花うばら
『じい散歩』 藤野 千夜著 「老い」というのは、当たり前ながら誰にとっても不安な初体験。同年輩の老いざまやら、先輩諸氏の老い方とつい比べてみたり、参考にしてみたくもなるものだ。この話だって、斎藤美奈子殿が「人生の最晩年を明るく生きるシニア小説」(ちくまweb)などと紹介していなければ、読まなかったに違いない。 明石新平は89歳、妻の英子88歳。ちょっと信じられないほど高齢でも元気な夫婦だ。新平は散歩が日課だが、こちとらの田舎散歩と違い、著名な建物を見たり、お茶を飲んだりとなかなか刺激的だ。一方妻は散歩はしないで、毎日出かける夫の浮気を疑っている。ええっ、89歳ですよと思うのだが、英子には少し認…
2023/04/28 16:43