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小谷の250字 http://blog.livedoor.jp/kotani_plus/

政治経済から芸能スポーツまで、物書き小谷隆が独自の視点で10年以上も綴ってきた250字コラム。

圧倒的与党支持で愛国主義者。巨悪と非常識は許さない。人間が人間らしく生きるための知恵と勇気、そしてほっこりするようなウィットを描くコラム。2000年11月から1日も休まず連載。

小谷隆
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江戸川区
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豊橋市
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2014/11/24

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  • 続・色事回想(52)~高嶺の花

    あの高嶺の花はおそらく、僕がリアルで逢ったことのある女性の中でいちばん美しい人だったと思う。ネットを検索すればピアニストとして細々と活動する彼女の近影が出てくる。五十代半ばを過ぎてもなおきれいだ。 独身を貫いていると聞いて少し胸がざわついたけれど、今で

  • 続・色事回想(51)~自暴自棄

    僕はこのとき人生で初めて自暴自棄という状態を体験した。平たくいえば「どうにでもなれ」という心境だ。怖いものなどなくなった。ひとつ間違えば凶悪犯罪だってできたと思う。「むしゃくしゃしてやった」という犯罪はきっとこんな心境から生まれるのだろう。 けれど幸い

  • 続・色事回想(50)~罪

    もし万が一、彼女の中に新しい命が芽生えれば、きっと彼女はここへ戻ってくるだろう。もちろん彼女が僕の子を産んでくれるとは限らない。子供を育てていくには二人ともいささか若すぎたし、彼女にしてみればもっと独身を謳歌したい気持ちもあっただろう。産まないと言い出

  • 続・色事回想(49)~一縷の望み

    彼女がいなくなってからの感情は、喪失感というのとは少し違ったものだったかもしれない。必要以上に彼女に入れあげてしまったことが小っ恥ずかしかった。当選番号発表前の宝くじを拾って、当たったらああしようこうしようと独りで盛り上がっていたら、果たしてはずれだっ

  • 続・色事回想(48)~メロディ一つ生まれない時間

    痛手というほどの痛手ではなかったけれど、やはりしばらくは正常な精神状態ではなかった。少しでも気を抜いたらとんでもなく深い闇に落ちそうだったところを、必要以上に饒舌になることで必死にしのいでいたというのが実際だった。 こんな気持ちを一つの歌にしてみようと

  • 続・色事回想(47)~饒舌な事後

    失恋したらたいていは無口になる。高校時代には1ヶ月ぐらいほとんど誰とも口をきかなかった記憶がある。もっともそれは周囲にそれと気づいてほしいがゆえのパフォーマンスだったかもしれない。全身で失恋を表現していたのだ。 それに対して、このときの僕はとても饒舌だ

  • 続・色事回想(46)~ただそれだけの

    失恋はいつも痛手ではあるけれど、このケースは過去のそれとは違った不思議な浮遊感を残していった。ウェットな要素が何もない、晴れ上がった秋空のように乾いた気持ちが僕を支配していた。 僕はニヒルな男を演じていた。村上春樹に傾倒しすぎた者が陥りがちなあれだ。振

  • 続・色事回想(45)~安全期

    問題は、いろんな意味で彼女をまっさらな状態で帰してあげられなかったことだった。いうなれば、僕は彼女に爆弾をしかけてしまったのだ。 ただ、彼女はそのことについて何も触れなかった。気にしている素振りさえなかった。特に訊いたわけではないけれど、自分は絶対に妊

  • 続・色事回想(44)~慰みもの

    僕にはうすうすわかっていた。彼女にとって僕はただの寄り道でしかなかったのだ。最初の夜からして、デートをドタキャンされたか、直前に喧嘩別れしたか、そんな状況だったのはミエミエだった。 僕は自暴自棄になった彼女の慰みものでしかなかった。そんなことは重々承知

  • 続・色事回想(43)~不確かな回想

    終わりのことはよく憶えていない。人間は都合の悪いことや悲しいことを忘れるようにできているというけれど、この色恋の終わりについていえば都合も悪い上に悲しいことだったから、鮮明な記憶が残っている方がおかしい。 電話だったか、対面だったか、とにかく「あなたは

  • 続・色事回想(42)~電話の前で

    彼女はそれから何日も連絡をよこさなかった。音信不通が一つのわかりやすい答だと知るには、後に何度も痛い思いをする必要があった。未熟な僕はただひたすら悶々と様々な妄想をして過ごした。 大学へも行かず、喫茶店のアルバイトも風邪だと偽って休んだ。留守番電話すら

  • 続・色事回想(41)~If This Is It

    あの頃はHuey Lewis and the Newsの全盛期だった。リアルタイムでは"Stuck with You"がヒットしていて、その流れで2年前の"If This Is It"が一緒に流れていた。 よく似たシャッフルのこの2曲がけっこう好きでよく聴いていた。実は英語の歌詞の中身までは追えていなかっ

  • 続・色事回想(40)~若さとは

    僕は夫になる。父親になる。22歳にして。そんな思いを抱えて僕は秋の街をものすごく速足で闊歩していた。 大学3年生の身にはいささか重すぎるはずの荷だった。それを自ら背負おうとしている。いったい何がそうさせたのかわからない。あとから考えてみたらまったく理解に

  • 続・色事回想(39)~平和すぎる朝

    翌朝、まるで何事もなかったかのように彼女は鼻歌を唄いながら朝食を準備して、テキパキと身支度をすると、じゃあまた今夜来るね、と言い残してアパートを出ていった。一駅先にある病院へご出勤だ。医療関係者に土日はない。向かいの部屋のおばさんが好奇心丸出しの目で見

  • 続・色事回想(38)~正解なき選択

    もしも彼女が本当に懐妊してそんな段取りになっていたら、その後の僕の人生はどうなっていただろう。今でも時おりそんなアナザーライフを想像することがある。たぶんこの世界とは別のフェーズの世界に、そんな人生を生きている自分と彼女がいるのだと思う。 今ここにある

  • 続・色事回想(37)~段取り

    呆れるほどの静寂をやがて微睡みが包む。目覚めたとき彼女はは隣で静かな寝息を立てていた。スモール球一つの薄明かりに浮かぶ寝顔を眺めながら、僕はこれからの段取りを思い浮かべた。 彼女が懐妊する。二人、いや三人で暮らすアパートを探す。並行して僕はたっぷり稼げ

  • 続・色事回想(36)~絶えざる陶酔

    男が女に対して抱く愛情の本質は性欲でしかない。少なくとも血気盛んな頃はそう言い切って間違いない。愛してるだとか好きだとか、みんな翻訳すれば「やらせろ」でしかない。そんなことをどこかで読んだ気がする。 ある意味これは真理だと思う。生き物の本能として、オス

  • 続・色事回想(35)~欲望の本懐

    彼女の火照りが僕にまた火を点けた。唇を唇で塞ぎ、彼女の背中に回した腕の力を強める。たぶんそこに愛情など欠片もなかったと思う。僕は純粋な欲望に支配されていた。「やだ。ほんとにやだ」 彼女は身を強張らせて抗った。「やめて。もういや」 彼女は明らか僕を拒

  • 続・色事回想(34)~無責任

    「どうして?」と彼女は涙声で言った。「どうしてこんなことするの?」 子供がほしいから、と言いかけて僕は言葉を飲み込んだ。ごめん、と言いかけてそれも押しとどめた。「赤ちゃんできちゃったらどうするの?」と彼女は嗚咽しながら言った。「どうしてそんな無責任なこ

  • 続・色事回想(33)~罪

    果てたあとのまどろみが、そのときは心なしか長かった。彼女は僕から離れると、背を向けてしばらく黙っていた。 僕は僕でいわゆる事後の賢者タイムの真っ只中で、自分のしたことの恐ろしさを今さらのように噛み締めていた。一方で、このまま彼女が本当に受胎してほしいと

  • 続・色事回想(32)~タブー

    彼女との生活を実現するのにいちばん確実な手段は何か。そのうちに僕は悪魔のようなことを考えるようになっていた。 毎晩の営みはいつもほぼ無防備だった。あの夜から、彼女との間を物理的に隔てたことは一度もない。ただクリティカルな場所で果てないことが唯一の防備で

  • 続・色事回想(31)~覚悟のようなもの

    僕はある種の覚悟さえ決めていたと思う。学生の身分ではあったけれど、このまま彼女と結婚してしまおうと真面目に考えていた。 時に22歳。生活はどうする? 彼女の看護師としてのささやかな給料と、あとは僕が必死でアルバイトすれば何とかなりそうだった。 二人で暮

  • 続・色事回想(30)~通い妻

    独り暮らしも3年半を過ぎて、僕は少し人恋しくなっていたのかもしれない。ちょうど1年前には1ヶ月ばかりほぼ週2で僕の部屋を訪れるガールフレンドがいたけれど、そのときは昼間に数時間を過ごすだけだった。それに対して彼女は夜勤のとき以外はほぼ毎日来て、僕のため

  • 続・色事回想(29)~おままごと

    50年続いてほしい日は結局のところ9日で終わることになる。細かくいうと9日半。ちょうど『ナインハーフ』という映画が流行っていた頃だ。あちらは9週間半。なぞらえるのは少し恥ずかしい。 そのあいだ何をしていたかといえば、あれは「新婚さんごっこ」だったと思う。恋

  • 続・色事回想(28)~50年続いてほしい日

    もうとっぷりと日の暮れた東中野銀座商店街を我々は手をつないで歩いた。夕飯時だった。チョイスはいくつかある。居酒屋に入るか、洋食屋に入るか。弁当屋もコンビニもある。けれど彼女はスーパーを選んだ。「出来合いのものばっかり食べてるんでしょ? 身体によくないよ

  • 続・色事回想(27)~家庭的という賛辞

    「家庭的」という形容は女性をある種の偏った枠に押し込めるという意味で、今どきは言葉にするのさえ憚られる。最近では家庭的な雰囲気といわれて喜ぶ女性はあまりいないかもしれない。けれど当時はそれが女性に対する最大の賛辞のひとつだったし、そういわれて気分を害する

  • 続・色事回想(26)~浮遊感

    清楚でエレガントな顔と、妖艶で激しい顔。前夜に見た顔とはまた別の顔をその日の彼女は見せてくれた。36年を経て、いま彼女の印象として最も強く残っているのはその3つ目の顔だ。 ただでさえ清楚さがカジュアルを纏うと無敵になる。前夜のエレガントさや妖艶さとの落差

  • 続・色事回想(25)~夢うつつ

    彼女からはすぐに電話がきた。いや実際はその日の夕方だったのだけれど、アパートに帰るなり泥のように眠っていた僕にとっては中井駅で別れた直後にかかってきた印象だった。 現実と夢の境目が曖昧な10時間を僕はベッドの上で過ごしていた。前夜の激しい営みがそのまま続

  • 続・色事回想(24)~ギャップ

    我々は西武新宿駅から朝のラッシュの真逆を行くがら空きの各停に乗った。僕は中井で降り、彼女は野方まで乗る。 服を着て顔と髪を整えた彼女はもとの清楚で淑やかな女の子に戻っていた。電車で横に座った彼女には、ほんの2時間前にキスの嵐を僕に浴びせた激しい女の面影

  • 続・色事回想(23)~因果

    どうあがいても叶いそうにない片思いは、フラストレーションであるのと同時に向上心を支えるエネルギーでもある。高嶺の花を目指す険しい山道を、その年の夏から秋にかけて僕はゆっくりと登っていた。夏にはアルバイトで大いに稼ぎ、ワードローブもすべて入れ替えた。 高

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