冬の森を歩けば【森へ行く道<129>】
夜の間にまとまった雨がふり、森に潤いが戻った。南国のあたたかな日差しが降り注いでいる。薬草を採取しながら、森を歩く。真っ赤な実を付けている「冬いちご」の葉は、血流を良くする効果がある。冬場の小鳥たちのご馳走だから、採りつくさずに少しだけ残しておくように。甘酸っぱいその実の味は、村の古老の言葉とともに故郷の山の村を思いださせる。蔓を伸ばし葉を青々と繁らせている「むべ(郁子)」の葉は、天智天皇伝承を秘める長寿の薬だが、そんな神代のことを辿らなくても、森の入口に棚を作って這わせてある。35年ほど前のことだが、人吉から川辺川沿いの道をあるいて五木村まで行ったことがある。ダム建設の計画に揺れる村であった。清らかな流れが淵を作ると、そこには巨大なヤマメが一群を作って越冬していた。川に面して一軒の重厚な民家があり、石垣...冬の森を歩けば【森へ行く道<129>】
2023/12/31 09:21