幽玄との遭遇
幽玄(ゆうげん)僕は、初めてこの言葉に接した時から惹かれるものがあった。あれは13~14歳頃に読んだ大人向けの怪談物で、美しい「物の怪」が侍に憑りつき、生気を奪い、立ち去る場面。出典元や粗筋は覚えていないが、ラストシーンの文面は心に残っている。『枯れ木のようになった男は、闇に溶けてゆく後ろ姿から目が離せなかった。音もなく滑るように進むようすは、能舞台の役者さながら。霞む意識の中で、男は“幽玄”を見た---』脳裏に情景を思い描き背筋がゾクリとした。早速「幽玄」を辞書で繰ると、概ね以下の記載。■奥深く計り知れない趣のこと。■気品があり、優雅なこと。■中世の文学・芸能の美的理念の一つで、ほのかな余情の美。中学生には理解しずらかったが、難解故、却って言葉が纏う妖しさは増す。前述「物の怪」の印象と相まって得体の知れ...幽玄との遭遇
2023/10/23 20:20