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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • [ブルーの住人]第八章:ついでに ~罪と罰~

    =推察=しかし、わたは嫌だった。なにより臭い。体に染みつく、ツンとくるにおいには閉口した。ネズミはジッとしていない。落ち着き払っているネズミは、重病である。べつの意味で、気をつけて世話をしたものだ。とにかく、嫌だった。が、いまでは懐かしく思えてくる。それはその仕事ではなく――あの臭いに耐えられない現象ではなく、その本質=具現化されるものではなく、観念的に懐かしく思うのだと、推察する。故郷をはなれた人が、生まれ育った地の、風や匂いをなつかしむがごとくに。[ブルーの住人]第八章:ついでに~罪と罰~

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (二十)(去れば、去るとき、:一)

    うまくまとめていただけて、ありがとう存じます。ただ一点、わたくしに付け加えさせていただきたく存じます。ほかでもございません、里江さんのことでございます。あの方にだけは、わたくしが明水館の若女将であることをお話ししました。いえいえ、三水閣でではございません。いかに無鉄砲なわたくしでも、あのようなところでは詳しい素性は明かしませんです。里江さんとの秘密の連絡手段をととのえたあとに、わたくし逃げ出しました。といいますのも、その後のことを知りたかったのでございます。あくまでも追いかけてくるのか、それとも諦めてくれるのか、それによりまして対策といいますか対抗手段をも考えねばなりませんので。ええええ、もう戦闘態勢に入っております。例のK大先生のご紹介をうけました。さすがに垢を落としてからでなければ、明水館に戻ることは...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(二十)(去れば、去るとき、:一)

  • 原木 Take it fast! (十五)喜べ!

    行動派の家に着いた時、ようやく三人は「じゃ、明日!」と、口を開いた。そして、ふたりだけになった時、ヒネクレ派が口を開いた。「おい、喜べ!彼女、お前と話がしたいとさ」ヒネクレ派はさも嬉しそうに、真面目派の肩をたたいた。少し痛かったようだ。「痛いよ、おい。」と、苦笑しつつ答えた。「勝手にしてくれよ。だけど、きみもわからん男だなあ。自分が好きな子を、いくら友達とはいえ。わからんよ。そこが、ヒネクレ派のヒネクレたる所以かな?」「まっ、そういうことだろう。ハハハ……」それから、ふたりの間にまた沈黙が流れた。ふたりとも、めいめいの思いを巡らせた。空には、もう月が照っていた。急に、ヒネクレ派が言う。「Themoonshinesbright,butdarkinmyheart!ってか。おい、この英語合ってるか?」「さあな。...原木Takeitfast!(十五)喜べ!

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (四)女を抱いたことがあるか

    「女を抱いたことがあるかと水を向けたら、はじめのうちこそ『女なんて下等な動物との交わりなど』と粋がっておったが、わしが、○刑じゃ○刑じゃと脅しをかけたら、真っ青な顔をして本音をポロリともらしよった。『いちどは抱いてみたい。そんな女がひとりいる』と涙声で言いよった。でわしが、この世に生きたという証に子どもを産んでくれと言うてみい。イチコロじゃ。女の方から股をひろげるさ。耳元でささやいたら、とたんに『帰してください。ひと晩でいいです』ときた」半分ほどの茶碗酒でのどの乾きを潤されると、「聞きたいか、本当のことを」と、また話をつづけられました。「帰さんでもないが、その代わりに全部話すか?おまえの知っていること全部を話すか?山本、白井、岡田にそして幹部の竹本のことを。そう言うと『もちろんです、知っていることすべてを...愛の横顔~RE:地獄変~(四)女を抱いたことがあるか

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百三十八)

    耳をうたがうことばだった。「気がふれられたのか?」誰かが口にしたことばが、あっというまに伝播した。「にしても、チンドン屋とは……」「社長の意向だって、聞こえなかったか?」さまざまに声が上がった。声を抑えてくださいという五平にたいして、「あなたが:*%&$#:@;>?」と、聞きづらい金きり声がまたあがった。「わかりました、わかりました。検討させてください」なんとか落ち着かせようとする五平の声があり、「だれかお茶をたのむよ」と、階下に指示がでた。すぐさま徳子が用意をして、かけあがった。「いいこと。『にぎやかに送ってくれ。チンドン屋でもよんで、派手にな』。武蔵が言ったのよ。それに『会社から出してくれ、社員は俺の家族なんだ』とも。あなたも聞いてたでしょ」徳子が部屋にはいると、ソファにすこし腰を下ろし、背筋をピンと...水たまりの中の青空~第三部~(四百三十八)

  • ポエム ~焦燥編~ ( その死 )

    病死というわけでもなく自然死というわけでもなく他殺死でも事故死でもないその死……ギラギラと灼けつく太陽その下の砂漠で水を失ってもひとが生き得る時間は?太陽も月もなく雨も風もないそんなときいつまで孤独に耐えられる?その死……無音の部屋のなかでの光が失われたなかでの飢えと渇水によるその死……(背景と解説)事象は理解してもらえると思いますが、心象は不可解ですよね。正直のところ、わたしにも分かりません。ただ単に言葉を羅列しただけのことなのか、それとも意図を持って配置したことなのか、分からないんです。罰?を意識しているのでしょうか。飢餓地獄?と考えても見たのですが、違和感がありますし。当時は、地獄に意識があったようなのです。無音と闇、地獄でもないみたいですし。二十歳前後というのは、自分のことなのに、さっぱり分かりま...ポエム~焦燥編~(その死)

  • 小説・二十歳の日記 六月三十日 (曇り)

    決してうらみになどは思わない。それが当然だと思うんだ。でも、悲しいんだ、情けないんだ。手紙、ファンレター?それともラブレター?を出して、きょうかあすかと待ちこがれ、十日目のきょうに返事がきた。いや、手紙のかるさを怒っているんじゃない。三十枚近くにおよんだ手紙にたいする返事が、いち枚の便箋にもりこまれていた。そのことを怒っているんじゃない。手紙を書くことが苦手の人だろうさ。それはいい。時候のあいさつにはじまり、あの舞台の感動、そして彼女にたいする激励。ここで止めておけばいいものを、ここで文通をしたいと言えばいいものを。つい、少女雑誌に連載されたまんがのないようをダラダラと書きつづってしまった。たしかに、無名の歌手が大スターになるまでのうよ曲折がえがかれ、真ごころの大切さを高らかにうたい上げてはいた。けれども...小説・二十歳の日記六月三十日(曇り)

  • [ブルーの住人]第八章:ついでに ~罪と罰~

    =ExistenceValue=”ExistenceValue”ということを意識しはじめたのは、高一の後半だったろうか?頂点は、高二の夏休みと思う。そのころ某大学内において、ガン細胞を植え付けたハツカネズミどもの世話(バイト)をしていた。「くれぐれも気をつけて!」と、毎日のように言われていた。わたしを気遣ってのことではない。ネズミの世話で手を抜くな、ということである。臨床的に大事なことである。ガン治療の為に大切なのである。ネズミといえども、生き物である。教授は、いつも手を合わせているとのことだった。[ブルーの住人]第八章:ついでに~罪と罰~

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (十九)(光子の言い分:五)

    仲居たちの間では評判が悪く、三水閣の女将もまたにがにがしく思っている。しかしこの旅館の主には、金をかせぐめん鶏がいちばん大事だ。傍若無人にふるまう光子にたいし、大物然とした度量の大きさをしめしたがる客がすくなからずいた。地位のたかい層がおおく、そんななかでひとり、光子のふるまいに興味をおぼえた人物がいた。風変わりな女たちを指名してくる、ある大物政治家だった。三十路を過ぎた里江が、仲居頭として腕をふるっていられるのも、このKという政治家に可愛がられたからだった。「フェミニストとして世に知られた、えら~い政治家さんなんですよ」と、里江に教えられた。「女性を大事にしない国家は、かならず衰退していく」。「考えてもみなさい。世の男どもにはすべからく、おっ母さんがいる」。「みな、おっ母さんのおなかを痛めてこの世に出て...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十九)(光子の言い分:五)

  • 原木 Take it fast! (十四)遅くまで討論

    その日は、三人で遅くまで討論をした。そして、六項目-ほどの問題点にまとめあげた。そのうち、四項目が学校側の不てぎわに思えた。もっとも、噂話が真実だという前提なのだが。女子生徒からの情報も、幾分あやふやではあった。噂ばなしの元がわからないのだ。はっきりしたのは、女子生徒だけが知っていて、男子生徒の誰も知らないことだ。そして、一部の教師のあいだでも噂には上ったらしいのだが、職員会議での議題にはなっていないらしい。予測していた事とはいえ、腹わたの煮えくりかえる思いを、三人とも感じた。もし、この教室にその教師がはいってきたら、有無をいわさず行動派はなぐりかかったろう。そして、ヒネクレ派も手つだうだろう。が、真面目派だけは、それをじっと見守り、つぶやくだろう。「これだ、これが原因だ。弱体化している。教師がホワイトカ...原木Takeitfast!(十四)遅くまで討論

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (三)語気するどく

    語気するどく言い放ちました。そしてそのときには部屋にはいり、床の間を背にしてのことでした。そこには。葛飾北斎作の「不二越の龍図」が掛けられております。富士のお山が小夜子さんに隠れてしまい、天に昇らんとする龍がその背から現れ出ているようで、なんとも不思議な面持ちがしたものでした。その掛け軸を正夫さんは真作だと言い張るのですが、だれも信じる者はいませんでした。いえいえ骨董屋は複製画ですから、とはっきり言っています。ですので、別段だまされたといったことではありません。話がそれてしまいました。すこし間が空いてしまいましたが、お話をつづけましょう。「みなの衆!だまされるでないぞ。このおなごは口がうまいから、危うくわしもだまされるところじゃったわ。このおなごと足立が、はたして誠に情をかわしていたかは、わしにもわからん...愛の横顔~RE:地獄変~(三)語気するどく

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百三十七)

    その日、武蔵の○が社員につたえられた。それまで回復の途にあるという説明を受けていた社員にとって、寝耳に水のことだった。「専務、じょうだんはやめてくださいよ!」。服部が、大声でどなった。「かつがないでくださいよ」。女性陣からは弱よわしい声がもれ、「うそよ、大うそよ!」と、金切り声もあがった。「竹田!なんとか言えよ」。じれったそうに、服部が、またどなった。首をうなだれながら、頭を横にふるだけの竹田だった。「知らないんだ、ぼくも。なにも聞かされてないんだ」。絞りだすように言うと、両の目からどっと涙があふれでた。哀しみの涙ではなかった、ただただ、悔しさがむねに押しよせてきた。〝早すぎる、はやすぎるよ、神さま〟早逝した武蔵をいたむこころとともに、〝信頼されていなかった、ほんとのところは。かってにぼくが思いこんでいた...水たまりの中の青空~第三部~(四百三十七)

  • ポエム ~焦燥編~ ( ことば )

    いま、ことばを忘れてしまった。いま、為すすべを失った。ただ、ベッドの上に座りボンヤリとテレビに見入る。……書く気が失せてる……最近、どうしてだか分からないが、女というものを単なるセフレとしか考えられなくなった。二十歳……大人への登竜門煙草を吸った酒も飲んだパチンコもしたなにかしら“大人”ということばの奥に恐ろしいものが隠されているようなそんな気がしてならない若さは悲しいけれど哀しみの心を捨てたくないことばで自分を飾りたくないことばで自分を守りたくない(背景と解説)前回の詩を思うと、まだ、己を美化しようとしている気がします。ですが、そこまで疑うと、自分を殺してしまいそうで……。本心だと、隠すことのない心情だと、思いたいです。確かにこの時期は、小説から離れていました。日記を読み返しても、ありませんし。どころか...ポエム~焦燥編~(ことば)

  • 小説・二十歳の日記 六月十八日 (晴れ)

    あれほどに降りつづいた雨も、昨夜のうちにすっかり降りつくしたらしく、眩しいばかりに太陽がかがやいている。きょうという日は、まったく素晴らしい。なんだか、周りのものすべてが輝いて見えた。なにもかもが楽しい。道路のあちこちの水たまりの中に映っている、青空。石をけると、ポチャン!と、音を立てて青空がゆがんだ。きのうまでのぼく、まるでぼくではないような。いや、きょうのこのぼくがぼくでないのかも。ぼくのことを口舌の人、と決めつけていた先輩でさえも、きょうのぼくに驚いていた。これほどに楽しいものだとは。けれども、結局かたおもいに過ぎない。ただ単に、客席のなかのひとりにすぎない。いや、このぼくの存在さえ知らないんだ。なんてこった!小説・二十歳の日記六月十八日(晴れ)

  • [ブルーの住人]第七章:もう一つの 「じゃあず」(七) Last

    晴れた空では、どこまでも青い空があり、そこに一つ二つ…と流れる白い雲。やがて日が暮れるにつれ、赤く染まりゆくすべてのもの。雨の空では、濃淡のはげしい灰色の雨ー白なのか銀なのか、はたまた緑……色のあるようなそれでいてないような、絹糸のごとき雨。そしてなにより興味をひいたのは、雨がにじみゆく大地。この世のすべてを受け入れ、拒否することのない大地。しだいにすべてを飲みこんで、その痕跡すら残さない。とつじょ、なんの前触れもなく――江戸幕府のまえにその威厳をみせつけた黒船の「ドン!」のごとくに、ぢごくの断末魔と猛々しきしき神々の歓声との交錯する、悲鳴が上がった。一瞬間、すべてが止まった、凍りついた。時のながれでさえ止まった。四方を壁で閉ざされた世界から、すべてが青空のしたに移された。見渡すところにはなにもなく――ま...[ブルーの住人]第七章:もう一つの「じゃあず」(七)Last

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (十八)(光子の言い分:四)

    ではそこでのわたくし、「人のこころを失ってしまったわたくしでございます。まさに、武蔵さまがおっしゃった地獄を見ました」と申し上げた、わたくしのことでございます。好いた殿方にうらぎられた、それだけでも女にとっては十分に地獄ではございます。ですが、まだ入り口に立っただけのことでございました。さきほど申しあげましたが、料理旅館という体をとってはおりますが、その実態は売春やどにほかなりません。まあ、高級という冠がつくやもしれませんが。さかのぼりますれば、江戸の世において旅籠には飯盛りおんなという者がおりましたこと、ほとんどの方はお聞きおよびと存じます。その通りでございます。ただ、いちおう、仲居の方にも選択権があるとか。どうしても気に入らぬ客ならば断っても良いとのこと。ただしその場合には、そのお客さまのひと晩のお遊...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十八)(光子の言い分:四)

  • 原木 Take it fast! (十三)放課後

    翌日の放課後、真面目派は、期待と不安とのからむ複雑な心境で、体育館にはいった。その子の姿はまだ見えない。と、ヒネクレ派が、更衣室の中から手招きで呼んでいる。しかし、昨日のことはひと言も口にしない。すこし裏切られたような、変な気持ちになった。いつものようにグランドを走っている時、行動派がドスドスと追いかけてきた。そして、例の風紀についてはなしあいたい、と言う。ヒネクレ派は、即座に「嫌だ!」と、答えた。真面目派は、「あと十分後ならいいよ」と、答えた。行動派は、満足そうにうなずくと校舎へとむかった。ヒネクレ派は、校舎内に行動派が消えたのをみとどけてから、「おい、きょうはあの子にお前を会わせる予定だゾ。そこで告白しろ。わかっているのか?」「いいんだよ、そんなこと。ぼくだって、彼女と話しをしてみたい気はあるさ。だけ...原木Takeitfast!(十三)放課後

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二)片手落ちだと

    しかし片手落ちだと言われても、こちらからお願いしてのことでもなし、勝手に乗りこまれてきたわけですから。正直いえば迷惑なことでしたし。そして今また話を聞いてくれと言われても、といった思いです。「思いだしたぞ!あの青びょうたんの足立三郎の、あのときの小娘か。どうにも見覚えがあるとさっきの婦女子も思ったが、当の本人が現れては間違えようもないわ」善三さんが、はたとひざを叩かれました。「面白い、実におもしろい。わしに食ってかかったおなごなど、おまえさんぐらいのものだった。よーく覚えているぞ。皆の衆、怖がることはない。このわしに恨みごとのひとつも言いたくて化けて出てきただけさ。片腹いたいことだわ」おびえておられた皆さま方をなだめられます。さすがに善三大叔父です。この世に怖いものなどない!と豪語されている善三さんです。...愛の横顔~RE:地獄変~(二)片手落ちだと

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百三十六)

    「五平、いままでありがとうな。おまえとの日々は、じつに楽しかったよ。軍隊時代にであえたことは、天の配剤以外のなにものでもない。五平に会わなかったら、いまの富士商会はないし、俺も商売なんかしていない。おれが無鉄砲にいろんな奴とやり合って来れたのも、五平、おまえがいたからこそだ。でなきゃ、あっというまにあの世行きだったかもな」ときどき長めの息つぎをしながら、なんとかことばをつなぐ武蔵だった。「社長。もうそれくらいで。社長の気持ちは十分わかっていますし、あたしだって社長がいなけりや、どうなっていたことやら。女衒の最期ってのは、そりゃもうみじめなもんですから。世間さまから後ろ指を指されるようなことをしてきたわけですから」しんみりと答えながらも、互いを支え合ってきたこの10年の余のことが、走馬灯のように思いだされた...水たまりの中の青空~第三部~(四百三十六)

  • ポエム ~焦燥編~ (敬 虔)

    俺はなんとかしてケイケンな気持ちになろうと務めたシュウキョウという観念の前でユルシを請おうとこころみた轟々とミズの流れおちる滝の下で修行者のマネゴトごとをしてみた白いユキの降りつもった山中で白装束いちまいでダイノジになってみたそしてそしてじりじりとヤケツク砂浜を素の足でハシリつづけてみたしかしそのスベテがむだだった理知的、論理的ニンゲンの俺には許されるコトのない許されるハズのないことだった(背景と解説)なんとも傲慢な若者でした。いま思うと、ある意味、唾棄すべき人間です。カタカナにしてしまうことで、己とは無縁な、いえそれらを超越した人間なのだと思い込んでいる――思いこもうとしている、まったく馬鹿な若者でした。彼女らに、次第に距離を置かれたとしても、自業自得というものでしょう。形の上では己を責めているようにし...ポエム~焦燥編~(敬虔)

  • 小説・二十歳の日記 六月十六日 (曇り)

    いまは嫁がれた、高校時代の先輩のことばを思い出した。「あなたには、夢がないのね」文芸誌の発行で掲載してもらう作品を、読んでもらったんだよ。そのときのことばだ。当時の先輩は恋愛中で、卒業後すぐに結婚されたらしい。憧れていたのになあ。きょう、二十歳になりました。そしてある意味、記念日になるかもしれない。会社からいただいた歌謡ショーのチケット。ことしから始まった、なんだっけ、そう!福利厚生とかで、誕生日には休むようにって。ついでに課長から入場券をもらってさ。なんか、取ってる新聞屋さんからもらったんだって。けど平日だろ?わざわざ休んでまでってことらしい。それでぼくが、ファンというわけでもない、演歌歌手のショーを観てきた。良かった、ホント素敵だった。課長に、感謝、感謝!小説・二十歳の日記六月十六日(曇り)

  • [ブルーの住人]第七章:もう一つの 「じゃあず」(六)

    その他にはぐるりと見回しても、取り立てて言うほどのものはない。強いて言うなら、紺に彩られた扉がある。そしてその紺色の中で、あるベき筈の鈍く銀色に光るドアノブのないことが、不思議なことに感じられる。以前は興味を持ったような記憶もあるが、それとてすぐに消えてしまう程つまらない些細なものだった。そういえば、音がするでもないドアの開閉の折りに瞬時見えたのは、同じようなドアと廊下だった。窓の外にはポプラがそびえ立ち、その葉を透ける太陽の光、そして遙か彼方の霞にかすむ山々の連なり。何よりも、どこかにあるのだろう滝のゴーゴーという轟音と、水しぶきがキラリキラリと光る様が目に浮かぶ。そして小鳥のさえずりも、また。窓の外には、生きた音があった。[ブルーの住人]第七章:もう一つの「じゃあず」(六)

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (十八)(光子の言い分:三)

    三水閣、料理旅館、その実態は売春宿でございました。三本の水の通り、三途の川、そのほかに世俗の水垢を落とす宿という意味もあったそうでございます。三という数字が使われたのは、そういったこともありましたそうで。三途の川とは?ということでございますか。女たちの、恨み節でございましょう。もう戻れぬ、そんな意味が込められていると聞かされましたが。いえいえ、三水閣の女将さんではありません。わたくしの教育係である仲居頭の里江さんからでございます。もう三十路をはいられたとお聞きしましたが、とても素晴らしいお方でございます。もうこの三水閣で、十年近くになられるそうです。本来ならば三十路を過ぎた仲居はここを去るということなのですが、里江さんだけは特別に認められているそうです。なんでも、とても大切なお客さまからおことばを頂戴され...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十八)(光子の言い分:三)

  • 原木 【Take it fast !】(十二)俺が話をつけてやるよ

    「そうか、やっぱりな。あいつが好きなんだ、お前。よしよし、俺が話をつけてやるよ。なあに、大丈夫。あいつだって、まんざらでもないと思うぜ」「ええっ、こまるよ、それは。ぼくは、今のままでいいんだから」「いいから、いいから。それでもな、はじめの頃のおまえは、イヤな奴だったらしいぞ。最近は、見直したみたいだ。そう言えば、この間ひとりで早く帰ったろう。その時に『どうして今日は来ないのか』って、聞いてたぜ。これは、脈ありだナ。うん、うん」「違うんだ、そんなことじゃないんだ。ちがうんだ」「なにが違うもんか。いや、じつを言うと、俺の気になる子というのがそいつさ。お前にその気があれば、と思ってたんだ。よしよし、さっそく明日にでも話をしてやるよ。でないと、おれも困るしさ。ハハハ、これは愉快だ、ハハハ」「違うんだ、だめだよ。そ...原木【Takeitfast!】(十二)俺が話をつけてやるよ

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (一)坂田カネの

    坂田カネの三十三回忌もなんとか終えまして、会食に入ったときのことでした。とつぜんのちん入事件が起きたことは、先ほどお話しましたとおりです。妙齢のご婦人がお迎えにみえて、ことは終わったと皆さん安堵されました。老人が立ち去ったあと、まだ夕方前だというのに辺りが薄暗くなってきました。天気が予想よりはやく崩れてきているのでしょうか。夜半になってから雨が降るという天気予報でしたので、皆さん「傘を持ってきてないのに」「車で来ているから送らせるわよ」などとかまびすしいことに。「料理が冷めてしまいましたが、どうぞ故人を偲びながらお食べいただけると幸いです」という喪主の松夫さんの声かけで、ガヤガヤとおしゃべりが始まりました。未だに澱んだ空気が部屋全体をおおっています。タバコの煙があちこちから漂っており、開けはなたれた雪見障...愛の横顔~RE:地獄変~(一)坂田カネの

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百三十五)

    時間がさかのぼって、朝の七時を少し回ったときだ。正面玄関ではなく、横手にある救急窓口から院内に入った。救急外来の受付の前を通り、「お早いですね、今日は」、という事務方の挨拶には帽子をあげて応えただけだった。まだ外来が機能していない時間帯では、人の動きもない。普段ならごった返すうす暗いロビーを通り、受付前のエレベーターで武蔵の病室へと向かった。ドアが開くと、その前に看護婦詰め所があり、数人が机でカルテに書き込みをしている。「おはよう」ここでは中の看護婦に声をかけて、叩き起こした菓子店で買いもとめた饅頭を差し入れた。「いつもありがとうございます」と、武蔵専属になっている看護婦が受けとった。五平が部屋に入ると、武蔵の軽い寝息が聞こえてくる。閉じられたカーテンのすこしのすき間から入りこむ光は、客用のテーブルの角を...水たまりの中の青空~第三部~(四百三十五)

  • ポエム 焦燥編 (てん・てん)

    「霊の世界は閉ざされてはいない。汝の官能が塞がり、汝の胸が死んでいるのだ」牧師のそんな言葉も、死刑囚には何の意味もなく、まして感動は与えない。否、安らぎを与えられるまでもなく、死刑囚の心は落ち着いていた。その落ちつきは、己以外の人間に対する軽蔑からくる、ある種の快感のようなものだった。「人生の紙くずを縮らして飾り立て、それでピカピカ光っている演説なんてものは、秋の枯葉の間をざわめく、湿っぽい風のように気持ちの悪いものだ」早くやめてくれと言わんばかりの死刑囚の顔には、牧師以上の何かが、神から授けられたようだ。或いは、死神のとり憑いた死刑囚への、最後の贈り物かもしれない。そして今、ついぞ今まで信じなかった神の存在を、死刑囚は意識せざるを得なかった。間もなく訪れる十時十分。執行時間は、すぐそこに足を運んでいた。...ポエム焦燥編(てん・てん)

  • 小説・二十歳の日記 六月十日 (曇り)

    もうダメだ!自分自身を嘲笑し、なにもかもに感動を失った。自暴自棄に近いよ。何もかも放り出して、それこそ自由気ままに生きたいよ。自○、頭の中をかけめぐる。そういえば、彼はどうしているだろう?二度もの自殺未遂の末に、むずかしい病名の精神病と、内臓疾患の病名と、もう一つなんとかという病名を付け加えられて、保護されたはずだ。ぼくにはどうしてもわからない。たしかに、現実と夢のくべつが付かないようではあったよ。だけどこのぼくだって、いや大なり小なり、話を面白くするために誇張することはあるじゃないか。彼のばあい、その度が過ぎただけじゃないのか。星の流れが霧に閉ざされ、ときの流れも止まった今夜、ぼくはきみと歩いている。……それだけでぼくは幸せなのに、きみは不満げだ。そして口づけをせがむ。触れ合うものはこころだけでいい。肌...小説・二十歳の日記六月十日(曇り)

  • [ブルーの住人]第七章:もう一つの 「じゃあず」(五)

    豪華なステレオー装飾も派手で、胴体の色は銀一色で前面にジャガード織りの布がかけられている。さらに豪華という表現を満足させるのは、スイッチなどの操作が必要のない、全てオートマチックということだ。唯一気になるのは、ジャガード織りの中央に、レンズのような物があることだ。夕方になると、太陽光線を反射するのかキラリキラリと光る。そしてそのステレオの上の壁には、その艶やかな肌に不覚ナイフの傷跡を残し、それでも穏やかな表情の能面があった。そう言えば、食事に出される食器からナイフがなくなったのは、その傷跡が付いた後だったような…。今は亡き母にも似たその面は、生きている人間の意思など無視しがちなある種の威厳を感じさせ、部屋全体に重くのしかかっていた。[ブルーの住人]第七章:もう一つの「じゃあず」(五)

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (十七)(光子の言い分:二)

    それでは三郎さんとの逃避行生活をお話しいたしましょうか。汽車内でのことは、ほとんどが眠りについておりましたのでさほどに申し上げることはございません。ああそうでございますね、三郎さんがどこの駅でしたでしょうか、お弁当を買い求めてくださいました。冷めた幕の内弁当でございますが、旅館での賄いのようにはいきませんですが、けっこう美味しく食べられましたわ。いろいろと面白いお話をまじえながらの食事でございまして、久しぶりにこころの底から楽しめたお食事でございました。そののち眠くなったと、わたくしの膝を枕にしようと奮闘される三郎さんでしたが、汽車の席は座るものでございます。諦められました。ですが、清二のおりとは違い、わたくしの気持ちのなかには甘えさせてあげたいとという思いが溢れておりました。汽車の中でのこと、他にでござ...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十七)(光子の言い分:二)

  • 原木 【Take it fast !】(十一)公園に行こう!

    「よし、この具体的方法については、それぞれ今夜ひと晩かんがえようゃ。じゃ、バイバイ!」行動派は、そう言うなり家の玄関に消えた。あいかわらずのマイペースだった。なんの話だったか、わたしは忘れてしまった。横道にそれたという意識はあるのだが……、思いだした。風紀もんだいだった。先生と女子生徒がうんぬん、だった。ヒネクレ派は、もくもくと歩いた。真面目派もまた、だまって歩いた。しばらくの沈黙のあと、「公園に行こう!」と、ヒネクレ派が言いだした。真面目派も、なぜか別れがたい気分になっていたので、「そうだネ」と、応じた。「なあ、おい。人間というのは、おもしろいナ」とつぜんのヒネクレ派のことばに、真面目派は驚きつつも「どうして?」と、聞き返した。「うん、俺な…」と、遠くを見るような目つきでつづけた。「ある女の子が好きにな...原木【Takeitfast!】(十一)公園に行こう!

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