水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百二十六)
真っ青な空に、ひとつふたつと雲がうかんでいる。太陽は正天にあり、ギラギラと輝いている。秋に入ったとはいえ、まだ汗ばむような陽気がつづいている。白い筋のように水平線があり、視線の先に貨物船がすすんでいる。砂浜でレースのフリルがついた白い水着姿に、ピンクの縁に黒いレンズのサングラスをかけた小夜子が、「おおおおーーい!」と、大声をはりあげた。数人のグループが、あちこちに点在していて、おどろきの目が小夜子にそそがれるが、まるで動じない。“あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる”とばかりに、胸の前で合わせた両の手を、大きく空にむかって開放した。「なにをあげたんだ?神さま、よろこんで受け取ってくれたか?」「やっと起きた、武蔵が」いつもの膨れっ面を見せる小夜子。そしていつものように指で押して、武蔵がしぼませる。ぶふっと...水たまりの中の青空~第二部~(三百二十六)
2023/02/28 11:51