師弟の淡い交わりと烈行 08/2再
老人の名は岡本義雄という。奈良の石屋の大店に生まれたが、両親とは死別、兄弟も無く、遺された財産(店、営業権、工場)とともに親戚に預けられる。岡本義男氏先ずは子守だった。まだ明け切らぬうちに起きて鞴(ふいご)作業である。石工に使う鉄製道具を手入れする火おこしである。あるときかまどの傍にお金が落ちていた。子供ながら大金である。岡本は訳もわからず、いや辛苦ゆえの「マ」なのか少し離れた目印になる石の下に隠した。毎朝、ふいご番をするたびに石の下を覗いていた。何か安心と不安が入り混じったという。或る日、いつものように覗いたら隠してあったお金が無くなっていた。そのとき、ホットしたという。そしてこれからは自分を欺かないことを誓った。その隠している苦しみは自身を不安にさせ、あるいは悪心に慣れさせてしまう一種の怠惰を感じたと...師弟の淡い交わりと烈行08/2再
2025/07/09 19:41