小品、紅梅。
このところ北陸の気温は低空飛行が続いている。少し以前は春の陽気に包まれたが、今週に入り一変。冷たい雨に霙(みぞれ)が混ざる事もあり、まだ暖房・防寒具は手放せそうにない。そんな中、寒さに負けるなと励ましてくれる1つが「梅」の花だ。俗に「梅は百花の魁(さきがけ)」と言う。先頭を切って咲き、春を告げる花枝の下に身を置けば、馥郁たる香りが実に心地いいのだ。現代では、花見で愛でる花といえばもちろん桜のこと。しかし、かつて奈良・平安時代の花の鑑賞といえば、梅を指す。その人気ぶりをうかがえるのが『万葉集』。桜を詠んだ歌が43首に対し、梅を詠んだ歌は110を数える。一例を挙げてみよう。残りたる雪にまじれる梅の花早くな散りそ雪は消(け)ぬとも作者は「大伴旅人(おほとものたびと)」。地上の雪と樹上の梅の花を対比して詠った。梅...小品、紅梅。
2024/02/25 07:00