2-XI-2
仇敵ド・ヴァロルセイの懐に入り込み、否定しようのない証拠を掴むのに役立ってくれると彼が頼みに思っているのが、手の中の十万フランであった。男爵との会見が上首尾に終わったことを母親に早く伝えたくて、彼は足を急がせた。しかし、自分の究極の目的を果たさんがための様々な過程について思わず考え込んでしまい、ラ・レヴォルト通りにある粗末な住まいに着いたのは五時近くになっていた。そのとき、フェライユール夫人は帰宅したばかりであった。母親が外出することを知らなかったので、彼は少なからず驚いた。彼女が乗って来た馬車はまだ門の前に停まっており、彼女はまだショールも帽子も取っていなかった。息子の姿を見ると彼女は喜びの声を上げた。息子の顔を見れば、何も言わなくても彼が何を考えているか分かるほどに息子の顔色を読むことに長けていたので...2-XI-2
2024/03/24 10:34