役所の時間外受付窓口に離婚届を提出し、3人で田園調布のマンションに戻ったのは18時過ぎ・・・すでに疲れを見せている一颯を俺が抱っこして部屋に入ったが、その時も特に嫌がる様子はなかった。夕食は途中に買ったからつくしが準備する必要はなく、一颯を降ろすとすぐにそれらをテーブルに並べた。俺がグラスを出し、買ってきたお茶をつくしがそれに注いでいたが、一颯は黙ったまま母親の服を掴んで離さない・・・時々振り向いてだれ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
何とか予約したグランピングのフロントに到着・・・17時までって言われていたんだけど、そのギリギリの16時50分だった。私は運転席でぐったりしていたので、総二郎が元気よく手続きに行ってくれて、私達の泊まるテントの位置を聞いてくれた。「お待たせ~♪」「・・・すごい山の中だね~。車はどうすればいいの?」「ドームテントのすぐ近くまで行けば、そこに駐車場があるってさ」「了解・・・」「その場所聞いたんだけど、この道を左...
27日の夕方、類はいつものように執務室で仕事をしていた。その時に私用のスマホが鳴り、類はそれをチラッと見る。掛けてきたのは総二郎だ。当然そこには藤本もいたが、類はその電話に出ると「総二郎、どうかした?」と言った。その相手の名前で藤本が手を止め、類の方を見る・・・2日前の事があるので当然だろう。類はそれを見ないフリして席を立ち、窓の外に目を向けて話し始めた。これは「計画」の一部であり、前回のように類の...
もうすぐ5月という季節だから気温はぐんぐん上がってきた。だから着替えは嵩張らず、薄手の服に上着があれば大丈夫・・・?でも山の中だから寒いかも・・・と、なかなか持って行くものが決まらない。いや、昨日の夜に粗方決めてたんだけど、どうしても不安・・・必要ないのは可愛いワンピだって事ぐらいだ。「まぁ、いっか・・・国内だし、最悪どこかで買えば・・・」湯治の温泉だとかグランピングだとか言っても、場所は東北自動車道矢板ICを降...
キッチンで夕食をつくるつくし・・・その手にはスマホがあった。味噌汁を作りながら見ているのは真利愛の動画で、音を小さくして繰り返し見ていたのだ。子ども用ではない大きなベッドに寝かされている真利愛・・・そのベビー服は如何にも上質だとわかるもので、可愛らしいワンポイントの模様があるだけの真っ白なものだ。余計なフリルもリボンもない襟付きのロンパース・・・おそらくオーガニックコットンなのだろう。小さな手で顔を擦った...
とうとう来てしまったゴールデンウィーク初日・・・昨日の夜は目が冴えて眠れず、やっと寝たと思ったらもう朝だった。だから頭がぼんやりしちゃう・・・でも今日はそんな事言ってられない!だって再び5000万円のハンドルを握らなきゃいけないんだもん!僅かな傷だって許してくれないだろうから、ここは一発気合いを入れないと!!そしてその先は・・・・・・総二郎と山の中で1週間の監禁生活///!それがどんな感じなのかを想像したら頭が...
今日は通いの家政婦が来ているようで、無表情な女性が1人、せっせとテーブルに軽食を運んでいた。リビングには大きなクリスマスツリーがあり、壁にもクリスマスリース、窓辺にはポインセチアが並び、まるで12月のホテルロビーのような派手な飾り付けだ。そのクリスマスツリーはゴールドのライトが光るだけの大人っぽいもので、瑛翔も冷めた性格なのか感心はなさそうだ。真利愛は美央に後ろに隠れ、無言でこの部屋を見回している...
野田の話が気になり、俺はつくしの部屋に向かった。花と木(それとエロ本)にしか興味のない野田にも判ったぐらいの高嶋の態度・・・はやり何か企んでるな?と思ったから。「つくし、入るぞ~」そう言ってドアを開けたが・・・・・・そこにつくしの姿はなかった。でも鞄はあるし、着ていた服も脱いである。それに部屋の隅には小さなスーツケースが広げられていて、そこにはカラフルな下着が山ほど置いてあった。・・・なるほど、これがグランピ...
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...
3人は長い廊下を速歩で進み、本邸のとある部屋の前に行くと、そこには3人の黒服の男がいた。総二郎は中国語で話し掛け、相手の方が態度が大きく、どちらかと言うと総二郎の方が低姿勢に見えた。当然類も中国語で挨拶しているが、その様子は和やかではなく緊張感が漂っていた。藤本の眉間には皺がより、ゴクリと喉を鳴らした。花沢物産の秘書課に配属されるのであれば英語が話せるのは当然だ。だがそれ以外の外国語を使いこなせる...
居酒屋・福ちゃんの宴会場・・・私は一般のお客さんが座る席を背中側にして、隣は高嶋さんだった。その反対側はあまり話さない家電課の野口さんと言うおじさんで、向かい側には量販課の小山君。この人もそんなに話すわけじゃないから、どうにも会話が続かない・・・。所長と部長相手に話すこともなく、1人で食べてる感じだったんだけど・・・「牧野さん、お酒あんまり飲まないんですね~」「敬語はやめてくださいよ~、高嶋さんの方が歳上...
真音と真利愛の誕生日の翌日。類はいつもより静かに目覚めた。隣には真利愛がスヤスヤと寝ており、それをずっと眺めていた。今日は総二郎と計画をしたことを実行する日。上手くいけば、今日こそ・・・・・・そんな事を思いながら真利愛の髪を撫でると、愛娘は薄らと目を開けた。「・・・・・・ぱっぱ?」「おはよう、真利愛」「・・・・・・ふあぁ~~~~~!ママはぁ?」「もう起きてるだろうから行ってみたら?」「あいっ!!」真利愛はムクッと起...
「おっはようございま~~~~す♪」「・・・・・・おはよう、つくし」「今日はまたすんごいテンション高いね、牧野さん・・・」「・・・・・・・・・・・・」←麻衣更衣室に入ったら涼子達にヘンな目で見られたけど、気にしな~~い♪♪ついでに龍崎さんもいたけど、その隣に行くと超ご機嫌に「今日も頑張ろうね!」って言うと、「なんだ、もう諦めたんですか?張り合いないですねぇ~~」、だって。そんな言葉なんてどうでもよくて、私は彼女を無視して涼...
「みぃちゃパパ、いつできる~?」「・・・もう少し待って、真音・・・案外難しいんだよ。美来、説明書取ってくれる?」「は~~~い、どうぞ!」つくしが夕飯の御馳走を作っているとき、リビングでは真音のおもちゃが組み立てられていた。本郷は背中を丸くして説明書とプラスチックの部品を持ち、「え~~と・・・」と悩んでいる。その横では待ちきれない真音が電車を持って床の上を滑らし、美来は父親の手伝いをする気満々だ。つくしは時...
翌朝、アラームの音と同時に目が覚めた。と言うか・・・殆ど寝られなかった///。「お、起きなきゃ・・・」今日も西門さん・・・総二郎のところに朝食を持っていかないといけない。昨日、あんな事があったからすごく気不味いんだけど・・・でも心の何処かでワクワクドキドキしていた。「可愛い下着にしなきゃ・・・」いやいやいや、今は何も起こらないって!だって仕事に行くんだもん、なにも可愛い下着じゃなくても・・・と言いながら何気にチェック...
「「「まぁ君、お誕生日、おめでとう~~~!!」」」「うわぁ~~~い、ありがと~~♪」町田のマンションでは真音の誕生日会が始まった。まずは食事で、つくしの作った料理が並べられている。中央にはケーキ型の寿司が置かれ、それには本郷も美来も驚いていた。それにおかずも豪華に飾り付けられ、真音は手を叩いて喜んだ。「それがね、作ってたら和洋中みたいになって・・・お寿司なのに中華スープだし、ハンバーグに唐揚げって・・・...
唇が離れた瞬間・・・私は何が起きたのかさっぱり判んなかった。でも目の前には西門さんが笑ってるし、まだ身体はホールドされてるし・・・・・・でも意識が戻った瞬間、「ちょっとーーーーっ///!!何すんのよーーーっ!!」「えっ?!そんな反応かよ💢!!」「言葉よりも先に行動なんてズルいーーーっ!!」「いや、お前の返事がトロいからだろうが!!その前に静かにしろ!お袋が飛んでくるぞ?」「ーーーーーーっ!!」私が両手で口を押...
11時20分・・・そろそろ黒田夫妻と瑛翔が来る時間になった。類は面倒くさそうというよりも無関心といった感じで、どうせ数時間経てば終わることだ、ぐらいの感覚だ。が、美央の方はどんどん緊張が増していく。その表情が強張っており、類もそれには気がついていた。だが今更中止というわけにもいかず、美央に何かを話し掛けても「大丈夫」という言葉しか返って来ないのも判っている。「そろそろ降りようか・・・」「え?えぇ・・・そう...
お稽古が終わって、このままお互いの部屋に戻るんだと思ったのに・・・何故か西門さんが私の部屋に来たので吃驚。でもここは西門さんの家なので、「入るな」とは言えない。もう21時過ぎてるし、こんな事は初めてと言うか・・・いつも分かれ道(廊下)でバイバイするのに、今日はいいのかな?と思っていたら、彼の方が先に部屋の中に入った。しかも極自然に・・・・・・居候とは言え、一応女の子の部屋ですが?!「えっと・・・何か忘れ物?」「...
12月24日になった。今日は真利愛と真音の誕生日・・・つくし達と花沢家では、それぞれ祝いの準備が進んでいた。「おはよう~、真音!お誕生日、おめでとう~~~!」「うんっ!ぼく、3さい~~~♪」「真音、おめでとう」「まぁ君、おたんじょうびおめでとう~~~~!あとでプレゼント、あげるからね~」朝1番、つくし達は真音に祝いの言葉をかけた。それから普通に朝食を食べたが、つくしはすぐに昼と夜の御馳走の準備に取り掛...
冷め過ぎたお弁当はあんまり美味しくない。でもお腹が空いていたからゆっくり食べて・・・その時に西門さんが立ち上がって、ここのミニキッチンでお茶を入れてくれた。その湯呑みを受け取り、彼もひと口・・・私達は部屋の真ん中のラグに座り、西門さんは胡座かいて真剣な顔してた。ホントに悲しそうでも辛そうでもない。そして、今度は聞いてもないのに自分の結婚が決まった時の事を教えてくれた。西門さんの婚約話は今から1年半前で、...
23日の土曜日・・・明日は真音の誕生日なのでその為のパーティーをする予定だ。だが美来が昨日から風邪気味なので、本郷が午前中に病院に連れて行き、つくしと真音は留守番。そして午後にはつくし1人が買い物に行くことになった。それに本郷にはつくしの部屋に置くユニット家具を組み立てるという仕事があったので、子ども達と家に居ることにしたのだ。「拓篤さん、ホントにごめんね。そのタンス、なかなか組み立てが難しくて・・・」...
「牧野様、お帰りなさいませ~~~~」「・・・志乃さん、ただいまです・・・」「どうなさったのです?お顔の色が悪うございますけど」「・・・ははは、なんでもありません。あの、ごめんなさい・・・今日のお弁当、食べられなくて・・・」「えっ?!」「ホントにごめんなさい・・・」鞄の中からお弁当箱を出して志乃さんにそう言うと、この人は目がテン・・・でもこれを夕ご飯にしても大丈夫だと思い、「部屋で食べますから」って言うと、そのお弁当箱...
類は浦田からのメールを見て黙り込んだ。町田市相原のマンション、そこの607号室・・・そしてその前に送られていた画像にも気が付き、美央に見えないところでそれを開いた。保育園の門から出てくるつくしと真音と女の子、そして真音をチャイルドシートに座らせている場面、つくしが運転席に乗り込む時にははっきりとその顔が見えた。別れた時は出産直後だったため、つくしは少しふっくらしていたし、身体も元には戻っていなかった...
本日17時過ぎ・・・私がお仕事をしていましたら、突然LINEが♪と。開いてみると、なんと空色様からのお話がっ!!あなたは類つくじゃなかったのか?!やっぱり隠れ総つく、いやいや、もう立派な総つくじゃないかっ(笑)!!とは言え、送っていただいたからには公開するしかないっ!ってことで、空色様のお話をどうぞ~~~♥◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆頑張れ!アレクサ 総二郎Ver.桜の盛りは思いの外短い。開花宣言から1週間程...
「西門さんって奥さんがいたんですね♪あ、ご心配なく~、今は独身だそうですよ?牧野さんと一緒ですね!」・・・・・・えっ?今、なんて・・・・・・奥さんって・・・・・・誰のこと?「何処かのお嬢様だったみたいですけど、どうして離婚したんですかねぇ?牧野さん、その理由を聞いてきて下さいよ~~~♪私、彼を狙ってるんで参考にしたいんですけどぉ~!」・・・何処かのお嬢様?離婚の理由って・・・そんなの言われても・・・・・・だって、私何も聞いてな・・...
木曜日、浦田は朝早くに本郷のマンション近くに来ていた。車は近くのパーキングに止め、マンションが見える喫茶店での朝食・・・そして監視しているのは当然マンションの入り口で、手にはカメラを持っていた。浦田は類に報告したあと、昨夜のうちにマンションに入り下調べをしていた。幸か不幸か、このマンションはかなり古かったためにオートロックではない。だから住人以外も出入り自由だったし、監視カメラも入り口に1台設置され...
<side龍崎麻衣>「ここか・・・・・・すんごい古臭い家だなぁ!てか、どんだけ長いの、この塀!しかも中が全然見えないし!」ネットで調べたら出て来た「茶道・西門流」。わざわざ仮病使って会社を休み、その住所に来てみたんだけど、どう見ても武家屋敷・・・クソ長い白い壁に囲まれてて、デッカい木の門がある。塀の向こうには松の木があるのは見えるけど、家なんて全然見えない。人の声も聞こえないし、何と静かな・・・と言うか、不気味な...
水曜日、つくしはすっかり元通りになった。昨夜から真音もつくしの部屋で寝ており、風邪もうつらなかった様子・・・それにはつくしが1番ホッとしていた。次の日曜日は真音の誕生日のお祝いだし、その時に熱を出してしまったら可哀想だから。「今日は今度働く会社に行って、入社に関する書類とかもらってくるの」「そうなんだ・・・初出勤が年明けって不思議な感じがするよね」「ふふっ、初めましてよりも先に、明けましておめでとうござ...
「なんだって?!龍崎さんが休んだぁ~~~っ?!」「つくし・・・声がデカい」「牧野さん、落ち着いて・・・」次の日、会社に行ったら涼子に言われたひと言・・・朝1番に当番で来ていた子が、かかってきた電話をとると龍崎さんが元気な声で・・・『あ、すみませ~~~ん!今日、お腹が痛くて立てないので会社休みま~~す!』と言ったそう・・・。当番の子が「病院に行ってね」と言ったらしいが、それを言い終わる前に電話を切られたとか・・・あの...
火曜日の午後、今日も真利愛は冷たい風を気にもせず、庭で若い使用人相手に遊んでいた。その様子をリビングから見ていた加代と美央が「子どもは元気ですよね~」とか、「恵子さんの方が風邪引かないかしら」などと話し合いながらティータイムを楽しんでいた。本来加代は使用人なので主家のお茶になど付き合わないのだが、美央が1人だと飲みにくいとのことで、時々一緒にその時間を過ごすことがあった。「美央様、24日ですけれど...
なんだか1日中私に敵対心ぶつけてきた龍崎さん・・・一体なんでそんなに悪態つくの?って疑問だけど、イチイチ聞くのも面倒臭い。教育係も2ヶ月間だし、それが過ぎれば普通の先輩後輩で、私の責任も軽くなるってもんだし。それまで辞めずに頑張るかさえもわかんない子だったから、気にしないようにした。それよりも今日もお稽古だろうか・・・とブツブツ言いながら着替えていた。当然その横には龍崎さんもいて、彼女は私を無視して背中...
15時30分になったら本郷は車のキーを持ち、「迎えに行くね」とつくしの部屋を覗いた。その頃のつくしは熱が引き、身体は幾分楽になっていたので玄関まで見送りに行き、買い物の追加も頼んだ。本郷はそのメモを持ち、戯けたような笑顔で「任せて」と言ってドアを閉める・・・それは何度も謝るつくしを気遣ってのことだろう。そして保育園に着くと美来が「パパ~!」と大喜びで出て来たが、真音はションボリしたままだ。それについ...
<side龍崎麻衣>「はぁ・・・・・・ダルい。こんなつまんない会社、入るんじゃなかった!」まだまだ火曜だってのに会社に行きたくなくてどんより・・・。でも給料ないと遊ぶことも出来ないから、仕方なく起き上がってメイクした。それから昨日買っといた菓子パン食べて、今日の服を選んで・・・「西門さんが迎えに来ないって言ってたから、普通の服でいっか!今日は里奈でも誘って、渋谷に飲みに行こ~~~っと!」それにしても牧野つくしぐら...
この日、浦田は類から依頼されたことを実行するため、自分のアパートで策を練っていた。会社名は判っている。が、関東には松田商事の支店や店は数多く、出向いて調べるのは効率が悪い。しかも防犯カメラに映るのは後々面倒だし、不審者としてマークされる可能性もある。そうなると電話になるが、本郷拓篤を探す理由として、不審に思われないためには・・・「・・・ダメ元でやってみるか」そう呟くと松田商事の本社に電話をかけた。その時...
グランピング・・・・・・豪華なキャンプなんて全然想像出来ないけど、西門さんが異様に張り切ってるから行く事にした。しかもキャンプ道具が要らないからって、車はヴァンキッシュ。この車を運転するのは西門さんOnlyだったはずなのに、この前私が運転したから「もう大丈夫だろう」って。再び5000万円のハンドルを握るのかと思ったら恐怖しかないけど、丁度高嶋さんから御守りももらったばかりだし?これは行ってみるしかないかも!...
「ただいま~!あぁ、寒かった~」本郷がマンションのドアを開けたのは20時30分。玄関で靴を脱いだ瞬間、奥のリビングからバタバタと走ってきたのは子ども達だ。そして出て来た言葉が・・・「パパ!早く来て!」「ママがね、ママがね!」「えっ?どうしたの、2人とも・・・」「いいから早く!つくしママが大変なの!」「うあああぁ~~~ん!」「・・・っ?!」真音が泣くのを見て慌てた本郷がリビングに入ったが、そこにはつくしの姿...
茶筅・・・クルクル回すだけの物だと思ったのに、まさかの5万円。お茶会で使う物は新品だって言うから、その都度5万がクルクルするのかと思ったら私の方がクラクラしそうだった。しかもこれまでカルチャーセンターで2~3回やった時には見様見真似で気にしてなかったのに、それに手順があるなんて・・・しかも西門さんがやると芸術っぽいのに、私がやると料理みたい。ついついゴマ擦りの気分で力を入れたら、見事に3本穂先が折れた・・...
部屋に入った美央は深い溜息を吐いた。そして奥にある自分の部屋に向かうと、そこでスマホを手に取り、ベッドに腰掛けた。着信履歴には柑菜から3件・・・いずれも30分以内にかけてきている。これを無視しても再び花沢に電話をかけてくるだけのこと・・・それならさっさと用件を済ませてしまおうと、リダイヤルをした。その電話はすぐに通話になり、聞こえて来たのは・・・『ちょっと!どうしてすぐに出なかったの?私からの電話なんだか...
「今日もお迎えが来るんですか?」業務終了後、龍崎さんがニヤリと笑って聞いてきた。その「お迎え」とは西門さんのことだろうけど、彼は2週間安静にしなきゃいけないからここには来ない。だけど、その事実を彼女に教える必要はないから「暫く来ないわよ」と言うと、見事に私を無視。自分のロッカーに向かって「面白くないなぁ~」なんて言いながらド派手な私服に着替えていた。「本当に来ないんですか~?」「来ないってば。私の...
次の日・・・一睡もしなかったつくしは、酷い顔で朝食の準備をしていた。顔色も悪く、目の下にはクマが出来ている。泣きすぎて瞼は腫れぼったく、身体が怠くて力が入らない・・・そんな感じだから頭が重く、本郷が起きて来て挨拶をしてもすぐには反応出来なかった。それに気が付いた本郷がキッチンに行くと・・・「つくしさん、どうしたの?」「えっ?あぁ・・・おはよう・・・」「・・・なに、その顔・・・悲惨だよ?」「あはは・・・やっぱり?あんまり寝...
「だって私、西門さんの事が気に入ったんですもの。絶対に手に入れます♪牧野さん、彼女じゃないんだし、問題ないですよね?私、男に関しては今まで失敗した事ないんで~~~♪」本当はすぐにでも言い返したかったけど、上手く言葉が出なかった。男に関しては失敗しかない私にとって、その自信は威力が有り過ぎる・・・だから不本意だけど、目を逸らせてしまった。「・・・そんな話は仕事中にしないでもらえる?早く座りなさいよ、今から研...
類たちが花沢邸に戻ったのは19時で、それから夕食だった。その時には頭にカチューシャを付けた真利愛が加代に抱きつき、加代はそれを見て「まぁ、可愛らしい」と大喜びだ。美央は買って来た菓子の土産を手渡し、玄関は一気に賑やかになったのだが・・・「美央、加代、悪いけど少し頭痛がするから部屋に戻る。真利愛と一緒に食べてやって」「まぁ、類様、大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・・・・」「ぱっぱ~~?」「少し休めば良くなるから...
牧野がお茶を入れてくれて、それから一緒に飯を食うことに。その重箱の中には小さめのおにぎり3個におかずが少々で、俺には丁度いい量だったが牧野は若干・・・いや、相当物足りないようだ。だから俺のおにぎりを1個分けてやると、「いやいや、怪我人はちゃんと食べないと!」と言いつつも受け取ってた。「俺はあんまり動かねぇから腹が空かないんだって」「え~~?!起きてるだけでお腹空くよ?」「お前、燃費の良い身体だもんな・...
3年ぶりに類を見たにも関わらず、つくしは無我夢中で3階に上がり、急いでエントランスから外に出た。そして後ろを振り向かずに車を停めた方向に向かって走り、暫くしたら交差点で信号に引っ掛かったので足を止めた。恐る恐る振り返る・・・でも追い掛けてくる人はいない。それにホッとして近くのビルの壁に凭れかかり、息を整えた。そこで類の姿を思い出し、涙が溢れてきた・・・・・・何も変わっていなかった。髪型も昔のままで、類が好...
まさか、私が鋏でちょん切った藤の花と白い花(姫林檎)が家元の宝物だったなんて・・・それを聞いて西門さんが焦っていた事に納得した。だけど今更何も言うなと言うから、それは黙っておくことに・・・申し訳なくて、家元の背中に向けて何度も謝った。その大事なお花、私の部屋で押し潰されておりますのでご安心を!!そして考三郎君は自分の部屋に戻り、家元もトボトボとご自分の部屋に向かう廊下へと・・・。西村事務長も事務所を閉めて...
キャラクター達がダンスしたり歌ったりする中、つくしはそれを無感情で見ていた。ステージが照らされているからその他は当然のように暗く、大勢の人達がいるが、そこには意識がいかない。ただ漫然とそのショーを眺め、全然違う事を考えていた。鞄の中のララのぬいぐるみ・・・それが真利愛に思えて仕方なかった。出来るならキキも取りたかった、と。ショーが終わりに近付いた頃、美来と真音はキャラクターに「バイバイ~~!」と手を...
「・・・・・・・・・・・・」「牧野、もう少し肩の力を抜け・・・逆に怖い」「・・・・・・・・・・・・」「おい、少し右に寄りすぎじゃねぇか?」「・・・・・・・・・・・・」「てか、どんだけゆっくり走ってんだよ。ヴァンキッシュが泣くぞ」「少し黙っててよ!!」今は21時10分、真っ赤なヴァンキッシュを運転してるのは私・・・そして10分前、やっとこさ都内に入ったところ。それは何故か・・・西門さんが防波堤から落ちて足を怪我したからだ。しかもかなり酷い捻挫...
美来がトイレから戻ってきた時、真音もその姿を見て本郷のところに向かった。そして4人揃って次に向かったのは・・・リトルツインスターズ・キキ&ララの世界を体験できるアトラクションだった。・・・キキとララ・・・12月24日生まれの双子の姉弟。そこに入ってキキとララを見ると、姉のララはピンクの髪にピンク色のスカート、頭には大きなリボンがあった。弟のキキは水色の髪でワンピースみたいな服を着ている。星の子というイメー...
「西門さん、小腹空かない~~?」「はぁ?お前、どんだけ食えばいいんだよ~~!」「きんづばは食べてないもん~」牧野の現金自動増殖祈願を済ませ、土産を買って車に乗った瞬間に言われたひと言。この時16時過ぎで、そろそろ東京に戻ろうと思ったのに・・・でも隣でずっと腹が空いたと訴えられるのも困るから、ネットで調べると・・・「おいもカフェ ってのがあるけど、どうする?」「おいもカフェ?!いくいく!!」「・・・んじゃ、ま...
「4階ってあんまり遊ぶところはないんだね」「1階と2階がメインみたい・・・そろそろ3階に降りる?」「・・・くすっ!」「えっ、なに?」「いや、つくしさんのカチューシャ、ホントに似合うと思って」「ーーーっ///!!」美来と真音がショップで色々見ている最中、その横でつくしと本郷はそんな会話をしていた。それを見る美来の目は、まるで年頃の女の子のよう・・・子供ながらに意味深な笑顔で父親を見上げていた。真音の方は母よりも...
鶴岡八幡宮でまさかのスイーツ♪それを食べ終わったら駐車場に向かうことになった。その時、さっきの花嫁さん達が何処かに帰っていくのを見掛け、再び足が止まった。すごく幸せそうな笑顔・・・誰かに声をかけられ、写真を撮ったりして。「そうだよね・・・普通はあんな顔になるよね」「なにがだ?」「花嫁さん・・・あんな風に笑うよね。だって幸せな日だもん・・・」「どうしたんだ、お前」「・・・私、記念写真も捨てちゃったけどさ・・・あんな顔...
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役所の時間外受付窓口に離婚届を提出し、3人で田園調布のマンションに戻ったのは18時過ぎ・・・すでに疲れを見せている一颯を俺が抱っこして部屋に入ったが、その時も特に嫌がる様子はなかった。夕食は途中に買ったからつくしが準備する必要はなく、一颯を降ろすとすぐにそれらをテーブルに並べた。俺がグラスを出し、買ってきたお茶をつくしがそれに注いでいたが、一颯は黙ったまま母親の服を掴んで離さない・・・時々振り向いてだれ...
ちょっと待って・・・・・・こんな撮影の時って、そこまで感情移入しなきゃいけないの?!ドラマとか映画とか舞台とかなら判るよ?でもパンフレットの中の「花嫁と花婿」なだけだよね?ぎこちない笑顔を幸せそうに見えるように撮るのがプロのカメラマン、それだけだよね?!私、モデルの代役ってだけだよね?花沢さんが「花嫁の経験豊富ですからなにしてもいいですよ」なんて付け加えてないよね?!「あのモデルさんの2着目のドレスって...
俺からすると随分とお人好しな言葉・・・それもつくしらしいと苦笑いしながらドアを閉め、俺はつくしの肩を抱き、志乃さんは放心状態にも見える一颯を抱っこして駐車場に向かった。そこで3人には先に車に乗っておくようにとキーを手渡し、俺は待機していた美作情報部の男のところに向かった。「お疲れ様です、西門様。総て終わりましたか?」「あぁ、俺たちは牧野の勤務先に立ち寄ってから田園調布に戻る。悪いけど、あとの事は任せ...
「1番初めはこのドレスです。撮影はチャペルでの挙式中を想定して行います。2番目がミニ丈のドレスで、こちらはお庭での撮影になります。3番目のカラードレスはガーデンウエディングでお友だちと家族に囲まれているってイメージの撮影をします」「は、はい・・・」「牧野さんにはホントに急で申し訳ありません。でも夏目君には細かく説明しているので、彼がリードしてくれると思いますよ♪」「はっ///はいっ!!」「では、もう少し...
「総二郎から全部聞いたの・・・一颯にまで手を出そうとしてたなんて、私絶対に許さないから!」「・・・実験台のクセに・・・!」「きゃああああぁっ!!」片山はいきなりつくしに向かって突進し、つくしは両手で自分の頭を覆って防戦。そんなつくしの服を掴んで意味不明な言葉で罵っていたが、俺はグッと堪えて手を出さなかった。何故なら・・・この状況を作り出すのが目的だったから。「パパ、やめて!!」その時に一颯が志乃さんの腕から強...
「今日の牧野さんのお相手のメンズモデルはこの人です♪夏目彪我君。なかなかのイケメンでしょ?」廊下を歩いてると正面から歩いてきた男性・・・すでに衣装に着替えていたのか、タキシードを着ていた。しかもメンズモデルという言葉にドキドキし、よく見ると・・・冗談抜きで超格好いい🧡背は高いしサラ髪もツヤツヤで、強気な男って感じ🧡スリムなのは勿論だけど、足なっが!!腕もなっが!!この廊下がランウェイですか!って感じ🧡ニコッ...
翌朝、総二郎から聞いた通り志乃さんが迎えに来てくれた。旅館の皆さんへの説明としては”新しいアパートを借りることが出来て、西門の弁護士さんが間に入ってくれて離婚の手続きに進んでる”とのこと・・・まぁ、似たような感じだけど、それを女将さん達は喜んでくれた。騙してる感があって心苦しいけど、この時は何度も礼を言い、数日分の宿泊料金を払って旅館を後にした。そして志乃さんが案内してくれたところには総二郎が待ってい...
石垣島に到着したのは10時過ぎで、その頃には花沢さんも目が覚めてた。そしてやっぱり大欠伸・・・それを見ないフリして飛行機から降りて、1歩空港の外に出ると今日は天気が良くて・・・・・・「暑っ!なにこれ、夏じゃん!!」「そりゃそうでしょ。南の島だもん」「半袖で来れば良かった~~!」「服なんていくらでも買えるから心配しないで」「・・・・・・・・・・・・」だよね・・・この人は旅行先で全部買う人だもんね。でも上着を脱げば問題ないか...
「いっくん、今日は良いお天気だね~~~」「ほんとだぁ♪お外で遊びたいなぁ~~~」「・・・そうだね、行こうか?」「ほんと?!やったぁ!!」翌日、総二郎の言葉に安心したこともあり、プール熱のせいでずっと室内にいた一颯と一緒に遊びに行くことにした。2人で色々考えて、決めたのはこの旅館から車で1時間足らずで行ける八景島シーパラダイス。この日は土曜日で、健太くんの幼稚園もお休みだ。だからお母さんの清美さんも子ど...
「えええっ?!また依頼が来たの?牧野さんっ!!」「・・・はぁ。今度は石垣島だそうです」17時半に戻ってきた社長に今日の事を言うと、何故かもう「良かった良かった!」って・・・話を聞く前から依頼を受ける気満々だけど、それってどうなの?なんたって「花嫁さんのモデル代役」だよ?そんな大事な役目をこの私でいいのか?と、私の方が気が重かった。それを話しても「ドレスとメイクでなんとかなるんじゃない?」って他人事みたい...
片山の話は大学時代に移った。もともと成績は悪くなかったが、特に夢も希望もなかったこいつは適当に農学部を選択した。そこで食品微生物学・応用生物科学・植物バイオシステムなどを学び、薬草に興味を持ったらしい。植物バイオテクノロジーとは植物の組織培養・細胞培養による有用物質生産、メリクロン苗の生産、細胞融合による新しい植物の作出などの技術のこと。メリクロンとは種苗培養技術の名称で、meri(meristem=分裂組織)+...
「グアム、楽しかったなぁ・・・・・・・・・もう2週間経ったんだ・・・・・・次にパスポート使う日、いつだろう・・・・・・10年以内には無理かな?」そんなことを呟きながら今日も事務作業をしていた。私は今月の売り上げがすでに3桁だから、あとはのんびりして良いって事で、社長も含めてみんな外出中。事務所にたった1人だから気合いが入らなくて、作業も滞り気味・・・こんなんじゃダメだと思うけど、頭の中に蘇るのはあの人の寝顔・・・・・・同時に”逆...
自白剤を注射されて数分後、片山はグッタリしていた。相変わらず周囲を情報部の人間が取り囲み、聞こえてくるのは小さな機械音のみ・・・「じゃあそろそろ始めるか。片山・・・何故つくしをターゲットにしたんだ?」「・・・・・・・・・・・・」「お前がつくしに薬を飲ませて操ってたのは判ってんだ。本当はつくしと関係など持ってない・・・一颯が自分の子どもじゃねぇ事も知ってて家族してるよな?」「・・・・・・・・・・・・」「こっちはすでにお前と一颯の父...
<side加代>類様がグアムからお戻りになって数日後・・・なんだか元気がないみたいで心配ですわ。でも、その理由次第では喜ばしいことなのかも?なんて考えながら、今朝も起きていらっしゃらないのでお部屋に向かっております。やれやれ・・・寝坊助の類様を起こしてくださる方がお側にいると私も助かるのですけれど~~「類様、おはようございます。もう7時ですよ?起きて朝食をお召し上がりにならないと会社に遅れますよ」・・・・・と、...
美作の鑑定施設に着くと、片山を乗せた車がすでにそこに停まっていた。インターホンを押すと、すぐに解錠されて中へ・・・出迎えに来てくれた市村が、「どうぞこの奥へ」と言ったのは、これまで入ったことがない検査室のような場所だった。パソコンだけでも数十台、化学鑑定の機械と思われるものが並び、重々しい雰囲気の部屋・・・残留農薬分析、不揮発性有機物の分析をする液体クロマトグラフや、金属元素濃度の測定、製品中の金属元素...
「それじゃあ、花沢さん。お世話になりました~~」「・・・ゆっくり休んでね」「は~~~~い♪」グマモン・・・じゃない牧野をアパートまで送ると、ドッと疲れが出た・・・それでも自宅には戻らなきゃならないし、半分閉じた目で運転・・・事故に遭わずに自宅まで戻ったら、すごく上機嫌な加代が出迎えてくれた。「類様、お帰りなさいませ~~♪夕食はお済みですか?」「・・・・・・よくわかんない」「え?ご自分の食事を覚えてないのですか?」「・・...
片山の家から自由が丘まで、車だと1時間程度かかる。俺はその間も店の中で男を睨み付け、「XYZ」に関することを聞いていた。それは数年間にわたりA国で品種改良がされ、密かに栽培されている薬草。効能はほぼシリアン・ルーと同じで、堕胎薬・崔淫剤・媚薬などに使われているらしい。幻覚成分・麻薬成分である多種のアルカロイドを含有し、でも体内に留まる時間が非常に短く、検査をしても検出されないことが特徴だそうだ。そして...
帰国当日の朝・・・一騒動あったけど、牧野も俺もシャワーを浴びて服を着替え、黙々と朝食を食べた。チャモロ・エッグベネディクトにタロ・パンケーキ、アサイボウルにキャラメライズしたバナナがのったフレンチートースト・・・朝から甘いもののオンパレードで、見るだけで胃もたれになりそうだったけど。それが終わればホテルをチェックアウトし、レンタカーで空港に向かうんだけど・・・「牧野」「なぁに💢」「まだ怒ってるの?」「怒って...
急がせていた情報屋の調査報告が始まった。それは自由が丘辺りで怪しげな薬草の売買をしている外国人がいるかどうか・・・結果として数件の情報が上がり、その中にA国の隣、B国人数名が入っていたことが判明した。そして取引しているのは中央アジアで栽培されている特殊植物の粉末で、「茶」だとされているのだそうだが・・・『本当に紅茶の一種だというものもあるようですが、中には睡眠薬の材料的なものもあるようです。自分で煎じてブ...
会長夫人にプレゼントも渡せたし、ヘンな人も消えたので花沢さんと2人・・・これはこれで楽しいな~と思い、それからは会場の中でお料理を食べたり、シャンパンを飲んだりしてた。花沢さんも珍しくお料理に手を出してるし、そんなに話しかける人もいなくて邪魔も入らず♪「教わったマナーなんて必要なかったね」って言うと、クスクス笑ったり。「それにしてもクルーズ船で話しかけてきた女の子達もリアムさんもいないけど、みんなこの...
九州旅行が終って数日後、類はいつもと変わらない日常へと戻った。今日も専務執務室で書類に目を通し、パソコンを睨み、メールを返信・・・ただ1つ変わったと言えば、常にあの御守を持ち歩いているということだ。それが息子のものかどうかは不明だが、鞄の中に入れて一緒に出勤していた。そしてもうひとつ・・・机の引き出しに入れている、私用のスマホに入る連絡を待つようになった。旅行から帰った日の夜、類は情報屋に連絡を入れた。...
雛の茶事が終って4日目・・・歳のせいか、通常より長く休んだお袋が復活した。そして俺達の前に出て来たんだが、毎年のように言われる言葉がなくてちょっと気持ち悪かった。それは・・・『どのお嬢様が印象的だった?』とか『連絡取りたいお嬢様はいなかったの?』ってヤツ。何故なら雛の茶事は「桃の節句」に合わせてるから、お嬢達は超着飾ってくる。例年ならお袋が亭主だから、俺や考三郎は茶事の前後に挨拶するだけ・・・それでもお嬢...
翌日、つくしはいつも通りに起きて朝食を作り、真音を起こしてから保育園の準備をした。月曜日の保育園荷物は大量だ。連絡帳などの毎日の荷物は当然で、真音の保育園は昼寝用の布団も持参だった。それにおむつも取れてないので数枚用意し、夏だからタオルに水着もある。汗をかくので着替え3組に帽子、スモックも加わり、大容量のバッグに布団袋、それに真音の通園リュック。つくしは落とした御守の代わりに黄色いマスコット人形を...
3月に入って1番初めの月曜は4日。それは私の茶道デビュー・・・カルチャーセンターは18時30分からの1時間半なので、仕事が終わったら早めに事務所を出なきゃ間に合わない。それなのに今は月初の仕事がてんこ盛り・・・「おい、お前・・・」「・・・・・・・・・・・・」「おい、聞こえないのか」「私はお前ではありません。名前を呼ばないのなら答えられません」この1ヶ月、殆ど「牧野」と呼ばれない状態が続き、私は我慢の限界だった。そもそも上司から...
旅行の最終日、類たちは午前中に湯布院を観光した。始めに行ったのは「湯布院フローラルヴィレッジ」で、ここはイギリスのコッツウォルズ地方の街並みを再現したミニテーマパークだ。全体がイングリッシュガーデン風に仕上げられており、色とりどりの美しい花々が咲き乱れた庭と、小さな動物たちもいる。敷地はそれほど大きくないのだが、とにかく可愛らしく、湯布院では異彩を放つ場所だ。ベルトラン家の子ども達には然程珍しい建...
2月の終り・・・私は会社帰りにとあるカルチャーセンターに向かった。そこには茶道があり、表千家の先生に教えてもらえるって事だったから・・・本当は考三郎先生のところに行けばいいんだろうけど、牧田って偽名を使ったし、西門さん絡みで行きにくい・・・出来が悪いのは判っているから、それをイチイチ報告されるのは恥ずかしいし。それは涼子達にも誰にも言わず、こっそりと・・・別にすごく興味がある訳でもなかったんだけど、折角西門さ...
『もしもし、類?どうしたんだ、急に・・・』「・・・・・・ごめん、今少しいい?」『あぁ、今日の仕事は一段落したから・・・震えてんのか?』その声は西門総二郎・・・唯一日本に残ってる友人だ。そして真音・真利愛の事は説明済み。現時点で類の話を聞けるのはこの男しかいなかった。類は総二郎に旅行についての説明と今日の出来事を伝え、総二郎はそれを最後まで黙って聞いていた。だがここでも答えは同じ・・・『キツい事を言うが、まことって名...
牧野が言った『その後の電話で言ったじゃない』・・・それを思い出そうとしたが思い出せない。そう思ってスマホを手に取り、通話履歴を見てみると牧野とのやり取りが数件・・・「あぁ、そうか・・・レーズンは牧野からかかってきた電話か。で、その後俺がかけてるけど・・・思い出した、野久保の名前を聞いたんだ!で、そのすぐ後に牧野から?そんなやり取りしたっけ・・・」そこで画面を睨みながら暫く考えてると、森田さんの車にスマホを置いて...
地獄巡りから自宅近くまで戻ったのは17時前で、後部座席の2人はまだ爆睡だった。本郷も「やれやれ」と苦笑いだし、つくしも「疲れたんでしょうねぇ」と・・・そこで考えたのは夕食だ。つくしは自分で作れるが、本郷はこれから帰って、自炊するのかと聞くと・・・「ははは・・・簡単なものなら作るんだけど、土日は殆ど惣菜かなぁ・・・特に今は暑いから作る気しなくて」「そうですよね~、それは私も同じです」「掃除や洗濯はなんともないん...
最悪な14日が始まり、その日1日中野久保課長とは口をきかなかった。向こうも腹がたってるのか、直線距離で2メートルなのに私への用件は総て社内メール・・・しかも『お疲れさま』も『よろしくお願いします』の文字も無し!涼子達もビビってるし、休憩室では「何よ、あれ!」って感じで、早くも私以外の営業課女子社員全員を敵に回してた。「顔は良いんだけど性格悪っ!」「なんかイメージダウンだわ~~、ガッカリした!」「来年...
美央が車に戻ったとき、そこには1台しかなかった。もちろん残っているのは自分が乗っていた車だが、慌てて車のドアを開けると、そこには類が座っていて、真利愛と遊んでいたのだ。「あら?類様・・・どうなさったんです?」「少し前にベルトラン氏の車が出ただけ。気にしなくていいよ」「でもご案内のお役目が・・・申し訳ありません、私が少し遅くなったから怒ってしまわれたとか?」「いや、全然。これまで一緒だったせいで俺が真利愛...
牧野の上司・野久保武司と京都の舞妓・乃々香・・・真理子が知り合い?突然そんな繋がりを知って、あの日の事を思い出した。そう言えば野久保は誰かと待ち合わせていると言っていたし、真理子は野久保と話している間に忽然と消えた。とは言え、野久保の態度は牧野に対する悪態だけで、特に俺の周辺で驚いた風じゃなかったから、乃々香の方が野久保を見て逃げたってことか?でもそれなら真希乃の言葉に違和感がある・・・彼女の言い方だと...
「まぁ君、あそこにワニさんがいるよ~~!」「まって~~~!」「こら、美来!走ったらダメだぞ!」「真音も、転けたら怪我するから!」鬼山地獄に入ると、子ども達は地獄よりもワニが居る場所に急いだ。そこで柵越しに覗き込むと、ワニたちがウヨウヨと・・・初めてワニを見た真音はキョトンとしていたが、美来は「カッコいいよね~」とはしゃいでいた。鬼山地獄・・・別名「ワニ地獄」。大正12年に日本で初めて温泉熱を利用し、ワニ飼...
爺さんと若菜が遊んでる間、俺は真希乃を相手に酒を飲んでいた。でもさっきまでの陽気な雰囲気ではなく、少々気不味そうに・・・それに地方さんも気が付いてるようだったが、俺は気にせず「乃々香の男」について探りを入れてみると・・・「さぁ・・・うちは知らんどすけど・・・どうしてそんな事を?」「置屋のお母さんがそう言ってたから」「・・・まぁ、お母さんも余計なことを・・・」「乃々香が舞妓の時に何度か会ってて、その子が困ってるなら・・...
つくし達が地獄巡りに来たのは14時30分で、そこは観光客で賑わっていた。少し離れた駐車場に車を止め、つくしが真音のリュックを手に持つことに。そして強烈な日差しの下、帽子を深く被ってひとまず木陰へ・・・「牧野さんはここ初めて?」「はい、実は別府に来て2年半ですけど、まだ来たことがなくて・・・真音も赤ちゃんでしたし」「そっか・・・地獄巡りって場所にもよるけど、子どもにはあんまりピンと来ないと思うんだよね。だか...
「まきの、早くしないとお座敷に遅れるよ」そう言われて出て来た芸妓が俺に気が付いてこっちを見た。その顔はデカい目にちょっと幼げな顔・・・とは言え牧野に似てるワケじゃなく、俺は胸を撫で下ろした。そして「まきの」と言う芸妓はもう1人の芸妓と並んで女将さんに挨拶をし、下駄の音も華やかに何処かに歩いて行った。おそらくこれからお座敷なのだろう・・・それを見送る女将さんに「すみません」と声をかけ、近寄った。「はい、ど...
大騒ぎしたジャングルバスから降りると、今度はふれあいゾーンに向かった。入口に入ってすぐにミニチュアホースを見付け、美来は真音の手を引いてそこにまっしぐらだ。その姿を後ろから見る本郷とつくし・・・他人には夫婦に見えるだろうし、子ども達は間違いなく仲の良い姉弟に見えるだろう。うみたまごでもそれを感じたつくしは、ほんの少し本郷と距離を取ろうと歩を遅くした。だが本郷の方は気にもしてないようで、穏やかな笑顔で...
職場のバレンタイン・・・このどうでもいいイベントを始めたのは誰なのか💢健康診断でメタボに引っ掛かりそうな人も多いのに、わざわざチョコをあげる必要があるだろうか・・・・・そんな事を思いながら、土曜日にはデパ地下のチョコ売り場に来ていた。「どれにしようかな・・・高価すぎるのは困るし、安くて見栄えが良いものがあればいいけど・・・」職場で配る場合、チョコレートをもらえない人がいないようにしたり、本命チョコや手作りチョコ...
前に座る大人達と、後部座席の子ども達の空気感は全く違っていた。真音と美来は楽しそうに笑ったり歌ったり・・・もちろん真音は言葉が少ないので、その殆どは美来だ。美来も独りっ子のため、弟が出来たようで嬉しいのだろう。それにいつもは真音も美来も後部座席で1人なので、もう1人子供がいる状況にハイテンションなのだ。それに比べて、運転する本郷と助手席のつくしは微妙な雰囲気。それというのもこの距離感はお互いに初めて...
茶道具の恐ろしさを目の当たりにして、私は暫く放心状態・・・まさか、こんなお菓子入れに9万円とか!実家では極々稀に可愛いクッキー缶をもらったら、それにみかん入れたりしてたけど、茶道では9万円に和菓子を入れるのかと・・・そんな光景が想像出来なくて、店員さんが説明してるのに全く頭に入らなかった。そんな事してると西門さんの用が終わったみたいで、彼は「揃ったら宗家に届けてください」って頼んでた。でもその手には小さ...