでキュートな映画を求めているならイギリスからやってきた82分の小品『ライ・レーン』がうってつけだ。互いに失恋を経験したばかりの若者ヤズとドレがひょんなことからめぐり逢い、やがて恋におちていく。レイン・アレン・ミラー監督はお決まりのプロットに細部までコーディネートされた極彩色のプロダクションデザインを配し、出会いと恋の高揚を描き出す。古くは『アメリ』や劇中でも言及されるウェス・アンダーソン映画を想わせる箱庭感だが、ロンドンでもジャマイカ系が多く暮らすコミュニティのロケーションが主人公のみならず、本作の重要なアイデンティティである(劇中、同地域を描いた『スモール・アックス』の監督スティーヴ・マックイーンの名前も挙がる)。何より本作のオリジナリティを高めているのが、まるでヨルゴス・ランティモス映画のよ...『ライ・レーン』

  • 『ニモーナ』

    ディズニーによる20世紀FOX買収によって『アイス・エイジ』シリーズなどを手掛けてきたアニメーション部門“ブルースカイ・スタジオ”が閉鎖。N・D・スティーブンソンの同名コミックを原作とする『ニモーナ』も製作中止に追い込まれてしまう。その後、アンナプルナ・ピクチャーズによって企画がすくい上げられ、晴れてNetflixからのリリースとなった次第だ。2000年代に入り、ハリウッドメジャー各社は傘下にアニメーション部門を設立、収入の大きな柱としてきた。しかし家族連れの動員が見込めないパンデミックを境に、多くの作品が劇場公開から配信へと形態を変えることとなる。Netflixは近年もソニーから快作『ミッチェル家とマシンの反乱』を買い上げ、アカデミー賞へ送り込んでいた。今年はディズニーの創立100周年記念作『ウィッシュ...『ニモーナ』

  • 『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』

    1980年代に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで爆発的な人気を博したマイケル・J・フォックス。パーキンソン病を公表し、俳優業を引退してからというものいったいどうしていたのか。その名を忘れて随分時間が経ったが、自らの半生を振り返るドキュメンタリー『STILL:マイケル・J・フォックスストーリー』で久しぶりにその姿を見せてくれた。俳優としての大きな持ち味であった童顔ゆえにわからないが、御年62歳。彼がパーキンソン病を発症したのは30歳の時だった。フォックスの諸作を絶妙にマッシュアップする編集は出自からハリウッドへの上京、シットコムでの人気者時代、そして『バック・トゥ・ザ・フューチャー』への大抜擢劇を小気味よく見せ、あの時代を知る観客には胸踊るものがある。それだけに彼が長年に渡って病を隠し、不安と向き...『STILL:マイケル・J・フォックスストーリー』

  • 【ポッドキャスト更新】第29回 そこは世界の中心である『ファーゴ シーズン5』

    2023年末にスタートし、先ごろシーズンフィナーレを迎えた『ファーゴシーズン5』。ぜひともレビューを書きたい所だけど、興奮冷めぬうちにまずはお喋りしています。2024年最初の必見作!音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『ファーゴシーズン4』『レギオン』『ツイン・ピークス』【ポッドキャスト更新】第29回そこは世界の中心である『ファーゴシーズン5』

  • 『キャンプ・カレッジ 勇気の先に輝くもの』

    戦火を逃れ、ウクライナから脱出した少女が同じ境遇の子どもたちと過ごすサマーキャンプの様子を追ったドキュメンタリー。2015年の侵攻時にミラナは母と片足を失って以来、義足をはめ、祖母が母親代わりだ。思春期を迎えた彼女は周囲の人はおろか、祖母にも心を開いておらず、ロッククライミングを前にして泣きじゃくるばかり。なんとか彼女に精神的な1歩を踏み出させようと思案するスタッフ達の多くはイラク帰還兵であり、サマーキャンプは子どもを戦火に巻き込んだ大人たちの贖罪でもある。たった30分の短編ドキュメンタリーだが、マックス・ロウ監督が膨大な時間をかけて取材対象と関係を構築したのは容易に想像ができる。大人たちの杞憂をよそに、並外れた勇気を発揮するミラナと、そして映画になることもない戦火に生きる多くの子どもたちに、私たちは只々...『キャンプ・カレッジ勇気の先に輝くもの』

  • 2023年ベスト10

    例年同様、今年も各データベースを基に2023年製作の映画を選出している。そのためトッド・フィールド『TAR』、パク・チャヌク『別れる決心』、シャーロット・ウェルズ『aftersun/アフターサン』、スピルバーグ『フェイブルマンズ』、グァダニーノ『ボーンズアンドオール』、ロバート・エガース『ノースマン導かれし復讐者』、スコリモフスキ『EOイーオー』、タイ・ウェスト『PEARLパール』、クローネンバーグ『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』、クラピッシュ『ダンサーインParis』などが選外になっていることを断っておく(2023年上半期ベスト10はこちら)。ストリーミングプラットフォームが隆盛し、世界中でほぼ同時に同じ作品を見られるようになった今、既に評価の確立した昨年以前の映画について僕が順位をあれこれ逡巡す...2023年ベスト10

  • 『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』

    2023年末、専属契約を結ぶNetflixから『ラスティン』『終わらない週末』と次々に話題作を送り出したバラク&ミシェル・オバマ夫妻の主宰する製作プロダクションHigherGround。現在、オスカーレースでアカデミー長編ドキュメンタリー賞のフロントランナーと目されている『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』も彼らによるプロデュースだ。2022年、グラミー賞で最多11部門ノミネートされ、5部門に輝いたジョン・バティステがその裏で抱えていた苦悩を収めたドキュメンタリーである。バティステはジュリアード音楽院を卒業後、路上ライブ等で市井のアーティストとしてキャリアを積む傍ら、クラシックからジャズまで幅広いジャンルを横断する実験性の高い作曲活動を続け、グラミー賞ノミネートを受けてついに殿堂カーネギーホー...『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』

  • 『Saltburn』

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』で大旋風を巻き起こし、長編映画初監督にしてアカデミー作品賞はじめ5部門にノミネート、見事脚本賞に輝いたエメラルド・フェネルの第2作が登場だ。舞台は英国オックスフォード。名門大学に入学した奨学生のオリバーは、裕福な学生ばかりの学内で孤立し、なかなか周囲に馴染むことができない。そんな折、容姿端麗、名門貴族出身の人気者フェリックスと出会い、意気投合。夏休みを彼の実家、ソルトバーンの大邸宅で過ごすことになるのだが…。#Metoo映画の決定打としても絶賛された『プロミシング・ヤング・ウーマン』がその実、男女の二項対立に留まらなかったように、『Saltburn』もまた映画を政治的正しさだけで受容する現代の観客を戸惑わせることだろう。ソルトバーンに暮らすフェリックスの家族は特権意識を持...『Saltburn』

  • 『ペルリンプスと秘密の森』

    2013年の傑作アニメ『父を探して』でアカデミー長編アニメーション賞にノミネートされたブラジルの鬼才アレ・アブレウ監督待望の新作。太陽の王国から来た少年クラエと、月の王国からやってきたブルーオ。彼らは巨人の侵攻に脅かされる大森林で、この世のバランスを司ると言われる謎の力“ペルリンプス”を求めて冒険を繰り広げる。生まれて間もない男の子の目線から、世界の美しさと残酷さを台詞なしで描いた前作から一転、アブレウは作風をガラリと変え、言葉も明確なストーリーラインも擁してより揺るぎなく、現在(いま)を生きる子どもたちにメッセージを宛てている。根底にあるのはブラジルの自然破壊と右傾化に対する強い憤りだ。少年時代という“季節”の終焉と、熱いテーマ(終盤は『めぐりあい宇宙』のような展開に!)、そしてアンドレ・ホソイとオ・グ...『ペルリンプスと秘密の森』

  • 『終わらない週末』

    NYに暮らす白人の一家が、週末を過ごそうとハンプトンの海岸へやって来る。真っ白な砂浜に、透き通った青空。絶好のバケーション日和だが、心なしか観光客が少ない。水平線に目をやると大きなタンカーが見える。やがてそれは…TVシリーズ『MR.ROBOT/ミスター・ロボット』『ホームカミング』で知られるサム・エスメイル監督の新作は141分の間、いったい何が起きているのかさっぱりわからない。携帯の電波が途切れ、インターネットは繋がらない。テレビもラジオも何かがあったことを示唆しているが、もはやその機能を果たしていない。そんな夜、戸口に裕福な身なりの黒人父娘が現れれば、ジュリア・ロバーツとイーサン・ホーク扮する夫婦はいよいよ心穏ではいられなくなる。彼らの話によれば、どうやら大規模なブラックアウトによって都市部は機能マヒに...『終わらない週末』

  • 【ポッドキャスト更新】第27回 さぁ、家に帰ってTVドラマを見よう!『窓際のスパイ』、他

    2024年最初の放送回ではTVシリーズ3本をご紹介。番組冒頭、ネタバレ有りの“TVシリーズ雑談回”と謳っていますが、スポイラーはないのでご安心を(台本のない放送なものでスミマセン)。長内が2023年海外ドラマベスト10に選出した『僕は乙女座』をご紹介。でも聞けば聞くほどよくわからない、奇妙キテレツな作品で…。2023年のハリウッドの重要なテーマの1つがAI。ストリーミングプラットフォームのアルゴリズムに乗るべく、『TheOA』のブリット・マーリング、ザル・バトマングリのコンビが手掛けた『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』はあまりにも慎重で、冒険心のないアガサ・クリスティ風ミステリーに留まっている?一方、“毎週決まった曜日にTVドラマの続きを観る”という、テレビの根源的な楽しさを甦らせてくれたのは意外やA...【ポッドキャスト更新】第27回さぁ、家に帰ってTVドラマを見よう!『窓際のスパイ』、他

  • 【ポッドキャスト更新】第26回 2024年前夜『終わらない週末』の衝撃

    年末に配信されたポッドキャストでは、2024年前夜とも言うべき予言的な映画『終わらない週末』の衝撃に、長内も言葉がまとまらず。この他、ホラー映画『TALKTOME』や、2023年のマイフェイバリット『ショーイング・アップ』についてお喋りしました。音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で触れている各作品のレビューはこちら『TALKTOME』『ショーイング・アップ』『イット・フォローズ』『コクソン』『ミーガン』『ライフ・ゴーズ・オン彼女たちの選択』【ポッドキャスト更新】第26回2024年前夜『終わらない週末』の衝撃

  • 【終了しました】ポッドキャストの公開収録を行います

    長内那由多のMovieNote公開収録は無事に終了しました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!初めてのイベントで、僕もさじ加減の見当がつかなかったのですが、蓋を開けてみれば約2時間ほとんど喋りっぱなしという状態で、お付き合い頂き感謝感激です。WEBで公開している文章もPodcastもほとんど一方通行なため、読者やリスナーの方々と直にお会いしてお話ができたのはすごく嬉しいです。また次の機会にこのようなイベントを行えたらと思います。収録した音声は後日、随時アップしていく予定です。【下記のイベントは終了しました】いつもポッドキャスト“長内那由多のMovieNote”をお聞き頂きありがとうございます。開始当初、「1年くらいをかけて番組登録者数が◯人くらいになったらいいなぁ」という漠然とした目標でスター...【終了しました】ポッドキャストの公開収録を行います

  • 『ラ・メゾン 小説家と娼婦』

    2年にも渡りベルリンの高級娼館で娼婦として潜入取材したエマ・ベッケルの小説“LaMaison”は、フランスで賛否両論を巻き起こし、ベストセラーになったそうだが、アニッサ・ボンヌフォン監督はその魅力を掬い上げているとは言い難い。主人公エマは2冊の小説を上梓したものの、未だ駆け出しの作家。妹を頼ってベルリンを訪れた彼女は、興味本位で娼館での潜入取材を始める。当初は人間の欲望をテーマに構想していたが、それぞれに事情を抱え、自身の肉体の自由を行使する娼婦たちの姿にやがてエマは心打たれていく。映画としても2010年代後半からのアイデンティティポリティクスにおいても目新しさはなく、こんなことを2年もかけなければ理解できないヒロインの小説家としての不見識に目眩がする(エマの成長と気付き、娼婦仲間たちの素顔に焦点が当てら...『ラ・メゾン小説家と娼婦』

  • 『ショーイング・アップ』

    辺境からアメリカを描き続けてきた名匠ケリー・ライカートが、今度はオレゴンの芸術大学に目を凝らした。主人公リジーはここで教鞭をとりながら、間もなく自身の個展を迎えようとしている。できるものなら創作に集中したい。ところが、家の給湯器が壊れてもう何日もシャワーを浴びれていない。大家でもあるアーティスト仲間は、昨今の住宅事情を見越してこの中古物件を買い上げ、今や家賃収入で生活しながら自分の創作に集中している。シャクに触るが、仕方ない。お金儲けはそんなに得意じゃないのだ。そんな折、窓から飛び込んできた鳩を愛猫が襲い、看病することになった。彫刻の焼き上がりは芳しくない。やはり美術家の兄は最近、特にメンタルが良くなさそうだ。あぁ、創作に集中したいのに。人は何かを生み出すことと無縁ではいられず、ひと度何かを生み出せば“ア...『ショーイング・アップ』

  • 『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』

    TikTokやインスタグラム等、SNSのショート動画に上げられるファニーで、しかし危険なチャレンジ映像の数々。ついつい見てしまう驚きや、「よせばいいのに…」と呆れてしまうこれらの中で、最近オーストラリア発のある映像が話題になっている。身体をイスに縛りつけられた若者と、眼の前には新聞紙で包まれたように見える石膏製の手。若者がそれを握り「TALKTOME」「LetMeIn」と唱えると、なんと霊がとり憑くのだ。ただし、制限時間は90秒。万が一、それを超えてしまうと…。そんな筋書きのソーシャルメディア時代を象徴するホラー映画が誕生したのはハリウッドではなく、オーストラリア。長編初監督作となる双子のフィリッポウ監督はなんとYouTuberだ。映画監督を目指してフッテージ製作を続けてきた彼らは一発アイデアに頼ることな...『TALKTOMEトーク・トゥ・ミー』

  • 【ポッドキャスト更新】第25回 『マエストロ』『ポトフ』『ティル』12月の見逃せない3本

    “正月映画”という言葉がなくなって久しく、代わりに今年の12月は作家映画が充実。Netflixで配信中の『マエストロ』はブラッドリー・クーパー監督の第2作。レナード・バーンスタインという題材に長内は今年の傑作『TAR』を彷彿。そして…。予告編とタイトルから全く期待していなかった『ポトフ』にびっくり。なんと美しい映画か!当初、日本では秋に配信スルーとアナウンスされていた『ティル』が無事、劇場公開。全米では昨年の今頃公開された。ハリウッドのストライキによる“弾不足”が、急遽の劇場公開の理由とも見られる。“正月映画”が消滅した背景には、ハリウッドの弱体化と日本における洋画不振があるのだ。音声はこちからもお聞き頂けます各作品のレビューはこちら『マエストロ』『ポトフ』『ティル』その他、番組内で言及している各作品のレ...【ポッドキャスト更新】第25回『マエストロ』『ポトフ』『ティル』12月の見逃せない3本

  • 『ポトフ 美食家と料理人』

    ベトナム生まれ、フランス育ちの監督トラン・アン・ユンは1993年のデビュー作『青いパパイヤの香り』でカンヌ映画祭カメラ・ドールを受賞すると、続く第2作『シクロ』でいきなりヴェネチア映画祭金獅子賞を獲得する。ベトナムを舞台に輪タク(シクロ)運転手の少年とその美しい姉、“詩人”と呼ばれる聾唖の殺し屋(トニー・レオン!)の関係を描いた映像詩は未だ見ぬ映画言語を感じさせる衝撃作だった。第3作『夏至』を最後にベトナムを離れると、7年のブランクを経て『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』、村上春樹原作『ノルウェイの森』を発表。それから『エタニティ永遠の花たちへ』を撮るまで再び6年の時間を要す。そして本作『ポトフ』を製作するまでさらに7年の月日が経ち、若き異才トラン・アン・ユンも60歳となった。『ポトフ』には7年を要した必...『ポトフ美食家と料理人』

  • 『マエストロ:その音楽と愛と』

    長年、スピルバーグの次回作と目されてきたレナード・バーンスタインの伝記映画がついに実現した。御大はプロデュースに回り、監督を務めるのは『アリースター誕生』でイーストウッドからバトンを引き継いだブラッドリー・クーパー。本作にはマーティン・スコセッシもプロデューサーとして名を連ね、類まれな才能を持った俳優監督クーパーへのハリウッドの期待の高さが伺える。上映時間129分の約半分がモノクロで、後半からようやくカラーとなる。画面比は変動があれ、その大半がアスペクト1.33。前作『アリースター誕生』では人物に肉薄したマシュー・リバティークのカメラは一転、引きが多く、モノクロームはため息が出るほど美しい。近年、再評価されているシャンタル・アケルマンを思わせるクラシックなヨーロピアンテイストは生真面目すぎるきらいがあるも...『マエストロ:その音楽と愛と』

  • 『ゴジラ−1.0』

    驚くべきことが起こっている。山崎貴監督作『ゴジラ−1.0』が全米公開され、字幕付きの外国語映画としては歴代2位のオープニング興収を記録。アメリカで公開された日本映画としては歴代1位の大ヒットを飛ばし、12月11日時点で総興収は2500万ドルを超えているのだ。さらに注目すべきは批評家からも大絶賛を集めていることで、年末に発表される各批評家賞では視覚効果賞のみならず、外国語映画賞でも本作の名前が挙げられ、アカデミー賞の視覚効果賞1次先行も突破している。近年、“モンスターヴァース”として展開されてきたハリウッド版ゴジラシリーズでは再現し得ない、製作費1500万ドルのセンス・オブ・ワンダーに全米が脱帽している格好なのだ。最も重要なことは本作の北米配給を東宝自らが行っていることだろう。コンテンツホルダーに正しく利益...『ゴジラ−1.0』

  • 【ポッドキャスト更新】第24回 新たな才能はTVシリーズから!『ボトムス』『リアリティ』『ラスティン』他

    意図していなかったものの、並べてみればいずれもTVシリーズ出身の新たな才能による秀作ばかり。女子高生がファイト・クラブを結成する爆笑コメディ『ボトムス』。FBIによる尋問記録から脚本を書き起こした実録サスペンス『リアリティ』では、主人公を物語る重要なモチーフとして登場する日本発のあの作品にびっくり!今年のアカデミー主演男優賞レースを賑わせている『ラスティン』は熱い社会運動モノ。そして巨匠の枯れなさぶりに笑みすらこぼれる30分の短編『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』は日本での上映が終了してしまったので、まずはこちらでどんな作品か聞いてみて!音声はこちらからもお聞き頂けます番組内で触れている各作品のレビューはこちら『ボトムス』『リアリティ』『ラスティン』『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』『一流シェフのファ...【ポッドキャスト更新】第24回新たな才能はTVシリーズから!『ボトムス』『リアリティ』『ラスティン』他

  • 『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』

    今やオリジナル企画の通らなくなった映画界。目を引くのが映画会社ではない“異業種”による出資だ。日本ではユニクロがヴィム・ヴェンダースを招き、日本を舞台にした役所広司主演作『PERFECTDAYS』を製作。サン・ローランはペドロ・アルモドバルで30分の短編ウエスタン『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』を作った。いわゆる“企画モノ”なら巨匠アルモドバルの筆も実に軽く、今やアメリカ映画界を代表する名優へと成長したイーサン・ホーク、飛ぶ鳥落とす勢いの人気スター、ペドロ・パスカルらと共に実に楽しげなコラボレーションを実現している。特に英語圏の俳優であるホークにとってスペインの巨匠とのタッグは貴重な機会。短編にもかかわらず、並々ならぬ気迫で名演を披露する充実ぶりだ。西部のとある町にペドロ・パスカルが流れ着く。町を守る...『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』

  • 『ティル』

    日本では当初、配信スルーとアナウンスされていたが、こうして無事に劇場公開される運びとなった以上は、1955年の“エメット・ティル事件”について幾つかの補助線が必要だろう。当時14歳のエメット・ティル=愛称ボボは母親と暮らすシカゴから、親戚を訪ねて1人ミシシッピ州へと渡る。この頃のアメリカ南部には黒人差別を認めたジム・クロウ法がまかり通り、中でもミシシッピでは苛烈な暴力が横行していた。エメット・ティルはある事から白人の怒りを買い、リンチの末に殺害されてしまったのである。脚本も務めたシノニエ・チュウク監督は、この事件をボボの母親メイミーの視点から再構築した。いくらでもお涙頂戴のメロドラマに陥るリスクはあったはずだが、主演ダニエル・デッドワイラーの気丈な名演によって事件と公民権運動の関係性が客観的に捉えられてい...『ティル』

  • 『リアリティ』

    2017年6月3日、買い物を終えたリアリティ・ウィナーが帰宅すると、自宅前にはFBIを名乗る男たちが待ち受けていた。リアリティが勤務先の政府施設から機密情報を漏洩したと言うのだ。2016年アメリカ大統領選挙にロシアの介入があった事をリークした“リアリティ・ウィナー事件”を描く本作は、公開されている音声記録を元に尋問の様子を完全再現した戯曲“IsthisaRoom”の原作者ティナ・サッター自らによる映画化である。捜査上の形式的な問答に始まり、時に世間話にも興じながら相手の懐に入り込むFBIの尋問テクニックにぎょっとさせられる。ティナ・サッターは音声だけでは把握しきれない視線、動作、立ち位置などに徹底して演出を施し、リアリティが追い詰められていった状況を視覚的にも再現することに成功している。その様子からは国家...『リアリティ』

  • 『ラスティン ワシントンの「あの日」を作った男』

    1963年8月28日に首都ワシントンDCで行われた“ワシントン大行進”は20万人以上を動員した規模、マーティン・ルーサー・キングJr.による“IhaveaDream”の名演説により、アメリカ社会に多大なインパクトを与え、公民権運動の決定打となった。しかし、この大規模イベントを主導した真の立役者バイヤード・ラスティンの名はそう知られていないのではないか。バラク・オバマ、ミシェル・オバマによる製作会社ハイアーグラウンドがプロデュースする『ラスティン』は、ラスティンを通じて社会変革の成り立ちを描く力作だ。ラスティンはガンジーが説いた非暴力闘争をキング牧師に伝授し、彼を旗頭にワシントン大行進を企画する。しかしNAACP(全米黒人地位向上協会)がこれを良しとはしない。ゲイであるラスティンは運動の中心人物に相応しくな...『ラスティンワシントンの「あの日」を作った男』

  • 『Winter boy』

    『ふたりのベロニカ』『トリコロール赤の愛』で知られる女優イレーヌ・ジャコブの息子ポール・キルシェが主演。その母親役にやはり『トリコロール青の愛』に主演したジュリエット・ビノシュ。この配役だけでも、随分と時間が経ったものだと感慨深いものがある。自身の少年時代を元にしたというクリストフ・オノレ監督は、やはりビノシュが夫を交通事故で亡くした『青の愛』同様、本作を青みがかった映像で包み、父を亡くした17歳の喪失感を描き出していく。ポール・キルシェは時折、憂い気に伏せた面持ちがキェシロフスキの描く運命の不思議に遭遇した母イレーヌを想わせ、あどけなさと体当たりの切れ味に今後を期待させるものがある。キルシェ演じるリュカの憂鬱は現在(いま)を生きる子どもたちのメランコリーを体現しているが、それをオールディーズポップで代弁...『Winterboy』

  • 【ポッドキャスト更新】第23回 『ナポレオン』という虚無、『ゴジラ-1.0』という負債

    ポッドキャスト最新回はリドリー・スコット監督作『ナポレオン』、そして現在全米で大旋風を巻き起こしている山崎貴監督作『ゴジラ‐1.0』についてお喋りしています。たまたま並んだ2本。ところが共通点があって…。音声はこちらからも聞けます『ナポレオン』のレビューはこちらもどうぞ【ポッドキャスト更新】第23回『ナポレオン』という虚無、『ゴジラ-1.0』という負債

  • 『ナポレオン』

    時に偉大な英雄、時に残虐な暴君。論じる者によっていくつもの顔を見せるヨーロッパ史の巨人ナポレオン。そんな得体の知れない存在にリドリー・スコットは如何に挑んだのか?今年、86歳になる巨匠は意外なことに不可解な彼を不可解なまま描き出している。ナポレオン役には当代きっての名優ホアキン・フェニックス。そのナポレオン像はいわば『ビューティフル・デイ』であり、『ジョーカー』であり、『ボーはおそれている』だ。神経質で、およそ大事とは程遠く見えながら常に混沌の中心に位置し、観客は彼を定義づけることができない。リドリーはそんなホアキン=ナポレオンを2つの面からのみ描こうとする。妻ジョゼフィーヌを溺愛する夫としての顔と、計略に長けた軍師としての姿だ。近年のリドリーは『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』と男女の不可解で暴...『ナポレオン』

  • 『ボトムス〜最底で最強?な私たち〜』

    日本では配信スルーとなった本作。PrimeVideoのキャプションを読んでのけぞった。“イケてない女子高生2人が、高校最後の1年でチアリーダーたちとヤるためにファイト・クラブを始める。そしてそんな彼女たちの奇想天外な計画は成功する!しかし2人は状況をコントロールできるのか?”正気か?だが『ボトムス』はホントにあらすじ通りの映画だった!それも劇中、女子高生たちが「デヴィッド・フィンチャー最高」と叫ぶ、『ファイト・クラブ』へのオマージュ満載の学園コメディになっている。プロデューサーには『ピッチ・パーフェクト』『コカイン・ベア』の監督エリザベス・バンクスも名を連ね、ガールフッドの活気にケシカラン笑いが満載。リアリティラインがよくわからんと言う輩はちゃんとフィンチャーの『ファイト・クラブ』を見てから本作にチューニ...『ボトムス〜最底で最強?な私たち〜』

  • 『欲望に溺れて』『TOMORROW パーマネントライフを探して』

    2018年の監督第5作『ガルヴェストン』以後、まるで映画作家としての資質を模索するかのようにジャンルを横断し続ける“監督”メラニー・ロラン。それらとは対象的な初期の監督第3、第4作は、自身に物語を近づけたよりパーソナルな作品であることが観て取れる。2013年に出産を経たロランは、ネイチャー誌に掲載された“今のライフスタイルを続ければ人類は滅亡する”という論考から子供の未来に強い不安を抱き、俳優仲間のシリル・ディオンと共に「農業」「エネルギー」「経済」「民主主義」「教育」の5つの観点から地球環境の持続可能性について模索する『TOMORROWパーマネントライフを探して』を発表する。なんとも切実で真摯な想いに溢れたドキュメンタリーで、その語り口は理路整然。ロランの才気煥発さが伺い知れる。この主題でランニングタイ...『欲望に溺れて』『TOMORROWパーマネントライフを探して』

  • 『バグジー』

    1991年のアカデミー賞は『羊たちの沈黙』が作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞の“主要5部門”を独占した史上3番目の映画として歴史に名を残した年だが(4本目の映画は30数年を経た今も現れていない)、一方でアカデミー賞史上類を見ない不作の年でもあった。今でこそ作品賞候補枠が10本以内に拡大されたことでアニメーション映画のノミネートも珍しくなくなったが、この年はディズニー映画『美女と野獣』がアニメ映画として初の候補入り。その他、『JFK』『サウス・キャロライナ愛と追憶の彼方』と並び、そして最多10部門で候補に挙がったのがバリー・レヴィンソン監督の『バグジー』だった。前年に『グッドフェローズ』がギャング映画を大きく更新した後で、『バグジー』はまるで寝ぼけているかのような仕上がりだ。ジョー・ペシが暴れ...『バグジー』

  • 『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』

    2018年タイ。少年サッカーチーム13名が折からの豪雨によって洞窟内に閉じ込められた事件は、世界中が固唾を飲んでその経緯を見守った。驚くべき救出作戦の全貌は後にロン・ハワードが『13人の命』としてパニックレスキュー映画に仕上げてもいる。ハワード監督の傑作に先駆けること2021年、エリザベス・チャイ・バサルヘリィとジミー・チン監督による本作は、ニュース映像や当事者たちへのインタビューなどを中心に事件を再現しているが、彼らの2023年作『ナイアド』によって本作が通り一遍の記録映画ではなく、スポーツドキュメンタリーであることが見えてくる。13人全員を生還させた救出作戦の立役者は、洞窟探検を専門とするケーブダイバーたちだった。浸水した洞窟は時に身1つ潜らせるのも容易ではなく、明かりは携帯するライトの微かな光のみ。...『THERESCUE奇跡を起こした者たち』

  • 『僕らの世界が交わるまで』

    とどまる所を知らない俳優たちによる監督デビューラッシュ。今度は『ソーシャル・ネットワーク』『バツイチ男の大ピンチ!』などの個性派俳優ジェシー・アイゼンバーグが初監督作を発表だ。アイゼンバーグ自らが手掛けた脚本は当初、オーディオドラマとしての製作が予定されていたそうだが、A24やエマ・ストーンがプロデュースに加わることで長編劇映画として公開されるに至った。作家の個人性から映画を作ることの多いA24だが、今回は俳優アイゼンバーグのフィルモグラフィに連なるシニカルな人生洞察コメディとなっている。DV被害から逃れた親子を受け入れるシェルターを運営する母エヴリンと、YouTuberの息子ジギー。社会福祉と公共心を重んじる母、自分とフォロワー数にしか興味のない息子では会話が噛み合うはずもなく、その間にいる父親はまるで...『僕らの世界が交わるまで』

  • 『ヴォルーズ』(寄稿しました)

    リアルサウンドにNetflixから配信されている映画『ヴォルーズ』のレビューをはじめ、監督メラニー・ロランのフィルモグラフィを振り返るコラムを寄稿しました。日本では長らく見ることのできなかった監督第4作にして傑作『呼吸』が、12月にスターチャンネルで初放送されます。この他、近年相次ぐ俳優の監督デビューラッシュにも言及。御一読ください。記事内で触れられている各作品のレビューはこちら『ロスト・ドーター』『あの夜、マイアミで』『mid90sミッドナインティーズ』『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー』『ワイルドライフ』『クワイエット・プレイス』『PASSING-白い黒人-』『AIR/エア』『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『バービー』...『ヴォルーズ』(寄稿しました)

  • 【ポッドキャスト更新】第22回 これ見逃してない?『サムバディ・サムウェア』『ギリシャ・サラダ』

    ポッドキャスト最新回は見逃すには惜しいTVシリーズの小品を紹介。HBO(日本ではU-NEXTで配信)の『サムバディ・サムウェア』はアメリカ中西部に暮らす白人中年女性の日常を描いた珠玉の1本。PrimeVideoで配信中の『ギリシャ・サラダ』はセドリック・クラピッシュ監督作『スパニッシュ・アパートメント』から始まる“青春3部作”の続編。この他、11月から配信スタートしている注目の新作初回エピソードを観てのファーストインプレッションもお喋りしています。音声はこちらからも聞けます番組内で言及している各作品のレビューはこちら『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』『ダンサーインParis』『ファーゴシーズン4』『GODZILLA』『ゴジラキング・オブ・モンスターズ』『ゴジラv...【ポッドキャスト更新】第22回これ見逃してない?『サムバディ・サムウェア』『ギリシャ・サラダ』

  • 『ザ・キラー』(寄稿しました)

    リアルサウンドにデヴィッド・フィンチャー監督の最新作『ザ・キラー』について寄稿しました。パーソナルな前作『マンク』から一転、今回はランニングタイム2時間のジャンル映画。同じくNetflixからリリースされている近作『マインドハンター』を引き合いにして、巨匠のオブセッションに迫ります。ぜひ御一読ください。記事はこちら『マインドハンター』のレビューはこちらをどうぞ。『ザ・キラー』23・米監督デヴィッド・フィンチャー出演マイケル・ファスベンダー、ティルダ・スウィントン※Netflixで独占配信中※『ザ・キラー』(寄稿しました)

  • 【ポッドキャスト更新】第21回 映画は映画を呼ぶ『僕らの世界が交わるまで』

    2024年1月19日から公開される『僕らの世界が交わるまで』を紹介。ジェシー・アイゼンバーグの初監督作。シーズン2ファイナルを迎えた『ロキ』に怒っているうちに、うっかりネタバレしているのは御愛嬌(気になる人は飛ばして聴いて!)。前回紹介した『ナイアド』の記事執筆にあたって、関連作を次々と観ていくうちに1991年の映画『バグジー』まで遡り…と映画は映画を呼んで、終わりのない楽しみなのです。音声はこちらかも聞けます『僕らの世界が交わるまで』公式サイトはこちら【ポッドキャスト更新】第21回映画は映画を呼ぶ『僕らの世界が交わるまで』

  • 『ナイアド〜その決意は海を越える』(寄稿しました)

    リアルサウンドにNetflixで配信中の映画『ナイアド〜その決意は海を越える〜』のレビューを寄稿しました。老境を迎えたアネット・ベニング、ジョディ・フォスターという2大女優の共演は、90年代の彼女らの映画を観てきたファンには感慨深いものがあるはず。『フリーソロ』などの傑作スポーツドキュメンタリーを手掛けてきた監督コンビの手腕にも注目を!記事はこちら記事内で触れている各作品についてはこちらをどうぞ↓『20センチュリー・ウーマン』『フリーソロ』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』『13人の命』『ナイアド〜その決意は海を越える〜』23・米監督エリザベス・チャイ・バサルヘリィ、ジミー・チン出演アネット・ベニング、ジョディ・フォスター、リス・エヴァンス※Netflixで独占配信中※『ナイアド〜その決意は海を越える』(寄稿しました)

  • 【ポッドキャスト更新】第20回 ストリーミング映画は新作ラッシュ!

    ポッドキャスト最新回はストリーミング映画の新作4本についてお喋りをしています。年末にかけて各社注目作が続々。でもほとんど宣伝されないので見過ごしてしまうことも多々あり。最旬スターの新作から、注目の俳優監督の最新作、それに今年のアカデミー賞にも絡んできそうな作品と盛り沢山です。番組内で言及している各作品のレビューはこちら↓『クイズ・レディー』『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー』『キリング・イヴ』『バービー』『20センチュリー・ウーマン』『呼吸-友情と破壊-』『6アンダーグラウンド』『ガルヴェストン』『フィンガーネイルズ』『ウーマン・トーキング私たちの選択』『MEN同じ顔の男たち』『ロスト・ドーター』『ファーゴシーズン4』『もう終わりにしよう。』『ワイルド・ローズ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリ...【ポッドキャスト更新】第20回ストリーミング映画は新作ラッシュ!

  • 『フィンガーネイルズ』

    ジェシー・バックリー(『ロスト・ドーター』)、リズ・アーメド(『サウンド・オブ・メタル』)、そして傑作TVシリーズ『TheBear』のジェレミー・アレン・ホワイトらが一同に会するとなれば、映画ファンには放っておけない1本だ。近未来、人類は互いの愛情を数値化できるようになり、人々は真実の愛を求めて検査に列をなしていた。検査方法はカップルの指の爪を同時に抜くことだ。愛のために己の目玉を捧げるヨルゴス・ランティモスのような意地の悪さはないの安心してほしい。相手の名前でこっそり相性診断をしたことがある人なら、どんなに頑張っても10回までしか調べられない未来世界に戸惑うことだろう。そもそも愛とは数値にできなければ言葉にもならないのではないか?ジェシー・バックリー演じるアナはジェレミー・アレン・ホワイト扮する恋人のラ...『フィンガーネイルズ』

  • 『バイオハザード:デスアイランド』

    決して目覚ましい映像表現が行われているワケではないが、ゾンビのようにしぶとかった実写映画化より確実にファンを楽しませてくれるフルCG長編アニメシリーズの第5弾。1作目『ディジェネレーション』、2作目『ダムネーション』は傑作アニメ『攻殻機動隊STANDALONECOMPLEX』も手掛けた菅正太郎の参加により、巨大製薬企業と政府のマッチポンプによってテロ戦争が継続する『バイオハザード』本来の批評性が取り込まれていたものの、ホラーアクションに特化して以後は、フランチャイズの一角を手緩く担うに留まってきた感はある(Wikipediaによると菅は2015年に他界している)。今回はクリス、レオン、クレア、レベッカというシリーズを支えてきた人気キャラ4人に加え、ゲーム版『5』以後、出番のなかったジル・ヴァレンタインが復...『バイオハザード:デスアイランド』

  • 【ポッドキャスト更新】第19回 私たちにかけられた呪いの正体『アッシャー家の崩壊』

    ポッドキャスト最新回はTVドラマをネタバレ有りでお喋りする“TVシリーズ雑談会”。今回はNetflixから配信されているTVシリーズ『アッシャー家の崩壊』について。クリエイター、マイク・フラナガンの過去作や、今年を代表するあの作品との関連性、そして本作にも共通する2023年の重要なテーマなどについて語っています。音声はこちらからも聞けます。番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『ドクター・スリープ』『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』『真夜中のミサ』『サクセッション』【ポッドキャスト更新】第19回私たちにかけられた呪いの正体『アッシャー家の崩壊』

  • 『クイズ・レディー』

    『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー』など、幼馴染のダチとして登場する“笑かし役”のオークワフィナもいいが、『フェアウェル』で見せた誰もが抱える心の空洞を猫背で体現する“役者”オークワフィナも堪らないものがある。本作『クイズ・レディー』では家族と疎遠な移民二世役。職場では誰からも相手にされない空気扱いで、唯一の楽しみといえば毎晩、愛犬と一緒に長寿クイズ番組を見ること。30数年来見ているせいで、今や彼女の頭には知識がいっぱいだ。ある日、老人ホームに入っていたギャンブル依存症の母が脱走。それをきっかけに音信不通の姉が現れ、さらには母を追って借金取りまでやって来て…。オークワフィナにとって先輩となる17歳年上のアジア系スター、サンドラ・オーが姉役に扮し、あけっぴろげなコメディ演技でオークワフィナの性格演技を際...『クイズ・レディー』

  • 『春画先生』

    人間、年を取ると好みが変わるものだが、人の性(さが)はそうそう変わらない。塩田明彦監督62歳の新作は長編デビュー作『月光の囁き』にルーツを遡る、およそ2020年代の映画とは思えないヘンタイっぷりだ。冒頭、場末の喫茶店でバイトをする弓子が地震に見舞われる。大きな揺れにつながるであろう震動に気付いているのは、おそらくこの場で自分1人しかいない。これはひょっとして世界がひっくり返るような厄災だろうか?やがて…何も起こらない。人生の変革なんて自分には起こり得ない。ふと目を逸らすと、テーブルの上に男女のまぐわう画が広げられている。こんな場所でそんな物を堂々と見るのは、近所でもおなじみ“春画先生”だ。日本映画史上、初めて無修正の春画が登場する本作は、春画を単なる江戸のわいせつ本程度に思っている観客に新しい発見をもたら...『春画先生』

  • 【ポッドキャスト更新】第17回 いつまで演劇人は“ヘンな人”なの?『シアター・キャンプ』他

    ポッドキャスト最新回は『シアター・キャンプ』『FairPlay/フェアプレー』『私がやりました』についてお喋りしています。ほとんどの番組がオススメ作品を語る中、あくまで“最近見た映画やTVシリーズについてお喋りする”本番組は、ダメなものはダメと言います。演劇の人として、あまりにもシンドかったのですよ『シアター・キャンプ』は…。音声はこちらからも聞けます。この他、番組中で言及されている各作品のレビューはこちらからどうぞ。『シアター・キャンプ』『FairPlay/フェアプレー』『私がやりました』『TheBear』『ブリジャートン家』『ハン・ソロ』『いつわり』【ポッドキャスト更新】第17回いつまで演劇人は“ヘンな人”なの?『シアター・キャンプ』他

  • 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

    前作『アイリッシュマン』の210分に続いて新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は206分。製作はNetflixからAppleTVへ。ストリーミングプラットフォームの台頭がハリウッドを賑わせて久しいが、今年80歳を迎える巨匠はこの状況に最も適応した映画作家と言っていいだろう。『アイリッシュマン』公開時、3時間を超える上映時間について問われたマーティン・スコセッシは、「みんな週末に3時間も4時間もTVシリーズをビンジウォッチするじゃないか」と答えた。事実、リミテッドシリーズ3〜4話分に相当する最新作はTVシリーズのストーリーテリングに近く、決して長くはない。『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アイリッシュマン』から連なる、アメリカの成り立ちと暗部を描いた“アンダーワールドUSA”とも言うべき本作において、...『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

  • 【ポッドキャスト更新】第16回 映画館に行くなら今!『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『ザ・クリエイター』

    1年に1〜2度起こる、重要作の同時公開。10月末は2023年最後のピーク!マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』と、今年1番のダークホース『ザ・クリエイター』についてお喋りしています。音声はこちらかも聞けます【ポッドキャスト更新】第16回映画館に行くなら今!『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『ザ・クリエイター』

  • 『ザ・クリエイター/創造者』

    ディズニー買収後のスター・ウォーズシリーズは、粗製乱造により多くの若手監督のキャリアを空費した。今や唯一、成功した実写映画と見なされている『ローグ・ワン』でさえ、代打トニー・ギルロイ監督によって公開1年前に全体の約40パーセントが再撮影され、我々の知る形となっている。後にギルロイによって傑作『キャシアン・アンドー』が生まれことも含め、ギャレス・エドワーズ監督の功績は軽視されがちだ。「報じられている内容は事実と異なる」と発言する彼は、最後まで共に現場で指揮を執り続けていたという。しかし、大手スタジオのブロックバスターを仕上げられなかったという業界内評価は、エドワーズに映画作家として幾つもの難題を突きつけたことは想像に難くない。そんな『ローグ・ワン』から7年を経たエドワーズの新作『ザ・クリエイター』は、ハリウ...『ザ・クリエイター/創造者』

  • 『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』

    ハリウッドが#Metooを唱え始めるずっと以前から、インデペンデントの知性派ケリー・ライカートは辺境からアメリカの現在(いま)を生きる女性の姿を描いてきた。2016年の『ライフ・ゴーズ・オン』(原題はもっと素っ気ない“CertainWoman”)はマイリー・メロイの短編小説を原作に、モンタナの田舎町に暮らす3人の女性をスケッチしていく。ローラ・ダーン演じる弁護士(役名もローラである)は、労災認定を求めるクライアント(ジャレッド・ハリス)に悩まされている。彼は1度、会社との示談に応じたため訴権がないという法律判断なのだが、どうにも聞く耳を持ってくれない。仕方なく隣町の男性弁護士にセカンドオピニオンを求めれば、考えはローラとまったく同じ。クライアントはあっさり「わかった」と納得した。「私が男だったら良かったの...『ライフ・ゴーズ・オン彼女たちの選択』

  • 【ポッドキャスト更新】第15回『イエロージャケッツ』『バリー』贖罪と自分を大切にするということ

    今回はTVシリーズをネタバレ有りで最後までお喋りする“TVシリーズ雑談回”。日本ではU-NEXTで配信中の『イエロージャケッツシーズン2』と、ファイナルを迎えた『バリーシーズン4』について話しています。本邦ではアメリカのTVシリーズについての批評が不足していますが、中でも『バリー』最終回の解説は貴重だと思います。シリーズ完走済みの方はぜひお聞きください!こちらからも聞けます↓https://stand.fm/episodes/6523b7f2eb3f4a0cb0cef264番組内で触れられている各作品のレビューはこちらもどうぞ『イエロージャケッツ』『バリー』シーズン1シーズン2シーズン4『ベター・コール・ソウル』【ポッドキャスト更新】第15回『イエロージャケッツ』『バリー』贖罪と自分を大切にするということ

  • 『Fair Play/フェアプレー』(寄稿しました)

    リアルサウンドにNetflix映画『FairPlay/フェアプレー』のレビューを寄稿しました。Netflixが今年のサンダンスで2000万ドルもの大金をかけて配給権を獲得した勝負作。ハリウッドの新たなスター、フィービー・ディネヴァーのブレイク作であり、オールデン・エアエンライクのキャリア復活の1本。見終わった後は誰かと話したくなること必至の映画です。御一読ください!記事はこちら記事内で触れている各作品のレビューはこちらをどうぞ『アリー/スター誕生』『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』『ブリジャートン家』『FairPlay/フェアプレー』23・米監督クロエ・ドモント出演フィービー・ディネヴァー、オールデン・エアエンライク、エディ・マーサン※Netflixで独占配信中※『FairPlay/フェアプレー』(寄稿しました)

  • 『バリー シーズン4』

    ※このレビューは物語の結末に触れています※2010年代後半のPeakTVから生まれた傑作が次々と幕を閉じる昨今、ビル・ヘイダー監督・主演によるコメディシリーズ『バリー』もファイナルを迎えた。本国アメリカでの配信は今年上半期を席巻した『サクセッション』の直後で、ハリウッドの脚本家、俳優両組合によるストの直前。まさにPeakTVの最後を飾った傑作の1つだ。TVシリーズの醍醐味はシーズンを重ねる毎に進化、変容していく作風をリアルタイムで見続けることにある。殺し屋が演劇に目覚め、俳優を目指すも裏稼業からは容易に足を洗うことができない…という一種のシチェーションコメディとして始まった『バリー』は、シーズン2第5話を機にその作風を大きく変えていく。サタデー・ナイト・ライブ出身のヘイダー自らが監督を務めたこのエピソード...『バリーシーズン4』

  • 【ポッドキャスト更新】第14回 “秋の3本立て”アンダーソン、マキノ、デプレシャン

    ポッドキャスト最新回はウェス・アンダーソンによるロアルド・ダール短編集、マキノ雅弘監督による1939年作『鴛鴦歌合戦』、アルノー・デプレシャン監督の新作『ブラザー&シスター』の3本についてお喋りをしています。番組内のレジュメには作品ごとのタイムスタンプも記載しているので、お好みの箇所からでもどうぞ。番組内で言及している各作品のレビューはこちらをどうぞ。『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』『ねずみ捕りの男』『白鳥』『毒』『鴛鴦歌合戦』『私の大嫌いな弟へブラザー&シスター』『アステロイド・シティ』『ルーベ、嘆きの光』『レア・セドゥのいつわり』AmazonMusicからも聞けるようになりました。音声はこちら【ポッドキャスト更新】第14回“秋の3本立て”アンダーソン、マキノ、デプレシャン

  • 『私がやりました』

    今年だけでも日本劇場公開作が3本という多作ぶりのフランソワ・オゾン監督。デビュー当初こそゲイである自身のセクシャリティと、日本では所謂“オシャレ映画”に分類されてしまうカラフルな画面作りに、たっぷりの毒気を盛り込む作風で注目を集めたが、今やヒューマンドラマ、実録モノ、サスペンス等々あらゆるジャンルを手掛ける名匠となった感がある。最新作『私がやりました』は代表作『スイミング・プール』よろしくプールサイドから幕を開けるが、同じサスペンスでもこちらは愉快なサスペンスコメディだ。女優志望のマドレーヌと駆け出し弁護士のポーリーヌ。若さと美貌があってもいかんせん金がない2人は、パリのオンボロアパートでルームシェアをしている。今日も今日とて大家に家賃を取り立てられる有様だ。そんなある日、マドレーヌに大物演劇プロデューサ...『私がやりました』

  • 『シアター・キャンプ』

    夏休み中の子どもたちを対象に行われている演劇ワークショップ“シアター・キャンプ”。赤字経営が続く中、今年度の開校を前にして校長がまさかの昏睡状態に。果たして残された講師たちは無事、3週間後の本番を迎えることができるのか?傑作TVシリーズ『TheBear』(邦題『一流シェフのファミリーレストラン』)のクレア役で注目を集めたモリー・ゴードンとニック・リーバーマンが共同で監督を務めた本作は、残念ながら彼らの若さを理由に看過する事ができない。演劇映画にもかかわらず、何と稽古シーンが一切ないのだ。子どもたちを対象とした演劇ワークショップを舞台にしながら、ここには演劇制作という祝祭的な楽しさも、他者から受けるインスピレーションの喜びも描かれていない。陽気で風変わりな講師たちの“奇行”を描くコントに終始し、せっかくの物...『シアター・キャンプ』

  • 『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』

    日本では4作品ぶりの劇場公開となったアルノー・デプレシャン監督。かつて“トリュフォーの再来”とまで謳われた俊英も今や62歳。軽やかさや奔放さは鳴りを潜め、『ルーベ、嘆きの光』『いつわり』の精細を欠いた語り口に、このまま作家主義の老匠に収まるのか…と思われが、新作『ブラザー&シスター』はすこぶる活気に満ちている。人物ににじり寄るカメラ、淡白とも言える編集のリズムは近年のアメリカ映画を思わせ、あらゆる映画を見て、あらゆるジャンルを網羅しようとするデプレシャンならではの筆致である。冒頭、6才の息子を亡くしたルイの悲嘆から映画は始まる。犬猿の仲である姉アリスは弔問に訪れるも、玄関に上がることすら許されない。廊下の暗闇で涙するマリオン・コティヤールの横顔を収めた瞬間、映画の成功は約束されたようなものだ。デプレシャン...『私の大嫌いな弟へブラザー&シスター』

  • 『生きてこそ』

    雪深い山中に遭難した少女たちのサバイバルを描くホラーTVシリーズ『イエロージャケッツ』の参照元として、1993年の本作を改めて紐解くのも良いかもしれない。1972年、ウルグアイの学生ラグビーチームらを乗せた飛行機がアンデス山脈に墜落。72日間もの遭難生活の末、16人が生還した“ウルグアイ空軍機571便遭難事故”の映画化だ。ピアズ・ポール・リードのドキュメンタリー小説『生存者アンデス山中の70日』を原作とする本作は、想像を絶する72日間をわずか126分に圧縮。俳優たちのフィジカルもリアリズムに乏しい“ハリウッド映画”かもしれないが、そもそも世の中には物語ることが困難な物語があり、故にこの事件は何度もドキュメンタリー、書籍で語り直されてきたのだろう。2023年には『インポッシブル』でスマトラ沖地震津波を描いた...『生きてこそ』

  • 『鴛鴦歌合戦』

    最近では2023年に上演された宝塚花組版をきっかけに本作を見た人も少なくないだろう。1939年の白黒映画を見るのは身構えてしまいそうになるところだが、マキノ雅弘という娯楽映画の塩梅を心得た者による小気味の良い1作だ。上映時間はたったの69分!長尺化が進む近年とは娯楽映画の考え方が異なることがよくわかる。長屋に暮らすイケメン浪人、禮三郎を巡って繰り広げられる恋の空騒ぎに、全編に渡って歌が散りばめられた本作は“オペレッタ時代劇”というジャンルに分類されるそうだ。小江戸をスウィンギングする楽曲の楽しさとカメラの移動、モノクロを超えた色彩設計の鮮やかさに、これを1週間で作れてしまう当時の日本映画のプロダクション力を伺い知ることができる。宝塚版はトップスターの柚香光、星風まどかがキャラクターのアップデートに成功。市...『鴛鴦歌合戦』

  • 【ポッドキャスト更新】第13回 『JUSTIFIED』『パリの記憶』は年間ベスト級の傑作!

    ポッドキャスト最新回は年間ベスト級の2作を紹介しています。『JUSTIFIED俺の正義:クライムシティデトロイト』はディズニープラスで配信中。本日時点でFilmarksのmark(見たよ)表示が11件しかない…(泣)。ハードボイルド犯罪ドラマ好きにはたまらない逸品です。フランス映画『パリの記憶』も日本劇場未公開。重要監督アリス・ウィンクールの新作です。日本でいつ公開されるかわかりませんが、ぜひとも覚えておいてもらいたいので、聞いてね!音声はこちらからも聞けます番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『パリの記憶』『裸足の季節』『約束の宇宙』【ポッドキャスト更新】第13回『JUSTIFIED』『パリの記憶』は年間ベスト級の傑作!

  • 『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』『ねずみ捕りの男』『白鳥』『毒』

    新作『アステロイド・シティ』が公開されたばかりのウェス・アンダーソンが、今度はNetflixからロアルド・ダール原作の短編4本を連続リリースだ。アンダーソンは2009年にダール原作『父さんギツネバンザイ』をストップモーションアニメ『ファンタスティックMr.FOX』として映画化。アンダーソン映画のトレードマークである、AIまでもが模倣する絵本のような構図と、人を喰ったオフビートなユーモアは多分にダールからの影響も大きく、2021年にNetflixがダールの全作品の映像化権を入手したことに始まる今回の企画は、ウェスにとっても念願だった事だろう。ところがこの奇才、自身の偏愛に創作を任せることなく、ダールと彼亡き現在(いま)を冷静に批評したアンソロジーへと仕上げている。第1日目に配信された『ヘンリー・シュガーのワ...『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』『ねずみ捕りの男』『白鳥』『毒』

  • 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

    日本では公開順が逆になったが、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART1』のランニングタイムが2時間43分。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』はさらに長い2時間49分。フランチャイズに根付いたファンダムは映画の尺が長ければ長いほど歓迎する向きにあり、ハリウッド映画の大作化は歯止めが効かなくなっている。愛犬の死も愛妻との死別も観客の記憶に遠く、似たりよったりのプロットを繰り返す『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は中盤、明らかに中ダルみしている。“ジョン・ウィックシリーズ”にストーリーなんているか?どう見積もってもあと20分、ひょっとすると30分は短くできたかもしれない。CGにほとんど頼ることなく“スタント技”で魅せる本シリーズにとって、ストーリーなど二の次三の次ではないか。第4弾『コンセク...『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

  • 【ポッドキャスト更新】第12回 9月公開作リキャップ『ジョン・ウィック コンセクエンス』『グランツーリスモ』

    ポッドキャスト最新回は9月に公開された作品を振り返り。ニール・ブロムカンプ監督による同名ゲームの映画化『グランツーリスモ』に「何かが間違っている」と不満な長内。シリーズ最終章『ジョン・ウィックコンセクエンス』には語彙が崩壊し、ほとんど番組が成立していない事態に。Netflixで配信されているウェス・アンダーソン監督の短編集については、次回にもう少し詳しく話すかも!音声はこちらからも聞けます番組内で言及されている各作品のレビューはこちら『グランツーリスモ』『アステロイド・シティ』【ポッドキャスト更新】第12回9月公開作リキャップ『ジョン・ウィックコンセクエンス』『グランツーリスモ』

  • 『パリの記憶』

    2005年11月13日、朝ミアがグラスを割ったのも、ディナーを共にした夫が仕事に戻ったのも、突然の雨にあのレストランへ駆け込んだのも、全ては定められた運命だったのかもしれない。パリ同時多発テロに直面する主人公を描いた本作は、決定的な瞬間に向けて生死を分かった幾つものディテールを積み重ねていく。ミアは九死に一生を得るも、いったいどうやって生還したのか記憶が定かではない。新しい人生はまるで霞がかかったようだ。あの夜、多くの人命救助にあたった医師である夫はミアの助けになりたいと願うが、彼女の痛みは同じ傷を負った人にしか理解し得ないのである。ミアは事件現場に戻ると、毎週月曜の朝に行われている被害者遺族の会に参加する。出世作となった脚本作『裸足の季節』、そして世界的に活躍するフランス人スター、エヴァ・グリーンを主演...『パリの記憶』

  • 【ポッドキャスト更新】第11回 今年のお気に入り『ダンサーインParis』、他

    ポッドキャスト最新回は今年のお気に入り『ダンサーインParis』を紹介。他、ホラー映画『ブギーマン』、フランス映画『ソウルに帰る』、そして素っ頓狂なTVシリーズ『ジュリー・デューティー17日間の陪審員体験』を紹介しています。こちらからも聞けます番組内で紹介されている各作品のレビューはこちら↓『ブギーマン』『ソウルに帰る』『ダンサーインParis』『スパニッシュ・アパートメント』他、“青春三部作”『オーレリ・デュポン輝ける一瞬に』『アウトサイダー』【ポッドキャスト更新】第11回今年のお気に入り『ダンサーインParis』、他

  • 『グランツーリスモ』

    ハリウッドが低予算映画でブレイクした気鋭の新人監督を潰してしまうのは今に始まったことではないが、2009年の長編デビュー作『第9地区』でいきなりアカデミー作品賞にノミネートされ、以後『エリジウム』『チャッピー』と独創的なSF映画を撮ってきたニール・ブロムカンプが雇われ仕事に徹した本作『グランツーリスモ』は、才能の悲劇的な空費によってクラッシュ、炎上している。一時は『エイリアン2』の正統続編(“シン・エイリアン3”とでも呼ぶべきか)の企画開発で話題を呼んだブロムカンプだが、この約10年はオリジナル脚本、中規模予算で製作するSF映画作家にとって困難な時代であったことが伺える。2023年は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』やHBOのTVシリーズ『THELASTOFUS』の大成功によってTVゲーム原作モノ...『グランツーリスモ』

  • 『イエロージャケッツ』(寄稿しました)

    リアルサウンドにU-NEXTで配信中のTVシリーズ『イエロージャケッツ』について寄稿しました。『生きてこそ』×『蝿の王』とも言うべき青春ホラー。90年代の映画ファンにはクリスティーナ・リッチ、ジュリエット・ルイスらの復活もうれしいところ。他、近年同時多発しているカニバリズム作品を繋げています。御一読ください。記事はこちら記事中で言及している各作品のレビューはこちら↓『マッドマックス怒りのデス・ロード』『M3GAN/ミーガン』『ボーンズアンドオール』『君の名前で僕を呼んで』『僕らのままで/WEAREWHOWEARE』『イエロージャケッツ』(寄稿しました)

  • 『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』

    全ての映画には出会うべく然るべきタイミングがあるはずで、幸か不幸か筆者がセドリック・クラピッシュの“青春3部作”を見たのは、完結編である『ニューヨークの巴里夫』が公開されてからさらに10年後の2023年だった(この年、子供世代を主人公にした続編TVシリーズ『ギリシャ・サラダ』がリリースされる)。クラピッシュの最新作『ダンサーインParis』に合わせた鑑賞だったが、若さみなぎる『スパニッシュ・アパートメント』から人生のモラトリアムを捉える『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』へと至るクラピッシュはそこからさらに10年後、『ダンサーインParis』で老境の眼差しを得ながらなお瑞々しさを失っていないことに驚かされた。25歳の大学院生グザヴィエは、1年間の留学で故郷パリからスペインはマドリードへと渡る。同...『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』

  • 【ポッドキャスト更新】第10回 愛と歴史とシステムの『The Bear』シーズン2

    ポッドキャスト最新回はディズニープラスで配信中のTVシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』(原題“TheBear”)シーズン2をネタバレあり、最終回までお喋りしています。これを聞いても面白さが損なわれるような作品ではないので、未見の人でも聞いてもらって大丈夫かなと思いますが、TVシリーズ雑談会は見終えて間もない熱量で喋ることがコンセプトなので、あしからず。音声はこちらSpotifyからも聞けますこの他、ApplePodcastからも聞けるようになっているので、普段使いの人はそちらからでもどうぞ。『一流シェフのファミリーレストラン』についてはリアルサウンドでもシーズン1のレビューを寄稿しています→こちら【ポッドキャスト更新】第10回愛と歴史とシステムの『TheBear』シーズン2

  • 『オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に』

    2015年に引退したパリ・オペラ座バレエ団のエトワール、オーレリ・デュポンに人気監督セドリック・クラピッシュが3年間密着したドキュメンタリー。2005年の“青春3部作”第2弾『ロシアン・ドールズ』でロシアのバレリーナ、エフゲニア・オブラツォーヴァを出演させるなど、かねてよりバレエやダンスに関心を寄せてきたクラピッシュが、ここではデュポンのキャリア最終盤に密着し、後には引退公演『マノン』を劇場公開用に撮影するに至っている。ドキュメンタリーながらデュポン本人のコメントはおろか、ろくろくテロップやナレーションも入れることなく、彼女の類まれなカリスマ性とストイックな身体鍛錬を見つめ、クラピッシュのダンサーに対する深い敬愛を察することができる。インタビュー時にタバコをくゆらせるデュポンの貫禄は往年のフランス大女優さ...『オーレリ・デュポン輝ける一瞬に』

  • 『プロスペクト』

    『イエロージャケッツ』で惚れ込んで以来、現在の若手最推し女優となったソフィー・サッチャー。『ブギーマン』の劇場公開に「祝!初主演!」「祝!日本劇場初上陸!」と喜んでいたら、実は2018年の低予算SF映画『プロスペクト』が長編映画初主演で、日本では2019年のカリコレ!で既に上映されていた(←推している割には情報に疎い)。しかも『イエロージャケッツ』に先駆けての大自然サバイバルものだ。遥か彼方の宇宙。デイモンとシーの父娘は希少な宝石を求め、かつて“ゴールドラッシュ”に湧いた辺境の資源惑星に降り立つ。そこには彼ら以外にも野蛮な採掘者たちがいて…。2014年の短編映画をセルフリメイクしたジーク・アールとクリス・コードウェルの監督コンビは、ヘルメット越しかのような狭い画角に彼らの内にある広大なSF世界を実現しよう...『プロスペクト』

  • 『ブギーマン』

    北米では当初Huluでの配信限定作品として製作されていたが、テスト試写での評判から急遽サマーシーズンに公開され、初登場3位のスマッシュヒットを記録。今やハリウッドでこんなポジティヴな話が聞けるのはホラー映画界隈くらいなのか。スティーヴン・キングの小説『子取り鬼』を原作とする本作は、エンドロールが流れる頃にはすっかり暗闇が怖くなる演出に加え、クリス・メッシーナ、ソフィー・サッチャーら俳優陣の献身的演技によって恐ろしいだけではなく、ハートに響く作品となった。最愛の母を不慮の事故で亡くしたセイディと妹のソーヤー。時が経ち、ようやく学校への登校を再開しようとするも、未だ気持ちは晴れない。ソーヤー(『オビ・ワン=ケノービ』で幼少期のレイア姫を演じたヴィヴィアン・ライラ・ブレア)はクローゼットの暗闇から怪物が現れると...『ブギーマン』

  • 『ソウルに帰る』

    パク・チャヌクの『別れる決心』といい、韓国歌謡曲にはつい聞き入ってしまう高揚と哀切を覚えるが、それは生まれて間もなくフランスへと養子に出され、20代後半にして初めて故郷韓国の地を踏んだヒロイン、フレディも同じようだ。曲に聞き入るゲストハウスの受付を前に「何を聞いているの?」と声をかければ、2人の視線は交錯する。あぁ、映画が始まる高揚!フランス生まれのカンボジア人監督ダヴィ・シューの長編2作目で強烈な磁場を放つのは韓国でもなければソウルでもなく、新人パク・ジミンが演じる主人公フレディそのものだ。「典型的な韓国人顔だね」と言われる彼女はフランス育ちの旺盛なコミュニケーション能力で周囲を巻き込み、礼節と父権の韓国社会を突っ切っていく。侮辱だなんだと言われようが、自分が飲みたい時に注ぐだけだと言わんばかりにチャミ...『ソウルに帰る』

  • 【ポッドキャスト更新】第9回 フォースに選ばれなかった視聴者による『アソーカ』中盤戦レビュー

    ポッドキャスト最新回はディズニープラスから配信されているスター・ウォーズシリーズ最新作『アソーカ』についてお喋りしています。出来が良くても悪くてもあーだこーだと口うるさいのがSWファン。これまでの作品とはちょっと異なる作りに、40年もののうるさ型ファンである長内が苦悶する1人語りです!音声はこちらSpotifyからも聞けます↓番組内で紹介している各作品のレビューはこちらからどうぞ『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』『マンダロリアン』『マンダロリアンシーズン2』『ボバ・フェット』『キャシアン・アンドー』『ワンダヴィジョン』【ポッドキャスト更新】第9回フォースに選ばれなかった視聴者による『アソーカ』中盤戦レビュー

  • 『ホワイトハウス・プラマーズ/米国政治の失墜を招いた男たち』

    1972年、ワシントンDC。深夜のウォーターゲートビルに男たちが忍び込み…と冒頭部分は1976年の名作『大統領の陰謀』、はたまた2017年の『ペンタゴン・ペーパーズ』とまるで同じ。ところがいつもと様子が違うのは、賊がいつまで経っても民主党事務所の錠前を破ることができない。「すまん、工具を忘れてきた」「え、どこに?車にか?」「マイアミ…」事実、犯人たちはウォーターゲートビルに忍び込むべく3度挑戦するも失敗し、4度目の侵入で現行犯逮捕された。『ホワイトハウス・プラマーズ』はこんなズッコケてしまうようなやり取りから始まるダークコメディだ。犯行を主導したのは元CIAのハワード・ハントと元FBIのゴードン・リディ。彼らはニクソン再選を目論むホワイトハウスから直々に裏工作を依頼され、自らを政権の“鉛管工=プラマーズ”...『ホワイトハウス・プラマーズ/米国政治の失墜を招いた男たち』

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