「勝手に熊にしたり星にされちゃたまんないわ💢女を何だと思ってんの?!」「その文句は俺に言うな、ゼウスに言ってくれ!」「だってさ~~~~・・・・・・はっ!」「どうした?」気が付いたら湯船にのんびり浸かって足を伸ばし、総二郎と肩がくっついた状態で夜空にクソ文句・・・真横を見たら麗しい顔が私を見てるし、ちょっと濡れた前髪が色っぽい。私はあれだけしっかり巻いてたバスタオルが緩んでて、身体が半分以上見えてる・・・「うわ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
何とか予約したグランピングのフロントに到着・・・17時までって言われていたんだけど、そのギリギリの16時50分だった。私は運転席でぐったりしていたので、総二郎が元気よく手続きに行ってくれて、私達の泊まるテントの位置を聞いてくれた。「お待たせ~♪」「・・・すごい山の中だね~。車はどうすればいいの?」「ドームテントのすぐ近くまで行けば、そこに駐車場があるってさ」「了解・・・」「その場所聞いたんだけど、この道を左...
27日の夕方、類はいつものように執務室で仕事をしていた。その時に私用のスマホが鳴り、類はそれをチラッと見る。掛けてきたのは総二郎だ。当然そこには藤本もいたが、類はその電話に出ると「総二郎、どうかした?」と言った。その相手の名前で藤本が手を止め、類の方を見る・・・2日前の事があるので当然だろう。類はそれを見ないフリして席を立ち、窓の外に目を向けて話し始めた。これは「計画」の一部であり、前回のように類の...
もうすぐ5月という季節だから気温はぐんぐん上がってきた。だから着替えは嵩張らず、薄手の服に上着があれば大丈夫・・・?でも山の中だから寒いかも・・・と、なかなか持って行くものが決まらない。いや、昨日の夜に粗方決めてたんだけど、どうしても不安・・・必要ないのは可愛いワンピだって事ぐらいだ。「まぁ、いっか・・・国内だし、最悪どこかで買えば・・・」湯治の温泉だとかグランピングだとか言っても、場所は東北自動車道矢板ICを降...
キッチンで夕食をつくるつくし・・・その手にはスマホがあった。味噌汁を作りながら見ているのは真利愛の動画で、音を小さくして繰り返し見ていたのだ。子ども用ではない大きなベッドに寝かされている真利愛・・・そのベビー服は如何にも上質だとわかるもので、可愛らしいワンポイントの模様があるだけの真っ白なものだ。余計なフリルもリボンもない襟付きのロンパース・・・おそらくオーガニックコットンなのだろう。小さな手で顔を擦った...
とうとう来てしまったゴールデンウィーク初日・・・昨日の夜は目が冴えて眠れず、やっと寝たと思ったらもう朝だった。だから頭がぼんやりしちゃう・・・でも今日はそんな事言ってられない!だって再び5000万円のハンドルを握らなきゃいけないんだもん!僅かな傷だって許してくれないだろうから、ここは一発気合いを入れないと!!そしてその先は・・・・・・総二郎と山の中で1週間の監禁生活///!それがどんな感じなのかを想像したら頭が...
今日は通いの家政婦が来ているようで、無表情な女性が1人、せっせとテーブルに軽食を運んでいた。リビングには大きなクリスマスツリーがあり、壁にもクリスマスリース、窓辺にはポインセチアが並び、まるで12月のホテルロビーのような派手な飾り付けだ。そのクリスマスツリーはゴールドのライトが光るだけの大人っぽいもので、瑛翔も冷めた性格なのか感心はなさそうだ。真利愛は美央に後ろに隠れ、無言でこの部屋を見回している...
野田の話が気になり、俺はつくしの部屋に向かった。花と木(それとエロ本)にしか興味のない野田にも判ったぐらいの高嶋の態度・・・はやり何か企んでるな?と思ったから。「つくし、入るぞ~」そう言ってドアを開けたが・・・・・・そこにつくしの姿はなかった。でも鞄はあるし、着ていた服も脱いである。それに部屋の隅には小さなスーツケースが広げられていて、そこにはカラフルな下着が山ほど置いてあった。・・・なるほど、これがグランピ...
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...
3人は長い廊下を速歩で進み、本邸のとある部屋の前に行くと、そこには3人の黒服の男がいた。総二郎は中国語で話し掛け、相手の方が態度が大きく、どちらかと言うと総二郎の方が低姿勢に見えた。当然類も中国語で挨拶しているが、その様子は和やかではなく緊張感が漂っていた。藤本の眉間には皺がより、ゴクリと喉を鳴らした。花沢物産の秘書課に配属されるのであれば英語が話せるのは当然だ。だがそれ以外の外国語を使いこなせる...
居酒屋・福ちゃんの宴会場・・・私は一般のお客さんが座る席を背中側にして、隣は高嶋さんだった。その反対側はあまり話さない家電課の野口さんと言うおじさんで、向かい側には量販課の小山君。この人もそんなに話すわけじゃないから、どうにも会話が続かない・・・。所長と部長相手に話すこともなく、1人で食べてる感じだったんだけど・・・「牧野さん、お酒あんまり飲まないんですね~」「敬語はやめてくださいよ~、高嶋さんの方が歳上...
真音と真利愛の誕生日の翌日。類はいつもより静かに目覚めた。隣には真利愛がスヤスヤと寝ており、それをずっと眺めていた。今日は総二郎と計画をしたことを実行する日。上手くいけば、今日こそ・・・・・・そんな事を思いながら真利愛の髪を撫でると、愛娘は薄らと目を開けた。「・・・・・・ぱっぱ?」「おはよう、真利愛」「・・・・・・ふあぁ~~~~~!ママはぁ?」「もう起きてるだろうから行ってみたら?」「あいっ!!」真利愛はムクッと起...
「おっはようございま~~~~す♪」「・・・・・・おはよう、つくし」「今日はまたすんごいテンション高いね、牧野さん・・・」「・・・・・・・・・・・・」←麻衣更衣室に入ったら涼子達にヘンな目で見られたけど、気にしな~~い♪♪ついでに龍崎さんもいたけど、その隣に行くと超ご機嫌に「今日も頑張ろうね!」って言うと、「なんだ、もう諦めたんですか?張り合いないですねぇ~~」、だって。そんな言葉なんてどうでもよくて、私は彼女を無視して涼...
「みぃちゃパパ、いつできる~?」「・・・もう少し待って、真音・・・案外難しいんだよ。美来、説明書取ってくれる?」「は~~~い、どうぞ!」つくしが夕飯の御馳走を作っているとき、リビングでは真音のおもちゃが組み立てられていた。本郷は背中を丸くして説明書とプラスチックの部品を持ち、「え~~と・・・」と悩んでいる。その横では待ちきれない真音が電車を持って床の上を滑らし、美来は父親の手伝いをする気満々だ。つくしは時...
翌朝、アラームの音と同時に目が覚めた。と言うか・・・殆ど寝られなかった///。「お、起きなきゃ・・・」今日も西門さん・・・総二郎のところに朝食を持っていかないといけない。昨日、あんな事があったからすごく気不味いんだけど・・・でも心の何処かでワクワクドキドキしていた。「可愛い下着にしなきゃ・・・」いやいやいや、今は何も起こらないって!だって仕事に行くんだもん、なにも可愛い下着じゃなくても・・・と言いながら何気にチェック...
「「「まぁ君、お誕生日、おめでとう~~~!!」」」「うわぁ~~~い、ありがと~~♪」町田のマンションでは真音の誕生日会が始まった。まずは食事で、つくしの作った料理が並べられている。中央にはケーキ型の寿司が置かれ、それには本郷も美来も驚いていた。それにおかずも豪華に飾り付けられ、真音は手を叩いて喜んだ。「それがね、作ってたら和洋中みたいになって・・・お寿司なのに中華スープだし、ハンバーグに唐揚げって・・・...
唇が離れた瞬間・・・私は何が起きたのかさっぱり判んなかった。でも目の前には西門さんが笑ってるし、まだ身体はホールドされてるし・・・・・・でも意識が戻った瞬間、「ちょっとーーーーっ///!!何すんのよーーーっ!!」「えっ?!そんな反応かよ💢!!」「言葉よりも先に行動なんてズルいーーーっ!!」「いや、お前の返事がトロいからだろうが!!その前に静かにしろ!お袋が飛んでくるぞ?」「ーーーーーーっ!!」私が両手で口を押...
11時20分・・・そろそろ黒田夫妻と瑛翔が来る時間になった。類は面倒くさそうというよりも無関心といった感じで、どうせ数時間経てば終わることだ、ぐらいの感覚だ。が、美央の方はどんどん緊張が増していく。その表情が強張っており、類もそれには気がついていた。だが今更中止というわけにもいかず、美央に何かを話し掛けても「大丈夫」という言葉しか返って来ないのも判っている。「そろそろ降りようか・・・」「え?えぇ・・・そう...
お稽古が終わって、このままお互いの部屋に戻るんだと思ったのに・・・何故か西門さんが私の部屋に来たので吃驚。でもここは西門さんの家なので、「入るな」とは言えない。もう21時過ぎてるし、こんな事は初めてと言うか・・・いつも分かれ道(廊下)でバイバイするのに、今日はいいのかな?と思っていたら、彼の方が先に部屋の中に入った。しかも極自然に・・・・・・居候とは言え、一応女の子の部屋ですが?!「えっと・・・何か忘れ物?」「...
12月24日になった。今日は真利愛と真音の誕生日・・・つくし達と花沢家では、それぞれ祝いの準備が進んでいた。「おはよう~、真音!お誕生日、おめでとう~~~!」「うんっ!ぼく、3さい~~~♪」「真音、おめでとう」「まぁ君、おたんじょうびおめでとう~~~~!あとでプレゼント、あげるからね~」朝1番、つくし達は真音に祝いの言葉をかけた。それから普通に朝食を食べたが、つくしはすぐに昼と夜の御馳走の準備に取り掛...
冷め過ぎたお弁当はあんまり美味しくない。でもお腹が空いていたからゆっくり食べて・・・その時に西門さんが立ち上がって、ここのミニキッチンでお茶を入れてくれた。その湯呑みを受け取り、彼もひと口・・・私達は部屋の真ん中のラグに座り、西門さんは胡座かいて真剣な顔してた。ホントに悲しそうでも辛そうでもない。そして、今度は聞いてもないのに自分の結婚が決まった時の事を教えてくれた。西門さんの婚約話は今から1年半前で、...
23日の土曜日・・・明日は真音の誕生日なのでその為のパーティーをする予定だ。だが美来が昨日から風邪気味なので、本郷が午前中に病院に連れて行き、つくしと真音は留守番。そして午後にはつくし1人が買い物に行くことになった。それに本郷にはつくしの部屋に置くユニット家具を組み立てるという仕事があったので、子ども達と家に居ることにしたのだ。「拓篤さん、ホントにごめんね。そのタンス、なかなか組み立てが難しくて・・・」...
「牧野様、お帰りなさいませ~~~~」「・・・志乃さん、ただいまです・・・」「どうなさったのです?お顔の色が悪うございますけど」「・・・ははは、なんでもありません。あの、ごめんなさい・・・今日のお弁当、食べられなくて・・・」「えっ?!」「ホントにごめんなさい・・・」鞄の中からお弁当箱を出して志乃さんにそう言うと、この人は目がテン・・・でもこれを夕ご飯にしても大丈夫だと思い、「部屋で食べますから」って言うと、そのお弁当箱...
類は浦田からのメールを見て黙り込んだ。町田市相原のマンション、そこの607号室・・・そしてその前に送られていた画像にも気が付き、美央に見えないところでそれを開いた。保育園の門から出てくるつくしと真音と女の子、そして真音をチャイルドシートに座らせている場面、つくしが運転席に乗り込む時にははっきりとその顔が見えた。別れた時は出産直後だったため、つくしは少しふっくらしていたし、身体も元には戻っていなかった...
本日17時過ぎ・・・私がお仕事をしていましたら、突然LINEが♪と。開いてみると、なんと空色様からのお話がっ!!あなたは類つくじゃなかったのか?!やっぱり隠れ総つく、いやいや、もう立派な総つくじゃないかっ(笑)!!とは言え、送っていただいたからには公開するしかないっ!ってことで、空色様のお話をどうぞ~~~♥◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆頑張れ!アレクサ 総二郎Ver.桜の盛りは思いの外短い。開花宣言から1週間程...
「西門さんって奥さんがいたんですね♪あ、ご心配なく~、今は独身だそうですよ?牧野さんと一緒ですね!」・・・・・・えっ?今、なんて・・・・・・奥さんって・・・・・・誰のこと?「何処かのお嬢様だったみたいですけど、どうして離婚したんですかねぇ?牧野さん、その理由を聞いてきて下さいよ~~~♪私、彼を狙ってるんで参考にしたいんですけどぉ~!」・・・何処かのお嬢様?離婚の理由って・・・そんなの言われても・・・・・・だって、私何も聞いてな・・...
木曜日、浦田は朝早くに本郷のマンション近くに来ていた。車は近くのパーキングに止め、マンションが見える喫茶店での朝食・・・そして監視しているのは当然マンションの入り口で、手にはカメラを持っていた。浦田は類に報告したあと、昨夜のうちにマンションに入り下調べをしていた。幸か不幸か、このマンションはかなり古かったためにオートロックではない。だから住人以外も出入り自由だったし、監視カメラも入り口に1台設置され...
<side龍崎麻衣>「ここか・・・・・・すんごい古臭い家だなぁ!てか、どんだけ長いの、この塀!しかも中が全然見えないし!」ネットで調べたら出て来た「茶道・西門流」。わざわざ仮病使って会社を休み、その住所に来てみたんだけど、どう見ても武家屋敷・・・クソ長い白い壁に囲まれてて、デッカい木の門がある。塀の向こうには松の木があるのは見えるけど、家なんて全然見えない。人の声も聞こえないし、何と静かな・・・と言うか、不気味な...
水曜日、つくしはすっかり元通りになった。昨夜から真音もつくしの部屋で寝ており、風邪もうつらなかった様子・・・それにはつくしが1番ホッとしていた。次の日曜日は真音の誕生日のお祝いだし、その時に熱を出してしまったら可哀想だから。「今日は今度働く会社に行って、入社に関する書類とかもらってくるの」「そうなんだ・・・初出勤が年明けって不思議な感じがするよね」「ふふっ、初めましてよりも先に、明けましておめでとうござ...
「なんだって?!龍崎さんが休んだぁ~~~っ?!」「つくし・・・声がデカい」「牧野さん、落ち着いて・・・」次の日、会社に行ったら涼子に言われたひと言・・・朝1番に当番で来ていた子が、かかってきた電話をとると龍崎さんが元気な声で・・・『あ、すみませ~~~ん!今日、お腹が痛くて立てないので会社休みま~~す!』と言ったそう・・・。当番の子が「病院に行ってね」と言ったらしいが、それを言い終わる前に電話を切られたとか・・・あの...
火曜日の午後、今日も真利愛は冷たい風を気にもせず、庭で若い使用人相手に遊んでいた。その様子をリビングから見ていた加代と美央が「子どもは元気ですよね~」とか、「恵子さんの方が風邪引かないかしら」などと話し合いながらティータイムを楽しんでいた。本来加代は使用人なので主家のお茶になど付き合わないのだが、美央が1人だと飲みにくいとのことで、時々一緒にその時間を過ごすことがあった。「美央様、24日ですけれど...
なんだか1日中私に敵対心ぶつけてきた龍崎さん・・・一体なんでそんなに悪態つくの?って疑問だけど、イチイチ聞くのも面倒臭い。教育係も2ヶ月間だし、それが過ぎれば普通の先輩後輩で、私の責任も軽くなるってもんだし。それまで辞めずに頑張るかさえもわかんない子だったから、気にしないようにした。それよりも今日もお稽古だろうか・・・とブツブツ言いながら着替えていた。当然その横には龍崎さんもいて、彼女は私を無視して背中...
15時30分になったら本郷は車のキーを持ち、「迎えに行くね」とつくしの部屋を覗いた。その頃のつくしは熱が引き、身体は幾分楽になっていたので玄関まで見送りに行き、買い物の追加も頼んだ。本郷はそのメモを持ち、戯けたような笑顔で「任せて」と言ってドアを閉める・・・それは何度も謝るつくしを気遣ってのことだろう。そして保育園に着くと美来が「パパ~!」と大喜びで出て来たが、真音はションボリしたままだ。それについ...
<side龍崎麻衣>「はぁ・・・・・・ダルい。こんなつまんない会社、入るんじゃなかった!」まだまだ火曜だってのに会社に行きたくなくてどんより・・・。でも給料ないと遊ぶことも出来ないから、仕方なく起き上がってメイクした。それから昨日買っといた菓子パン食べて、今日の服を選んで・・・「西門さんが迎えに来ないって言ってたから、普通の服でいっか!今日は里奈でも誘って、渋谷に飲みに行こ~~~っと!」それにしても牧野つくしぐら...
この日、浦田は類から依頼されたことを実行するため、自分のアパートで策を練っていた。会社名は判っている。が、関東には松田商事の支店や店は数多く、出向いて調べるのは効率が悪い。しかも防犯カメラに映るのは後々面倒だし、不審者としてマークされる可能性もある。そうなると電話になるが、本郷拓篤を探す理由として、不審に思われないためには・・・「・・・ダメ元でやってみるか」そう呟くと松田商事の本社に電話をかけた。その時...
グランピング・・・・・・豪華なキャンプなんて全然想像出来ないけど、西門さんが異様に張り切ってるから行く事にした。しかもキャンプ道具が要らないからって、車はヴァンキッシュ。この車を運転するのは西門さんOnlyだったはずなのに、この前私が運転したから「もう大丈夫だろう」って。再び5000万円のハンドルを握るのかと思ったら恐怖しかないけど、丁度高嶋さんから御守りももらったばかりだし?これは行ってみるしかないかも!...
「ただいま~!あぁ、寒かった~」本郷がマンションのドアを開けたのは20時30分。玄関で靴を脱いだ瞬間、奥のリビングからバタバタと走ってきたのは子ども達だ。そして出て来た言葉が・・・「パパ!早く来て!」「ママがね、ママがね!」「えっ?どうしたの、2人とも・・・」「いいから早く!つくしママが大変なの!」「うあああぁ~~~ん!」「・・・っ?!」真音が泣くのを見て慌てた本郷がリビングに入ったが、そこにはつくしの姿...
茶筅・・・クルクル回すだけの物だと思ったのに、まさかの5万円。お茶会で使う物は新品だって言うから、その都度5万がクルクルするのかと思ったら私の方がクラクラしそうだった。しかもこれまでカルチャーセンターで2~3回やった時には見様見真似で気にしてなかったのに、それに手順があるなんて・・・しかも西門さんがやると芸術っぽいのに、私がやると料理みたい。ついついゴマ擦りの気分で力を入れたら、見事に3本穂先が折れた・・...
部屋に入った美央は深い溜息を吐いた。そして奥にある自分の部屋に向かうと、そこでスマホを手に取り、ベッドに腰掛けた。着信履歴には柑菜から3件・・・いずれも30分以内にかけてきている。これを無視しても再び花沢に電話をかけてくるだけのこと・・・それならさっさと用件を済ませてしまおうと、リダイヤルをした。その電話はすぐに通話になり、聞こえて来たのは・・・『ちょっと!どうしてすぐに出なかったの?私からの電話なんだか...
「今日もお迎えが来るんですか?」業務終了後、龍崎さんがニヤリと笑って聞いてきた。その「お迎え」とは西門さんのことだろうけど、彼は2週間安静にしなきゃいけないからここには来ない。だけど、その事実を彼女に教える必要はないから「暫く来ないわよ」と言うと、見事に私を無視。自分のロッカーに向かって「面白くないなぁ~」なんて言いながらド派手な私服に着替えていた。「本当に来ないんですか~?」「来ないってば。私の...
次の日・・・一睡もしなかったつくしは、酷い顔で朝食の準備をしていた。顔色も悪く、目の下にはクマが出来ている。泣きすぎて瞼は腫れぼったく、身体が怠くて力が入らない・・・そんな感じだから頭が重く、本郷が起きて来て挨拶をしてもすぐには反応出来なかった。それに気が付いた本郷がキッチンに行くと・・・「つくしさん、どうしたの?」「えっ?あぁ・・・おはよう・・・」「・・・なに、その顔・・・悲惨だよ?」「あはは・・・やっぱり?あんまり寝...
「だって私、西門さんの事が気に入ったんですもの。絶対に手に入れます♪牧野さん、彼女じゃないんだし、問題ないですよね?私、男に関しては今まで失敗した事ないんで~~~♪」本当はすぐにでも言い返したかったけど、上手く言葉が出なかった。男に関しては失敗しかない私にとって、その自信は威力が有り過ぎる・・・だから不本意だけど、目を逸らせてしまった。「・・・そんな話は仕事中にしないでもらえる?早く座りなさいよ、今から研...
類たちが花沢邸に戻ったのは19時で、それから夕食だった。その時には頭にカチューシャを付けた真利愛が加代に抱きつき、加代はそれを見て「まぁ、可愛らしい」と大喜びだ。美央は買って来た菓子の土産を手渡し、玄関は一気に賑やかになったのだが・・・「美央、加代、悪いけど少し頭痛がするから部屋に戻る。真利愛と一緒に食べてやって」「まぁ、類様、大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・・・・」「ぱっぱ~~?」「少し休めば良くなるから...
牧野がお茶を入れてくれて、それから一緒に飯を食うことに。その重箱の中には小さめのおにぎり3個におかずが少々で、俺には丁度いい量だったが牧野は若干・・・いや、相当物足りないようだ。だから俺のおにぎりを1個分けてやると、「いやいや、怪我人はちゃんと食べないと!」と言いつつも受け取ってた。「俺はあんまり動かねぇから腹が空かないんだって」「え~~?!起きてるだけでお腹空くよ?」「お前、燃費の良い身体だもんな・...
3年ぶりに類を見たにも関わらず、つくしは無我夢中で3階に上がり、急いでエントランスから外に出た。そして後ろを振り向かずに車を停めた方向に向かって走り、暫くしたら交差点で信号に引っ掛かったので足を止めた。恐る恐る振り返る・・・でも追い掛けてくる人はいない。それにホッとして近くのビルの壁に凭れかかり、息を整えた。そこで類の姿を思い出し、涙が溢れてきた・・・・・・何も変わっていなかった。髪型も昔のままで、類が好...
まさか、私が鋏でちょん切った藤の花と白い花(姫林檎)が家元の宝物だったなんて・・・それを聞いて西門さんが焦っていた事に納得した。だけど今更何も言うなと言うから、それは黙っておくことに・・・申し訳なくて、家元の背中に向けて何度も謝った。その大事なお花、私の部屋で押し潰されておりますのでご安心を!!そして考三郎君は自分の部屋に戻り、家元もトボトボとご自分の部屋に向かう廊下へと・・・。西村事務長も事務所を閉めて...
キャラクター達がダンスしたり歌ったりする中、つくしはそれを無感情で見ていた。ステージが照らされているからその他は当然のように暗く、大勢の人達がいるが、そこには意識がいかない。ただ漫然とそのショーを眺め、全然違う事を考えていた。鞄の中のララのぬいぐるみ・・・それが真利愛に思えて仕方なかった。出来るならキキも取りたかった、と。ショーが終わりに近付いた頃、美来と真音はキャラクターに「バイバイ~~!」と手を...
「・・・・・・・・・・・・」「牧野、もう少し肩の力を抜け・・・逆に怖い」「・・・・・・・・・・・・」「おい、少し右に寄りすぎじゃねぇか?」「・・・・・・・・・・・・」「てか、どんだけゆっくり走ってんだよ。ヴァンキッシュが泣くぞ」「少し黙っててよ!!」今は21時10分、真っ赤なヴァンキッシュを運転してるのは私・・・そして10分前、やっとこさ都内に入ったところ。それは何故か・・・西門さんが防波堤から落ちて足を怪我したからだ。しかもかなり酷い捻挫...
美来がトイレから戻ってきた時、真音もその姿を見て本郷のところに向かった。そして4人揃って次に向かったのは・・・リトルツインスターズ・キキ&ララの世界を体験できるアトラクションだった。・・・キキとララ・・・12月24日生まれの双子の姉弟。そこに入ってキキとララを見ると、姉のララはピンクの髪にピンク色のスカート、頭には大きなリボンがあった。弟のキキは水色の髪でワンピースみたいな服を着ている。星の子というイメー...
「西門さん、小腹空かない~~?」「はぁ?お前、どんだけ食えばいいんだよ~~!」「きんづばは食べてないもん~」牧野の現金自動増殖祈願を済ませ、土産を買って車に乗った瞬間に言われたひと言。この時16時過ぎで、そろそろ東京に戻ろうと思ったのに・・・でも隣でずっと腹が空いたと訴えられるのも困るから、ネットで調べると・・・「おいもカフェ ってのがあるけど、どうする?」「おいもカフェ?!いくいく!!」「・・・んじゃ、ま...
「4階ってあんまり遊ぶところはないんだね」「1階と2階がメインみたい・・・そろそろ3階に降りる?」「・・・くすっ!」「えっ、なに?」「いや、つくしさんのカチューシャ、ホントに似合うと思って」「ーーーっ///!!」美来と真音がショップで色々見ている最中、その横でつくしと本郷はそんな会話をしていた。それを見る美来の目は、まるで年頃の女の子のよう・・・子供ながらに意味深な笑顔で父親を見上げていた。真音の方は母よりも...
鶴岡八幡宮でまさかのスイーツ♪それを食べ終わったら駐車場に向かうことになった。その時、さっきの花嫁さん達が何処かに帰っていくのを見掛け、再び足が止まった。すごく幸せそうな笑顔・・・誰かに声をかけられ、写真を撮ったりして。「そうだよね・・・普通はあんな顔になるよね」「なにがだ?」「花嫁さん・・・あんな風に笑うよね。だって幸せな日だもん・・・」「どうしたんだ、お前」「・・・私、記念写真も捨てちゃったけどさ・・・あんな顔...
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「勝手に熊にしたり星にされちゃたまんないわ💢女を何だと思ってんの?!」「その文句は俺に言うな、ゼウスに言ってくれ!」「だってさ~~~~・・・・・・はっ!」「どうした?」気が付いたら湯船にのんびり浸かって足を伸ばし、総二郎と肩がくっついた状態で夜空にクソ文句・・・真横を見たら麗しい顔が私を見てるし、ちょっと濡れた前髪が色っぽい。私はあれだけしっかり巻いてたバスタオルが緩んでて、身体が半分以上見えてる・・・「うわ...
それからも話合いは続き、「どうして真音の保育園が判ったのか」というつくしの疑問に入った。「俺が頼んだ情報屋が、偶然本郷って男の子どもが通う保育園に行って聞き込みをしたんだ。そこでつくしに見覚えがある人がいて、そこから保育士に接触したんだ」「あ・・・もしかしてひろみ先生?」「名前はよく覚えてないけど、その保育士が本郷を狙ってて・・・みたいな?その保育士から真音の保育園を聞いたんだ。でも真音がずっと休んでて...
総二郎が先に露天風呂に行ってから、私は1人でどうしようかとウロウロ・・・普通の旅館ならあるはずの脱衣場がないし、わざわざあそこまで行ってパンツを脱ぐのもヘン。それならテントの中で素っ裸になって、バスタオル巻いていく?そのタオル類が何処にあるかと探したら、部屋の隅にある棚に置いてあった。フェイスタオルにバスタオルも何枚か・・・「てか、それよりもシーツの替えが多いんだけど・・・どうしてだろう?」それは深く考えな...
この3年間の、類と真利愛の生活についての話は続いた。結婚式では総二郎、司、あきらも呼び、真利愛はすでに対面をしていること。そしてつくしの失踪は花沢家の仕組んだことであり、行方を捜しているということも話した、と。「そう言えば司がね・・・」「・・・道明寺・・・何か言ってた?」「ううん、特になにも・・・ただ真利愛を肩に乗っけて笑ってたよ、あいつ・・・」「えっ!真利愛があの人の肩に?!」「総二郎とあきらは花沢にすごく怒...
「はぁ~~~~~~!お腹いっぱい♪」「お前は飲まずに食ったからな・・・」もうバーベキューの網の上には焦げた野菜しかない。用意されていたお肉も殆どなくなり、総二郎は途中からビールばかり飲んでる。今はもうトングも置いてお皿に移したお肉をツマミに、すっかり暗くなった空を見上げ・・・・・・内心、これからどうするんだろう?ってドキドキしてた。しかもこのバーベキューテーブルのすぐ近くに露天風呂がある。嫌でも目に入るそれ...
西門邸・・・この広大な敷地を持つ屋敷は、正面から入ると美しい日本庭園に圧倒される。その庭にも色んな表情があり、竹林や梅園、桜の庭に紅葉の庭、そして石庭などもあって、その時期の茶会に相応しい庭を眺めながら茶会が出来るようになっていた。その中でも竹林に囲まれた庵・・・そこは躙り口のある本格的な茶室があり、特別な茶事にはそこを使うのだ。その反対側である北の庭は自然のままの庭があり、椿などの茶花となる花木が植え...
何とか予約したグランピングのフロントに到着・・・17時までって言われていたんだけど、そのギリギリの16時50分だった。私は運転席でぐったりしていたので、総二郎が元気よく手続きに行ってくれて、私達の泊まるテントの位置を聞いてくれた。「お待たせ~♪」「・・・すごい山の中だね~。車はどうすればいいの?」「ドームテントのすぐ近くまで行けば、そこに駐車場があるってさ」「了解・・・」「その場所聞いたんだけど、この道を左...
27日の夕方、類はいつものように執務室で仕事をしていた。その時に私用のスマホが鳴り、類はそれをチラッと見る。掛けてきたのは総二郎だ。当然そこには藤本もいたが、類はその電話に出ると「総二郎、どうかした?」と言った。その相手の名前で藤本が手を止め、類の方を見る・・・2日前の事があるので当然だろう。類はそれを見ないフリして席を立ち、窓の外に目を向けて話し始めた。これは「計画」の一部であり、前回のように類の...
もうすぐ5月という季節だから気温はぐんぐん上がってきた。だから着替えは嵩張らず、薄手の服に上着があれば大丈夫・・・?でも山の中だから寒いかも・・・と、なかなか持って行くものが決まらない。いや、昨日の夜に粗方決めてたんだけど、どうしても不安・・・必要ないのは可愛いワンピだって事ぐらいだ。「まぁ、いっか・・・国内だし、最悪どこかで買えば・・・」湯治の温泉だとかグランピングだとか言っても、場所は東北自動車道矢板ICを降...
キッチンで夕食をつくるつくし・・・その手にはスマホがあった。味噌汁を作りながら見ているのは真利愛の動画で、音を小さくして繰り返し見ていたのだ。子ども用ではない大きなベッドに寝かされている真利愛・・・そのベビー服は如何にも上質だとわかるもので、可愛らしいワンポイントの模様があるだけの真っ白なものだ。余計なフリルもリボンもない襟付きのロンパース・・・おそらくオーガニックコットンなのだろう。小さな手で顔を擦った...
とうとう来てしまったゴールデンウィーク初日・・・昨日の夜は目が冴えて眠れず、やっと寝たと思ったらもう朝だった。だから頭がぼんやりしちゃう・・・でも今日はそんな事言ってられない!だって再び5000万円のハンドルを握らなきゃいけないんだもん!僅かな傷だって許してくれないだろうから、ここは一発気合いを入れないと!!そしてその先は・・・・・・総二郎と山の中で1週間の監禁生活///!それがどんな感じなのかを想像したら頭が...
今日は通いの家政婦が来ているようで、無表情な女性が1人、せっせとテーブルに軽食を運んでいた。リビングには大きなクリスマスツリーがあり、壁にもクリスマスリース、窓辺にはポインセチアが並び、まるで12月のホテルロビーのような派手な飾り付けだ。そのクリスマスツリーはゴールドのライトが光るだけの大人っぽいもので、瑛翔も冷めた性格なのか感心はなさそうだ。真利愛は美央に後ろに隠れ、無言でこの部屋を見回している...
野田の話が気になり、俺はつくしの部屋に向かった。花と木(それとエロ本)にしか興味のない野田にも判ったぐらいの高嶋の態度・・・はやり何か企んでるな?と思ったから。「つくし、入るぞ~」そう言ってドアを開けたが・・・・・・そこにつくしの姿はなかった。でも鞄はあるし、着ていた服も脱いである。それに部屋の隅には小さなスーツケースが広げられていて、そこにはカラフルな下着が山ほど置いてあった。・・・なるほど、これがグランピ...
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...
3人は長い廊下を速歩で進み、本邸のとある部屋の前に行くと、そこには3人の黒服の男がいた。総二郎は中国語で話し掛け、相手の方が態度が大きく、どちらかと言うと総二郎の方が低姿勢に見えた。当然類も中国語で挨拶しているが、その様子は和やかではなく緊張感が漂っていた。藤本の眉間には皺がより、ゴクリと喉を鳴らした。花沢物産の秘書課に配属されるのであれば英語が話せるのは当然だ。だがそれ以外の外国語を使いこなせる...
「牧野さん、12時になったから休憩したら?」「あ、は~~~い」秘書室の会議室で、今日も朝から秘書検定の勉強中・・・そんな私に佐藤さんが声を掛けてくれたから、ゆっくり立ち上がってフロアに戻った。そこに居たのは極僅かな男性の先輩達・・・安藤さん達は全員お出掛けで助かった。「・・・はぁ・・・」「あれ?牧野さん、顔色悪いけど大丈夫?」「あはは・・・ずっと文字を見てたら疲れちゃって」「そうだよね~、午後からは書類整理、頼...
美術館から出ると、俺達は真っ直ぐ駐車場に向かうはずだった。だが、ここで急に伽耶が駅の中にあるショッピングセンターに寄りたいと言いだし、そっちに足を向けた。「申し訳ありません、総二郎様。ちょうどそこに母が好きなお店があって、かや織のストールを母の日にプレゼントしようと思いまして・・・」「いえ、構いませんよ。かや織ですか・・・夏にはいいでしょうね」「あら、ご存じなのですか?」「えぇ、向こう側が透けるほど薄い...
牧野はお婆様の部屋のあちこちを調べ始めた。机の引き出し、本棚の中、チェストの引き出し・・・もちろん俺に断わってからだけど、そこを開けては「何もないなぁ~」と。それは当たり前。今、牧野が調べた所は俺だって見てる。しかも引き出しを開けるための鍵の在処を教えてくれるのが宝石達・・・だからお婆様の宝物がこの部屋から簡単に出てくるはずがない。そう言うと、「ですよね~~」と苦笑いしてた。「ドラマとか映画でよくあるじ...
今日は汗ばむほどの陽気・・・少し歩いただけで汗が滲む。日傘を持ってくれば良かったな、と片手で顔を隠しながら歩いた。そして動物園の西側に入ってすぐ、子ども連れの人達中心に沢山集まっていたのはパンダの展示。とても近づけないので苦笑いして通過し、少し早いけど休憩所に向かった。そこは藤棚があって、その下には既に沢山の人が・・・でも丁度2人なら座れるスペースを見付けて、葛城さんがそこを取ってくれた。私も汗を拭いな...
お肉料理までとにかく散々な目に遭った。私の前のテーブルクロスだけ汚れがすごい・・・そして花沢さんのお皿は見事に綺麗。お手本と言われたけど、彼を見る暇はあんまりなかった・・・と言うか、肝心な時にこの人はさっさと食べてた。私のペースに合わせて食べてって加代さんも言ってたのに💢「それでは牧野様、これが最後ですわ。デザートと珈琲でございます」「うわぁ、美味しそう♥」「おほほほほほ、ちゃんとしたお席では嬉しくても叫...
駅前の駐車場に車を入れたら、私達は並んで動物園までの道を歩いた。開園は9時半だけど、私達が着いたのはその15分前・・・でも、もう沢山の人が並んでた。それを待つ間も葛城さんが重たい鞄を持ってくれて、逆に私は申し訳なくて・・・でも、この人は嬉しそうに「このぐらい軽いって」と笑ってくれた。こんな人混み・・・恋人なら腕ぐらい持つのかもしれないけど、私にはそれがまだ出来なくて・・・勇気を出して掴んだとしても、その先に進...
加代さんって人がにこやかに「お料理はもう出来上がっておりますからね」と言い、花沢さんは固まってる私に「前にも話しただろ?テーブルマナーだよ」と・・・いやいやいや!テーブルマナーって!今度のパーティーは立食って言ったじゃん!!「花沢さん?!私が勉強していたのは立食のマナーで・・・」「あぁ、それも今度やるよ。でもマナーの基本はテーブルだろ。だから初めにそっちからね」「類様から聞いております。牧野様は今までそ...
28日は月末近くて大忙しだった。勤務を終えたのは21時で、それから急いでマンションに戻った。でも部屋には入らずに車に乗り込み、すぐに向かったのは深夜まで開いてる近所のスーパー。そこで残り少ない食材の中から、お弁当に出来そうな物を買い込み、帰宅したのはもう23時だった。「まぁ、仕方ないよね・・・手の込んだ物は作れないけど、葛城さんなら許してくれるかな・・・」お風呂の準備をした後でお弁当の下拵えをして、それ...
一体この会社に何をしに来てるのやら・・・・・・そんな疑問をゴクンと飲み込んで、今日も業務終了。秘書課の仕事なんてほぼしてないんだけど、指導係が藤本さんだからなのか、みんな何も言わない。それに最近はお姉様達も忙しそうで、私に嫌がらせなんてしてこない。3月末が決算で、4月からは新しい年度・・・その関係で本部長さん達も忙しいみたい。上司が忙しいと当然秘書も忙しくなり、常務が長期出張だから安藤さんも居ないし・・・って...
「よかったら明後日の29日、私にお付き合いくださいませんか?」思い詰めたような表情の伽耶がそう言って、両手を胸の前で組んで震わせていた。それが演技なのか、それともマジなのか・・・・・・普段から俺を困らせるような態度をとったりしない人だから、それは後者の方だと思ってやりたいが・・・「29日ですか?」「はい・・・その日だけでいいです。総二郎様とお出掛けしたくて・・・」「出掛けるとは・・・何処へ?」「何処でも・・・ドライブ...
1週間が過ぎて3月の後半・・・私は先輩達に頼まれた雑用の時以外は会議室に籠もってひたすらパーティーマナーの勉強と、秘書検定3級の勉強をしていた。まさか、こんなにも覚えなきゃいけない事があるとは・・・しかも会社の業務って言うより、一般常識とかマナーの動画研修ってどうなの?と思いながらも画面の中の料理に釘付け♪そうは言ってもこれでお給料をもらうんだから仕方がない。単語の意味から調べなきゃいけない分野だけど、...
牧野と再会してから半月が経った。電話番号を交換したからと言ってお互いに電話をかけるわけでもなく、時々LINEで『どうしてるんだ?』と聞くと、それなりに返信があるぐらいだ。その文面からは俺に対する警戒心も感じられないし、数年前に戻ったかのよう・・・時々文字を打ち間違えて送ってくるから、相変わらずドジなんだと思えて笑った。『今度一緒にご飯食べようよ』とか送ってくるけど、それの計画を立てたことはない。『お前の...
「はぁ~~~~~!やっぱり美味しい~~♥」花沢さんが持って来てくれた社食の特上日替わりランチ(夜に食べたけど)、冷めてても十分に美味しくて大満足!藤本さんは「昼にも食べたのに」って呆れていたけど、それでも涙が出そうなぐらい美味しかったんだもん♪花沢さんと出会ってから、毎日御馳走食べてるから、ホントに嬉しくて・・・もしかしたら3㎏ぐらい太ったかも!?なんて1人で喜んでるけど、花沢さん達にもちゃんとご飯を...
『・・・・・・・・・・・・ったな・・・・・・・・・野・・・』会社のみんなと飲み会に行く途中、私の後ろから聞き覚えのある声がした。自分の名前を呼ばれたと思ったから振り向いたんだけど、そこには沢山の人がいるだけで声の主が見えない・・・しかも、この人達は全員グレーの影だけで顔が見えない。そうしているうちに私の前を歩いてる人がサーッと移動して、その向こうに唯一色の付いた人が・・・・・・その独特なシルエットに胸がトクンと鳴った。私は小さな...
甘く見ていた秘書検定3級・・・パソコンで過去問やってみたけど、結構間違えた。秘書検定は社会人に欠かせない能力が身についていることの証明・・・らしい。試験に合格すると、秘書に求められる知識・技能、一般常識、敬語の使い方、電話応対やビジネス文書の作成等の能力が身についていると見做されるっていうけど、就職に有利なのは2級からで、3級を受験するのは大半が高校生・専門生・・・らしい。その学生中心で受ける3級の合格率...
タクシーはM町に向けて静かに走り出した。牧野は初めに比べて随分表情が柔らかくなり、言葉も増えた。それは俺に会って謝る事が出来たからなのか・・・こいつの胸のうちは判らねぇけど、ホッとしたように口元を緩ませてた。再会したときのようなピリピリとした緊張感もなく、俺から遠離る仕草もない。俺は牧野の方にある自分の腕が疼くのを感じながら、そいつが暴走しないように反対の手で押さえた。「あぁ、そうだ。お前、今の電話番...
結局ひとつ余ってしまった社食のランチ・・・どうするのかな~と思って眺めていたら、それを藤本さんが持ち上げた瞬間に目が合った。思わず視線を逸らしたけど、そのあとで言われたのが・・・「牧野さん、これ、晩ご飯にしますか?」「はいっ!いただきます!!」「・・・・・・・・・ぷっ・・・」「花沢さん、今笑いました?」「いや、そんな事はない。午後の仕事に取り掛かろうか」「牧野さん、会社では専務と呼んでいただけませんか?」「あっ!そ...
自分では説明は出来ないと言い、俺に質問しろという・・・1度は目を合わせたが、牧野はすぐに何もない部屋の壁に視線を移した。心底困ったという顔・・・まるで俺が悪人のような気分にさえなった。それでもこの機会を逃したら、またこいつが居なくなるような気がして・・・まずは現在の住所を聞いた。それは都心のM町だと言い、ワンルームマンションを借りていると。ワンルームなら1人暮らしか・・・と何故かホッとする俺。携帯の番号を変えた...
<side藤本>牧野さんが大発見とか言うから、今日もこの応接室でランチ・・・毎日こんな事は出来ないのにと思うものの、その大発見が気になって、専務の指示で社食に日替わりを注文。つい、調子に乗って「特上」にしてしまったが、それが届いていつでも食べられるようにしていたら、牧野さんがノックしてきた。廊下で待ってると誰かに見付かるリスクが高いと思い、すぐに開けると彼女は大荷物を抱えて入って来た。「役員フロアの受付...
「お~~~~~~い、俺の事を忘れてないか?」「あ?あぁ、完全に忘れてたわ」俺の後ろで書道家の友人が叫ぶ・・・でも、そいつもすぐに何かを察したのか、苦笑いしながら「んじゃ、俺は帰るわ」と言って踵を返した。俺もその背中に手を振って、「また飲もうぜ」というと、ヒラヒラと手を振られた。そのあと再び牧野の方に顔を向けると、こいつはバツが悪そうに下を向いてやがった。ゆっくりそこに近付くと、何故かこいつの身体が逃...